当作品を原作としたHBO製作の海外ドラマについては、「ゲーム・オブ・スローンズ」を参照。
概要
1996年に第1部『七王国の玉座』が発表されて以来、現在も続刊中である。中世イギリスや薔薇戦争をモチーフにした架空戦記で、多彩な登場人物の視点から進行する群像劇でもある。2011年には本作を原作にしたドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の放映が開始され、2019年の完結に至るまで世界各国で人気を博した。
ストーリー
3つの主要なストーリーがあり、巻が進むにつれて相互に交錯するようになる。
◆玉座のゲーム
旧王家ターガリエン家を追放してから十数年。大貴族家の均衡のもとに保たれていた西の大陸「七王国」の平和は、現王の死と共に崩れ去り、権力の象徴『鉄の玉座』を巡る戦争と陰謀が始まる。北部の名門・スターク家や西部の名門・ラニスター家の人々を中心に陰謀に巻き込まれる人、企む人など様々な視点から物語が描かれる。
◆異形の復活
「七王国」の極北、氷の〈壁〉の向こうにはもはや怪異は無いはずだった。「死者がよみがえった」と逃亡者が口走ったその日までは。スターク家の庶出子、ジョン・スノウの視点を中心とし、再来した〈異形〉の脅威から七王国を守ろうとする、〈壁〉での戦いの物語。
◆ドラゴンの母
七王国の東にある大陸「エッソス」に亡命した旧王家ターガリエン家の王女、デナーリスは騎馬民族の王との望まぬ結婚の儀で、もはやこの世界にいなくなったはずのドラゴンの卵を献上される。広大な東の大陸を舞台に、〈鉄の玉座〉奪還を目指す戦いと道行きの物語が始まった。
世界観
地理と歴史
この世界には西の大陸「ウェスタロス」(七王国)と、東の大陸「エッソス」が存在する。
物語の始まる数百年前、エッソスでは繁栄を極めた古代ヴァリリア帝国が崩壊した。その生き残りのターガリエン家がドラゴンを使ってウェスタロスに襲来し、七王国を征服して統一王朝を開き、〈鉄の玉座〉に座ることになった。
しかし十数年前に、ターガリエン家の庶流であるバラシオン家が時の国王を倒して〈鉄の玉座〉に座り、ターガリエン王家のほとんどは殺害された。わずかにデナーリスなど一部の者はエッソスに逃れた。
社会
「七王国」は国王を筆頭に、各地方を統率する複数の大貴族が臣従を誓い、さらにその下に無数の小領主が従う中世ヨーロッパの様な社会。エッソスでは都市国家が覇を競う一方で、内陸部を騎馬の民が支配する。
魔法や怪異は過去のもの。猛きドラゴンは死に絶えた。そう思われてきたが…
そして、この世界では一つの季節が数年にわたって続き、しかもその巡りが不規則である。今、異例なほどに長い夏は終わりを迎え、近づく冬への不安が広まりつつある。
主要登場人物と諸勢力
スターク家
七王国北部(ノース)の最上位の貴族家であり、ウィンターフェルを本拠とする。紋章は白雪の野原を走る灰色の狼。標語は“冬来たる”。物語の冒頭で、エダード・スタークは死んだ大狼のかたわらに6匹の仔狼を見つけて、子供たちに与えた。
- エダード・スターク
北部総督、ウィンターフェル公にして〈王の手〉。愛称はネッド。実直な人柄。
- キャトリン(ケイトリン)・スターク
エダードの妻。愛称はキャット。
- ロブ・スターク
エダードの長男。狼の名は「グレイウィンド」。
- サンサ・スターク
エダードの長女。狼の名は「レディ」。お淑やか。
- アリア・スターク
エダードの次女。狼の名は「ナイメリア」。お転婆。
- ブランドン・スターク
エダードの次男。狼の名は「サマー」。愛称はブラン。
- リコン・スターク
末っ子。狼の名は「シャギードッグ」。
- ジョン・スノウ
エダードの私生児。ナイツ・ウォッチに入る。
狼はアルビノで、名前は「ゴースト」。
ラニスター家
七王国南部、「西部」(ウェスターランド)の筆頭の貴族家。キャスタリーロックを本拠とする。標語は“聞け、我が咆哮を”。ウェスタロスで最も裕福な家であり、現王の王妃サーセイを通じて国政にも強い力を持つ。
- サーセイ・ラニスター
現王の王妃にして3人の子供の母。たぐいまれな美貌を持つが、実は…
- ジェイミー・ラニスター
王の盾(近衛騎士)に所属する剣士にしてサーセイの双子の兄弟。七王国有数の剣士として知られるが、叛乱の際に先王を殺害したことで「王殺し(キングスレイヤー)」の別称を持つ。
- ティリオン・ラニスター
サーセイとジェイミーの弟、皮肉屋で好色な一方、読書家にして勉強家にして優れた機知の持ち主。発育不全のために「小鬼(インプ)」のあだ名を持つ。
バラシオン家
七王国南部、「嵐の地」(ストームランド)の筆頭の貴族家にして現王家。ストームズエンド及び王都キングズ・ランディングを本拠とする。標語は“氏神は復讐の女神”。現王ロバートはこの家の出身である。
- ロバート・バラシオン
エダードの旧友にして現王。自堕落な生活により肥満している。
グレイジョイ家
七王国南部、「鉄諸島」(アイロン・アイランズ)の筆頭の貴族家。パイクを本拠とする。標語は“我ら種をまかず”。嫡子シオンはスターク家で育てられている。古くから海賊行為を行ってきており、沿岸の諸公から警戒されている。
タイレル家
七王国南部、「河間平野」(リーチ)の筆頭の貴族家。ハイガーデンを本拠とする。標語は“我ら強大たるべし”。ラニスター家に並ぶ財力と肥沃な領土をもつ。
マーテル家
七王国南部、ドーンの筆頭の貴族家。サンスピアを本拠とする。標語は“折れぬ、枉げぬ、まつろわぬ”。七王国統一戦争で唯一屈せず、その後婚姻によって「鉄の玉座」の勢力圏に入ったことから、旧王家たるターガリエン家とは婚姻関係が多くなった。
ターガリエン家
七王国のかつての王家。古代文明の血を引く。標語は“炎と血”。最後の王「狂王エイリス」への叛乱によりウェスタロスを追われる。
- デナーリス・ターガリエン
ターガリエン家の生き残り。ウェスタロス帰還と玉座の奪還を目論む。
書籍
2019年までに5部まで発表されており、現在も続刊中。全7部の予定らしい。
- 七王国の玉座
- 王狼たちの戦旗
- 剣嵐の大地
- 乱鴉の饗宴
- 竜との舞踏
- 冬の狂嵐(予定)
- A Dream of Spring(未刊)
その他、前日譚・幕間などの中編が数本発表されている。
日本語版は、第4部から翻訳者が代わり、登場人物名・用語が大幅に変更された。 例えば
「ケイトリン」→「キャトリン」
「ブリエンヌ」→「ブライエニー」
「ジェイム」→「ジェイミー」
「夜警団」→「冥夜の守人」
他多数。熟語系の用語は例えば〈鉄の玉座〉のように〈 〉で挟まれる形の表記になっている。2012年に発行された改訂新版で、全面的に統一された。ドラマ版「ゲーム・オブ・スローンズ」日本語版での訳語は改訂版に準拠している。