主要諸元(JR東海時代)
編成 7両固定編成
編成番号 X1
所属 静岡車両区
設計最高速度 145km/h
最高速度 120km/h
起動加速度 2.0km/h/s
減速度 4.0km/h/s(常用最大)
4.0km/h/s(非常)
車両定員 408名(うちグリーン席64名)
最大寸法
(長・幅・高) 21,250mm×2,900mm×4,057mm (クモハ371)
20,000mm×2,900mm×3,940mm (モハ370-1)
20,000mm×2,900mm×4,058mm (モハ370-101)
20,000mm×2,900mm×4,023mm (モハ371-201)
20,250mm×2,900mm×4,055mm (サロハ371)
編成質量 273t
軌間 1,067mm
電気方式 直流1,500V
(架空電車線方式)
主電動機 C-MT61A (クモハ371+モハ370)
C-MT64A (モハ371)
主電動機出力 120kW(直流直巻補極付電動機)
歯車比 80:19=4.21
制御装置 C-CS57A・C-CS59A
(直並列組合せ抵抗制御・界磁添加励磁制御)
台車 C-DT59(動力台車)
C-TR243(付随台車)
制動方式 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
(直通予備ブレーキ・抑速ブレーキ・勾配起動ブレーキ・応荷重装置付)
保安装置 ATS-ST・OM-ATS(後にATS-PTを追加)
製造メーカー 日本車輌製造(クモハ371-1+モハ370-1+モハ371-201)
川崎重工業(サロハ371-1+サロハ371-101)
日立製作所(クモハ371-101+モハ370-101)
概要
JR東海が1991年に御殿場線と小田急線への相互直通用に投入した同社初の在来用特急形電車。乗入先である小田急との相互直通車の規格統一協定に基づいて設計されており、小田急側が投入した20000形(RSE)とは基本仕様が揃えられている。91年度グッドデザイン商品(現グッドデザイン賞)受賞。
コンセプトは「ソフトで洗練されたデザイン」。先頭車は6枚の曲面ガラスを用いて車体と一体化した形をしている。側窓は全体的にワイドビューで後のJR東海の特急車両に通じるものがあるほか、二階建て車については大型の曲面ガラスで上下階をつなぐ連続窓のように仕上げられている。塗装は新幹線100系にちなんだデザインである。
1編成しか存在しないため、検査や故障の際はあさぎりの全列車がRSE(場合によっては他のロマンスカー、この場合はJR御殿場線内運休)、ホームライナーは313系の快速列車(料金不要)による代走となっていた。
沿革
定期運用時代
1991年1月6日に川重重工業からサロハ371-1、サロハ371-101が、1991年1月7日には日立製作所からクモハ371-101、モハ370-101がそれぞれ出場し、豊川の日本車輛製造へ甲種輸送された。
1991年1月12日に落成し、静岡地区をはじめ東海道本線名古屋地区や小田急線小田原駅など、営業運転では乗り入れない区間でも試運転を行った。
1991年3月16日のデビューから小田急20000形RSEと共に特急あさぎり号に充当され、それ以外では静岡地区のホームライナーに送り込みも兼ねて運用された。
デビュー当時の371系の運用は以下の通り
静岡駅ー[ホームライナー沼津]ー沼津駅ー[あさぎり2号]ー新宿駅ー[あさぎり3号]ー沼津駅(※一旦沼津運輸区に留置)ー[あさぎり6号]ー新宿駅ー[あさぎり7号]ー沼津駅ー[回送]ー三島駅ー[ホームライナー浜松]ー浜松駅ー[ホームライナー静岡]ー静岡駅
※ただし土日ダイヤでは下りホームライナーは静岡までの運転
2002年7月に転落防止幌の設置、2003年4月には小田急座席番号システム変更による座席番号の変更(101番→1号車1番A席)、2004年10月には2号車に車椅子対応工事等が行われた他、2006年11月にパンタグラフが菱形タイプのものから、シングルアームタイプに交換された。
2009年3月のダイヤ改正では、下りホームライナーの始発駅が三島駅から沼津駅に変更され、営業運転での三島駅乗り入れを終了した。
2011年10月、春のダイヤ改正で371系の引退を発表、一部メディアでは引退後は団体専用列車に改造すると報道がなされた。
2012年3月16日、定期運用から離脱。小田急新宿駅にて「沼津行き最終あさぎり号」の出発式が行われた他、あさぎり7号の松田駅到着時、沼津駅到着時、ホームライナー静岡の静岡駅到着時に371系さよなら放送が行われた。
臨時列車時代
定期運用離脱後、長らく沼津運輸区にて留置されたが、2012年6月17日及び24日の臨時快速「さわやかウォーキングごてんばライナー」として再び営業運転を開始、当日は静岡~駿河小山駅、松田駅を走行した。
12月9日には臨時快速「さわやかウォーキングいわたライナー」として沼津駅~浜松駅間で運転。
2013年5月~6月に掛けて大垣、神領へ貸し出され、東海道線名古屋地区や中央西線にて試運転(乗務員訓練)を行った。
6月23日には臨時快速「おやまウォーキングライナー」に使用される。なお、これ以後371系を使用する臨時列車は全て「急行」となる。
7月20日~8月2日の土日祝日に臨時急行「富士山トレイン371」として浜松駅~御殿場駅間を走行した。
9月14日と15日には最初で最後の団体専用列車に使用される。
10月12日~11月4日の土日祝日に名古屋地区で初の運用となる臨時急行「中山道トレイン371」を運転。名古屋駅~奈良井駅を走行した。
2014年2月8日~23日の土日祝日、再び臨時急行「富士山トレイン371」を運転するが、御殿場付近の大雪の影響で運休が相次いだ。
この運用後、長らく静岡車両区にて留置されていたが、10月20日に「11月30日の臨時列車を持って引退」とプレス発表が行われ、話題の検索ワード2位に「371系」がランクインするなど鉄道ファンの間に激震が走った。
11月1日~11月9日の土日に臨時急行「中山道トレイン371」として名古屋駅~奈良井駅間を、11月22日~11月30日の土日に臨時急行「御殿場線80周年371」として浜松駅~松田駅間を往復し、23年間の活躍に幕を下ろした。
ラストランとなる11月30日の下り列車では、松田駅で371系最終列車出発式、御殿場駅で371系見送り式が行われ、多くのファンが駅や沿線に集まった。
最終列車浜松駅到着後、静岡車両区に回送され、同区に留置されている。
引退後
2014年12月15日に、富士急行がフジサン特急2000系(元165系パノラマエクスプレスアルプス)の置き換え用として、この371系を購入することが発表された。
富士急ではかつて「あさぎり」の運用で同じ線路を走った小田急のRSE車(20000形)が
2代目の「フジサン特急」として走っており、幾度となく顔をあわせていたが、
今度は「同じ会社の車両」として富士山の北麓を走ることになる。
なお、富士急行では7両から3両編成に短縮して使用するため、東日本トランスポーテックが転用のため改造をすることになり、2015年3月29日~4月3日に掛けて静岡運輸区から稲沢を経由して長野総合車両センターへ甲種輸送された。なお、牽引機は静岡~稲沢間がEF64 1033(貨物色)、稲沢~篠ノ井~長野がEF64 1006(国鉄色)。この転用改造で不要となる中間車4両については解体された。
この3両編成は水戸岡鋭治氏デザインの特急「富士山ビュー特急」に改装され、2016年春にデビューする。富士急行での形式は「8500系」。
余談
・新幹線と同じ塗装のため、小田急線や御殿場線利用者からよく新幹線と間違えられていた。
・2階建て車両の1階席はシートピッチがグリーン席と同じなため隠れた人気席となっていた。
・2階建て車両同士の通り抜けは、2階フロアに貫通路が設けられ、1階フロアは行き止まり(非常口)となっていた。
・2010年は空調故障、投石によるガラス破損、人身事故等トラブルに見舞われていた。ちなみにガラスは1枚で高級車が買えるほど高価らしい。
・引退が迫った2012年2月10日には小田急20000形「あさぎり4号」が駿河小山付近で車両故障のため立ち往生し、御殿場線御殿場駅~国府津駅間が約2時間にわたり不通になった。このため、運転再開後371系「あさぎり3号」が松田駅~御殿場駅間で臨時の各駅停車を行った。
・最終運用となる臨時急行「御殿場線80周年371」号運転時、回送列車が下曽我駅まで走行し、最初で最終となる松田駅~下曽我駅間の走行にファンが集まった。
・富士急への転用改造のため長野まで甲種輸送された際、5号車-7号車+1号車-4号車と連結されたため、1編成しかない371系が先頭車両同士連結するという珍しい姿が見られた。また、371系がJR東日本エリアを走行したのは甲種輸送とはいえ初めてである。
関連タグ
ロマンスカー※乗入当時のロマンスカー乗車案内では「JR車両」と案内されていた。