顛末
ジョニィの兄であるニコラスは騎手として素晴らしい才能を持っており、父ジョージからも溺愛されていた。ニコラスは人柄もよく、ジョニィの唯一の理解者であった。だが、ニコラスは不運にも落馬事故で亡くなってしまう。
ニコラスが亡くなった後、ジョージはジョニィには愛情を注がないどころか冷たくあたった。ニコラスの幻影を追い求めた。
ある時、ジョニィは自分のブーツが壊れてしまったため、ニコラスのブーツを一足借りようとした。それをジョージは許さなかった。ニコラスの「形見」であるそのブーツを使う資格などジョニィにはない…と。ジョージはブーツを棚に戻せとジョニィに迫るが、大会が控え、代わりを探す時間がないジョニィも引かない。
言い争いの末、ガラスで負傷したジョージは涙を浮かべ「 神よ…… あなたは…連れて行く子供を間違えた………… 」と零した。
概要
ジョージが実子のジョニィへ言い放った衝撃的な台詞。
ジョニィはニコラスの死に関わった白ネズミについて負い目と後悔を感じていた。そのため、この言葉は一層ジョニィの心に深く傷となって残り、ジョニィは歪んでしまう。
「連れて行く子供を間違えた」とは、言い換えれば「お前が死ねばよかった」ということ。また、キリスト教の考えでは「神は何の間違いも犯されない」ので、それを承知の上で「間違えた」とはあまりにも筆舌に尽くしがたい暴言である。
このことはジョージ自身失言であったことを自覚していたようで、これ以後遊び回るようになったジョニィに対しての干渉をほとんどしていない(見放したともいえるが)。
しかし半身不随になったジョニィが前代未聞の大レースにゴールする直前、衆人環視の中このことを懺悔、自身が間違っていた、今はジョニィを誇りに思うと語りジョニィもその事に気が付いて笑顔でゴール地点にスパートを掛けた。
手のひら返しと非難されがちだが、当時の事情とキリスト教圏における懺悔と謝罪の意味、それを公衆の面前で行う事の重さを考慮すれば、身勝手な自裁をせず全てを「被害者であるジョニィ」に委ねるのはこの上なく誠意を示していると言える。