概要
かつては労咳(ろうがい)とも呼ばれた病気。
肺等の呼吸器を中心に、結核菌が体の組織を破壊し放置すれば死に至る。
ちなみに肺以外にも感染し、腸結核や結核性腹膜炎、髄膜炎などの病気を起こす。
「死の病」だった結核
栄養状態が悪いとかかりやすくなる病気のため、かつては「国民病」とも言われる程広く蔓延していた。
日本でも太平洋戦争後暫くくらいまでは不治の病として扱われ殆ど満足な治療法もなく、安静にしているしかなかった。
そのため、結核患者のためのサナトリウムも結構あちこちにあった。
また、病状が進むと喀血を起こすため、「悲劇の病」としてのイメージが強い。
正岡子規など、若くしてこの病で亡くなった歴史上の有名人も数多く存在する。
このためかつては文学を中心としたフィクションで良く取り上げられた時期もあり、キャラの病弱設定の定番の一つでもあった。
戦後は後述する抗生物質の普及もあり、大幅に患者数は減り、半年以内での投薬および休養で回復する病気になっていき「死の病」のイメージは薄れて行った。
現代の結核
すっかり過去の病気かと思いきや、結核菌は日本の湿気の多い気候を好む菌であり、実は今もかなり多い。
抵抗力の弱っている病人や老人が集団感染することもあり、老健施設や病院などでの集団感染も今なお時折発生している。
近年ではタレントの箕輪はるか(ハリセンボン)、JOYが罹患したことで知られている。
世界においてはアフリカやインド、北朝鮮などで未だに猛威を振るっており、特にインドや北朝鮮では貧困層がきちんとした服薬ができないことによる多剤耐性菌による強力な結核の蔓延も深刻化している。
治療
昔は静養しか手段がなかったり、肺を切除する外科的治療も行われた時代もあったが、現在は抗生物質による治療が基本となっている。
1944年に開発されたストレプトマイシンは結核の死亡率を大幅に下げた。
ストレプトマイシン以外の薬剤もいくつか開発されており、耐性菌が出るのを防ぐために複数の薬剤を交代しつつ使うやり方が主流でありリファンピシン、イソニアジドがよく使われる。
このため薬の服用の際には専門医の指示を守り、勝手なタイミングで中断したり飲みすぎたりは慎むべきである。
日本の感染症法では危険度の高い二類感染症となっており、症状がある人は隔離入院させられる。また、無症状であっても病原体を持っている人はしばらく仕事に行くことができなくなる(就業制限)。
予防
日本ではBCGワクチンの予防注射が行われている。
また、栄養状態や衛生状態を良好に保つことも大事である。
基礎疾患があればかかりやすくなるため、持病の治療をしっかりと行うことが大事。
結核に罹患した実在の有名人
※この一覧では死亡者・生存者も一括して掲載する。
結核患者の登場する作品
福永武彦 『草の花』
『ムッちゃんの詩』 実話を元にした絵本で、戦時中に結核にかかった少女が登場する。
デュマ・フィス (小デュマ) 『椿姫』 ヴェルディがオペラ化。
堀辰雄の同名作品より一部着想を得ている。また、宮崎氏の両親も結核の罹患経歴がある。
佐伯かよの『緋の稜線』昭和初期から終戦後にかけての舞台設定であるため複数のキャラが罹患している。
関連タグ
マイコプラズマ肺炎、百日咳…同じく呼吸器疾患を引き起こす細菌感染症。