概要
東亜プランのシューティングゲーム『ゼロウィング』の欧州版メガドライブ版のオープニングデモで表示された英文。所謂ネットミームの一つでもある。
宇宙連邦軍が秘密裏に宇宙海賊CATSと結託し完成させた防衛基地に向かう1隻の空母。だが、何者かによって仕掛けられた爆薬により突如爆炎に包まれ、艦内は阿鼻驚嘆の様を呈していた。そんな中、メインスクリーンに浮かび上がるCATSの首魁ジョン・クリメンの立体映像。焦燥に駆られる乗組員らを嘲笑うかのように彼はこう告げる───
ALL YOUR BASE ARE BELONG TO US.
しかしながらこの文は文法的には支離滅裂であり、ネイティブスピーカーからすれば極めて滑稽な内容である上、コレを発言したのがよりによって敵側の首領(しかもイケメン)というギャップが英語圏にて大ウケし、2000年代に爆発的に流行した。現在でもしばしばネタとして使われる。
それどころか2023年7月20日に発売されたこの移植版も収録されている『ヘルファイアー』とのカップリング移植版『ゼロファイアー』ではPVで『ヘルファイアーS』の東郷かおると時津ユウがオリジナルキャストでこのネタに触れていたり、店舗特典にも使われていたりと公式が病気状態になっている。
日本語で表現するなら
日本人の感性で言えば、アタリ語やIGS語、『反省しる!』などで覚える違和感に近い。あえて表現するならば「あなたの全て基地は我々が貰うです」という感じか。ネイティブの日本語話者であれば、その言葉の意味するところは理解可能であるものの、少なくともこの緊迫したシチュエーションにおいて美形悪役の口から出る台詞ではない。
文法的に正しい英訳文
日本版『ゼロウィング』の原文
君達の基地は、全てCATSがいただいた。
英訳
CATS has taken all of your bases.
正しく訳せば大体こうなる。基地を主語にしないのがポイント。完了形を使い、自分達を示すCATSを主語、基地を目的語に配置すると自然な英語になる。
また、本来の文章を「belong to ○○」(○○に属する)の構文でそのまま使うのであれば、
「All of your bases belong to us.(『~の』の前置詞『of』が抜けている、『base』を複数形の『bases』に、-『are』、be動詞は不要)」となる。
どうしてこんな訳になってしまったのか
そもそも「いただく」とは本来、「目上の人から与えられたものを(ありがたく)受け取る」という意味である。それが、時代劇で義賊が悪徳商人の金蔵から金を盗み出すような場面で「金蔵の金はいただいた」と表現したことから派生意が生じた。つまり、「あたかも悪徳商人から与えられたお金を受け取るかの如く、いとも簡単に金を奪った」という皮肉が込められている表現なのである。
この表現が後に漫画やアニメにも流用されて悪役の決まり文句となった。このような経緯から、「いただく」が「奪う」という意味を持つようになったわけだが、訳者はそのあたりを理解せず、適当に訳を付けてしまった上に文法自体も間違っていたことが、この珍訳の原因となったのだろう。
問題とされるべきは、訳者の英語力もさることながら、日本語の「いただく」という語に対し「正確な理解」をしていなかった「国語力(日本語力)の欠如」にもあるといえる。
なお「君達の基地は、全てCATSがいただいた」を普通に訳せば確かに「CATS has taken all of your bases」でも問題ないが、それでは「CATSが君達の基地をすべて奪った」と、ただ単に事実を客観的に述べているだけのようにも聞こえてしまい、敢えて「いただいた」という単語を使ったことによる感情的なニュアンスが全く表現されていない。上記の事情(本来は皮肉を込めた、時代劇における決まり文句だった)を考慮するならば、もっと皮肉を利かせた意訳をするという手もあるかもしれない。
英語圏で定着に至った背景
通常、英語に限らず特定の言語の非ネイティブ話者による誤訳や誤植や誤記は「良くある事」としてすぐに話題や記憶から消えてしまう傾向にあるが、それが非常にシリアスなシーンや注目を集める場面で突如として現れるとネイティブ話者に強烈なインパクトを与えてしまい、しばらく話題となった後、ネタとして定着する傾向がある。先述の「反省しる!」もその一例とされる。
但し、このケースではそれ以外の英訳もかなりいい加減で、「英語圏のプレーヤーが必死に笑いを堪えていたところに『AYBABTU』が現れて腹筋崩壊に至ったのでは」という指摘もある。
以前本記事に掲載されていたブログ(現在は閉鎖)にゲーム内の英語の台詞を再翻訳した文章が存在したので、英語版ウィキクォートの「メインスクリーン…」から「AYBABTU」までを以下に記す。また、より正しい英訳については同リンクの「More accurate English translation」を参照されたし。
再翻訳文
元の台詞 | 英訳文 | 再翻訳 |
---|---|---|
(通信士) メインスクリーンにビジョンが来ます。 | Main screen turn on. | メインスクリーン、スイッチオン。 |
(艦長) お-お前は!! | It's you !! | お前だ!! |
(CATS) おいそがしそうだね、諸君。 | How are you gentlemen!! | ごきげんよう諸君。 |
(CATS) 連邦政府軍のご協力により、君達の基地は、全てCATSがいただいた。 | All your base are belong to us. | 君たちの基地の所属はわれわれだ。 |
証拠映像
(この動画の0:44)
外部リンク
関連タグ
AYB(略称)