VAPE
べいぷ
喫煙に類似した娯楽、及びそれに用いる器具の事。
2018年現在、様々な形状の器具が存在して外観は一定しないが、機構としては植物性グリセリン主体のリキッドを電熱コイルで加熱し、発生した煙を吸引するスタイルでほぼ確定している。
日本国内では「電子たばこ」と呼称されているが、薬事法の都合でニコチン入りのリキッドは販売や譲渡が禁止されているため、大半のユーザーは香料のみ添加されたリキッドを使用しており、そのため「ニコチン・タールゼロの禁煙補助器具」を謳い文句にしている製品もある。
実際に往年の禁煙補助具パイポのメーカーであるマルマンも電子パイポと銘打って販売しているが、その中身は古いCE4というタイプのVAPEそのものである(ベースからして古い上に安物のデバイスなので、強いメンソールでもなければほとんど味は出ない)。
VAPEとはVaporizerの略であるが、片仮名表記でヴェポライザー(またはさらに略してヴェポ)と書くと紙巻きタバコや市販のタバコの葉を加熱式タバコにするデバイスを意味するのでややこしい。
WHOではニコチンリキッドを使うものをENDS(Electronic Nicotine Delivery Systems)、ニコチンを含まないリキッドを使うものをENNDS(Electronic Non-Nicotine Delivery Systems)と区別して呼称している。
植物性グリセリン(VG)とプロピレングリコール(PG)を混ぜたベースリキッドに様々な香料で香り付けしたもの。
VGは粘性が高くガンク(コイルに付着するカス)が溜まりやすい。またわずかに甘みがある。
PGは粘性が低くガンクが溜まりにくく、甘みが無い。稀に口内や喉が荒れるといったアレルギー反応を呈する人がいる。
リキッドの特徴によってVG/PGの比率(リキッドの粘度)は調整されている。
VGとPGはともに食品添加物として認可されている物質であり、いずれも人体への悪影響は極めて少ないとされるが、猫など一部のペットに対してはPGが有害となる点には注意が必要。
VGとPGによる粘性のある液体に香料を加えたものが「リキッド」である。
このリキッドを、コイルを巻いたコットンあるいはシリカウィッグなどに染み込ませ、コイルを加熱して気化させると、粒子が煙状の蒸気が発生する。
この煙の量が通常の紙巻きタバコに比べて非常に多いため、「爆煙」と呼ばれ好まれる傾向にある。煙をアート的に吐き出す「トリック」を行う者もいる。
フレーバーは多種多様で、コーヒーや紅茶、カクテルなどのドリンク系、クッキーやチョコレートなどのスイーツ系、フルーツ系、果ては肉野菜炒めやピザといったお食事系、極めつけは「女の子のかおり」なんて物まである。
MODやアトマイザーの本場は中国だが、リキッドについては日本国内を含め世界中で作られている。
地域的な特色として、高温多湿の東南アジアでは強い甘さと爽快感(メンソール)が好まれるため、東南アジアメーカーのリキッドはかなり甘ったるい物が多い。
柑橘系リキッドは、「リモネン」が樹脂攻撃性(プラスチックやゴムを劣化させる性質)があるので注意が必要。
コイルとリキッドタンクが一体化した「アトマイザー(気化器)」と、制御用マイクロチップを搭載したバッテリー部「MOD(Modify)」に分かれているものが、2018年現在は一般的である。
アトマイザーとMODの接続は数種類の規格があり、メーカーやモデルによっては互換性がある。
この規格によってアトマイザーの大きさとMODを合わせた全体の形状におおよその分類がされており、太さが1センチほどのスティック型、太さ2センチ前後のペン型・チューブ型、MODが箱型のバッテリーケースになっているBOX型、その他規格外の極小タイプなども発売されている。
互換規格では初期に登場した細いペンタイプの物に採用されているeGo規格、現在主流の510規格の二つが一般的。
タバコメーカーが販売しているものだとタンクとコイルを一体化して使い捨てにしたPOD型が多く、それらの場合は独自規格である。
ドリップチップ(吸い口)にも510規格、それより大きな810規格、メーカーごとの独自規格、使い捨てタイプに良くある一体型がある。
いわゆる本体。
電池(と制御基板)が入っている部分。
複数コイルを使用するアトマイザーや極端に抵抗値が低いコイルを使用する場合は複数の電池を使用する物の方が安全。
VAPERの中には基盤デザインからMODを自作してしまう強者もいる。
ペンタイプ
最も安価なタイプで、見た目的にはボールペンより一回り大きい程度。いわばエントリーモデルで、電流の調整機能すらなく、ただスイッチを押せばコイルに通電するだけの物。
アトマイザー付属で二本で1500円程度と極めて安価だが、(付属のアトマイザーでは)性能も値段なりで、強いメンソール味でもなければほとんど味が出ない。
テクニカルMOD
通電する電流値やコイルの温度を細かく設定できるもので、現在はこれが主流になっている。味や安全性の面からもこれを使用するのが望ましい。
性能でいえばとりあえずは5000~7000円程度のテクニカルMODを買っておけば良い。
メカニカルMOD
メカニカルMODは上級者向けで、安全装置すらなく極端な設定ができる反面、充分な知識と技術が無ければショートや電池の破裂といった危険がある。
高級機になると職人のハンドメイドで5万円を軽く超えるような物もあるが、そういった物は既に性能ではなく美術的な付加価値を訴求している物が多い。
スコンカー
MODの中にリキッドを保持するタンクを内蔵しているもの。構造的には大抵はメカニカルMODである。
なぜタンクをMODに内蔵するのかと言えば、RDAを手軽に使うため。
RDAにはタンクが無いので2~3パフごとにリキッドを補充してやらねばならないが、スコンカーを使う事でタンクからリキッドを補充してやる事ができ、運用が楽になる。
とはいえほとんどがメカニカルMODであるため、電気的な知識が足りない初心者が安易に手を出すと危険である。
使用する電池について
電池を交換できるMODで使用されている電池は一般的な充電池ではなく、その「中身」に当たるセルである(モバイルバッテリーの中身など)。つまり電池そのものに安全装置は組み込まれていない。
品質からSONY(現在の製造は村田製作所)のVTCバッテリーが人気だが、一般的な充電池と違い偽造品も多く流通しているので、安価な物を購入するのではなく信頼できる店舗で購入するのが安全の観点から望ましい。
だがそもそもメーカーからすればセルそのものを使用したり持ち運んだりする事は想定していない。SONYは自社製充電池セルをVAPEに使用するなという注意喚起を発表し、その後一時的にamazonからSONY製VTCバッテリーが消えるという事態が発生している。
多くのMODではUSBポート等(製品によってはファームウェアアップデートにも利用する)の充電ポートを備えているのでMOD単体でも充電は可能だが、MODで充電するとかなり高温になるので充電器の利用が推奨される。
リキッドを気化させるアトマイザーは「クリアロマイザー」「RTA(Rebuildable Tank Atomizer)」「RDA(Rebuildable Dripper Atomizer)」の三種類に大別できる。
RDAやRTAといった自分でコイルを巻くタイプのアトマイザーはRBA(ReBuildable Atomizer)やドリッパーとも呼ばれる(狭義のドリッパーはRDAを指す)。
クリアロマイザー
コットンとコイルが一体化したカートリッジを交換するタイプのアトマイザー。
手軽ではあるが、2~3週間で交換が必要なコイルは5個パックで1500円前後とそこそこランニングコストがかかる。
味はピンキリではあるが、高級機でもRDAやRTAには劣るというのが一般的な評価。
RDA
コイルを自分で巻き、そこにコットンを詰めてコイル部を自作するタイプのアトマイザーで、リキッドを保持するタンクが無いもの。
コイルを自作するため慣れは必要だが、コイルのランニングコストが極めて安く、好みに合わせて抵抗値を変える事が出来る。
コイルが一つだけのタイプが多いが、コイルを2個、3個と複数設置するタイプも多い。ただし複数コイルを使用するものはMODへの負荷も相応に高いので、充分な知識を持つ上級者がそれに適応するMODと組み合わせて使用するのが望ましい。
一般的には最もシンプルで最も味が良いとされるが、2~3パフごとにコットンにリキッドを補充する必要があるので手間はかかる。
ただし、電極と接続するポジティブピンがパイプ状になっているものを使い、本体にリキッドのボトルを合体させた「スコンカー」というタイプのMODを使えばリキッドチャージの手間は解消される。
電熱線ではなく、金属メッシュを使用するタイプも登場している。
POD
mybluなどのリキッドタンクとコイルが一体化していて、吸い切ったら終わりの使い捨てタイプ。
手軽さが一番の売りで紙巻きタバコの喫煙者に対して訴求しているが、使い捨てゆえにランニングコストが高い。
(ただし、メーカー純正品ではない互換品ではあるが、リキッドチャージが出来るカートリッジも販売されており、それを使えばコイルの寿命までではあるがリキッドを充填して何度も利用できる)
またVAPERからすると味の点で大きく劣る、とされていたが、2018年ごろから増え始めたPODデバイスではセラミックコイルの導入などで下手なRDAよりも味が良いと評価される物もある。
そして2019年、ついにPODでありながらコイルを自分でビルドできるSmoant Pasitoが登場。バッテリー出力などの自由度はまだMODには劣るが、味の点ではPODだから味が出ない、というわけではなくなっている。
抵抗
時代を経るごとにMODの性能向上があり、それにつれてコイルの抵抗値は小さくなる傾向にある。
2019年現在はクリアロマイザーでも1Ω前後~0.3Ω程度の物が主流になっている。
(1Ω未満の物をサブオームと呼ぶ)
なぜ低抵抗のコイルが人気になっているかというと、抵抗が小さければその分大きな電力をかける事ができ、結果として煙の量が増える=爆煙になるからである。
単純にリキッドのミストが多くなれば味が濃くなり、吸いごたえも強くなり、また見た目にも派手で面白い。
比較的低温の高抵抗コイルの方がリキッドの味が飛びにくく、高温になる低抵抗コイルは味が飛びやすい、というのが初期の定説だったが、デバイスやワイヤー等の進歩によって一概にそうとも言えなくなっている。
リキッドによってもどういう温度・抵抗・巻き方が合うかが変わってくるので、一律にこれが良いという最適解はなく、それを試行錯誤するのも楽しみの一つ。
材質など
自分でコイルを巻くRBA(ReBuildable Atomizer)では、コイルの径や巻き数によって抵抗値を自由に調整できる。
そのコイルを作るためのワイヤーも材質によってカンタル線、ニクロム線、ステンレス、ニッケル、チタンがある。
最も一般的な物はカンタル線だが、それぞれに一長一短ある。なお、チタンは高温になると有毒な二酸化チタンを発生するので、上級者以外は手を出すべきではない。
ワイヤーの太さ(ゲージ)は32、30、28、26、24、22の各種あり、太い(数字が大きい)方が抵抗が小さくなり、加熱時間が短くなる。
ワイヤーの構造でも最もシンプルな単線(単純な針金)の他に、芯となるワイヤーの周りに別のワイヤーを巻き付けたクラプトンワイヤーがある。
クラプトンワイヤーは単純に線の量が多いのでリキッドの保持力が強く、長くても低抵抗になるのでより煙の量が多くシルキーになる。当然ながら単線よりは高価になる(とはいえ15フィート一巻き1000円程度が相場だが)。
またクラプトンワイヤーにはワイヤーの材質、芯と巻き付けるワイヤーの太さと本数、巻き方などで様々な種類がある。
なお、RBAのコイルは既に一定の抵抗値に合わせて巻いてあるプリメイドコイルという製品もあるので、いきなり手で巻くのは不安という人でも手を出しやすくなっている。
ちなみにコイルの美しさ(ワイヤーの構造、コイルの巻き方、加熱によるグラデーションなど)を競う「アートコイル」というものも存在する。
メッシュコイル
ワイヤーではなく、2018年ごろからは小さな金網のワイヤーメッシュを使用するアトマイザーも登場している。(Wotofo Profile RDAや、それのRTA版であるProfile Unity RTAなど)
これは額面で0.13Ωや0.16Ωといった、ワイヤーのコイルよりもはるかに低抵抗であり、メッシュであるため加熱のムラが発生しないという特徴がある。
またデッキに組み付ける際にかまぼこ型になり、そこに詰めるウィック(コットン)とメッシュが接する面積がワイヤーに比べて広くなるので、ワイヤーのコイルを使うアトマイザーよりも更に爆煙で、しかも発生するミストが高温にならないので味が良く、スピットバックが発生しにくく、熱いミストを吸ってむせるという事も起きにくい。
こちらはメッシュ10枚で1000円程度と、やはりワイヤーに比べれば値は張るが、それでもドライバーンして汚れを落とせば長く使える。
ただし恐ろしく抵抗値が低いので、容量が大きな電池や、電池を複数使用するMODでの使用が望ましい。
セラミックコイル
電熱線の代わりにセラミックを使用したもの。
長寿命(推奨された使用法を守れば六か月程度)でスピットバックが少ないというメリットがある。
また、基本的にはクリアロマイザー用の交換コイルだが、製品によってはコットンを交換して長く使用する事が出来るものもある。
リキッドを保持する役割を持つのがコットンである。
VAPE専用の製品も販売されているが、化粧品用のコットンも保水力が高いのでVAPEに適している。
無印良品のコットンや、資生堂(クレ・ド・ポー)のコットンが値段の割に高品質で人気がある。
クリアロマイザーではカートリッジとしてコイルと一体化しているため、殆どの製品ではコットンだけの交換はできない。
RBAであれば、味が落ちてきたと感じたら古いコイルを捨ててコイルを熱してガンク(リキッド由来のコイルのカス)を焼きつくし、新しいコットンを詰める事で簡単に味をリニューアルする事ができる。
オートパフ
パフスイッチを持たず、ただ咥えて吸うだけで電源が入ってミストを発生させる機能の事。
手軽でタバコと同じ感覚で吸えるため、PODデバイスでの採用が多い。
ただし機械的な物なので故障しやすく、逆に息を吹き込むとスイッチが入りっぱなしになってしまう危険もある。
(デバイスによっては吹き込んでも動作しないものや、一定時間で自動的に電源が切れる安全装置を搭載した物もある)
510接続
VAPE規格の一つ。
MODに内蔵するバッテリーとアトマイザーの間にトップキャップという部品を噛ませるため、構造的にバッテリーのプラスとマイナスが隔離されているので、ショートが起きない。
大抵のテクニカルMODにはこちらが採用されている。
CBD
カンナビジオール。
麻(大麻以外の麻を含む)から抽出されるカンナビノイドの一つ。
マリファナの主成分であるTCH(テトラヒドロカンナビノール)の様な向精神作用、依存性、耐性は無く、医療品としても使用される。
CBDの毒性はかなり低いとされる。ただし場合によっては食欲減退、倦怠感、下痢といった副作用を起こす事がある。
国際的な規制も日本国内での規制も無く、国内ではこれを含む物が健康食品として流通している。
CBD配合のリキッドは普通のリキッドより高額であるが一般に流通しており、リラクゼーション効果があるとされている。
THC
テトラヒドロカンナビノール。
要するに大麻の向精神成分。医療用大麻として合法な国・地域があるが、日本では当然ながら違法。
アメリカでTHCを添加したリキッドを使用した人が重篤な肺疾患を患い、死者も数人出ているので、ビタミンEとともに気化・吸引すると肺疾患を引き起こすのではないかと疑われている。
ニコチンソルト
遊離性ニコチンを塩基化したもの。
従来のニコチンリキッドに比べて高濃度でも刺激が少なく満足感が高いといったメリットがある。
これももちろん薬事法で規制されているため、使用したいのであれば個人輸入するしかない(未承認医療機器として、個人の使用を目的とする場合に限って輸入が認められている)。
ハイブリッド接続
VAPEの接続規格の一つ。主にメカニカルMODに採用されている。
見た目には510規格に似ているが、MODのトップキャップが無く、ポジティブピンは直接バッテリーに接触する。
構造的にMODとバッテリーだけで閉鎖回路が出来る(プラス極とマイナス極を直結できる)のでショートしやすく、電気の基礎知識が無い者が安易に扱うと電池の発火・爆発を引き起こす危険がある。
510接続なら気にしなくていい事だが、ハイブリッド接続の場合は分解時にはバッテリーを抜いてからアトマイザーを取り外し、組み立て時にはアトマイザーを取り付けてからバッテリーを挿入しないとショートする危険がある。
メリットとしてはトップキャップが無い分コンパクトで、コイルの立ち上がり(加熱)が早いという事が挙げられる。
BFピン
スコンカーで運用するアトマイザーのポジティブピン。BFはボトムフィーダー(下からリキッドを供給する)の意味。
パイプ状になったポジティブピンで、その穴を通ってタンクからリキッドを供給する。
スコンカー運用ができるアトマイザーではBFピンと通常のポジティブピンが両方とも付属している物が多い。
ビタミンE
脂溶性ビタミンの一種。酸化防止剤などとして利用されており、それ自体に害はない。
ただし、加熱・気化させると油性の気体となり、これを肺に吸引すると肺胞に悪影響を及ぼし肺疾患を引き起こすのではないか、と疑われている。
一般流通するリキッドには添加されていないが、アメリカなどで流通しているTHC(テトラヒドロカンナビノール)を混ぜた(おもに違法な)リキッドには酸化防止を目的として添加されている物が多い。
日本国内で流通しているリキッドにも「ビタミン」を謳うものがあるが、これはフルーツフレーバーによる「ビタミン感(要するにフルーティな酸味)」だったり、添加されているとしても水溶性の「ビタミンB12」なので、国内で一般流通しているリキッドを購入する場合は基本的に気にする必要はない。
フラットトップ
アトマイザーの接続部のポジティブピンが出っ張っておらず、ネガティブピンと面一またはネガティブピンに埋まっている構造の事。
510接続であればMOD側でプラスとマイナスが分離されているので問題なく使用できるが、ハイブリッド接続の場合はバッテリーのプラス極とマイナス極が直接接触してしまうため極めて危険。
ポジティブピン
510規格のアトマイザーの下部にあるネジの、ちょっと飛び出している金色の部分。プラス極に当たる。
製品によっては取り外し・交換が出来るものもある。
スコンカーで運用する場合はパイプ状のBFピンを使用する。
リキッドリーク
直訳の通り、アトマイザーからリキッドが漏れる事。
構造的に漏れやすい、漏れにくい製品があり、またしっかりウィッキングしないと盛大に漏れてしまう製品(Profile Unity RTAはコットンでリキッドを堰き止める構造なので、ギッチギチに詰めないと漏れる)もある。
日本でVAPEが注目され始めたのは煙草への規制が強まった2015年頃からであり、商品として実用化に成功した中国をはじめ諸外国よりも一足出遅れており、2018年現在での認知度は決して高くはない。
日本ではニコチン入りのリキッドの販売が出来ないため、元々の喫煙者が紙巻きタバコから乗り換える先はIQOSやploomtechといったニコチンを摂取できる加熱式タバコという場合が多い。
とはいえ大手タバコメーカーが世界的な規制強化に対応するためにVAPEに進出(インペリアル・タバコのmybluや、JUULに出資しているフィリップ・モリスなど)しており、mybluがコンビニで販売されるなど徐々に認知度は上がっている。
都市部ではVAPE専門店がそこらじゅうにあるほか、大きな電器店でもVAPEコーナーを設置している所がある。
名称については報道で用いられる「電子タバコ」という語が「ニコチンなしのVAPE」、「ニコチンありのVAPE」、「IQOSなどの加熱式タバコ」、「リキッドを添加して煙を増やした加熱式タバコ(ヴェポライザー)」のどれを指すのか不明瞭という状況でもある。
飲食店などで「電子タバコ喫煙可」と表示されている場合も、店の方は煙が殆ど見えない加熱式タバコを指して電子タバコと表現している場合が多いので、そういう店で煙(ミスト)が多いVAPEを使用できるか否かは店に確認するのが望ましい。
なお日本よりも普及が早かった韓国ではRBA(RDAやRTAの総称)の流行は既に通り過ぎており、手軽さ重視のPODタイプが最も普及しているとの事。
煙草に類するものであり、その規制は下記の様に世界各国で異なる。下記はあくまで一例であり、他にも規制されている地域が無いとは言えないので、VAPEを持って海外旅行をする時は事前に下調べをしないと痛い目を見る事になる。
ニコチン入りのリキッドが普通に流通している諸外国ではニコチンが入っているのが当たり前であるためか、ニコチンの有無ではなくフレーバーの有無が規制の判断基準となるのが大多数となっている。
(フルーツの香りのニコチン無しのリキッドは禁止、タバコの香りのニコチン入りリキッドは禁止されない、といった具合)
日本
日本の場合はニコチンが薬事法で規制されているため、原則的にはニコチンゼロ、タールゼロのリキッドしか販売されていない。
そのニコチン規制のお蔭で、諸外国であるようなタバコとしての規制を受けず、煙草税の賦課もされていない。
法律を字義通りに捉えれば煙草ではないので未成年でも使用できるが、販売店やメーカーは「煙草に類似するもの」として未成年には販売しないという自主規制を実施している。
また煙草ではないにしろ「煙草に類似するもの」なので、喫煙場所については煙草規制に準じるのが望ましい。
アメリカ合衆国
アメリカではニコチンリキッドが一般に流通しており、しかも未成年でも普通に購入できてしまうため、未成年の喫煙率増大を招いてしまった。
(アメリカでは18歳未満にタバコ製品を販売するのは違法だが、ニコチン入りのリキッドについてはなぜか規制されていない)
それによって規制強化論が極めて大きくなってしまい、ついにはサンフランシスコ市ではVAPEそのものの販売やネット通販の到着地に指定することが禁止される法律が可決されるまでになってしまった。
サンフランシスコ市はアメリカのVAPE市場で圧倒的なシェアを誇るJUUL Labs社の所在地であるにもかかわらず。
また、ミシガン州とニューヨーク州ではフレーバー付き電子タバコが販売禁止となっている。
さらに規制は州や自治体レベルに留まらず、ついに連邦レベルでの規制が動き出した。
2019年9月には、後述の死亡事故を切っ掛けとしてトランプ大統領がタバコ味を除く全ての電子タバコを原則禁止とする方針を示した。
初報の時点では未だ担当省庁での規制案さえ出来ていない状態ではあるが、もし「ニコチンの有無」関係なく一律禁止となるのであれば、アメリカ製のリキッドも多いので日本国内にも少なくない影響はあるだろうし、MOD等の製品も大市場であるアメリカで強い規制がかかれば開発や生産にブレーキがかかる事も予想される。
またアメリカでの規制をきっかけに日本でもVAPEに規制がかかる可能性もある。
なお、この規制にはFDAの承認を得れば販売できるという抜け穴が用意されているが、この承認を得るには100万ドルともいわれる巨額の費用が必要となり、フィリップ・モリスなど既存の大手タバコメーカー以外の中小メーカーは一気に淘汰されると見られている。
ヨーロッパ連合
EUではEU全体の規則として「ニコチンリキッドのボトル容量は10mlまで」「ニコチンリキッドの濃度は2%まで」「アトマイザーのタンク容量は2mlまで」という規制が課せられている。
そのため、ヨーロッパでも販売しているタンクアトマイザーはチューブ部分が短く、日本国内で販売する際に大容量の長いチューブを付属させている場合がある。
タイ王国
タイではVAPEやIQOSなどの加熱式タバコは国外からの持ち込み及び単純所持が禁止されている。2019年以降に「新品価格の4割程度の関税を支払う事で持ち込みを許可」する規制緩和案が協議されているが、それが実現するかは不透明な状況。
中国
VAPEのデバイスやリキッドの本場と言える中国だが、実は規制に向けて動いている。
手始めに2019年9月に中国市場に参入しようとしたJUULが名指しで禁止された。(これは米中貿易戦争の報復としての側面もあると考えられる)
また2019年11月1日、中国共産党政府から中国内でのVAPEの通信販売と広告の掲出を禁じ、既に掲出している広告を取り下げるよう命令が発布された。
これはVAPEそのものの禁止ではなく通信販売と広告の禁止であるため、実店舗での対面販売であれば従前通り販売は可能であるが、リキッドはグリセリンという一種の生ものであるため打撃になる事は間違いない。
インド
2019年9月から、電子タバコの生産、輸出入、販売、流通、保管、宣伝などが禁止された。
規制試行時点で所持している物は引き続き所持を認められるが、所持者は警察に届け出る必要がある。規制を破った場合は罰金刑を科せられる。
インドの場合は電子タバコを「ニコチンを含む溶液を加熱することで蒸気を作り出す、バッテリーで動作するデバイス」と定義しているだけマシではあるが、規制対象はニコチンを含むリキッドではなくデバイスなので、結局はノンニコチンリキッドだけを使っていても電子タバコである時点で規制の対象に含まれてしまう。
ちなみにJUULは2019年末までにインド市場に参入する計画があったが、参入前に禁止されてしまった。(JUULは基本的にニコチン入りのリキッドを扱っている)
発火・爆発事故
製品の性質上、大容量の充電式バッテリーを搭載しているため、使い方を誤ればショートによる破裂事故などが起こる危険性が皆無ではない。
現に海外では数件の事故が発生しており、2018年には米フロリダ州で死者が出てしまった。
が、だからと言って即座に「VAPEは危険」と判断するのは早計である。
これらの事故の多くは「メカニカルMOD」と呼ばれる、制御用電子チップを搭載していない、「単なる金属製の電池ボックス」とでも言うべきMODを誤使用した事が原因とみなされている。
(なお前述の通りMODに使用するバッテリーは基本的に電池側の安全装置を搭載しないセルであり、安全装置なしの電池を安全装置なしの機器で使用するという、常識的に危険極まる状態である)
これらは電池と加熱装置がほぼ直付けになってしまうため、電池の出力をほぼ100%で使って爆煙できる反面、コイルの抵抗値が極端に小さいとショート状態になってしまう。
言ってしまえば電池の+と-を電線で繋いでしまっているも同然となってしまうため、当然バッテリーに大きな負荷がかかり破損の危険性が爆上がりしてしまう。
これらメカニカルMODは最低限の電気知識と専用器具が必須の上級者限定のアイテムであり、かっこつけで使う事は絶対に避けるべきである。
構造が単純なため、個人制作の美しいデザインのものが売られているケースもあるので、購入の際は注意が必要である。
メカニカルMODに対し、マイクロチップを搭載した一般的バッテリーは「テクニカルMOD」と呼ばれる。ことVAPEに関しては「中国製の安価なコピー(クローン)製品」であっても「電子チップの搭載されたテクニカルMOD」である限り、「日本製の高品質メカニカルMOD」よりもはるかに安全だと言える。
薬物事案
リキッドに違法薬物を混ぜ込むケースが日本国内でも数件発生している。
前述の通り、元々漢方薬吸引用として製品化されたVAPEは、そのリキッドベースであるPG・VGが「香料や薬効成分を溶かし込みやすい」という性質があるため、その気になれば素人でも違法リキッドを作る事が出来、また外観からも判別が不可能である等、頭の痛い問題である。
アメリカではTHC(テトラヒドロカンナビノール、要するにマリファナ成分。アメリカでは州によっては医療用大麻は合法)を溶かした模造リキッドを使用していた者を中心に肺疾患による死者が複数報告されている。
ただしそれが気化させたTHCを肺に吸引したためか、あるいはそういった模造リキッドに添加されているビタミンE(正規リキッドには添加されていない)が加熱・気化されて発生する油性のエアロゾルが悪影響を及ぼしたのか、あるいはその他の原因があるのかについては研究が進んでいない。
なお、そこそこVAPEが普及している日本ではこういった肺疾患による死亡事故は報告されていない。
また、加熱式や電子式たばこについては、従来のニコチン・タール等の有毒物質とは別に、吸引によるカートリッジや本体のプラスチックのメルトによる有害物質が発生するという報告例もあるので、十分注意が必要である。