「トゥエルブに手を出したら、あなたも殺す、わ」
「死は、結果のひとつでしかないわ。あたしの任務はトゥエルブを守ること。だからそうする。なんのため、なんて考える必要ないわ。そうしなければ、ここにいる意味がなくなってしまうんだから」
「あたし、あなたになにもしてあげられなかった」
「……ありがとう」
「『12』の先にある未来。あたしたちが生きていく世界……」
概要
村瀬香は、「TwelveY.O.」に登場するDAISの一曹。作中では東馬理沙を名乗っている。
電子テロリスト「トゥエルブ」こと東馬修一の傍を離れず、彼に危害を加える者には容赦しない。
名目上は東馬の娘、理沙ということになっている。
人物像
常に無表情、与えられた任務はどんな障害があろうと忠実にこなす。しかしそれ以外のことにまるで興味がなく自らの死を全く恐れていない。それ故夏生由梨らDAISの職員から「人形」と揶揄されることも。
親に虐待されていたのか、腕や背中に無数の煙草の押し痕がある。
行動を共にしている東馬の命令にはどんなに危険だろうと従い、そして東馬を常に守っている。
まるで機械人形のようだが、決して非情というわけではなく、東馬や同期のDAIS二曹の辻井護、隠れ先の坂部家の優子には、彼女なりの思いやりを感じているらしく、その感情に自ら戸惑う場面も見られる。
「理沙」という名は、優子がつけた。また、自身の通り名の「ウルマ」の名にちなんだイルカのイヤリングや珊瑚のネックレスといった安物のアクセサリーを優子からもらったらしく、そのアクセサリーは、坂部家の庭に大切に埋めている。
ウルマ
DAISの920部隊の最終野戦訓練で、沖縄のアメリカ海兵隊の訓練場を、二人一組で縦断突破するという非常に厳しい試験で、彼女の組だけが唯一ゴールにつけた。
怪我をした相棒の男を担ぎ、飲まず食わず眠らずの一週間を耐え抜いた彼女の名は海兵隊にまでひろがり、伝説になった。
海兵隊は沖縄のアテナと最初彼女をあだ名したが、いつの間にか沖縄言葉で「珊瑚」の意味を持つ「ウルマ」というのが彼女の名になった。
因みにこの時の訓練キャンプには、夏生由梨や辻井護もいた。彼らも一週間の日程を生き延びたが、ウルマには叶わなかった。
彼女の華奢な身体に秘めた母性のたくましさに、辻井護は惚れたらしく、後の任務途中でウルマを庇い、上官の夏生から離反。その後平や坂部と共に行動することになる。
その伝説に恥じない戦闘能力の持ち主。差し向けられた精鋭を一人で何度も無力化し、アメリカ海兵隊員まで圧倒してみせる、まさに「兵器」と呼ぶに相応しい能力である。
「BB文書」という、東馬の出生にも関わり、日米両政府を覆しかねない非常に重要な文書を東馬から預かり、それを死守している。
彼女の「本当の任務」
※ここから先、物語の根幹のネタバレがあります。
「ナイチンゲールは、囀らない」
「トゥエルブを無力化し、「BB文書」を持ってこちらに戻りなさい」
彼女に下された「本来の任務」は、トゥエルブに付き従い、彼の信頼を得て、「BB文書」の所在を突き止める。そして謀反がはじまった場合には、「GUSOHの門」に侵入した時点で外事部の指揮下に入り、トゥエルブを無力化し、「BB文書」を奪取することであった。
この特別任務を直接下したのは、古武外事本部長。そしてその古武の代理人である夏生由梨に、「BB文書」を渡す。それで任務は完了するはずだった。
「一緒にいたかった……ウルマではない、理沙と……」
だが、「東馬理沙」からDAISの兵器「ウルマ」に戻った村瀬香一曹は、自らがナイフを突き立てたトゥエルブこと東馬修一が、実は自分の任務の事を全て知った上で、「理沙」という我が娘として接していたという事を悟ると、任務遂行のための「機械人形」だった彼女は、ウルマでもDAISの一曹でもなく、東馬理沙という血の通った人間として、夏生の命令を拒絶し、任務を放棄した。
その後、海兵隊の攻撃をなんとかかわしたが、しかしその衝撃で「GUSOHの門」から最強最悪の毒ガス兵器「GUSOH」が漏れ始め、沖縄の辺野古弾薬基地を飲み込んでいく。
死にゆく東馬の最後を見届けた村瀬香こと理沙は、辻井護と「GUSOHの門」の集中管理室に行き、ガスの噴出を止める「『12』の先にある、自分達が生きていく未来の世界」のパスワードを入力。
辺野古基地は「GUSOH」を無力化する「テルミット・プラス」システムが作動し、辺野古基地は爆破され、GUSOH流出による大惨事は防げた。
(この事件は、後に「辺野古ディストラクション」として、次作の「亡国のイージス」でも語り継がれている)
その後の理沙と護の行方は不明。しかし平は、二人は必ず生き抜いていると確信し、夏生由梨と共に「BB文書」の正体を見、文書を焼き捨てたのだった……