概要
イギリスのマン島の伝承に伝わる魔犬。モーア・サ・ドゥー、モーザ・ドゥーグ、モディ・ドゥー、マーザ・ドゥー、マーザ・ドゥーとも表記される。
現地の言葉で≪黒い犬≫という意味の名な通り、黒い犬の姿をした亡霊で、ヘルハウンド(ブラックドック)の仲間とされ、一説には赤く燃え上がる様な目、またはらんらんと光る眼を持つ子牛の大きさ、或いは大きめのスパニエル種犬ほどの大きさがある黒犬ともいわれている。
特に島の古城の1つであるピール城近辺に棲み付いていたものが有名で、こちらから干渉しなければ特に害は無いが、面白半分にからかったり、神を愚弄するような言葉を投げかける。若しくは過度に油断しようものなら命を奪われることになるとされており、次のような話が伝わっている。
17世紀、ピール城に軍隊が駐屯していた頃、いつもの番兵詰め所に何処からともなく1匹の大きな毛むくじゃらの黒犬が音も無く侵入してきて寝そべっていた。
この犬のことは皆知っていたが、不思議な雰囲気を漂わせていた為、誰1人話しかける事をしなかったが、ある日1人の男が酔った勢いで仲間の制止も聞かずに犬をからかった。
その後、いつもは2人で司令官室に鍵を返す決まりになっていたが、彼は鍵束を掴み1人で鍵を返しに部屋を飛び出すが、まるでそれを待っていたかのように黒犬も立ち上がり男の後を追っていった。
暫くすると耳をつんざくような悲鳴が聞こえて来たかと思うと、顔を真っ青にしながら先ほど出て行った男が震えながら戻って来たが、恐怖で声を失い、それから三日目に死んでしまったという。
また、出会った者に死の予兆を伝えたり、人々を守護する一面もあるようで、船を出向させる為に港へ向かう船員の前に道を塞ぐように立ち塞がり、やむなく出航を断念すると、次の日に舟が突風で難破し命が助かったという話も伝わっている。
なお、その正体は悪魔の化身とも、本物の犬ではなく牢に繋がれた亡霊ともいわれている。
関連項目
バスカヴィル家の犬→モデル