概要
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)において、一類感染症ほどでは無いが危険とされている感染症の区分。
ここに分類されている感染症の共通点としては、
などがあげられる。
かつてはコレラ、細菌性赤痢(赤痢)、腸チフス、パラチフスも二類感染症となっていたが、「食中毒系の病気なので感染力は結核などほど強くなく、厳重な隔離措置などをしなくても十分コントロールできる」という理由で三類感染症に変更された。
必要な措置
一類感染症ほどではないが発生するとヤバいため、患者は入院となる場合が多い。入院できる病院も国が指定した特別な病院に限られている。
ジフテリアとポリオ以外は症状のない者や疑似症(似たような症状があるが病原体がまだ検出されていない)の患者にも適用される。
一類感染症または二類感染症に罹った場合、医療保険と公費による治療が受けられるため、自己負担は無い。(三類以下は医療保険の他、自己負担が発生する)
患者が触れたものや感染源となったものは消毒される。感染源となった動物が駆除されることもある。
患者には就業制限がかかり、治るまでの間は仕事に行くことができなくなる。学校も出席停止になる。
しかし一類感染症とは異なり感染拡大を防止するための都市封鎖(ロックダウン)はできない。
二類感染症の患者を診察した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。そして保健所は都道府県知事に報告しなければならない。
該当する疾患
結核とジフテリアは細菌性疾患、それ以外はウイルス性疾患である。
結核
結核菌による病気。重い肺炎を起こし、末期になると喀血することもある。
発展途上国の病気だと思っている人が多いが、実際には日本などの先進国でもこの病気で亡くなる人が少なくない。
結核菌が感染した部位によっては下痢や血便の症状が出たり(大腸結核)、激しい頭痛が起きたりする(結核性髄膜炎)。
近年は抗生物質が効かない多剤耐性結核菌(スーパー結核菌)もおり、問題となっている。
ジフテリア
ジフテリア菌が出す毒素によってのどに激しい炎症が起こる病気。最悪の場合は呼吸困難を起こしたり、心臓麻痺で死亡することもある。
ワクチンの普及によって先進国ではほぼ撲滅されたと考えられているが、発展途上国では未だに流行がみられる。
細菌性疾患なので抗生物質で治せる。
ポリオ(急性灰白髄炎)
エンテロウイルスの仲間が引き起こす病気。感染しても多くの人は無症状か軽い夏風邪・胃腸炎の症状で治る。
しかしごく稀にポリオウイルスが中枢神経系を破壊する場合があり、こうなると手足の筋肉が麻痺したり、呼吸困難で亡くなってしまうこともある。
ワクチンの普及によって先進国ではほぼ撲滅されたと考えられているが、発展途上国では未だに流行がみられる。また、有効な治療法は未だに見つかっていない。
SARS(重症急性呼吸器症候群)
コロナウイルスの仲間が引き起こす病気で、重い肺炎や胃腸炎を起こす。
2002年に中国で発生し世界中に広がったが、現在は終息している。
ワクチンや治療薬は無い。
かつてはエボラ出血熱などと同じ一類感染症に指定されていたが、2007年の法改正で二類に変更された。
MERS(中東呼吸器症候群)
ラクダの生肉を食べた、またはラクダのミルクを加熱せずに飲んだ人から感染が広がったと考えられているコロナウイルス感染症。
重い肺炎を起こし、致死率が30%を超える非常に危険な病気。
ワクチンや治療薬は無い。
鳥インフルエンザ
鳥類から人に伝染するようになったインフルエンザ。通常のインフルエンザとは比較にならないほど重症化しやすく、致死率は50%を超える。
鳥インフルエンザが発生すると鶏が殺処分になってしまうのはこれが理由。
今のところヒトからヒトへの伝染は無いが、今後変異して新型インフルエンザになった場合、ヒトからヒトへの伝染が可能になってパンデミックが起こる危険性が懸念されている。
二類感染症に相当すると考えられている疾患
新型インフルエンザ
かつてのCOVID-19の場合と同様に隔離や消毒、検疫(患者の入国拒否)などの措置が可能になる。
かつて二類感染症に相当すると考えられていた疾患
2019年新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
致死率は2%程度であり上記の疾患よりは低いとされているが、それでもインフルエンザ(致死率0.1%以下)やノロウイルス胃腸炎などに比べたら十分危険であるため、しばらくは二類感染症相当の措置が運用されていた。
最近では「COVID-19を五類感染症に変更すべき」という意見が出てきたため、2023年5月8日から五類感染症に変更された。(なおこれにより、治療の際に自己負担が発生するようになった)