ドクツルタケ
どくつるたけ
学名Amanita virosa。テングタケ科。ツバとツボを備え、表面がささくれ立った柄を持つ。色は白、場合によっては透き通るような印象のある幻想的な純白色になる。
見た目は白い普通のキノコ。しかし、其の毒は灼熱の悪魔を越える者也。
「シロタマゴテングタケ」「タマゴテングタケ」と共に「猛毒きのこ御三家」と称される。
毒キノコの中で最も犠牲者を出しており、「最強」と謳われる存在。
その毒性は極めて高く、1本(7~8g)で確実に成人男性1人を死に至らしめるほど。
食べるとまず6〜24時間後に第1波が訪れ、腹痛・嘔吐・下痢という他の毒キノコと同じ苦痛を与える。これは約1日で治るのだが、その3日〜1週間後に問題の第2波が訪れる。
第2波が到来する頃には、体内ではこのキノコの毒性によって組織の再生に必要なタンパク質の合成が阻害され、それによって肝臓・腎臓といった主要な臓器がスポンジ状に破壊された手遅れな状態となっており(劇症肝炎と似たような状態になる)、消化管出血(胃腸出血)を起こして洗面器から溢れる量のドス黒い血を吐き散らし、絶痛絶苦にのたうち回り、呻き、苦しみ抜いた末に絶命する。
仮に早期の治療によって九死に一生を得たとしても後遺症は重く、生涯に渡って人工透析を強いられることとなる。
日本で実際に起きた事件として、コレを母息子の二人で食べてしまい、第一波が運悪く(良く?)重症化し母親が死に、母親の葬式の準備をしている最中に息子に第二波が襲いかかり、ドス黒い血を吐きながら「俺を助けてくれ!」とのたうち回って死亡するという痛ましい事例がある。
このキノコの恐ろしさは三つあり、一つは食後すぐには中毒を起こさず二度に渡って症状が表れる事、もう一つは意外なことに非常に味がよくおいしい事、そして全く珍しくなく普通にどこにでも生えている事である。
一家で沢山取ってきて食べてみたらとてもおいしく、ついつい食べ過ぎて致死量を遥かに超える毒を摂取してしまい、中毒を起こす頃にはもう取り返しがつかずそのまま一家全滅というパターンが多い。
また、第1波が引いたからといってそのまま安心してしまい、気づかぬうちに内臓を破壊し尽くされるのである。よって、第2波の苦痛は想像を絶するものとなる。
その猛毒故に「イチコロ」だの「テッポウタケ」(そのこころはどちらも「当たれば死ぬでしょう」)だのといったロクでもない別名が付けられている。
先述の通り、この恐ろしい猛毒キノコは全く珍しくない。ちょっとそこら辺の山を散策すれば、特に注意して探さなくても普通に見つかる。最悪道端に生えていたりもする。
ここを読んでいる方々には、とにかく事前に正しい知識を仕入れ、生えているものを無闇に口にしないよう気をつけていただきたい。
キノコ狩りに行って身内や友人にお裾分けをする前に、専門家に鑑定してもらうことも大切である。家族や友人を誤って死なせてしまうという悲劇が実際に何件も起きている。
世界で最も犠牲者を出した猛毒キノコであっても、口にしない限り悲劇が生じることはないのである。
上記の通り最強の毒キノコとして恐れられる一方で、幻想的な姿、まるで意思を持っているかのような中毒症状、「死の天使」という異名から、擬人化が盛んに行われている(擬人化フィギュアが発売されたこともある)。
やはり天使をイメージした作品が多い。