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急降下爆撃機の編集履歴

2016-06-17 11:17:36 バージョン

急降下爆撃機

きゅうこうかばくげきき

爆撃機の一種で、精確な爆撃を可能とするための工夫を凝らしてある。急降下はそのための手段で、爆弾の落下コースを定めるために途中まで一種に急降下する。この方法ならば爆弾を「狙って」落とすことができるので、かつては近接航空支援や対空砲火制圧に使われていた。

精確に爆弾を落とすには?

爆弾というものは、非常に単純な武器である。

中には爆薬が詰められており、信管が衝撃を感知すると爆発する。

だが、これを飛行中の航空機から、しかも精確に落とすとなると難しい。


爆弾には飛行中の速度や高度、または空気の温度・湿度・風速などの気象条件が複雑に影響するので、これら全てを計算し、命中させるのはとても難しい事だった。


第一次世界大戦後、軍隊で本格的に航空機が使われるようになると、この命中精度を高める研究が盛んに行われるようになった。高度・速度などの要素を取り入れて落着地点を計算できる照準器などが開発された。

そして、同様に正確な爆撃を可能とするための戦法として編み出されたのが「急降下爆撃」である。


急降下爆撃機の役割(実践編)

急降下爆撃は水平爆撃と異なり、急角度で爆弾を機体とともに加速させて投下するため、補正の必要や気象の影響が小さく、比較的安易に精密な爆撃が可能である。

さらに艦船や地上兵器がその性質上、比較的装甲が薄くなる上面への攻撃という「オマケ」もついてきた。

こうした急降下爆撃機の特質「精密攻撃能力」「上面攻撃能力」は、爆撃機に新たな分野を開拓した。


ひとつは雷撃機が艦船を攻撃するにあたり、敵艦の対空火器を攻撃する「対空砲火制圧」、

もうひとつが地上部隊の要請に応じて爆撃する(今で言うところの)「近接航空支援」に大別されるだろう。

どちらにしても、急降下爆撃機ならではの精密爆撃能力あっての役割である。


犠牲にしてきたもの

だが、そのために犠牲にしたものもある。

急降下で加速がついた状態で機体を引き起こせば、自重の数倍もの荷重がかかる事は明らかだ。

機体が大きな荷重に耐えられるようにするため、強度を上げる必要がある。

もちろん、重量増加で性能が落ちることを承知の上で。


こうして増えた重量の上で、急降下爆撃が可能な機動性能を維持したまま、重い爆弾を積み込む余裕などあるわけも無く、搭載する爆弾は九九式艦上爆撃機で250kg、Ju87で500kgが普通だったという。搭載量も多くなかったのである。


急降下爆撃機の落日

第二次世界大戦終結後、急降下爆撃機は急速に勢力を落としていった。

機体強度の関係で飛行性能を高くとれず、戦闘機に襲われた際など損害が大きかったのだ。

また、技術が発達して艦艇の防御力、特にダメージコントロールの向上により、急降下爆撃を可能とする程度の機動性を維持した航空機が搭載できる爆弾では十分にダメージを与えられなくなっていた。


そこに攻撃機のジェット化に、ロケット弾ミサイルといった射程の長い武器も登場。

わざわざまっすぐ急降下して「敵に撃たれやすくする」必要も薄れていった。

さらにトドメをさしたのは「スマート爆弾」ことレーザー誘導爆弾(LGB)やテレビ誘導爆弾(EOGB)といった誘導爆弾の成功である。

別に急降下しなくても精確に爆弾を落とせるようになったのである。


こうなってしまった以上、もはや急降下爆撃機に居場所はなく、(艦載機ならなおさら)A-1以降は急降下爆撃能力も要求されなくなって現在に至る。


爆弾の革新

ベトナム戦争のさなか。急降下爆撃の意義をさらに薄くする事件が起こる。

1972年5月10日、それまで難攻不落と恐れられた重要拠点「ポール・ドゥメール鉄橋」に、第八戦術戦闘航空団のF-4が16機で攻撃をかけた。


大小さまざまな高射砲に加え、ミサイルまで配備された、まさに鉄壁と恐れられた防御である。それまで何度となく空襲が繰り返されたが、いずれも大きな損害を与えるに至らなかった。例え損害を与えても数日、長くとも数週間のうちに復旧してしまうのだ。

そのくせ対空砲火は厳重で、攻撃のたびに何機かの戦闘機攻撃機が撃墜されていた。そのたびにパイロットは戦死するか捕虜にされ、既に損害は計り知れないほどになっていたのだ。


時を同じくしてスマート爆弾(この場合はレーザー誘導爆弾)の開発が進み、最初の試作品が完成していた。

先に完成していたTV誘導爆弾のAGM-62ウォールアイがあったが、1,100lb(約500kg)程度では直撃したとしても橋のような頑強な目標の破壊には適さず、同様に重要拠点となっていた「タンホア橋」の破壊は出来なかった。

2,000lb(約900kg)航空爆弾に誘導キットを取り付けられたGBU-10ペイブウェイ、2,000lbに改良されたウォールアイがタイ駐留の部隊にも送られ、この攻撃に投入される事になった。


はたして結果はどうだっただろうか。

その後数日、数度の攻撃の結果、爆撃効果判定は『目標は完全に破壊され、交通は完全に寸断された』と結論を出した。大成功である。


以降、爆撃・空襲という言葉は、完全に意味が変わってしまった。

レーザー誘導爆弾を使うことで精度はなんと15分の1にまで高まり、まさに一撃必中となったのだった。


現在の状況

前述のとおり、急降下爆撃機には設計上さまざまな短所を背負わなくてはならない。

その上、緩降下爆撃のような戦法が開発され、通常の爆撃(水平爆撃とも)でさえ精度が上がり、もはや急降下爆撃の意義も無くなってしまった。

目標上面への爆撃も、航空爆弾自体にバリュートを搭載する、誘導爆弾をトス爆撃(上昇しながら投下して真上から降ってくるようにする)する等、航空爆弾に装備を追加することで可能となった。


現在、急降下爆撃の専門機は開発されていない。

精度の高い爆撃が求められるのなら各種スマート爆弾があるし、何ならミサイルを使ってもいい。

多少命中精度が劣っても良いならGPS/INS(慣性航法装置)誘導爆弾を使えば兵士や母機がレーザーを照準し続ける必要もない。

さらには無人機まで登場。

あえて敵前に身をさらす必要はなく、「そんな危険な用事は機械にさせればいい」という事になったのだった。


急降下爆撃機の残滓といえるものはF-16A-10といった一部の機体で、近接航空支援時に搭載機銃による(比較的)精密な対地攻撃を行う際に似たような事をしている程度である。


余談

空戦を専門とした戦闘機に性能が劣らざるを得ないことは先述したとおりであるが、だからと言って空中戦で弱いわけではない。多少性能は劣後するものの、急降下爆撃のために与えられた運動性と機体の頑強性は、パイロットの腕前次第では空中戦でも十分に通用した。急降下爆撃に空中戦のための前方機銃が装備される例は珍しくない。単なる自衛だけでなく、米国のSBDのように敵戦闘機に対する迎撃機としての運用がなされたこともあった。


各国の急降下爆撃機

九九式艦上爆撃機

Ju87

SBD

SB2C

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