正式なタイトルは「ゴジラ」だが、便宜上記事名の他に「ゴジラ'84」などとも呼ばれる。
概要
これまでのゴジラシリーズをリブートし、新たに製作されたシリーズの1作目(そのため、この作品では過去のゴジラ出現は'54年だけということになっている)。
公開されたのは1984年(昭和59年)だが、1995年の「ゴジラVSデストロイア」まで続く「VSシリーズ(平成ゴジラシリーズ)」とは世界観がつながっているため、便宜上VSシリーズの第1作目として扱われている。ただし、登場人物や一部の設定(ゴジラの帰巣本能)などこの作品だけで独立している要素も多い。製作スタッフも後のVSシリーズとはかなり異なっている。このため、より厳密に言えば「VSシリーズのプロローグ的作品」と言った方が適切であろう。
本作に登場するゴジラは原点回帰を目指して「怖いゴジラ」として登場。また、高層化の著しい新宿のビル群に合わせて体長も50メートルから80メートルへと巨大化し、顔もや咆哮も凶悪な初代をイメージしたものになり、更に猛獣のようなうなり声を追加している(クライマックスにおける火山に転落するシーンにて、昭和シリーズで使われた甲高い鳴き声が一度だけだが使用されている)。
上記の「怖いゴジラ」への回帰も手伝い、本作は初代ゴジラのような、災害パニック映画的な側面が強い(東宝は、この作品より前に『日本沈没』や『地震列島』といった災害パニック映画を製作しており、それらの作品の影響もあったと考えられる)。このことから、平成ゴジラシリーズでは唯一、敵怪獣との戦いが描かれない作品となった。また、政府の政治動向や人々の混乱、冷戦という当時の時代背景も反映されたリアルな描写が多いのも、以降のVSシリーズには見られない本作ならではの特徴である。
ストーリー
伊豆諸島の大黒島が大噴火を起こし、その3か月後、近海を航行していた漁船:第五八幡丸が遭難した。数日後にヨットに乗った新聞記者・牧吾朗は第五八幡丸を見つけるが、そこには乗組員を全滅させた巨大フナムシが潜んでいた。フナムシを退治した牧は生存者・奥村宏を助け出すが、彼はフナムシよりも目撃した巨大生物に恐怖していた。
病院に担ぎ込まれた奥村と恩師・林田信博士の確認によって、巨大生物が30年前に倒されたゴジラの同類であることが判明。これを受け三田村清輝総理をはじめ日本政府は、この事実を公表すれば世間に混乱が広がると考え報道管制を決断した。スクープをものにできなかった牧は林田博士への取材で奥村の妹・尚子と出会った。
そんな頃、太平洋上でソ連原潜が謎の攻撃で撃沈され、ソ連はこれを米軍の攻撃と断じ、米ソ関係は緊張状態になった。ところが自衛隊の調査でこれがゴジラによるものと判明し、米ソ衝突回避のために政府はやむなくゴジラ情報を解禁することに。
それからほどなくしてゴジラは濃霧に紛れて静岡に上陸し、井浜原子力発電所を襲撃する。日本政府はゴジラ対策の準備を進め、林田博士も帰巣本能を利用してゴジラを伊豆大島の三原山火口へ超音波誘導しようとする。一方米ソは日本に対ゴジラ核兵器使用を迫り、三田村総理は頑なに要求を拒んでいた。
そしてゴジラは東京に接近し、ついに上陸。自衛隊を蹴散らして新宿に達したゴジラにスーパーXが出撃。ゴジラをカドウム弾で眠らせることに成功する。ところが、ソ連の核ミサイルが誤作動で東京に向け発射されてしまう。なんとかミサイルはアメリカの迎撃ミサイルで打ち落とせたが、今度は電磁パルス現象が起こってしまい、ゴジラが覚醒。カドミウム弾を撃ち尽くしたスーパーXはやむを得ず通常兵器でゴジラに応戦するも、通常兵器ではゴジラに太刀打ちできるはずもなく、遂には撃墜されてしまう。
万事休すかと思われたが、ここで遂に林田博士の超音波誘導装置が作動。作戦は功を奏し、ゴジラは伊豆大島へ移動、火山の誘爆によって火口内へと沈められていった(死亡したわけではなく、次作にて三原山噴火に伴い復活する)。