概要
1993年3月に発売されたX68030 (型名はCZ-500 / CZ-300シリーズ)は25MHzのMC68EC030を搭載したX68000の後継機種。名実ともに32ビットパソコンとなった。5インチFDDを装備するX68030 (CZ-500) と、3.5インチFDDを装備するX68030 Compact (CZ-300) の2機種が発売された。
性能と販売後の経過
32ビット化の効果は大きく処理能力は10MHz機比で4.3倍とx68000シリーズ内では圧倒的高性能を誇った。
ただし、グラフィックシステムやI/Oシステムなど基本システムは旧来の16ビットのままとCPUの脚を引っ張る大きなボトルネックとなっており高速なCPUの能力を生かしきれているとはいえず、旧来のソフトがまともに動かせない低い互換性もあって販売実績も低調であった。
また、当時68000系の最新鋭チップの出荷はサーバ向けの高額なものに限れられており 個人がホビー用途として購入できる価格帯に、メーカー標準出荷状態で68000系MPUの最新のものを搭載することはコストの問題から事実上不可能で他社製PCとスペック競争に対抗できる高速性能も期待できなかった。
このことから、最終的には性能的にも使い勝手的にも中途半端というきわめて特殊なパソコンとなり、価格も高価であったことから一部のマニア向けの需要に限られるなど販売実績も振るわず、Windows機の普及で将来性も見込めないことから開発打ち切りが決定。X68000シリーズは終焉を迎えることとなった。
旧来機種用ソフトとの互換性
MC68030系CPUは32ビット化とキャッシュ機能の実装でパフォーマンス向上を実現していたが 命令の変更や整理が行われていたためMC68000と100%互換ではなかった。
一応、旧来機種との互換性確保のため、FDDからの起動時限定で HUMAN.SYSのバージョンをチェックし68030対応のHuman68kバージョン2.15に差し替えると同時にCPUキャッシュの機能を停止するいう互換性向上機能が実装されていたが互換機能利用時でも起動失敗や例外処理発生頻繁など十分ではなく多くはパッチ当てなどの大幅修正などのユーザーによる修正が必要であった。これらはシャープや各ソフトメーカーからのパッチや修正ツールの提供があれば解決可能ではあったが コストなどの問題もあり提供されることは無く、個人での修正成果を公表するユーザーもおりその一部は電脳倶楽部などで公開されたがまだネットでの提供が一般的になる前という当時の状況もあり入手は極めて困難でユーザーの負担が大きかった。
そのため、実質旧来機の併有が望ましく結果 代替え需要も期待できなくなった。