AIDS
えいず
AIDSとは、後天性免疫不全症候群の略称。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が免疫細胞に感染し、免疫細胞を破壊して後天的に免疫不全を起こす免疫不全症である。
勘違いされがちであるが、「エイズ」は病気の名前であり、病原体の名前が「HIV」である。このため、「エイズに感染する」という言い方は厳密には間違いで、「HIVに感染する」「エイズを発症する」が正しい。
詳細はwikipediaや医療サイトを参照のこと。
ざっくりといえば、免疫そのものが破壊されて行く病気のため、普段なら何ともないような細菌やウィルスなどにも簡単に体がやられてしまい、複数の疾患を発症しつつ体が弱っていく病気である。
感染から陽性と検出可能になるまで2週間程度、発症までは5〜10年程度という潜伏期間が存在するため、感染から何年も経って症状が出てから初めて発覚するような場合もある。
感染初期(急性期)の1週間〜4週間ほどは発熱や喉の痛み、せきといった風邪のような症状が出る人もいるが、症状がない人も多い。この後は症状のほとんどない潜伏期間に入り、短い人で2年ほど、長い人で15年ほど経ってから完全に発症する。
免疫機能が破壊されるため、健康な人であれば罹ることのない病気にかかりやすい(いわゆる「日和見感染」)上に、敗血症や免疫系のがんになる可能性もある。
感染源は血液や体液(特に精液や膣分泌液など)、母乳、性行為による感染、注射の回し打ちなどが原因の血液を介した感染、母子感染が主な感染経路である。
感染力自体は強いものではなく、くしゃみ、握手程度の日常的な接触ではまず感染しない。唾液や汗などには感染を促すほどの濃度でウイルスが含まれていないため、プールや温泉に一緒に入ったり、飲み物の回し飲みをしたりといったことでも感染することはない。
現在の日本ではチェック体勢が厳しいため例は少ないが、輸血による感染も若干ある。
また以前は日本でも大規模な血液製剤(献血によって集められた血液を材料としている)による感染があり、大変な問題になった。俗に言う「薬害エイズ事件」である。
これは、当時血液製剤の販売ルートが独占化していたことと、非加熱製剤の利用以外が認められていなかったこと、原材料となる血液を海外の売血に頼っていたことによる。これによって血友病患者の多くがもう一つ高リスクの爆弾を体内に抱えてしまうことになった。
現在は国内献血を原材料とし、HIVを始めとするウイルスの不活性化のための加熱処理が行われた加熱製剤が主に流通しており、対策が取られている。
性行為により感染することが最も多いとされる。これは、体液が粘膜や傷口に直接触れることで感染するためである。
ゲイ特有の病気のような誤解も広まっているが、これはゲイのよくするプレイが出血を伴いやすいという事情によるもので、男女の性行為でも十分感染の危険がある。
基本的にはコンドームを正しく着用することで感染を防ぐことが可能である。コンドームと他の避妊具との違いは性器を覆うことで根本的に粘膜に触れることを防ぐことができる、という部分であり、これで体液を介した感染を防ぐことが可能となる。
これに加え、(違法)薬物の回し打ちによる注射器を介する形での感染や、薬物を乱用することで感染予防行動が十分に行われないため性行為で感染することもある。
また、感染者に無理やり襲われることで本人に非がないのに感染してしまうケースも少なくなく、症状や発症への不安だけでなく、エイズという病気への世間の偏見、事件へのトラウマ・PTSDの両方に苦しむ人もいる。
ウイルス自体は遺伝しないものの、母親がHIVに感染している場合、子宮内での感染に加え、出産時に産道(膣)を通って血液などの体液を飲み込むこと、母乳を飲むことなどで母子間での感染を引き起こす。このため、後天性の疾患ではあるが性行為などを行なっていない幼少のうちに感染・発症する可能性もある。
治療については後述する。また、感染経路については「性行為感染症」の頁も参照の事。
HIVウイルスに感染したか否かが検出可能になるタイムラグは平均11日〜22日と結構長い。このため、この期間に検査にかからなくて「大丈夫だった」と思っていると実は感染していた、ということもよくある。風俗店で「検査済み」の広告を鵜呑みにして危険性の高いプレイをやると後で高いツケを払う事になる危険性がある。
保健所・自治体の特設検査施設などで、無料かつ匿名で検査が受けられる。また、有料にはなるが病院の受診や、インターネット上で申し込める検査キットも存在する。多くの施設で他の性感染症についても検査が可能なため、複数人と性交渉の機会があった人や、風俗業界で働く人は積極的に検査をすると安心できるだろう。
献血前の血液検査で発覚した場合、そのまま破棄され本人に知らされることはないため、検査目的の献血は絶対にしてはいけない。
それどころか検査目的と思われるHIV汚染血液で二次感染が起きる悲劇も起こっている。→HIV感染の血液、検査すり抜け輸血 1人感染 :日本経済新聞
すり抜けた感染者は「検査目的で献血したけど音沙汰ないから白」と思い込み、その後もウィルスを撒き散らしているかもしれない。被害を受けないためにも、そして自分がそうならないためにも、予防は重要である。
いわゆる不治の病であり、一度感染すると完全にウイルスを排除する事は出来ないが、抗HIV薬(抗レトロウイルス薬)を服用してウイルスの量を減らすことで発症や症状の進行を抑える事は可能となっており、現代においては症状をコントロールして通常の寿命と変わらない最期を迎えられる人も多い。
しかし、抗HIV薬は非常に高価なため経済的負担が大きく、子供への感染のリスクがあったり※、精神的苦痛が大きかったりと、やはり不自由も相当大きいので、感染を避けるにこしたことはない。
※先述の「母子感染」のこと。患者の中にはリスクを承知の上で出産に挑む人もいる。妊娠中に抗HIV薬(抗レトロウイルス薬)を服用して体内のウイルスを抑制・発症を抑え、出産時は産道を通らないよう帝王切開を行い、母乳ではなく粉ミルクで育てることで子への感染リスクを1%未満に抑えることができる。また、生まれてきた子供も、免疫が不十分な生後半年の間は抗HIV薬を服用させ、感染予防に勤めることで多くの場合感染することなく成長できる。
世界でも例は少ないが、骨髄移植により完治した事例がある。
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