概要
本名は「一(はじめ)」。
中学生時代から短歌に傾倒し、投稿を始める。
『明星』で与謝野晶子らと同人になる。
一度は上京して出版社就職を目指すも、結核にかかったりでうまくいかず故郷に戻り、19歳で結婚。同時期に自費出版で初の詩集を出す。その後は代用教員などの職を得ながら地元から北海道にすんだり、再び上京したりする。
東京在住時には新聞社に勤めながら大逆事件への関心を深めたりするが、再び肺を悪くし1912年に結核で死去した。
三行分かち書きスタイルの短歌が有名。
歌集に『一握の砂』『悲しき玩具』がある。
クズエピソードの宝庫
その生涯から長らく「夭折した天才詩人」というイメージが強かったが、2010年代以降はそのクズっぷりが話題となり、現在では中原中也・太宰治と並ぶ文豪三大クズと呼ばれるようになった。
往年の文豪には何かと人間的にクズな逸話が多いものであるが、啄木は特に飛び抜けたうちに入り、それまでのイメージとのギャップもあってか様々なメディアで取り上げられるようになった。
学生時代にカンニングはする(しかもこのカンニングでは奨学生の級友に無理強いしたもので、結局その級友も連座で奨学生の資格を剥奪された)、北原白秋に女遊びを教える、金田一京助に返す気もないのに莫大な借金をする、世話になった与謝野鉄幹や京助の文句を「ローマ字日記」で書く、など例を挙げるときりが無い。
「働いても全然生活が楽にならない」という詩が有名だが、そもそも石川が貧乏だったのは単に金遣いが荒かったからであり、自業自得と言えるかもしれない。
それなのに何故かある種の人にとっては面倒を見てあげたくなる雰囲気があったらしく、またきょうだい唯一の男児であり幼い頃より病弱であったためか母には溺愛されていたようだ。(ただし、その母の顔に饅頭を投げつけたことがある)
友人の金田一京助は家財や夫人の持ち物を売り払ってまで彼に援助していた。
京助の息子である春彦は啄木が来るたびに家のものがなくなって行くので、啄木のことを「石川五右衛門の子孫ではないか」と思っていたらしい。
あまり知られていないが、『一度でも我に頭を下げさせし/人みな死ねと/いのりてしこと』(俺様に頭を下げさせた奴はみんな死んじまえ)という句こそが、彼の気性を如実に物語っていると言える(かも知れない)。ちなみに、この「頭を下げさせた奴」というのは啄木に「金を貸した人達」を指すといわれている。
ただ、彼の人間性が作品の質を落とすものではない。クズであると言われても仕方がないかも知れないが、あまり石川をはじめとした文豪たちをクズ扱いしすぎると不快に思う人も多いので注意されたし。
歌人として詠んだ歌は評価が高いものが多い。
また資本家が人民を抑圧することに憤りを感じ、朝鮮併合を「地図の上 朝鮮国にくろぐろと 墨をぬりつつ秋風を聴く」を皮肉の歌を書き批判している。
創作での石川啄木
石川啄木を題材にした人物、またはモチーフにしたキャラクターが登場する作品。
近年ではクズキャラのイメージが定着したせいか、そのような属性で登場する機会も多い。
詳しくは石川啄木(文豪とアルケミスト)へ。
乙女パズルゲームの攻略キャラクター。→石川啄木(ラヴヘブン)
異世界の危機を救うため、主人公により召喚された。
W主人公の片割れでホームズ役。
CV:鳥海浩輔(アニメ版)
史実とは時期が異なるが、史実同様北海道で新聞記者をしている。
遊び好きで白石由竹とは気が合う模様。十二分にクズだが、それでも史実にくらべればマイルドな方である。時々そのクズっぷりに飽きれた永倉新八に、辛辣な評価をされている。
なお、鳥海氏は他作品でも石川啄木を演じることになるのだが……。
詳細は石川啄木(Fate)を参照。
『かの蒼空に』
明治時代を舞台とした関川夏央原作、谷口ジロー作画の漫画『「坊ちゃん」の時代』シリーズの1本(第3作目)。石川啄木が主人公。いくつか虚構を交えつつ、ほぼ史実通りの内容。借金まみれ、見栄っぱり、女郎屋通い、妻子を放置ほか啄木の懲りないダメ人間ぶりを活写した初期の作品。1992年刊行。同シリーズには以降も啄木が登場。続刊の『明治流星雨』では、大逆事件と啄木の関りが描かれる。