概要
毒性
キノコの毒性は、強い物から弱い物まである。毒性の発現のしかたもさまざまである。わずかな量を摂食しただけで、適切な医療処置を行わない限り死亡するキノコから、軽い胃腸系の中毒を起こす程度のものもある。酒と一緒に食べるなど特定の条件によって毒性の発現するキノコも存在する。また、体質によって中毒するキノコも知られている。
食用とされているキノコでも、生食では人体に害を与える種類は多い。例えばエノキタケは、赤血球を破壊するタンパク質を持っており、また、リステリア菌という最近に汚染されている例も多く、死亡事故もある。こういった菌や毒素は、加熱することで消え去るため、食用となっている。
毒キノコと呼ばれるキノコは、加熱など普通の調理をしても、毒素が消えないキノコを指す。
見分け方
毒キノコの、一般的な見分け方は存在しない。毒キノコを避けるには個別の種類を判別する知識を身に付けるしかない。
- 縦に裂けたらたべられるor食べられない。
- 地味なら食べられる、派手なら食べられない。
- ナスと煮るとキノコ中毒を防げる
- 銀のスプーンをキノコの煮汁に浸し、スプーンが黒くなったらそのキノコは有毒
といった迷信は数多いが、全て例外なくデタラメな嘘っぱちである。こういった迷信を信じたばっかりに酷い中毒になったり、死亡する例も多いので、唯今を持ってそういった迷信は捨てていただきたい。フィクションなどでも登場人物がこのような方法で毒キノコを見分けることがあるが、飽くまでもフィクションなので正確な知識が描かれているとは限らない。これらの情報は、キノコの項にも書いた。
代表的な毒キノコ
大前提として、この世に存在するキノコの9割以上は毒キノコである。
残る1割も食べ方を間違えたら何かしらの毒性がある場合が多く、適当に食べても無害なキノコというのはまず無いと思っていい。
食用として有名なしいたけでさえ、生で食べたら中毒を起こす。
以下に、代表的な毒キノコを列挙する。
キシメジ科
マツタケやホンシメジ、ブナシメジやエノキタケなどの多くの食用きのこを含む科。属によって形態が様々で、全体を通してコレという特徴はないため「分類の墓場」とまで呼ばれていた。近年では研究が進み、タマバリタケ科やホウライタケ科、ラッシタケ科など多数の科に細分化されつつある。
ツキヨタケ
木から生える、柄が極端に短いか全く無い、傘だけのキノコ。所謂ヒラタケ型。優良食菌である有名なヒラタケ、ムキタケ、シイタケに、外見、色彩、サイズ等が酷似しているため、誤食による中毒がクサウラベニタケに並んで多く発生する。2005年10月23日、JA信州諏訪の農産物直売所(岡谷市)で、食用として販売されていた「ヒラタケ」を食べた家族3人が食中毒になったが、「ツキヨタケ」を誤同定して販売した物であった事がわかっている。死亡例もある猛毒菌である。
毒成分イルジンSにより、嘔吐、下痢などの食中毒症状のほか、視界に入る物すべてが青色に見えると言った神経症状も見られる。多くは、キノコを根元から裂いてみると、根元に黒いシミがある。それが決定的な見分け方ではあるが、これを欠くものもある。慎重な同定が必要である。新鮮な個体は、自然の中で夜間うっすら黄緑色に発光する。その姿をとらえた写真は幻想的な美しさであるが(長時間露光が必要である)、最近は発生数が減少しているとも言われている。
シモコシ・キシメジ
キシメジ属の、全体に黄色っぽいキノコらしい形のキノコ。両者よく似ているが、共に優秀な食菌として利用されてきた···が、近年フランス・リヨンでシモコシと思われるキノコでの死亡事故が発生。その安全性は崩壊してしまった。このキノコには未記載の類似種が多く、分類もやや混乱している節がある。今回、その一系統で中毒が起こった可能性を指摘する人もいる。元々、生食や過食すると中毒するとされてきた事もあり、初めての土地での採集や、類似種の同定には細心の注意が必要であると言えよう。毒成分については、下記のニセクロハツと同じ成分だという説がある。
サクラタケ
小さな毒キノコ。桜色のカサを持ち、ポツポツ散生する様は美しい。すりおろした大根のような匂いがするという。
毒成分は弱く、かつては食用にしたこともあったようだが、幻覚成分が含まれていることが判明しているため、食べない方が賢明である。見た目が近いチシオタケは現在は「不食」(毒はないが味が悪いので食用にしない)として図鑑に収録されている
スギヒラタケ
針葉樹の倒・朽木に生える、キシメジ科の小型〜中型なヒラタケ型のキノコ。純白で繊細な細かいヒダを持ち、独特の芳香を持つ優良な食菌として広く利用されてきた···が、2004年に腎機能の低下している人を中心に次々と急性脳症を伴う中毒を発症。十数人が死亡する事態となった。これを受け、林野庁は特に腎機能に問題のある人に、スギヒラタケの摂取を控えるよう呼びかけた。その後の研究で、スギヒラタケが脳症の原因となる可能性を示唆するデータが得られたとしている。
また、本種についてはもともと毒キノコであり犠牲者も出ていたが、中毒症状が風土病と誤認されており、2003年の法改正(SARS対策)で急性脳症の報告義務が発生したことで初めて有毒種であることが発覚したのではないか、とする説もある。一方、早い時期に発生するスギヒラタケを食べてはならないという古い言い伝えがある地方もある。野生を甘く見てはいけないということか。
Trogia venenata(日本では未確認)
上記のスギヒラタケと同じくこれまで食用とされてきたが近年になって猛毒を含んでいることが発覚した毒キノコである。中国の雲南省で老若男女を問わず突然死事故が多く発生していたが、長らく原因は不明であった。というのも、このきのこの中毒症状として、中毒してから翌日以降は回復したように見せかけて、じわじわと内臓破壊などを行うという特性があって、そうした症状が原因の特定を困難にしていたのである。
元々このキノコは穏和な味で、雲南省では人気がある食用きのこであった。しかし突然死事故が発生した原因がこのきのこによるものと判明してからは猛毒なキノコとして認知され、犠牲者は今のところ出ていない(中島、2013)。
テングタケ科
総じて細身で華奢な印象を与え、カサは柄から取れやすく全体に壊れやすい。柄にはしばしば膜状のえりまきのような"つば"を垂下し、根元は膨らんで、多くは"つぼ"やその名残を備える。カサの裏のひだは白色〜薄い色合いのものが多い。有毒菌を多く含む。以上のような特徴のあるキノコを、無暗に試食すべきではない。
ベニテングタケ
大型で、赤い傘に白い斑点が美しいテングタケ科の毒キノコ。おそらく最も有名な毒キノコの一つなのではないだろうか。毒菌を数多く含むテングタケ科のキノコの例にもれず、様々な毒成分を含み色々な症状を起こす。しかし、毒キノコの代表の様に認知されている割には、中毒症状は比較的ましで死亡に至るケースは極めて稀。化学調味料として合成されるグルタミン酸等の旨味成分をはるかにしのぐ旨味を持つ成分(本種の毒成分)を含有し、出汁を取る者もいると言う。ただし、興味本位での試食は絶対に行うべきではない。余談であるが、有毒成分であるイボテン酸がハエに対しても毒性を発揮する特性があるほか、ハエを誘引する成分が含まれていることから、煮汁をハエ取り剤として使用することがあり、英語名Fly Agaric(ハエきのこ)の由来となっている。また、日本でも本種を指してハエトリダケということもある。
テングタケ
テングタケ科。ベニテングタケの、傘を茶色くした様なキノコ。イボがつながっており、ヒョウ柄模様にも見えることから古くは「ヒョウタケ(豹茸)」と呼ばれた。日本ではこちらの方がずっと一般的。毒性はベニテングタケよりも強いとされている。全種と合わせて、食中毒的症状の他、奇行に走るなどの精神症状もあらわれる。毒性こそ強いが、嘔吐の症状が激しく、このキノコごと食べたものを吐き戻してしまうため、こちらも死亡例はまれであるという。よく似たきのこにテングタケダマシというものがあるが、こちらは白い斑点が砕いたピーナッツのように突起になっており、子実体の大きさもテングタケより小さい。
イボテングタケ
白い斑点がテングタケより尖っているのが特徴で、同様の中毒を起こす。テングタケは広葉樹林に生息するが、本種は針葉樹林に生息する。しかも、雨などでイボが簡単に取れることもあってか、マツタケと誤食した例がある。実はイボテン酸はイボテングタケから発見された化学成分である。名は体を表す。
ドクツルタケ
中〜大型で、美しい純白色は白磁器を思わせるテングタケ科の毒菌。欧米ではDestroying Angel(死の天使)と呼ばれ、日本でも、テッポウタケ・シロコドク等と呼ばれ恐れられる致命率の高い猛毒菌。その毒性の強さ、中二病的二つ名、透けるような白色と均整のとれた華奢で美しいフォルムに、一部でファンの多い毒キノコでもある。日本においては、類似種が複数知られている。従来希KOH水溶液をカサ表面に滴下し、黄変するものがドクツルタケ、やや小型で呈色しない物がシロタマゴテングタケとされてきた。しかし、KOHで黄変するものの中にも複数種あると思われ、この方法だけによる同定には問題があると思われる。最近、夏季に日本の低地に発生する小〜中型のドクツルタケの類似種は、ドクツルタケやシロタマゴテングタケとは別種の2種に分けられる事が中国の研究者によって記載された。
また、カサ頂部が比較的大きく突出し、赤味を帯びるドクツルタケ類似種をアケボノドクツルタケとして区別する。ただし、他の類似種も色味を帯びることはある。また、日本においても高地には大型で純白色の典型的ともいえるドクツルタケを産し、これが日本より冷涼な欧州で言われるドクツルタケ(Amanita virosa)そのものなのではないかとも考えられる。このほかにも、類似種はある可能性があるが、一つ言える事はそのいずれもが致命的な毒菌だと言う事である。
毒性は極めて強く、1〜数本の摂食で、病院で適切な処置を施さない限り死亡する。症状は、コレラ様の激しい中毒症状から、小康状態を経て数日経過後に肝臓細胞が破壊されて死亡する。各地で死亡例が報告されている。最近では、2008年9月5日に千葉県の男性(69)が空腹の為道端に生えていたドクツルタケと思われるキノコを一本そのまま摂食し、一時意識不明の重体となった。これは、低地で夏季に発生するタイプの一種によるものと思われる。また、友人に食菌と間違えて「食べられる」と説明して渡し、友人を死亡させてしまった悲惨なケースもあるという。ある程度図鑑を熟読し、知識のある者以外は、全体が白色の野生のキノコを食べるべきではない。テングタケ科にはこのほかにも数多くの猛毒菌、毒菌が含まれる。また、類似種・未知種が多く、同定は非常に困難である。近縁種に傘がオリーブ色のタマゴテングタケやタマゴタケモドキがあり、こちらも一本で大人でも死ぬほどの猛毒である。蛇足ながら、タマゴタケモドキは本州でも生息が確認されているが、タマゴテングタケは現在のところ、我が国での生息例は北海道にてのみである。
ハラタケ科
マッシュルームがこの科に属す。市販されているマッシュルームは幼菌で、成長するとカサは大きく開き、テングタケ科のキノコに似た形態となる。ただし、こちらは成長するにつれてヒダの色が白→ピンク→肉桂食→暗紫褐色と特徴的な変化を見せる物が多い。古くなったマッシュルームのひだの色が、黒っぽくなるのを見た方もいるだろう。
オオシロカラカサタケ
大きな傘は白色で、頭に褐色の割れた卵の殻の様な鱗片を散布する。裏のひだはとても密になっていて、成長すると暗い緑がかった灰色になる。主に夏、公園や学校、市街地の街路樹樹下、芝生、木製チップをまいた跡など、腐らせる有機物がある場所に多数群生する。
その特徴は一般市民の生活圏に密接した場所に発生する事である。大型で、多数が群生、ライン状もしくは菌輪を描いて発生する事もある。菌輪とは、英語でフェアリーリングとよばれる、キノコが円を描くように群生している様を言う。腐生菌が同心円状に広がって移動していく様が観察されている者で、神秘的な光景である。
ただし毒性は強く、嘔吐、下痢、腹痛、発熱といった激しい中毒に見舞われる。誤食した人の話では、吐いたものが壁まで勢いよく飛ぶほど中毒症状が激しかったいう。海外では死亡例もある。
人の生活圏に近く、食用として有名なカラカサタケやハラタケ(マッシュルームに近い仲間で、傘がかさぶたのような鱗片で覆われ、柄が細い)に似ている事から、被害が懸念される。南方系のキノコでここ10数年程の間に、段々と北方に向けて分布を拡大している。地球温暖化との関連を疑う声もある。
なお、カラカサタケも食用キノコとしては優秀であるが、加熱が不十分だと軽い下痢や蕁麻疹のようなかゆみの症状が現れる。
モエギタケ科
モエギのモエは萌。萌黄茸である。モエギタケという種類のキノコは、カサ表面が少し黒みがかった緑色をしている。裏面は、成熟するとブルーグレーに近い独特の色合いを示す。明治~昭和時代には毒菌とされていた(証拠に、明治時代の植物図鑑『有用植物図説』にモエギタケが毒キノコの一種として記載されている例が知られる)が、中国では食用にしている例もあり、近年は食毒不明菌ないしは食用に適さないキノコの扱いを受ける。
ニガクリタケ
針葉樹広葉樹関係なく、樹上に多数普通に発生する小型で黄色のキノコ。可食種を思わせる形状をしており、うまそうに見えるが猛毒である。
中毒症状は、嘔吐、下痢などの消化器症状を経て、痙攣、ショック症状を起こして最悪の場合死にいたる。佃煮にして食べた六人家族が中毒し、子ども四人を亡くす悲惨な事故が起こっている。
生での味は極めて苦く、キノコを触った手でおにぎりを食べると舌がしびれる程の苦味を感じるが、調理するとほとんど苦味はなくなってしまう(もちろん毒性は消えない)。ニガクリタケモドキ等、似たような形態で苦みの少ない物等の類似種がいくつか存在するようだ(少なくとも1種は確認されている)。可食種であるクリタケと外観が非常によく似ており、クリタケと思って誤食する事故が少なくない。毒成分についてはいまだ研究途上にある。
全体が茶色のささくれに覆われており、灰褐色から黄色で柄にはつばがある。杉の木に生える、というわけではなく傘の鱗片がスギの樹皮のようであることからこの和名が付けられた。古くから食用にしてきたものの、体質によっては軽い腹痛や下痢を引き起こすため、しっかりと加熱してから食用にするべし。
ヌメリガサ科
ワカクサタケ
珍しい緑色の毒キノコ。同じく緑色のモエギタケにやや似ているが、モエギタケ科ではなくヌメリガサ科。勿論、この緑色は葉緑体に由来するものではないので光合成はしないが。実はこの緑色は幼菌の傘を覆う粘液が緑色の色素を含んでいるためであって、成長すると粘液が乾燥して傘の地肌の黄色が現れる。食べると幻覚を起こす成分が海外の近縁種のキノコに含まれる為、下記のマジックマッシュルームとして注意が喚起されている。しかし日本では現在のところそうした報告はなく、法で規制されているということもない。
アカヤマタケ
オレンジ、黄褐色から赤色をしたかさと細長い黄色の柄を持つ。かさの表面は粘着質の物質に覆われていて、かさや柄を触ると、触れた部分が一時的に黒くなる。食用キノコではあるものの、体質によっては軽い腹痛や下痢を起こすことがあるという。
フウセンタケ科
キシメジ科と同じく、キノコらしいキノコの形をしたものが多い。キシメジ科と違い、成熟するとヒダの裏はサビ色にちかい濃色になる物が多い。海外では腎不全を起こす複数の猛毒菌が恐れられており、何と近年になって日本でも発見されている。傘の形状からジンガサドクフウセンタケという和名がつけられている。なお、わが国で単にフウセンタケというとカワムラフウセンタケというきのこを指す。このきのこは食菌で、和名は牧野富太郎と親交があった菌学者・川村精一にちなむ。
コレラタケ
ケコガサタケ属。小〜中型で、全体が茶色っぽい地味なキノコ。しかし、名前の通り激しい中毒を起こす。ドクツルタケによく似た症状を起こし、死亡する事もある。木に生えるキノコで、同じく木に生える、エノキタケ・クリタケ・ナメコ・センボンイチメガサ・ナラタケの仲間といった、茶色い有名な食用菌に似ている、エノキの栽培後に発生する事もあるという危険の多いキノコ。旧名をドクアジロガサと言ったが、危険性を広く知らしめるために、かつて日本全土を恐怖のどん底に叩き落したコレラの名称を冠した名称に変更された経緯を持つ。
地味なキノコは食べられる。木に生えるキノコは食べられる、食用キノコと一緒に生えるから食べられる。といった迷信に当てはまらないキノコである。ケコガサタケ属には、同じように木に生えるといった地味なキノコが多く、ヒメアジロガサなど恐るべき猛毒菌がその名を連ねている。アメリカでは、ティーンエイジャーの少女がマジックマッシュルームでトリップしようとしてヒメアジロガサを誤食し、一時生死の境をさまよったという報告がある(中島、2013)。
イッポンシメジ科
特徴は、成熟するとヒダが桃色〜肉色に変わること。繊維状の柄がややねじれて生える事。毒菌が多い事である。
クサウラベニタケ・イッポンシメジ
見た目、色合いは、キシメジ科のホンシメジ等の食菌によく似ている。また、同科の食菌であるウラベニホテイシメジとは、キノコに慣れたベテランでも見分けがつかない程よく似ている。10年以上キノコを取っているベテランでも見事に騙され中毒する程で、またの名を、メイジンナカセという。
症状は消化器系に作用し、下痢嘔吐を繰り返す。前述の理由から中毒例が最も多く、死亡例もある猛毒菌である。本種はカサが吸湿性で水にぬれると色が濃くなる、絹状のツヤを欠く、全体にホコリ臭い。等の特徴があるが、サイズや形態、色など変異が多く、数種にわかれる可能性がある。
イッポンシメジと通称されることがあるが、何故か食用であるウラベニホテイシメジも「イッポンシメジ」と通称されることがある。さらに本種とは別にそのまま「イッポンシメジ」という名前の有毒種すら存在するという非常にややこしいことになっている。
イグチ科
カサの裏面がひだではなく、網目やスポンジ・管状(管孔)になっているのが特徴。美味な食菌が多く、欧州でも多く食用にされている。その為、日本ではイグチ科の特徴を持つキノコには毒菌はないと言われてきた。もちろん全くの誤りである。
ドクヤマドリ
ヤマドリタケ属。大型で、食菌のヤマドリタケモドキに似た、いかにもうまそうなイグチ科のキノコ。しかし、少量でも胃腸系の激しい中毒症状を起こす。この中毒で、イグチ科に猛毒菌がないという神話は崩壊した。群馬県の山荘でキノコ汁に誤って混入、4人が中毒し入院したという。詳しいとされる人物に同定を依頼し、ヤマドリタケと思って使用したという。長野県では、昔「太平」なる男がこのイグチを食べて死亡し、以来タヘイイグチの名で毒キノコとして知られていた。変色性の無いヤマドリタケと違い、管孔や肉を傷つけると弱く青変する。
ミカワクロアミアシイグチ
ニガイグチ属。全体が黒っぽく、柄が網目模様になっている。愛知や三重で確認されていて、マウスに対して極めて強い毒性を示すイグチ科随一の超猛毒菌。2000年代になってから中條長昭氏によって発見された猛毒キノコで、イグチ科の安全神話は崩壊の一途をたどっている。似た物に、同属のモエギアミアシイグチ、ヤマドリタケ属で食用のススケヤマドリタケ・クロアワタケ・オオミノクロアワタケ等がある。まだまだ、同様に強い毒性を持つ未知種が隠れている可能性は十分にある。イグチ科だヤマドリタケ属だといって、決して油断しない事が大切である。
バライロウラベニイロガワリ
富士山等に見られる、全体が紅色のヤマドリタケ属のイグチ。カサの表面は白味がかっているが、裏の管孔の口の部分も赤っぽい。その毒性は、一欠片飲んだだけで嘔吐を繰り返す胃炎を起こす程強烈らしい。孔口が赤っぽいイグチは類似種は日本にもアメリカウラベニイロガワリ(食用菌)などいくつかある。ヨーロッパで知られるウラベニイグチは学名をBoletus satanas(ヤマドリタケ属 悪魔)と名付けられた毒キノコ。北海道でも似た種類のイグチで、臨死体験をするほどの激しい中毒を起こした例があると言う(長沢、2012)。裏の赤いイグチは安全どころか、キノコ全体の中でも要注意といえよう。
ベニタケ科(ベニタケ目)
縦に裂けないキノコの仲間。普通のハラタケ目(上に紹介してきた、いわゆるキノコ型のキノコを作るグループ)とは、細胞構造が違うらしい。特別毒性が強いものばかりではないが、臭いの悪い物、やたらに辛いもの等がある。「ドクベニタケ」というキノコは毒菌の中でもそこそこ名を知られているもので、かつては強い辛味を持つことから、おそらくは「こんなに辛いのは毒を持っているせいだ」ということで「ドクベニタケ」と名付けられたのだろうが、近年になって複数の毒性分を含む頃が明らかになっており、やはり「ドクベニタケ」の名称は伊達ではなかったことを証明した。
ニセクロハツ
饅頭型からじょうご型に傘を開き、その表面はこげ茶色。ひだはクリーム色で比較的疎。傷つけるとゆっくり赤く変わる。毒性は極めて強く、一本食べれば致死量に至る。夏に「キノコ狩りで猛毒のニセクロハツを食べて死亡」がかなりの確率で年に一度は新聞に躍る。極めて地味なキノコで、派手なキノコは毒、地味なキノコは食という迷信の真逆である。中部地方以西にのみ発生する。
2009年、その毒成分が、京都薬科大学の教員橋本貴美子氏らの研究チームによって突きとめられた。その物質、シクロプロペンカルボン酸(C4H4O2)は、生物が作る毒の中でも最も単純な構造の有機化合物であるとされている。マウスへの投与実験では、この物質が骨格筋を溶解し、その溶解物が臓器に障害を与えて死亡させるという。形態的に類似した種が複数あるとされ、クロハツ(古くは食用にされたが現在は毒成分を含むことが判明している。毒素自体は加熱で壊れるが、本種と間違えてニセクロハツを食した事例が多いため、毒キノコとして扱われている)・ニセクロハツに似たキノコは試食してはならない。
因みに名探偵コナンでは毒殺トリックに使われた事がある。
また、カワリハツという近縁種があり、こちらは緑色や薄紫色、紅色など傘の色合いが多彩で、食用にできるのだが、傘の黒っぽいものがニセクロハツに類似するため、おすすめはできない。
特殊な毒キノコ
特定の条件で毒性の発現するキノコや、症状が特徴的な物を紹介する。
お酒と一緒に食べると中毒する物
キシメジ科カヤタケ属ホテイシメジ ナヨタケ科ヒメヒトヨタケ属ヒトヨタケ(ヒトヨタケ科はハラタケ科の異名化・消滅) モエギタケ科スギタケ属スギタケ他
コプリンなどのアルコール分解阻害物質を含む菌群。通常食用とされるが、摂食後最大一週間の間は禁酒が必要。酒を飲むと、激しい二日酔い様の症状に襲われる。
特定の手順で食用とされる毒キノコ
アミガサタケ
蜂の巣のような特徴的な傘を持ち、毒物指定のヒドラジンを含む。
水溶性のため茹でてお湯を変えることを2回ほど繰り返せば、9割は毒を取り除ける。最近は海外の珍しい食材を取り扱っている店で、乾燥させたものが出回ることがある。
しかし、完全に毒抜きができるわけではないのでたくさん食べるのは止めておこう。
近縁種のトガリアミガサタケ、アシボソアミガサタケも同様。
シャグマアミガサタケ
名前が似ているが全く別の科(フクロシトネタケ科、旧くはノボリリュウ科に分類)のキノコ。
見た目も脳みそのようなしわしわの傘を持ちそこそこグロテスク。
同じく茹でてお湯を変えることを2回ほど繰り返せば、9割は毒を取り除ける……のだが、含まれる猛毒のギロミトリンは沸騰水中ではすみやかに加水分解され、同じく猛毒のモノメチルヒドラジンへ変化する性質を持つ。近縁種にヒグマアミガサタケがあり、こちらも色合いこそ薄いものの見た目が近く、やはり有毒ではないかと考えられているため要注意。
モノメチルヒドラジンは水溶性が高い上、水より沸点が低いので蒸気に毒が乗る。
つまりは茹でている最中の鍋が毒ガス発生装置へと変貌する。換気を丁寧にしておこう。
形状が少し似ているノボリリュウも本種(シャグマアミガサタケ)ほどではないが毒成分を含むため、よく加熱してから食用にする。
余談だが、和名の「シャグマ(赤熊)」とは、戊辰戦争の折に官軍兵士がかぶっていたあの赤いもじゃもじゃである。
味の悪いキノコ
ドクベニタケ・ツチカブリ他
舌がしびれるほどに辛い。キノコの味は、同定の貴重な情報の一つである。ただし、かじったあとちゃんと吐き出す事が肝要。かじった程度で中毒はしないものの、大抵のキノコは、生でボリボリ食べれば何らかの体調不良に結びつくものである。
独特の中毒症状を示すキノコ
ハエトリシメジ
ハエが死ぬ程度の有毒成分を持つが、体には蓄積せず、普通に食べる分には問題ない。
しかし、小さいうえに非常に美味しいため、ついつい40本も50本も食べてしまい、毒成分の過多により嘔吐や下痢に襲われる人も多い。ただ、一晩で回復するため、あまり危険視されていないのが現状である。
恐ろしい様だが、これはスーパーでもよく見られるマイタケやシイタケでも同様だったりする。何事も欲張らない事である。
ドクササコ
カサがじょうご型に開く、キシメジ科ドクササコ属のキノコで割と美味しそうな外見。似た食菌もいくつかある。この毒キノコの毒性自体は致命的な物ではない。しかし、その症状は劇的な物である。食後の軽い中毒症状を経て数日後に手足や鼻等といった各人体の末端部が真っ赤に腫れあがり、火傷を起こしたような激しい痛みに襲われる。その痛みは想像を絶する物で、「ツメの間に焼け火箸を刺されるよう」とも表現される。ちなみに、ツメの間にタケ串を刺すのは古典的な拷問方法の一つである。それを焼け火箸と表現するのであるから多少は想像の助けになるだろうか。モルヒネやアスピリンといった強力な鎮痛剤も効果がなく、局所麻酔による硬膜外神経ブロックという超荒技でしか痛みを抑える方法はない。血液透析等も効果があると言う。この症状は、実に10日から1か月にわたって続く。このキノコによる死亡例には、激痛をやわらげるため患部を水につけ続けた事による、皮膚組織の破壊に起因する感染症や、余りの激痛による心身摩耗による衰弱死や、苦痛に耐えかねて自殺してしまう物が多くを占める。
別名ヤケドキン・ジゴクモタシ。欧州でも、近縁種による同様の症状が報告されている。これを耐え抜いたら確かに忍耐力は付くだろうし、生きている事の有り難さは理解できそうだが、代わりにそれ以上に大切な物さえ失いかねない。ギネス世界一を目指す超ドMでもやめた方がいいだろう。どう考えても周囲に迷惑がかかる。現世にあって地獄を味わいたくなければ、キノコの不用意な試食は厳に慎むべきである。しかし毒素は水溶性であるため、症状が軽くてすんでしまったり、症状そのものが発生せずに終わった例もある。
こうした例もあってか、大正時代まではこのきのこの中毒事故は一種の風土病と考えられていた。
ヒダハタケ
食用とされていた事があるようだが、毒キノコ。
急性症状もおこすが、慢性毒性があり、最初何ともなかった人も、食べ続ける事により独資柄分が体に蓄積し、症状が劇的になり、ついには死亡する事もあるとされている。毒成分は不明。近縁種のニワタケはヒダハタケに似た形状で全体的に大きく、子実体が細かな毛で覆われ、若干強靭な性質を持つ。日本での中毒例はまだなく、しばしば不食菌(※毒はないが味が悪いため食用にしないキノコ)とみなされるが、中国では毒キノコとされている。
極めて毒性の強い毒キノコ
カエンタケ
通常、猛毒キノコとはいっても、ちょっとかじったり、手で触れたぐらいでは、吐き出し手洗いをちゃんとすれば害を受ける事はほぼないと言っていい。しかし、このカエンタケだけは別である。
これまで紹介したキノコとは違い、普通のキノコらしい形はしていない。形状は1から数本に枝分かれした棒、角、トサカ、掌状で、全体があざやかな朱色をしている。成熟すると胞子で白く粉っぽい汚れが付く。通常高さ3〜10cm程度で、枯木の切り株の根元等から発生する。肉質は白く硬い。
毒性はこれまで紹介したいずれの毒菌より強い。致死量は極めて微量で、取すると短時間で症状が現れる。激しい腹痛、嘔吐、下痢等の消化器障害に始まり、後に手足のしびれ、呼吸困難、言語障害等の神経症状が現れる。さらには全身の皮膚、角膜などがただれてはがれ、脱毛を起こし、最後は多臓器不全で死亡する。回復しても、小脳が萎縮する脳障害、言語・運動障害など、後遺症が残るという。毒成分は、生物兵器としても用いられたトリコテセン類というカビの毒とほぼ同一である。
群馬県で夫婦が形状のよく似た食菌であるベニナギナタタケと誤同定してナスと油炒めにして調理。妻は苦味を感じてすぐ吐き出したが、夫は摂食。十五分後に両名とも症状が現れ、夫は緊急治療の効果もなく、多臓器不全などの致命的な病状を併発し三日後に死亡している。また、宿に置物として飾られていたカエンタケを客が酒に漬けてその酒を飲み、中毒死した例もあるという。また、汁の皮膚刺激性が強く、キノコを触っただけで皮膚がただれることがあるとされる。人によっては少し触れても炎症が起きなかった例や、とある菌類研究者がカエンタケの小片を1時間ほどマスキングテープで皮膚に貼り付けて固定したところ、炎症はできたが、少しピリピリする程度であったという。とはいえ、それはあくまでも例外なので、絶対に面白半分で触ってみたりかじってみたりしてはいけない。
稀な珍菌とされてきたが、近年ナラ枯れ病の拡大に伴い発生数が増加。江戸時代にはすでに日本に生息していたようで、植物図鑑『本草図譜』には「大毒ありといへり」と記載されている(おそらく見た目から)。キノコに関する昭和時代の古書には食毒不明とされているものが多く、またそもそも記載されていないこともある。大阪市立自然史博物館では、一般からの本菌の発生状況の情報を求めている。なお、姿の似た食菌であるベニナギナタタケは、サイズがずっと小型で、肉質も軟らかく弾力がある事で区別できる。
食用キノコだが時として中毒するキノコ
世間一般では食用だが、中毒例があったりするキノコを取り扱う。
加熱不十分だと中毒するキノコ
アミガサタケやシャグマアミガサタケ程ではないが、しっかりと加熱しないと中毒するキノコは数多く存在し、ムラサキシメジやコガネタケ、クリタケ等のポピュラーな食用キノコが多い。もちろん、シイタケやマイタケなど、普段スーパーなどで市販されているキノコを生で食べると若干の下痢や皮ふ炎を起こした事例はあるため、「きのこは加熱して食うもの」と覚えておくべきである。
体質で中毒するキノコ
一般的には食用だが体質によって中毒するキノコは存在し
ハイイロシメジやオシロイシメジ(ただし本種は加熱が不十分だと、体質に関係なく中毒を引き起こす)、マツオウジやオオイチョウタケ等が上げられるが基本的にこのようなキノコはほとんど人には無毒であり、一般的な体調不良の症状が出る為、キノコに当たったのかが分かりにくい。
食べ過ぎると中毒するキノコ
ハナイグチやハラタケの仲間が上げられる。キノコはそもそも消化が悪く、食べ過ぎると中毒しやすく、キノコだけでお腹いっぱいにするような食べ方はしてはいけない。
放射性物質を蓄積しやすいキノコ
アンズタケやカノシタ、ウスキモリノカサ(ハラタケの仲間で、マッシュルームに近縁)等が上げられる。キノコは放射性物質を蓄積する性質を持っているものがあり、原子力発電所の事故等がなくても、基準値以上の放射性物質を溜め込んでいる場合がある。
マジックマッシュルーム
毒キノコのうち、幻覚性症状を伴う物を言う。元は中南米のシャーマンが占いのために用いていたもの。かつて合法ドラッグとしてインターネットの普及に伴い広く販売が行われた。日本では法規制がなく、栽培も麻薬成分の抽出も容易であったことから様々な取引が行われた。
しかし、2001年に俳優が使用して緊急入院するなど社会的関心が高まり、2002年に麻薬取締法にて麻薬原料植物に指定され、規制の対象となった。違反すれば、法律で厳しく罰せられる。以下に、規制対象となっている種名を列挙する。
シビレタケ属
- ヒカゲシビレタケ
- ミナミシビレタケ
- アイセンボンタケ
- ヤブシビレタケ
- オオシビレタケ
- アイゾメシバフタケ
- シビレタケ
ヒカゲタケ属
- ワライタケ
- ヒカゲタケ[ワライタケと同一説あり)
- センボンサイギョウガサ
- トフンタケ
アオゾメヒカゲタケ属
- アオゾメヒカゲタケ
他多数。
形態についての特徴、またはそれを推測させるような情報は、ここでは極力述べないこととする。
現在の法規制の問題点
この規制については、法律の内容や法律自体の性質に照らして、様々な問題があるとされている。以下に、その例を述べる。
- 麻薬取扱者で無い、多くの研究者の研究の為の自生種(殆どが日本に普通に自生する種)の採集が禁じられ、科学的な研究およびその発展に大きな支障が出る。
- 以下の事から、法律の論理的根拠が非常に曖昧である。
- シロシビンが含まれないが幻覚性毒を含むキノコが規制されていない等目的に矛盾がある(イボテン酸を含むテングタケ科のキノコ等)。
- マジックマッシュルームの定義が明確でなく、規制対象の基準が全く不明である。
- マジックマッシュルームは植物とは分類学上かけはなれた生物であり、法律の論拠が全く非科学的である。
- 非常に重罰が課せられるにもかかわらず、国民に法律による規制を行う経緯や内容が周知されていない。また、その努力も見受けられない。
- 規制対象の種は、日本の、特に人の生活圏にも普通に自生している。このため、以下の事が想定できる。
- 庭に胞子が飛んできて勝手に自生した。キノコ狩りで同定出来ず誤食した。等のケースが容易に想定でき、冤罪を生む可能性を否定できない。実際、ヒカゲシビレタケが首相官邸の芝生に生えてニュースになったことがあるし、ワライタケの有名な中毒事例は、近所の人がきのこ狩りの後のおすそ分けにくれた食用キノコの中にそれが混じっていたことが原因である。
- 実効的な取り締まりが事実上難しい。
- 取り締まりが難しいため、法規制によって非合法な商売になることにより、価格の上昇が起こる。結果、暴力団や海外犯罪組織等のアウトロー団体による専売・資金源化される恐れが非常に強い。
- 使用者への蔓延の実態把握が難しくなる。
- 宗教的行事への使用が禁じられる。
- 以上の事から、社会的にマイナスの面の方が大きい。
確かにこの法律の効果の程については、相当な重罰規定であるにもかかわらず見えてこない。
この事実も上の主張を支持する事となるだろう。このような事から現在の規制方法の見直しや、より実効的かつ論理的な規制方法を求める意見は根強い。
マジックマッシュルームの毒性
知覚的な作用がクローズアップされがちだが、肉体的には嘔吐や腹痛等の中毒症状もあらわれる。知覚作用は、中枢神経の興奮、麻痺。これらの中から幻覚症状があらわれるものと思われる。また、感情の起伏が激しくなる。時にはパニック症状を起こすなど、異常な興奮状態となる。関西の学生がこれを服用した事が原因で衝動的に飛び降り自殺に及び死亡している。これはマジックマッシュルームと呼ばれるキノコによる中毒死と捉える事が出来、マジックマッシュルームは死亡例のある非常に危険なキノコだと結論する事が出来る(これは幻覚剤全般に見られる症状である)。また、依存性はないとする意見があるが、超現実的な使用体験から、価値観や思考に何らかの影響が出る事は明らかであろう。
多幸感が増す事もあるとされるが、所謂バッドトリップの状態に陥る事ももちろんある。ミュージシャンの大槻ケンヂ氏は、東南アジアのレストランで興味本位でマジックマッシュルームと思われるキノコの入った料理を注文。その後この上ない程の幸福感を味わった後、例えようもない絶望感に襲われた。その後その体験が、現在に至るまで10数年間強烈なトラウマとなり、一切のキノコを口にできない状態だと自著の中で語っている。
現在マジックマッシュルームの取り扱いはおおよそ違法である。心身に重大な障害を及ぼす恐れが強い物であり、入手の過程で築かれる人間関係も反社会的で危険な物である可能性が高い。興味本位での使用等は絶対に行ってはならない。
マリオシリーズにおける毒キノコ
「毒キノコ(スーパーマリオ)」参照。
イラストタグにおける毒キノコ
テングタケ科を始めとする繊細で美しい色彩やフォルム、その禁忌性、アンタッチャブルな雰囲気からか、幻想的なイメージの作品に使用される事がある。また、ベニテングタケのイメージからか童話的な作品にアクセントとして付けられることがある。そう言ったイメージから、様々なイメージを膨らませた結果、作者のオリジナルな意匠により擬人化されたキャラクターとしてキノコそのものが描かれる事もある。もちろん、キノコ本来の造形の美しさを感受し、そのまま作品として描く場合もある。
アニメ・ゲーム等の二次創作ネタとしては、ベニテングタケにカラーリングの似たキノコのアイテムや、毒キノコのアイテム登場するスーパーマリオシリーズに関連した作品にベニテングタケ等が登場する事も多い。また、東方Projectの登場キャラクターで、キノコを加工して魔法の材料とする霧雨魔理沙をテーマとする作品に付けられる事もある。
俗称としてよばれる毒キノコ
自動車の吸気管に取り付ける後付パーツで、じょうご型の筒にドーム状のスポンジが金網などで固定されているものがあり、吸気管のエアクリーナとして用いられ形状が似ているので毒キノコと呼ばれる。金網を塗装し、スポンジの色を紫や赤にする事で毒キノコそのもののような外見にするものも居る。後付パーツに変更しなくても、吸気系統にはエンジンに塵が入れないようにすべく、エアクリーナが必ず装備されているので車弄りがそうとう好きでもない限りわざわざ「毒キノコ」に付け替える必要はない。箱に包まれた純正と違い、交換によりむき出しにすることでエンジンの熱を吸いやすくなり、パワーダウンを招くことにもなる。
付け替える場合、車種によっては吸気効率が向上することで空燃比に狂いが生じて不調になる、最悪はエンジンブローを招く為、補正機器の搭載やECUマップの書き換え等を必要とする。また湿式の場合、スポンジにしみこんだオイルがエアフローセンサーに付着して不調を招く問題もある。
備考余談
1990年代以前の古いきのこ図鑑はたいてい毒キノコは30種類ほどありますと書かれていることが多く、更新済みの2023現在は30種類どころではない(当サイトに挙げられているだけでも50種近くはある)ため、図鑑は買い直し、ネットのグーグル先生も併用した方が安全。
なお、原則食用キノコは、酒と一緒が大丈夫な品種でも、サラダで生食は厳禁(市販のマイタケやエノキダケなども)。これは非加熱により酵素毒素があり、ウナギの血清毒とはちがうが、火を通さないと無力化できないため。
参考文献
今関六也・大谷吉雄・本郷次雄 (著), 保坂健太郎・細矢剛・長澤栄史 (監修)「山渓カラー名鑑 増補改訂新版 日本のきのこ」(学研、2011年)
長沢栄史「Gakken増補改訂フィールドベスト図鑑 日本の毒きのこ」(学研、2012年、初出2004年)
中島淳志「世界の不思議きのこ(上・下)」(Kindle、2013年)