CV:小清水亜美
この先、第1部第7楽章以降のネタバレが含まれます。未プレイの方は注意。
概要
「亡き王女のためのパヴァーヌ」の先代にあたるムジカートで、現パヴァーヌの素体ライヤ・クラウス、およびその双子の弟であるディーン・クラウスの養育者。
一人称は「わたくし」。羽根飾りのついた金髪と白いドレスが特徴的で、淑やかな大人の女性といった容貌。
比較的新しい世代のムジカート。
15年ほど前にボレロと同じ部隊で戦っており、コンダクターのミセス・シュタインには妄信とも言える情熱を傾け、彼女の命令には絶対に従っていた。
コンダクターに忠実かつ1人で街を吹き飛ばすほどの高い戦闘能力から「直近の最高傑作」と言われたほどだったが、ゲーム開始の5年前(2062年)に過激派集団がシンフォニカのハンブルク研究所を襲撃。
防衛に駆り出された結果「1人生き残った」と報告した後、シンフォニカからの帰還命令を無視。その実力の高さゆえ連れ戻そうとしたムジカートやコンダクターは返り討ちにされ、とうとう通信も遮断され音信不通となってしまった。
なおハンブルグ研究所は、ムジカートへの適正を持つ特殊かつ希少な遺伝子「α幼体」を人工的・後天的に付与する実験を行っていた。
表向きは本人と保護者の同意付きで多額の補償金を払って行っていた……とされているが、実際はD2で親を喪った戦災孤児をベッドと食事を餌に集めていた様子(ただし教育プログラムを準備するなど、最低限の生活は保障していた模様)。
ベルリン・シンフォニカの戦力強化のため彼女を連れ戻す命令を受けたタクト達は、ハンブルグに向かい彼女と邂逅。研究所の生き残りであった双子を、研究所の敷地内から出さないままに養育していた。
頑なに事情を話そうとせず、陽が落ちていたことからタクト達の宿泊を許可するも、「子供達に決して近づかないように」という条件を出し、シャワー無しのシェルターのような部屋に閉じ込めるという実質的な軟禁状態であり、歓迎しているとはお世辞にも言えない対応であった。
ミセス・シュタインが死の間際に残した命令を「子供達を守って」であったことを主張する他、双子をシンフォニカに連れてムジカートやコンダクターにさせるような真似はせず、研究所で守り続けると頑なに訴えている。
ボレロによると、嘗ては優しくて慈愛に満ちた女性であり、誰よりもコンダクターに忠実なムジカートであったという。無邪気でいつも子供みたいにミセス・シュタインの後をついて回っており、戦いに疲れた兵士たちのためにダンスを披露するなど穏やかで明るく、周りにはいつも穏やかな風が吹いているようだったとのこと。
現在のパヴァーヌを見た彼女は、「自分で自分を押し殺しているような息苦しさ」を感じたと語っている。
頑なに双子を研究所に閉じ込めようとするパヴァーヌに耐えかねたライヤは、彼女に「親でもなんでもない」と言い放ち翌朝家出を起こすものの、ボレロの後押しもあって研究所に戻り、パヴァーヌに自身の夢を告白。
双子が研究所の生き残りであることは伏せた上で、3人をシンフォニカに連れて行くことが来まるものの……。
関係者
- ライヤ・クラウス(cv:安済知佳)
双子の姉。生まれながらにα幼体を持っていた。
性格は気が強くアクティブ。ただしディーンによると優しい性格とのこと。
将来の夢は画家。シンフォニカで絵の勉強をしたり各地に行って見聞を広げたいと強く願っており、研究所の各地にグラフィティアートにした自身のサインを書き記している。
来訪したタクト達に一縷の望みを託して事を説明。事情を何一つ話さず自分達を研究所から出さないパヴァーヌを「自分達の自由を奪う者」として疎んでおり、外の世界を望んでいる。
しかしパヴァーヌと口論になって家出しても「見つけて欲しい」と言わんばかりに行く先々に自身のサインを残しており、パヴァーヌをモデルにした聖母マリアのような女性が双子を包みこんでいる絵を描いていることからも、心の底では彼女を深く慕っていることがうかがえる。
- ディーン・クラウス(cv:佐藤元)
双子の弟。ライヤと異なりα幼体は持っておらず、人工α幼体を付加されている。
その出自上「落ちこぼれで弱い」と自覚しており、温和かつ気弱。
ライヤとは正反対に現在もパヴァーヌを慕っており、彼女が双子の生き残った経緯と賢さをなぞらえた「狼と7匹の子ヤギ」の絵本をお守りのように持っている。
α幼体を持つライヤが研究所に入れられた理由として、双子であってもα幼体を持つ者・持たない者がいる……という事実が、シンフォニカの研究材料として好条件であったのだろうとワルキューレは推測している。
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彼女が隠した真実
以下第9楽章以降のネタバレ注意
上記の通り人工α幼体を子供達に付加していたハンブルク研究所であったが、実験は失敗に終わっていた。加えて人工的にα幼体を付加された子供達の何人かはα幼体が活性化せず、D2化する事態にも陥っていた。
研究所はこの事実をシンフォニカに隠蔽し、人工α幼体を活性化させるために経緯は不明ながらD2の細胞を使用。結果として、先天的にα幼体を持っていたライヤ以外は全員人工α幼体とD2細胞を埋め込まれた人間となっていた。
そんな子供達は過激派の襲撃を受けて5年前に一斉にD2化(過激派の襲撃によるパニック状態がトリガーになったのではないかとパヴァーヌは推測している)。シンフォニカから命令を受けてミセス・シュタイン共々ハンブルグに向かったパヴァーヌが研究所で目撃したのは、無数のD2が敵味方区別なく人間を食い荒らす姿であった。
D2が研究所を襲ったと考えたパヴァーヌはD2を躊躇いなく葬り続け、ミセス・シュタインからの通信を受けて地下室に向かうも、既に彼女は事切れていた。ミセス・シュタインを手にかけたのは、半身をD2に変容させ彼女の返り血を浴びていた実験体の少年・ヨセフであった。
彼はパヴァーヌの目の前で全身をD2に変貌させる。パヴァーヌは人間であったヨセフを殺すことができず、彼を地下室の檻に閉じ込め続け、その存在を双子にも隠していた。
実はミセス・シュタインは、死の間際に「子供達を殺して」という命令を残していた。
正体を知らなかったとはいえ、人類の未来を守るために戦うムジカートが、人類の未来である子供達を手にかけたという事実に罪悪感と苦しみを抱いたパヴァーヌは、ミセス・シュタインの命令を到底受け入れられずにいた。
このまま消えてしまいたいと思っていたパヴァーヌは、柱時計の中で身を寄せ合って眠っていたライヤとディーンを発見。贖罪として2人を守り育て、それと同時に地下に閉じ込めたヨセフの面倒を見ていたのであった。
彼女が5年間シンフォニカに事情を隠してきたのは「子供を手にかけた事実を誰にも知られたくない」という思いからであり、万一シンフォニカが、生き残ったライヤとディーンを見つけた場合どんな処分を下すかもわからないという問題もある。
ヨセフに対しては、具体的には日々自分達と同じ食事を与え語り掛けていたとのこと。パヴァーヌ自身は「それだけしかできなかった」と述懐しているが、事実D2化したヨセフはパヴァーヌらを襲うことをせず、人間としての彼の心は少しばかり残っていたようである。
しかし旅立ち前、トランス状態に陥っていたディーンの身体をD2が支配。
D2はディーンの体を使って、地下室の扉のロックを解放し、地下室の檻の鍵を開けてヨセフを解放していたのだった。
再びトランス状態に陥ったディーンは体をD2に乗っ取られ、半身をD2に変貌させていく。ディーンがライヤの声に反応したことを切っ掛けに、ライヤはディーンに懸命に訴え続けるが、これを煩わしく思ったD2はライヤの息の根を止めに掛かる。
そんなライヤを身を挺して庇ったのはパヴァーヌだった。
ディーンを「君たちもいつか訪れる場所」に連れて消えていくD2。
パヴァーヌはD2に深々と胸を貫かれ、力の源泉であるf字孔も破壊され余命幾許もなくなっていた。
パヴァーヌはライヤに詫びた。ディーンを守れなかったこと、結局双子に何もしてあげられなかったこと。守り切れなかったこと、自由を与えてあげられなかったこと。
パヴァーヌはボレロに礼を言った。旅立つ前、タクト達と共にした最後の晩餐で、皆と一緒になって嘗ての自身のように舞えたことを。
そしてパヴァーヌは、ライヤを「賢くて強い、自分の力で自由にどこまでも行ける子」と褒め讃え、ライヤの訴えもままならず、ムジカートとしての生を終える。
_______彼女が死の間際に思い出したのは、人であった頃の記憶。
慕っていたミセス・シュタインが、自身の母親であったこと。
自身がムジカートとなって何もかも忘れても、コンダクターとしてずっと傍にいてくれたこと。
「ありがとう……お母さん……」
「あたし……お母さんみたいなお母さんに……なりたかったんだよ……」
記憶を失ってもなお、シュタインのような『母』でありたいと願い続けたパヴァーヌ。
ライヤは彼女の死に涙し、パヴァーヌを「偽物の親」と呼んだことを深く悔い、謝るのであった。
翌朝、ライヤはディーンを連れ戻してパヴァーヌの仇を討つため、画家の夢を捨てムジカートになることを決断。2人のことを忘れないようにと、「狼と7匹の子ヤギ」の絵本だけを荷物にシンフォニカへと向かっていく。
彼女の悲痛な決断にタクト達は何も言えず、ボレロはパヴァーヌのために暫しの静寂を捧げるのであった。
ムジカートになるための「託音の儀式」を受けたライヤは、奇しくも新たな『亡き王女のためのパヴァーヌ』として転生する。
その後の彼女の動向はこちらにて。