概要
日本の民話上に登場する刀で、愛知県にあるとされる妖刀。
昔、大秋山という集落に平家の子孫と言われる重立が住んでおりました。その家には蜥蜴丸と呼ばれる名刀があったそうです。この集落では「村の下を流れる中津川に恐ろしい怪物がひそんでいる」という噂があり、村人は怪物の恐怖に慄きながら暮らしていました。
ある時重立は怪物のねぐらを見つけ、退治しようと蜥蜴丸を携えて渓谷の中を進んでいきます。しかし怪物の方が先に重立に気付き、身構える暇もなく襲われてしまいます。
もうこれまでと覚悟を決めた重立ですが、腰に差していた蜥蜴丸が自然と抜けて、怪物を真っ二つに切り裂き、また自ら鞘に戻りました。退治された怪物は渓流の中に消え、村人は安心して暮らせるようになりました。その後怪物が姿を表すことはありませんでしたが、後にこの地は大飢饉に襲われ、集落は滅びてしまいました。
よく伝わっているのは上記の話だが、いくつかの伝承があり、「その刀身を見た物は不幸になる」「蜥蜴が近づいただけで切れた」というものもある。
いずれにせよ、伝承上の存在であるため、本体は現存していないとされている。
山形県の立石寺に所蔵されている県指定文化財の実在の太刀・「無銘伝舞草」(舞草刀と刀派が同じとされる刀)が古来「蜥蜴丸」と称されていたという記述があるという話もあるが、関連性は不明瞭である。(山形の文化財検索「山形の宝検索navi」)