概要
1990年公開のアメリカ映画。
ジャンルはスーパーヒーローものであり、監督はサム・ライミである。
主演はリーアム・ニーソン。
内容
天才科学者ペイトン・ウェストレイクは、画期的な人工皮膚を研究・開発していた。これは被験者の過去の写真から画像をスキャンし、化学物質から人工皮膚を形成。それを患部に張り付ける事で、失われた皮膚を再生させるという優れたものだった。
しかし、太陽光の下では99分しか持たず、それ以上は崩壊してしまう問題も有していた。
しかしある時、ペイトンは恋人の弁護士、ジュリーが掴んだストラック社の汚職問題の書類を狙うギャング、デュラント一味に襲われ、顔と両手の皮膚を失う拷問を受けた後に、研究所ごと爆破させられる。
爆発で川まで吹き飛ばされたペイトンは、奇跡的に身元不明人として助けられる。が、全身の火傷があまりにひどいため、治療の一環として視床下部の神経を切断させられていた。
ペイトンは病院を脱走。研究所から仕える機材をかき集めて廃工場に運び、そこで改めて人工皮膚の研究を続ける。
が、やはり99分の壁は越えられず、それとともにデュラント一味への怒りが噴出し、復讐を決意する。
人工皮膚を用い、自身の顔のみならず、デュラント一味の顔の皮膚も作って成りすました彼は、一人ずつ彼らを殺害していく。
そしてジュリーは、一連の事件の黒幕が、自分が追っていたストラック社の社長である事に気付くが、彼女は人質に取られてしまった。
ペイトンは誰でもあり、誰でもない男、ダークマンとなり、ストラック社とデュラント一味に戦いを挑む。
登場人物
- ペイトン・ウェストレイク
(演:リーアム・ニーソン)
主人公。
画期的な人工皮膚を研究開発していた科学者だが、良くも悪くも他者や世間の事に疎く、恋人のジュリーの仕事もあまり興味を示していなかった。そのため、ジュリーの持っていた証拠書類が原因で、デュラント一味に狙われ、拷問を受けて研究所ごと爆破された。
しかし全身の4割に火傷を負うも、身元不明人として病院に運び込まれ、一命をとりとめる。
その治療の際に、視床下部の神経を切断されたことで痛覚を失い、同時に感情の抑制が困難になってしまった。
この処置の為に怒りを抑えられず、アドレナリンを分泌させる事で超人的な身体能力を有するように。以後、怒りの感情のコントロールが効かず、怪物のように荒れて暴れるようになる。
人工皮膚の99分のタイムリミットは解決できなかったが、これを用い生前の姿を取り戻したのみならず、デュラント一味に成りすます事も可能に。当初はただ成りすましただけで、その挙動は怪しまれるものだったが、次第に演技する事を覚えて違和感なく装えるようになった。
顔(一部は残っているが)と両手の皮膚が完全に焼失してしまい、人工皮膚が付いていない時には、汚れた包帯を巻き、同じく汚れたトレンチコートを纏っている。
- ジュリー・ヘイスティングス
ペイトンの恋人である女性弁護士。
まだ駆け出しだが、大手企業ストラック社の代理人弁護士を務めるほどの腕利き。
当初、ペイトンからのプロポーズを受けていたが、保留にしていた。が、その矢先にストラック社の汚職の証拠書類を入手してしまい、それが元でペイトンが襲われ、研究所が爆破されてしまった。
しかし、人工皮膚を付けたペイトンと再会する。が、次第に彼が人工皮膚を用いていた事を知り、更には黒幕がストラック社だと知り、人質にされてしまう。
ノベライズによると、以前のペイトンの研究室にて。様々な研究の道具や施設に勝手に名前を付けていたらしい(カメラを「カメラ・スラメラ」、皮膚培養タンクを「ピンクタンク・シンクタンク」など)。
- ルイス・ストラック・JR
大手建設企業ストラック・インダストリー社の若き社長。ハンサムで人当たりも良いが、実は金儲けのためなら何でも行う残虐で非道な性格の男。
ジュリーとはビジネスパートナーとして良好な関係を築いていたが、いずれは自分のものにしようと企んでいた。
一連の事件の黒幕で、デュラントと裏で結託し、彼らに汚れ仕事を行わせる事で自分の想い通りに事を運んでいた。
不正の証拠となる書類をジュリーに見つかり持ち去られ、その書類を持っているペイトンの元へデュラントを差し向け、取り返している。
老いた父親や不仲になった前妻など、自分の邪魔になった人間はデュラントに命じて殺害させていた。また、父親に若い頃には、安全帯無しで高層ビルの建設現場で働かせられていたため、現在でも鉄骨の間を自在に歩き回ることができる。
これを利用し、最後にペイトンと対決する際には、自身の建築中の高層ビルに呼び出していた。
ノベライズでは、ある儲けによって『大きな木箱いっぱいに金貨を手に入れ、それをベッドの上に敷き詰めて飛び乗る』という事を行っていた。
- ロバート・デュラント
残虐なギャング一味のボス。気に入った被害者を拷問したうえで、苦しめた後に殺害し、その指を葉巻用カッターで切断し、コレクションするという趣味を持つ。
劇中冒頭でも、対立しているギャングの手下を皆殺しし、そのボスの指を生きたまますべて切断する拷問をしている。
ルイスとは以前より結託しており、彼の穢れ仕事を全て行ってきた。また、彼の父親や不仲になった妻も殺している。
ペイトンの事も、拷問した上で、爆発に巻き込まれて死ぬように仕掛けていた。彼の指は取らなかったが、ペイトンの助手である日本人、ヤスキチ・ヤナギモトの指は取ってある。
ペイトンが生きていたと知ったルイスに命じられ、ヘリコプターにグレネードランチャーを積んで、仲間たちとともにペイトンを追い詰める。
ノベライズでは、このヘリコプターのパイロットとは知り合いで、彼からの依頼で彼の前妻も殺していた(金を用立てる必要があったパイロットの依頼で、妻に保険金をかけさせて、自身がレイプした上で殺害している。礼金を受け取る際には「レイプした時に具合が良かったから」と、支払いの金をまけていた)。
ヘリコプターの爆発(タンクローリーにワイヤーでつながれ、そのままトンネルに突っ込んだ)に巻き込まれ死亡。
……と思われていたが、続編では「大けがを負ったが、実は生きていた」として復活。
- ルディ・グズマン
デュラントの部下で、メキシコ出身の元ボクサー。
- スキップ
デュラントの部下。片足を失っており、そこにマシンガンを内蔵した義足を装着している。そのため、義足を外したら片足でぴょんぴょんと飛び跳ねる事が多い(スキップの名はここから来ている)。
ルディと組むことが多いが、劇中では廃工場でペイトンを襲撃する際には、ジュリーをルイスの元に送り届けたために参加していない。最後のビルの建築現場で迎え撃つ際、ルイスを援護しているが、ビルから落とされ死亡した。
ノベライズでは、自宅にいたところをペイトンに襲われ、建築現場の場所を教えた後に、そのままペイトンの怒りを買って惨殺された。
また、足を失ったのは幼少期に農場で働かされている際、大型の芝刈り機に挟まった木片を蹴った事で巻き込まれたからだが、デートの際にはベトナム戦争に従軍して(実際は従軍していない)失ったと嘘をついていたらしい。
- リック
デュラントの部下。眼鏡をかけた神経質な男で、デュラントのお気に入り。
ダークマンと化したペイトンに最初に目を付けられ、デュラントおよび一味に関する情報を吐かされた後、「マンホールから車の行き来する道路に首を出す」という方法で処刑された。
ノベライズでは、一種の精神病らしく、何かをうまくやろうと考えただけで混乱してしまい、仕事に就けても止めてしまっていた。それゆえに、犯罪も自分には向いていないと考えていたが、デュラントに拾われた後は「殺せ」「火を点けろ」など、単純な行動を命じられるだけだったため、その命令を遂行する事は向いていると感じている。
また、日頃から物陰に怪物やFBIの捜査官が潜んでいるという妄想を抱いており、隠れていたペイトンの姿を見て、情報を漏らした後には完全に精神が崩壊。
映画劇中と異なり、ノベライズの最後にはパジャマ姿のままで商業施設に向かい、高所から飛び降り自殺している。
- スマイリー
デュラントの部下。常にへらへら笑っており、銃で誰かを撃つ事を好む。スマイリーの名前はそのへらへら笑いから。
ルディとともに廃工場にペイトンを追い詰めるも、人工皮膚でペイトンに変装させられたルディを射殺。さらにペイトンに殴り飛ばされ、研究所を爆破されたように、廃工場ごと爆破され吹き飛ばされた。
ノベライズでは、幼少期は貧乏で子だくさんな家庭に生まれていた。幼児期から異常な性格を有しており、一番下に生まれた赤ん坊の兄弟を殺害し、片脚だけを出した状態で庭の土に埋めている。
へらへら笑いだけでなく、仲間たちに対してもうっとおしい態度を取っており、あまり好かれてはいない。また、隙あらばデュラントに代わり自分がルイスの片腕にならんともしていたらしい。
廃工場襲撃の際には、デュラントから叱責され、いつものへらへら笑いが消えてしまい、地の文ではそれ以後「グラウチー(気難し屋)」と呼ばれるように。
また、ルディを誤って殺した後は、映画劇中とは異なりデュラントに変装したペイトンから「(仲間を殺した責任を取って)自分の頭を銃で撃て。でないと俺好みのやり方でじわじわ殺してやる」と言われ、自殺している。
- パウリー
デュラントの部下。スキンヘッドの巨漢で、大食漢。胃腸を悪くしており、液体の胃腸薬をしょっちゅう口にしている。
デュラントの集金係を務めており、金を集め、それを洗浄するためにデュラントの元へと運んでいる。
しかしペイトンにより皮膚で変装され、「金を横領した後に、高跳びする」と思われ、デュラント本人の手により粛清(自宅アパートの窓から飛び降り自殺させられた)。
ノベライズでは、パウリーに変装したペイトンは、彼の財布を忘れてレストランに赴き、そこでルディたちから金を受け取っていた。その際「ここの支払いをたのむ」とルディに言われて、受け取った金から支払いをしていた。
その様子から、「お前はいつものお前じゃない」と疑われたが、胃腸薬を飲む事で「それでいつものお前に戻ったな」と疑いを晴らしている。
- ヤスキチ・ヤナギモト
日本人の大学院生で、留学しペイトンの下で助手として働いていた。出身は大阪らしい。
発音しにくいため、ペイトンからは「ヤッキー」と呼ばれている。
助手としてはそれなりに優秀で、ペイトンに対し敬意も抱いているが、ノベライズでは心の中でペイトンの(天才ゆえの)奇行を罵倒する様子もみられた。
劇中冒頭に手、人工皮膚のサンプルを取った際、彼の鼻の写真が取られ、そこからサンプルが作られている。
デュラント一味が襲撃した際、叩きのめされた後に頭からビニール袋をかぶせられ、呼吸困難な状態にされたうえで頭部を撃たれ即死。その指を切断され、デュラントのコレクションにされてしまった。
人工皮膚
ペイトンが研究していた人工皮膚。
人工の生体組織を培養し、写真など画像データから人体の皮膚形状を形成。3Dプリンターのように、人工的な皮膚を生成し、それを火傷などで失った患部に張り付ける事で、元の状態に戻す事が出来る。
火傷患者にとっては画期的な研究であり、昔の被験者の写真があれば、それを元にして元に戻れるようになる。
が、生成される人工細胞組織は、日光の下では99分が限度で、それ以降は崩壊してしまう。暗所など、光が差さない場所ならば多少は崩壊を先延ばしは出来る様子だが、この点は劇中ではどうしても解決できなかった。
映画の冒頭では、助手の鼻部分のみを形成していたが、時間をかければ顔全体、腕全体も生成が可能。
また、劇中では髪の毛や爪なども皮膚と一緒に生成していたが、ノベライズではそれらは生成されず、カツラや付け爪が必要だった。
マスク状にして、ペイトンは自身の以前の顔になっていたが、デュラントたちの顔も写真に撮り、それらを元にしてマスクを生成。彼らに成りすましていた。
ただし、声や仕草などはペイトン自身の練習が必要。
余談
ノベライズでは、ペイトンは研究所跡の機材だけでは不十分のため、大学で用いていた調達専門の会社から、様々な機材を調達している。
その際には、コンピューターや発電機などのほか、葉巻や背広といった日用品なども含まれていたため、当初は調達会社の人間は「からかっているのか」と捉えていた。
しかし、注文先、および支払いのクレジットカードの名義が(ペイトンが在籍していた)大学のものである事から、「おそらくは、我が社が来期も担当にふさわしいかどうかを試しているんだろう」と深読みし、注文内容を全て揃えて送っている。
続編
サム・ライミ監督作ではなく、主演もリーアム・ニーソンではないが、続編が作られている。
「ダークマン2復讐の標的」では、ペイトンは新たな廃墟を研究所に(地下鉄の廃線も利用)して研究を続けており、同じく人工皮膚の研究をしていた科学者・ブリンクマンとコンタクトを取る。が、生きていたデュラントと、彼の部下たちに狙われブリンクマンは死亡。ブリンクマンの妹・ローリーを守るべくペイトンは、武器ビジネスで儲けようとするデュラント一味に立ち向かう。
TVムービーの「ダークマン3」で、ペイトンは皮膚の99分の限界を解決。しかし、共同研究者の愛人である女医と、麻薬王によりデータとサンプルを奪われ、更には自身の身体からドラッグも作り出されてしまう。全てを奪われたダークマンは、彼らに復讐を決意する……という内容。
また、近年ではライミによると、「ユニバーサルがダークマンの続編を進めている」との事。