「若様組、巡査教習所に合格。訓練が始まる!世が世なら若殿様のはずの旧幕臣の子息達。暮らしのために警官を目指して入った教習所で事件勃発。前作『アイスクリン強し』の、その少し前を描く書下ろし長編」(Amazon/内容説明より)畠中 恵/作(講談社/2010年11月4日第1版)
作品解説
「明治二十三年、ミナこと皆川真次郎は西洋菓子屋を開いた。店には、旧幕臣の「若様組」の面々や、女学校に通うお嬢様・沙羅が甘い菓子と安らぎを求めてやってきた。その少し前―。徳川の世であれば、「若殿様」と呼ばれていたはずの旧幕臣の子息・長瀬達は、暮らしのために巡査になることを決意。今は芝愛宕の巡査教習所で訓練を受けていた。ピストル強盗の噂が絶えない物騒な昨今、教習所でも銃に絡む事件が起きた。若様組の他、薩摩出身者、直参で徳川について静岡に行った士族達、商家の子息達、さまざまな生徒に、何やら胡散臭い所長や教員を巻き込んで、犯人捜しが始まる。」(「BOOK」データベースより)
時代設定
「もっとも、既に明治も二十年であるから、…」(p9)の記載から明治20年。
また歴史的事実として、実際に明治20年(1887年)4月4日に巡査教習所が芝区愛宕町三の六に再設置されている。開所はそれより約2ヶ月後の6月1日。
(初設置は明治12年(1879年)7月14日。開所は約半年余り後の翌年の明治13年(1880年)1月16日。)(参考資料:『警視庁警察学校100年の歩み』P224・225(警視庁警察学校創立100年記念史料編さん委員会/発行)
※尚、「小説 野性時代」(2012年6 vol103/角川書店)にて「アイスクリン強し」より2年前と記述されていたが、その根拠となるべき本文箇所の指定が無く論拠不明。
登場人物
[若様組]
父親達が明治維新後直ぐに、新政府に仕官した為、江戸の昔から住む旗本屋敷がかろうじて残された、似た境遇で育つ幼なじみの八人組。
家督を継ぐ嫡男のみを「若様」と呼び、次男以下は名前に「様」を付けて呼ぶ習わしであった当時の風習から考えて、呼称が途中で変更になったであろう人物も含まれるが、皆元家臣達からは「若」あるいは「若様」と呼ばれている。
本人達は、そのような境遇に僅かな皮肉も含め、自分達を「若様組」と内々で称するに至った。(「アイスクリン強し」(P6))
広い家屋敷の庭を耕し畑としているが、そこから得た収入では賄いきれない程の家族と、困窮の末頼ってくる元家臣達を養うため巡査を志す。
若様組の頭。20歳。元二千石の若殿様。後述の皆川真次郎、小泉沙羅とは幼なじみ。
福田春之助
23歳。元千石の若殿様。
20歳。元三千石の若殿様。
大熊金太
22歳。元三百五十石の若殿様。
高木順之助
23歳。元八百石の若殿様。
平田文太郎
20歳。元二百五十石の若殿様。
小山孝
21歳。元三百石の若殿様。
小沼武一
22歳。元三百石の若殿様。
[薩摩組]
佐久間一義
24歳。元旗本。維新と共に、徳川宗家について、静岡へ行った者の子息。
宮木信成
22歳。士族。静岡より上京。
牧忠之
21歳。元旗本。維新と共に、徳川宗家について、静岡へ行った者の子息。
[士族組]
西岡義久
会津出身。21歳。
[平民組]
姫田新七
21歳。明治に成り上がった商人の息子。妾腹の次男。
土谷元吉
22歳。商人の息子。三男。
岩井清松
25歳。商人の息子。
辻三平
20歳。商人の息子。
[若様組知人]
20歳。前述の長瀬健吾、後述の小泉沙羅の幼なじみ。西洋菓子職人志望。
小泉琢磨
小泉商会当主。成金。
小泉沙羅
14歳。小泉琢磨の娘。
北尾百合
17歳。前述、福田春之助の恋人。
[巡査教習所 運営]
田中石之助
所長
有馬将勝
幹事
※余談であるが実際に巡査教習所の初代所長として、二等警視補「有馬純堯」という人物が実在する。
[教師 教師補]
浜木功
黒田信二
林欽一
[武道師範]
中村友男
羽生実
川畑元雄
下津六郎
伊吹忠一
(「若様組まいる」P2・3登場人物一覧参照)
出版社およびブックデータ
作:畠中恵/出版:講談社※講談社創業100周年記念出版/発行年月日:2010年11月4日第1版/挿画:丹地 陽子/装丁:大久保伸子