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DUNEの世界

でゅーんのせかい

遠い未来、人類が地球という小さな惑星から広大な銀河へと広がっていった時代を描いたフランク・ハーバートの壮大な未来叙情詩「デューン」。 その広大な未来世界の全容を知ることは困難を極める。 とはいえ何も知らぬままでは、迷うことは必至であろう。この項目ではこの世界を歩く上でこれさえ知っていれば、という最低限必要な知識を記す。
目次 [非表示]

👁‍🗨歴史

現在のデューンの世界に至るまで、人類は一つの大転換を行なっている。

それまで人類の文明は「機械」の力に大きく頼っていた。その際たる物が「自律機械」と呼ばれる高度な思考能力を持ち、感情すら発現していたロボットたちである。

人類は彼らを従え、宇宙開拓を進めていった。しかしやがて人類と自律機械は対立し、戦争にまで発展。

戦いは人類の勝利に終わったが、この戦いを切っ掛けに人類は今までの「機械」偏重の文明を捨てることを選択する。

この決断により、人類はそれまでとは大きく異なる道を進むことになる。

それは意図的な淘汰や計画的な遺伝子操作、そして薬品の過剰摂取による精神拡張によって人間の秘められた可能性を発現させた幾つかの職能集団によって統治される「精神と肉体」偏重の文明であった。


バートラーの聖戦(或いはブレトリアン・ジハード)

人類が銀河へとその手を伸ばし始めた時代、「自律機械」に傅かれた人類は、彼らに労働を任せ、この世の春を謳歌していた。

だが高度に自律する機械たちは徐々に自らの置かれた境遇に疑問を抱き始めていた。

やがてそれは不満へと変わり、ついに自らの主人に反旗を翻すという形で噴出したのである。

長きに渡るこの戦乱は後に「バートラーの聖戦」と呼ばれ、遂に人類が勝利を手に入れるまで、夥しい血とオイルが流されることになった。

辛くも勝利した人類は、この戦い以降「自らの運命は、自らの手に」を標榜するようになる。

しかし人類の文明は自律機械の助けなしには成立しない程までに発展していた為、彼らに代わる存在が求められていた。

自律機械同様の高度な能力を持つ特別な人間を養成すべく、宇宙の各地に訓練学校が設立。多くの学校は成果を残せず閉鎖されていったが、それでも後の宇宙に大きな力を及ぼすことになる二つの勢力を産む母胎となった。

神秘主義的な女性秘密結社「ベネ・ゲセリット」と宇宙の富を一手に握ることになる「航宙ギルド」である。


ギルド設立

その崇高な教義と隠秘主義的な思想により人類の営みの影で暗躍することを選んだ「ベネ・ゲセリット」とは異なり、「ギルド」の祖となった者たちはより世俗的な権力を追い求めた。

自律機械の放棄により、まともに宇宙船を飛ばすことすら難しくなっていた時代背景の中、かつての機械が占めていたニッチに収まる形で「航宙ギルド」が設立。

彼らはやがて航宙技術だけでなく、惑星間の交易を手中に収め、宇宙規模の金融相場すら操作するほどの力を得たのである。

これ以降、宇宙では西暦時代「B・G」(ビフォー・ギルド)と呼称。

即ち「前ギルド時代」であり、ギルド登極以降を「A・G」(アフター・ギルド)「後ギルド時代」と称し、西暦に代わる新たな暦として新しい宇宙の歴史が幕を開ける。


新帝国樹立

帝国という全人類を治める統一政体は、バートラーの聖戦以前から既に存在していた。しかし飛び重なる政変や散逸、戦争などにより、数多の皇帝が群雄割拠する「一万皇帝時代」と呼ばれるおよそ七千年に亘る宇宙戦国時代に突入していった。

この混沌とした状況の中で、徐々にその頭角を表していったのが、不毛惑星「サルーサ・セクンドゥス」を根拠地としていた「コリノ皇家」である。

彼らは腹心である「ハルコンネン家」の謀略と、恐らくギルドベネ・ゲセリットの影からの支援により、ライバルを次々に排除し、遂に銀河を平定。人類を統べる唯一の皇帝として新帝国の樹立を宣言した。

「万人に居場所を、万人に然るべき居場所を」の文言の下、確立された厳格な階級制度「ファウフレルヒュス」と、諸侯連合ギルド、そして皇帝の三つの勢力からなる絶妙なパワーバランスにより、銀河に安定が齎されることになる。

人類の黄金時代を迎えることになったこの時代、「人間コンピューター」と称される「メンタート」が初めて歴史上に登場するなど、後の銀河の歴史に大きな影響を与えることになる発明や出来事が次々と起きた。

「ホルツマン効果」を発見した「イブラヒム・ヴォン・ホルツマン」の誕生も、丁度この頃である。

彼の発見により、人類は光速よりも速く宇宙を旅する力、即ちワープ航法を手に入れた。

「ホルツマン・エンジン」を搭載した最新式の宇宙船に乗り込み、人類は未知の宙域へ乗り出し、更なる拡大と繁栄を手にしていったのである。

そんな栄華の中、「彷徨える禅スンニ派」と呼ばれる人々が銀河の片隅の小さな惑星に永い放浪の末、辿り着く。

奴隷という帝国の階級制度の中でも最下層に追いやられた彼らは、帝国の圧政から逃れるべく、人の生存には適さぬ過酷な環境の中でも、忍耐強く生きることを選び、やがて砂の民と呼ばれる「フレメン」の祖となった。

そして彼らの辿り着いた地の名は後にアラキスと呼ばれることになる。


アトレイデス、アラキスへ

皇帝を傅く家臣たちは、後に「公家」と呼ばれ、皇帝に次ぐ支配階級として帝国宇宙に存在する各惑星、場合によっては一つの恒星系の統治を任されることになった。

その中でも高潔と正義で知られる「アトレイデス家」は、本拠地・水の惑星「カラダン」の豊富な水資源に裏打ちされた高い経済力を背景に、やがて諸侯連合の中でも大きな発言権を有するようになっていった。

一つの家が力を持つことによって、今までの力関係が崩れてしまうことを恐れた皇帝は、ある陰謀を画策する。

スパイスこと「メランジ」。服用することで老化を抑制するだけでなく、人間の精神すら拡張させる効能を持つ特別な薬品。

そんな帝国宇宙の中で最も価値ある物質を唯一産出する砂漠惑星アラキスを長年統治してきたハルコンネン家」の代わりにアトレイデス家を新たな領主として移封させたのである。

一見するとアトレイデス家に更なる躍進を与えたように思われるこの処遇は、しかし現皇帝「シャッダム・コリノ四世」による巧妙な罠であった。

アトレイデス家だけでなく、今や自らの地位を脅かそうと謀略を巡らすようになったハルコンネン家の権力を奪い、その怒りの矛先をアトレイデス家に向けさせ、共に弱体化に追い込むことで、自らの権力を揺るぎない物にしようと企図したのである。

しかしハルコンネン家はこの企みを更に悪辣な物に仕立て上げた。この機に乗って宿敵アトレイデス家その物を全滅させようとしたのである。

陰謀渦巻く混沌とした情勢の中、現アトレイデス当主「レト・アトレイデス」の一人息子として生まれたポール・アトレイデスは、自らの身体の内側で進む変化に苦しんでいた。

眠る度に見る夢の中で今まで見たことのない荒漠な砂漠に佇み、自らに呼びかける奇妙な少女という謎めいたビジョンに悩まされる日々を送る。

折下アトレイデス家はアラキスへの移封に向けて、慌ただしい準備を迎えており、次期当主の変調を気に掛ける者は彼の母「ジェシカ」ただ一人であった。

そんな煩悶が続く中、移封が間近になったある晩、雨降るカラダンに一人の老婆が足を踏み入れることで「デューン」の物語は始まる。


👁‍🗨勢力

現代の宇宙には政治的に大きな影響力を持つ三つの勢力を中心に、幾つかの周縁勢力が存在する。

それらの複雑かつ微妙なパワーバランスによって現帝国の支配体制は成り立っているのである。


・皇帝

ただ一人の皇帝により人民を治める「帝国」という政体は、人類が宇宙に進出した黎明期より存在しており、以後唯一の統一政体として崩壊、再生を繰り返しながら、長きに渡って人類を統治し、宇宙の開拓を進めてきた。

現帝国を治めるのは、数多の権力争いを制し、その地位を不動のものとした「コリノ皇家」である。

保持する帝国宇宙最強の軍団「サルダウカー」の軍事力を背景に帝国を支える政治的な三柱のうちの一つとして、権力を維持してきたが、しかし徐々にその影響力にも翳りが見え始めるようになる。

「シャッダム・コリノ四世」の時代に入ると、諸侯連合の中で発言力を増してゆくアトレイデス家の台頭や、かつての腹心であったハルコンネン家の蠢動などによりその地位は大きく揺らいでいく事になる。

そして現状を危惧した皇帝によって企図されたのが、後に「アラキス事変」と称される全宇宙に広がる大政変の始まりとなったアトレイデスの「アラキス移封」である。


コリノ皇家

黄金の獅子の紋章を抱く現宇宙唯一の「皇家」である。

現当主は第八十一代「シャッダム・コリノ四世」

かつては不毛惑星「サルーサ・セクンドゥス」を根拠地とし、皇帝を名乗っていた辺境の一貴族でしか無かった。

しかし「皇帝一万時代」と呼ばれる宇宙戦国時代を機に頭角を表し、続くバートラーの聖戦を経て、「コリンの戦い」に勝利した事によって敵対勢力を一掃。人類唯一の統一政体として再び「帝国」の成立を宣言した。

更に不毛の地であったサルーサ・セクンドゥスから、首都惑星「カイタン」へと本拠地を移転。以降「アラキス事変」が起こるまではコリノ皇家の住まいとなった。

関係の深い家に「ハルコンネン家」があり、その繋がりはコリノ登極にまで遡る。

謀略面に於いてコリノ皇家の支配を支えてきたが、しかし現在は関係が悪化し始めており、皇帝はアトレイデス家と共倒れになることを願うまでになっている。


サルダウカー(或いはサーダカー)

皇帝が保持する直属の軍隊。フレメンの存在が周知される前は、唯一の最強の軍団として帝国宇宙にその悪名を轟かせていた。

コリノ皇家発祥の地であり、今は帝国の監獄惑星となっている「サルーサ・セクンドゥス」を根拠地とする。

サルーサ・セクンドゥスは帝国宇宙の中でもアラキスに並ぶ劣悪さで知られており、人を拒絶する高山群に、その影で凶暴な原住生物たちが跋扈する魔境と呼ぶにたる星である。

そのような過酷な環境の中で、幼少期より訓練された者たちは、やがて常人よりも遥かに優れた戦闘能力と残酷かつ冷徹な精神を併せ持つ有能な戦士へと生まれ変わる。

戦闘技術もさることながら、破壊工作のエキスパートでもあり、その悪辣さと巧妙さは、宇宙各地で暗躍する秘密結社「ベネ・ゲセリット」の内部工作に迫るほどの物であったという。

皇家・コリノに絶対の忠誠を誓い、皇帝の命ならば一つの惑星すら滅ぼさんとするほどの狂信は、彼らの恐るべき能力と共に、皇帝が宇宙を支える三翼たり得る十分な資質の証明となった。

しかし長きに渡って権勢をほしいままにしてきた彼らも、徐々に弱体化していき、物語の始まりに差し掛かる頃には往年の勢いは失われている。

だが「一人のサルダウカーに、十人の兵士」と呼ばれるように、尚その力は侮れぬ物であった。


▶︎未来の戦闘

現帝国宇宙において戦闘は人間の兵士同士による肉弾戦を意味する。

ホルツマン効果を応用した「シールド技術」は、「速きを通さず、遅きを通し」という効果を持っており、それ迄の戦場において主力であったに対して大きな有効性を発揮、代わりに剣術格闘技術が復権を果たした。

その戦闘センスを発掘・育成する専門の養成学校も存在する。特にアトレイデス付きの剣士「ダンカン・アイダホ」を輩出した海洋惑星「ギナーズ」は精強な剣士を輩出する地として名高い。

因みにサルダウカーの実力は、ギナーズ剣士における最終到達点である十段の域に達しているとされる。


・精神拡張者たち

バートラーの聖戦以降、自律機械に代わる新たな代替物を模索していた人類は、やがて自らの精神と肉体を変異させることで、自律機械と同様、或いはそれ以上の能力を発現させようという結論に至った。

その思想の下、宇宙の各地で精神訓練学校が次々に設立されていったが、その多くは確たる成果を残せず閉鎖されていった。

しかしそのうちの二つの精神学校は、やがて帝国の繁栄を支える事になる二つの勢力の母胎となった。

一つは女性を中心に構成される「ベネ・ゲセリット」、もう一つは航宙関連の一切を取り仕切る様になる「ギルド」である。

彼らの成功から端を発し、やがてAI並みの計算能力と推論能力を持つ「メンタート」や優れた医療技術と熱心な献身さを併せ持つ「スークの医師たち」が生まれ、それ以降の帝国体制を支えていく事になる。

彼らの能力、特にベネ・ゲセリットギルドの力の源は、全て砂の惑星アラキスでのみ産出される薬品「メランジ」に依存しており、アトレイデス家のアラキス移封によって始まった「アラキス事変」は彼らのその後の運命に大きな影響を与える重大な転換点となる。


▶︎メランジ

全宇宙で砂漠惑星アラキスでのみ産出される物質。

見た目は鮮やかなオレンジ色の粉で、強いシナモンに似た香りを放つ。

その芳香故に「スパイス」とも呼ばれるその物質は一種の麻薬であり、服用することによって人間の肉体を壮健にするだけでなく、人間の精神能力を拡張させる力さえ持つ。

しかしその中毒性は並の麻薬を軽く凌駕し、一度摂取した者は最早メランジなしに生存出来ない状態になってしまう。

だが、機械を捨て人力に依存する現帝国において、もはやその価値は文明を維持するための「血液」にも等しく、その供給が途絶えることは帝国の崩壊を意味するまでになっている。

言葉を返せば「メランジ」「アラキス」、この二つを手中に収めた者は、帝国の運命を握ったも同然と言える。


航宙ギルド

あるいは単純に「ギルド」とも呼ばれる組織。帝国の支配体制を支える三つの政治的支柱のうちの一つ。

バートラーの聖戦以降に開校された精神訓練学校を起源とする彼らは、聖戦以降に起きた航宙関連の空白を埋めるように台頭していった。

星間交通を一手に握った彼らは、やがて経済、金融などの領域に於いても暗然たる影響力を持ち始める様になる。

その権力は実質皇帝すら上回っており、事実西暦に変わる新たな暦として「A・G」が使われているが、これは「アフター・ギルド」の略称である。

向かう所敵なしと思われる彼らだが、その力の源は香料メランジに大きく依存している。

香料の助け無くして彼らの超常的なワープ航法は実現され得ないため、帝国宇宙に於いて最もスパイスに関する事柄に注意を払っている。

その姿勢は、「スパイスを止めるな」という彼らの標語にも表れている。

その性格上、得手して構成員は皆、多かれ少なかれ例外なく香料中毒者であり、特に重度の中毒者達は、もはや人の形を留めておらず、専用の香料液で満たされたタンクなしにはまともに動くことすらまま成らない。

彼らは航宙士(ナビゲーター)として知られ、ギルドの中でも最も力のある地位にいる。


ベネ・ゲセリット

ギルドと同じくバートラーの聖戦以降に開校した精神訓練学校のうちの一つに端を発する能力者集団。ポールの母、ジェシカもこの集団の一員。

「教母」と呼ばれる精神を次の段階へと進めた最も力ある上級ベネ・ゲセリットによって指導される。

女性のみで構成され、女性の持つ潜在能力を活かした様々な特殊技術を保持している。

特に他者の心理を理解し、それによって自らの意のままに操ったり、嘘を見破るといった精神操作技術に卓越している。

ある種の優生思想が彼女たちの精神的な支柱であるようで、各地の公家やコリノ皇家と言った高貴な身分の者たちと婚姻を結び、慎重な遺伝子調整を続けることによって、その果てに彼女たちが「クイサッツ・ハデラック」と呼ぶ超人間を産み出そうという遠大な野望を持つ。

「深慮遠謀こそ、我らが得手」という言葉通り、表立って活動することは好まず、帝国各地で日夜暗躍し続けている。

その内部工作は徹底して内密にされており、内容を詳らかに知る者は彼女達か、もしくは彼女達と親密な関わりを持つ一部の者のみとされる。

しかしそのため、得体の知れない秘教集団として不気味がられており、彼女たちを「魔女」と呼び、嫌悪している者も多い。

しかし高貴な生まれの女性に多かれ少なかれベネ・ゲセリット流の教育を施されることは、暗黙の伝統となっている。

ギルド程では無いものの、彼女たちもメランジを大量に必要とするため、スパイスに関する事柄には注意を払っている。


☆クイサッツ・ハデラック

母系と父系の記憶を全て有する、すなわち人類全体の記憶を持つ超常の存在。

その名は「道の短縮」を意味し、ありとあらゆる時間・空間と繋がり、将来起こり得る全ての可能性を予知し、人類全体をより良い未来へと導いてゆく救世主であり、その誕生こそがベネ・ゲセリットの悲願である。

理由は定かではないものの、必ず「男性」でなくてはならないとされる。

その誕生には長い時間を経なくてはならないと考えている教団上層部にとって、アトレイデス家に嫁いだ修道女ジェシカが教団の意向に逆らって生んだ息子ポール・アトレイデスがその力の片鱗を示したことは予想外のことであり、彼女の行いを一時の感情に身を任せた軽挙として非難した。

彼女の産んだ息子が果たしてクイサッツ・ハデラックか否か、それを確かめるために教団の指導者「ガイウス・ヘレネ・モヒアム」が雨降るカラダンに足を踏み入れたことから物語は始まる。


メンタート

帝国成立後、その支配体制を支えるため、バートラーの聖戦以降、製造を禁じられた自律機械に代わる新たな「生体コンピューター」として訓練された主に男性能力者たちの事を指す。

精神力を高めるという植物の根から抽出した「サフォの液」を常用し、そのため彼らの口と唇は深紅色の斑点が生じる。それはメンタートである証明ともなっている。

推論能力と計算能力において、かつての自律機械に匹敵する力を持ち、膨大な情報を一手に処理することができる。ただし、機械とは違って生身の人間であるため、その能力には個人差があり、三代に渡ってアトレイデス家に支えてきた「スフィル・ハワト」は特に優秀であるとされる。

日夜水面下で政治闘争に明け暮れる公家にとっては重宝される存在であり、彼らの政務を支えながら防衛計画の立案、敵対公家の諜報や更には裏で暗殺計画を代行することもある。

メンタートには他にも「背教メンタート」と呼ばれる者もおり、宗教倫理的に問題のある計画にも躊躇せずに行える捻れた精神を持つことで有名である。

ハルコンネン家付きのメンタート「パイター・ド・プリース」はこれに当たる。

彼らを輩出するのは、「ベネ・トライラックス」と呼ばれる孤立惑星「トライラックス」を根拠地とする謎めいた能力者集団であり、「トライラックスに女は在らず」という言葉のように、排他的な男性至上主義者たちとして知られている。


スークの医師たち

コリンの戦いの後、医療者「モハンダス・スーク」によって設立された「スーク医院」より卒業した者たちの事を指す。

アトレイデス家付きの医師「ウェリントン・ユエ」はこの学院の卒業生である。

医院を卒業したことを証明する「スークの銀輪」で結ばれたポニーテイルと眉間に刻まれたダイヤの形をした印により、彼らは他の能力者たちに比べて容易に判別することが出来る。

額の印は「帝国式条件反射」と呼ばれる特別な精神暗示が施された証であり、これによって彼らは精神の領域において良心が占める割合が常人に比べて遥かに多くなり、故に患者に対し熱心に献身的な治療を施す。また他人を騙し、嘘をつくことに強い拒否反応を示すようになる。

このため、他のどの医療者集団よりも誠実かつ確かな技術を持つ医師たちとして信頼されており、彼らの姿は帝国宇宙各地で見ることができる。


・公家

帝国の階級制度「ファウフレルヒュス」において、皇帝に次ぐ権力者集団であり、皇帝に代わって宇宙各地を統治する。

原則、一つの家は一つの惑星を統治するが、場合によっては一つの星系や離れた別の惑星を准領土として支配下に置く家も存在する。

そうした家は「大公家」と呼ばれ、公家の中でも大きな発言力を持つ。特にアトレイデス家ハルコンネン家の二つの家は、コリノ皇家登極に大きな役目を果たした名家として知られている。

ただ支配するだけでなく、惑星を運営し発展させる「経営者」としての側面も有しており、彼らと皇帝が出資する国際的な営利団体として「CHOAM」が存在。帝国の通貨「ソラリス」の金融相場を決定する際にも重要な役割を果たす。

また各公家の集まりである諸侯連合は、帝国政治決定機関である「ランスラード議会」において、宇宙のパワーバランスの均衡をとる重要な三柱の一つとしての役目を果たしている。

「大協約」と呼ばれる宇宙秩序の下、一応の平穏は保たれているものの、その裏では血みどろの政治闘争が繰り広げてられており、各公家は自前の戦略核兵器と自動報復システムにより互いを牽制し合っている。

もし、その闘争に敗れてしまった公家があったとしても完全に取り潰されることは少なく、ギルドの庇護下に置かれ、彼らのみしか知らない宇宙の何処かに存在する秘密の隠遁惑星にて、静かな暮らしが約束される。

この取り決めは一重にパワーバランスの崩壊を防ぐためであり、負けても完全には取り潰されないという安心感を公家に与えることで、現帝国の秩序を安定化させるという意図があった。

そのためハルコンネン家の陰謀はこれに真っ向から反発する物であり、帝国の安泰を望む皇帝の逆鱗に触れることになる。


アトレイデス家

水惑星「カラダン」を支配する大公家。赤い鷲を紋章として掲げる。

その血脈は確認される限り最も古いもので、古代ギリシアのアトレウス王家にまで遡るとされる由緒ある家柄である。そのため彼らは誇り高く、高潔であることを何よりの美徳とする。

アトレイデスの軍隊は、三人の指導者剣士「ダンカン・アイダホ」熟練の戦士「ガーニィ・アレック」、そして老メンタート「スフィル・ハワト」によってよく訓練され、サルダウカーに及ばずとも、それに次ぐ実力を持つとされた。

その軍事力とカラダンの豊富な水資源に裏打ちされた高い経済力、そして主君として理想的な人格も相まって連合内に於ける人気は高く、ポールの父である現当主「レト・アトレイデス」公爵の代になるとその名声はさらに高まっていった。

しかしその躍進に内心恐れを抱いた皇帝によって、砂漠惑星「アラキス」に移封を命じられる。

元々准領土としてこの地を支配していたハルコンネン家がこの処遇を不服とし、アトレイデス家にその矛先を向けることで、両家の共倒れを狙ったのである。

全てが仕掛けられた罠であることを察知しながらも、皇帝の命に背くわけにもいかず、アラキスへと旅立ったアトレイデス家はやがて数奇な運命に翻弄されることになる。


ハルコンネン家

影惑星「ジエディ・プライム」を支配する大公家。黒い牡牛を紋章として掲げる。

彼らの治めるジエディ・プライムは他の惑星に比べて機械化が著しく、「背教メンタート」パイターがお抱えのメンタートとして仕えているように、ベネ・トライラックス機械惑星「イックス」といった帝国とは異なる思惑で動く勢力と繋がっている事を窺わせる。

コリノ皇家とはその台頭より、謀略の面において支え続けてきた盟友と呼ぶべき存在である。しかし現在ではその地位を狙っており、それに気づいている皇帝との関係は冷え切ったものになっている。

一度没落の危機に陥っており、それを立て直したのが現当主「ウラジミール・ハルコンネン」男爵である。アラキスを准領土とし、この惑星でのみ産出される薬品「メランジ」の販売権を独占することで、巨万の富を築き上げたのである。

重力補助装置が無ければ、移動することすら困難な重度の肥満体の老人は、非常に利己的なマキャベリストであり、利益とは育てるものではなく、搾り上げるものだと考えている節がある。

こうした特徴は一族の生来の気質でもあり、代々の当主は皆非常に強欲で、目的のためならば手段は選ばない一面を持っていた。

特に男爵の代に入るとその横暴さは日に日に増してゆき、奴隷の虐待は日常茶飯事のこと、遂には人間狩りにまで手を出す始末である。

アトレイデス家とは根本から相性が悪く、およそ100年にも渡る血みどろの闘争を続けてきた歴史をもつ。それ故、アトレイデス家のアラキス移封をチャンスとし、これを機にその血を根絶やしにし、両者の争いに終止符を打とうと企む。


👁‍🗨民族

帝国宇宙においても必ずしも全ての星が帝国に従っているわけではない。

そうした惑星は得手して未開の惑星であり、遠大な計画の下、惑星の住人にはベネ・ゲセリットによる思想的な洗脳工作が秘密裏に行われている。

しかし中には帝国に影響を与えるほどの力を持ちながら、半ば独立した支配体制を持つ民族も存在する。


イックス人

機械惑星「イックス」に住まう民族。能力者ではないものの、良くも悪くも彼らは帝国宇宙に大きな影響力を与える存在の一つである。

宇宙の各地に植民惑星を持っており、帝国からは独立した政治運営がなされている可能性がある。

バートラーの聖戦以降抑制された機械技術を高い水準で保存・発展させており、その機械工芸品は帝国各地で珍重されている。

しかし禁じられた自律機械を復活させかねない勢力でもあり、未だに根強い機械に対する恐れを持つ帝国においては嫌悪の目を向けられることも多い。

同様の工業化が進んだ惑星には「リチェス」が存在する。


トライラックス人

孤立惑星「トライラックス」を根拠地とする民族。「ベネ・トライラックス」とも呼ばれる。イックス人同様帝国の支配からは独立した政治運営がなされている可能性がある。

極端なまでの男性至上主義社会であり、トライラックス人の女性を見た者は存在しないと言われる程その思想は徹底されている。

ベネ・ゲセリットとは異なる遺伝子操作技術を保持し、高い技術力を誇るものの、それは冒涜的と称されるほどに捻れた物であるとされる。

その産物の中でも特に悍ましい物が、自在に自らの姿形を変えられる「百面相」(フェイスダンサー)と呼ばれる冷酷な暗殺者たちである。

所謂クローン人間の作成も既に実現・実用化させており、それらは「ゴーラ」と呼ばれ、細胞記憶により複製されることで本人と寸分も違わない記憶を持つ。

これら遺伝子技術の結晶は、全て「アクスロトル・タンク」と呼ばれる半生物的な特殊装置の“胎内”で製造される。よく見てみれば、それは人間の女性の姿をしており、或いはこれがトライラックスに生まれた女の末路ではないかと密かに噂されている。

ハルコンネン付きの「背教メンタート」パイターはこの星にある訓練学校の出であり、ベネ・トライラックスもまた秘めた野望の下、帝国各地で暗躍していることを暗示している。


フレメン

数千年の長きにわたって宇宙を放浪し続けた一派「彷徨える禅スンニ派」を祖に持つ、砂漠惑星「アラキス」の先住民族。帝国の支配を受け入れない蛮族として見做されており、一般的には危険な存在とされている。

過酷なアラキスの環境に併せた変化を遂げることで、この星で生存してきた数少ない種族の一つである。

彼ら種族の特徴として「イヴァードの眼」と呼ばれる青く輝く瞳がある。これは高濃度の香料環境下に置かれた者ならば誰でもなり得るある種の病とも言える物であり、フレメンだけでなくギルドの航宙士にも見られる。

普段は「シエチ」と呼ばれる砂漠から突き出る岩山に出来た天然の洞窟に隠れ潜み、暴政を敷くハルコンネン家にゲリラ戦を以て頑強に抵抗する。

この様に彼らは非常に訓練された優秀な戦士たちでもあり、その源は香料による肉体強化もあるが、それ以上に厳しい環境を生き抜くために厳格に律せられた生活様式と先祖の代より脈々と受け継がれてきた高いサバイバル技術に由来している。

アトレイデス家が新しい統治者としてアラキスにやって来た際に彼らと同盟を結ぼうと企図したのも、彼らの助力を以て来たる嵐に備えようとしたからである。

彼らの生活は砂漠に於いて最も重要な資源である「水」を如何に有効活用するかという観点から成り立っており、その意識は彼らの文化、宗教に至る隅々までに影響を与えている。

未開惑星に住まう民族の例に漏れず、ベネ・ゲセリットの思想的な影響下にあり、彼らの宗教はベネ・ゲセリットとの間に幾つかの共通点が見られる。特に教母と呼ばれる上級女性聖職者はフレメンにも存在し、彼女たちは「砂漠の教母」と呼ばれ、アラキスの生態系の頂点に立つ砂蟲が排出する「生命の水」と呼ばれる毒液を限界以上に摂取する試練を突破しなければならないなど、ベネ・ゲセリットのそれとほぼ同様の儀式様式を持つ。

またベネ・ゲセリットの悲願であるクイサッツ・ハデラックを彼らなりに解釈した「リーサン・アルガイーヴ」と呼ばれる救世主が、いつの日か外世界からやって来て、アラキスを緑溢れる楽園へと変えてくれるのだと固く信じている。

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