黄色ブドウ球菌(おうしょくブドウきゅうきん)は、ヒトの皮膚・鼻・腸などに住みついている細菌であり、ブドウ球菌の一種である。
ときに病気の原因になることがあり、AIDSや糖尿病などで免疫力が低下している人に重い感染症を起こすことで有名。また、健康な人でも食中毒や軽い皮膚の病気を起こすことがある。
黄色ブドウ球菌が引き起こす主な病気
食中毒
黄色ブドウ球菌が産生した毒素を含む食品を食べることで発症する。手に傷がある人が調理したおにぎりやサンドイッチなどが原因となることが多い。
主な症状は激しい嘔吐で、下痢を伴うこともある。発熱は稀。通常、1~2日程度で回復し、死亡例は稀。
手に傷がある人(特に化膿している場合)を調理に関わらせないことが重要な予防方法である。
なお、あくまで原因は菌ではなく毒素であるため、菌自体が死んでいても毒素が残っていれば中毒を起こすので注意。また、この食中毒は感染症ではなく、むしろ毒キノコやフグ毒(テトロドトキシン)にあたるケースに近い。
感染症
黄色ブドウ球菌がAIDS・白血病・糖尿病などで免疫力が低下している人の体内に侵入すると、敗血症(血液中に細菌が侵入する非常に危険な病気)・肺炎・心臓の炎症・髄膜炎などの重篤な病気の原因となることがある。これを日和見感染といい、通常は特に問題がない微生物でも、免疫力が低下している場合には深刻な病気を引き起こすおそれがある。日和見感染を起こす微生物には黄色ブドウ球菌の他、クリプトスポリジウム、ランブル鞭毛虫(ジアルジア症の病原体)、トキソプラズマなどがある。
近年、一部の治療薬が効かないタイプの黄色ブドウ球菌が出現しており、問題となっている(これに関しては後述する)。
また、健康な人であってもとびひなど軽い皮膚の病気になることもある。
MRSA
MRSAは、メチシリンという薬が効かない黄色ブドウ球菌である。正式名称はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌。
病院で広がる(院内感染)ことが多く、一度広がると多数の死者を出すことがあり、しばしば問題となる。
使える薬が少なくなる上に、この菌に感染する人は元々持病があり体力がない人たちばかりなので、この菌による病気にかかった場合は重症化しやすく、死亡率も高い。
また、一部の薬が効かない黄色ブドウ球菌にはMRSAの他に、バンコマイシンが効かないVRSA(バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌)もある。