カエンタケ、それは世界最強クラスの毒キノコの一種。
概要
ボタンタケ科。
カサを持たず、本体が数本に枝分かれする独特の形状をしており、それが炎のようなので「火炎茸」という。
ちなみに身は固く、キノコというよりも赤サンゴの置物を彷彿とさせるが、危険なので決して触ってはいけない。
味は非常に苦く、「口に含んだ瞬間ハンマーで頭をぶん殴られた様な衝撃を感じた」という証言があり、また、それだけで口内が爛れ口内炎まみれになったとか。
見るからにヤバそうなキノコだが、よく似た外見の食用キノコとしてベニナギナタタケというのがある。またキノコっぽくない見た目なので冬虫夏草と間違えてしまう人もいるらしい。それでも見分け方はあるが、素人判断はとっても危険なので命を優先すべし。
生息圏・時期
日本や中国、ジャワ島などに分布。
主に夏の始まりから秋の時期に、カシノナガキクイムシによるナラ枯れ症状を起こした樹木の根元によく発生する傾向があり、ナラ枯れの被害が広まるにつれて発生頻度が上昇しているという報告もある。
最近では都内の公園でも相次ぎ発見され、子供達が誤って触らないように注意を呼び掛けている。
キノコなんだから枯れ木が増えたらそりゃ増えるでしょ……と思ったあなた。このキノコの場合は他の菌に対して寄生する「菌寄生菌」なので、枯れ木ではなくナラ枯れ菌自体に寄生しているようなのだ。
この関係から、元々の分類がニクザキン科ツノタケ属だったのがボタンタケ科トリコデルマ属に変更された。
毒性
致死量は3g程度。
その後、目眩・手足の麻痺・呼吸困難・言語障害といった神経性障害や、皮膚の糜爛(ただれ)・脱皮といったアレルギー症状が発生し、最終的には肝不全・腎不全・呼吸器不全・消化管出血という具合に多臓器不全症状を発症して死ぬ。
運良く回復しても小脳萎縮等による後遺症が残る程
第二次世界大戦に使用された毒ガスに似た様な素性の毒があったとか無かったとか言われる程、相手を殺すことに特化した劇物である。
触らぬキノコに祟りなし?
このキノコ最大の特徴は「触っただけで皮膚が爛れる可能性がある」という事。カエンタケの汁が皮膚に付着すると爛れることがあるのだが、乾いていたって効果はあるし、汁を出したことのない無傷ものか、乾いているだけかは見分けがつかない。
散歩中の犬が本種を蹴りつけてしまい、異常をきたした足を舐めることで付着していた毒成分により中毒死するという事例も発生している。
しかし爛れるかどうかや爛れた場合の症状の重さには個人差もあるため、ネットで検索した際に見られるようなボロボロの皮膚の画像や、いかにも「触ったら100%こうなる」とでも言いたいようなインパクトある見出しや内容は誇張を含んでいる面が多くある。
手っ取り早く危険性を周知するために敢えてそうしている面もあるだろうが、正しくない情報を鵜呑みにすることは不安や恐怖を必要以上に増大させかねないため、何事も正しく理解し正しく恐れることが重要である。
それでもやはり危険なことに変わりはないので、街中など人間が日常的に活動する場所で発見した場合は近寄らず、速やかに最寄りの保健所に通報することが望ましい。