髄膜炎(ずいまくえん)は、脳と脊髄を包む膜(髄膜)の病気である。中枢神経系の病気としては頻度の高い部類のものである。
髄膜に細菌またはウイルスが感染することで発症することが多いが、稀に寄生虫・真菌・薬の副作用などが原因となることもある。
原因
髄膜炎は原因となる病原体や因子によって、以下の2つに分けることができる。
細菌性髄膜炎
化膿性髄膜炎ともいう。細菌の感染によって起こる。細菌が血液に侵入し、血液から髄膜に侵入することで炎症を起こす。大腸菌、溶連菌(溶血性連鎖球菌)、肺炎球菌、髄膜炎菌、結核菌などが原因となることが多い。ウイルス性髄膜炎に比べて重症化しやすく、特に髄膜炎菌と結核菌によるものが危険である。
髄膜炎菌による髄膜炎は流行性髄膜炎と呼ばれ、非常に進行が早く、患者の咳やくしゃみを介して人から人へ伝染することもある。流行性髄膜炎はアフリカや中東の発展途上国で流行しており、日本での発生は稀。
結核性髄膜炎は稀な病気であり、結核の主症状である肺の異常の後に続発する例が多い。結核性髄膜炎は診断が難しく、また、重い後遺症が残りやすい傾向がある。
無菌性髄膜炎
髄膜炎のうち、検査で髄膜に細菌を確認できないものをいう。ほとんどはウイルスの感染によるウイルス性髄膜炎で、エンテロウイルス(夏風邪の病原体)、コクサッキーウイルス(手足口病の病原体)、ムンプスウイルス(流行性耳下腺炎/おたふく風邪の病原体)が原因となることが多い。一般的にウイルス性髄膜炎は細菌性髄膜炎に比べて軽症である。
稀だが、寄生虫や真菌の感染や、薬の副作用が無菌性髄膜炎の原因となった例もある。
症状
初期では高熱・激しい頭痛・首の硬直(後ろが痛み、曲げられない)・刺激に敏感になる・嘔吐などの症状があらわれる。咳・くしゃみ・鼻水といった、風邪のような症状を伴うこともある。
細菌性髄膜炎では、やがて痙攣/けいれんや意識障害が起こり、生命に危険が及ぶ。
流行性髄膜炎では他の細菌性髄膜炎の症状に加え、手足が腐ったり、全身から出血することがある。流行性髄膜炎は進行が速く、約30%が死亡する。
結核性髄膜炎は発熱や咳など、通常の結核の症状の後に続発することが多い。結核性髄膜炎は他の細菌性髄膜炎に比べて診断が難しいため、約30%が死亡する。また、結核性髄膜炎では治っても失明や難聴などの後遺症が残ることもある。
ウイルス性髄膜炎は比較的軽症であり、特別な治療をしなくても自然に回復することが多い。
治療
重大な病気であるため、原則、入院して治療を行う。
ウイルス性髄膜炎は安静にして点滴を行うことで自然に回復する。
細菌性髄膜炎は菌をやっつける薬を服用する。流行性髄膜炎および結核性髄膜炎は早急に治療する必要がある。
予防方法
肺炎球菌感染症、流行性髄膜炎、結核性髄膜炎、流行性耳下腺炎はワクチンで予防できる。
その他の病原体による髄膜炎はワクチンでの予防ができないため、普段から手洗い、うがいを心がけ、感染症にならないように気を付けた生活を送る必要がある。