人物
長野県の東軽井沢で生まれ、何年かいたのち5歳頃東京都荒川区へ引っ越したので、wikipediaでの表記が1時期「長野県生まれ、東京都出身」。
漫画家になる前は公務員で、都立の電気研究所の事務を数年つとめていた。
1970年『COM』にてデビュー。現在も現役。
「ジュン子・恐喝」で漫画家となった後改めて「少年ジャンプ」で「生物都市」を発表、批評家に「多分、東欧かどっかの未訳のSFを下敷きにしたんでは」と言わせる程の独創力で名を知らしめた。
息子から見た諸星は「とても温厚で 時にひょうきんな面もある ごく普通の父親」らしい。
影響
その独特の作品世界は、コアなファンはもとより、宮崎駿や細野晴臣など様々なクリエイターに評価され、影響・刺激を与えている。
宮崎駿は特に1980年代に諸星への言及が多く、「(漫画は自分で描くより自分が見たいものを誰かに描いてほしいと思う)諸星大二郎なんかが描いてくれればいいのに、とかね」、「ぼくの好きな漫画家は諸星大二郎なんです。大友克洋も半分ぐらい好きです。なぜ好きかといえば、通俗文化――といって悪い意味で使っているわけじゃありません――の中で、それから逃れられない人たちが大勢いる中で、諸星大二郎・大友克洋の絵を見たとき、非常に清々した気分になる」、「僕は諸星大二郎という人が大好きなもので、あの人の漫画を読むと描きたくなるんですね。非常に運命と意志との葛藤の中で生きてる主人公ばかりで、自分のルーツを辿っていこうという、ああいう漫画は今なくなったでしょう」、「諸星大二郎さんは「失楽園」のラストを見ると、風景と人間のかかわりあいが、よくわかってる人だと思います」など、高く評価した発言が見られる。また、『魔女の宅急便』のコンテにはウルスラの絵について「諸星大二郎風」と書かれていたりする。
庵野秀明は短編「影の街」のアニメ化を切望し、また、雑誌で諸星と対談した際には自作『新世紀エヴァンゲリオン』の旧劇場版において、「綾波の顔がギューと伸びる」のは『妖怪ハンター』のあんとく様が元ネタで、さらに映画のラストシーンのイメージは『暗黒神話』のラストの印象を引きずっていると語っている(また、庵野が『風の谷のナウシカ』の制作に参加していた時、庵野の机の本棚に諸星作品の単行本があるのを見た宮崎駿は、「これ読んでるのか?」と反応し、「こことここが面白い!」などと説明し始めたという)。
大槻ケンヂは短編「不安の立像」を歌にしようとし、星野之宣は作風を変え、高橋留美子は作品の主人公を「諸星」にした。なお「もろほし」が正しい呼び方であるが、『うる星やつら』での解説によれば、諸星がレンタルヴィデオ店に行った際「知らない人」(恐らく面堂終太郎)から
「よく来たな もろぼし」
と言われてびっくりした、という。
作風
独創性の強い独特な画風が特徴である。細い描線(ただし初期は筆も使っていた)を継ぎ足すように描かれており、諸星と対談した藤田和日郎からは「あの線にじわっとした恐怖が宿る」と評価されている。
その画風は手塚治虫から「諸星大二郎の絵は描けない」と言われる程度である。ちなみに、諸星自身は子供の頃に『鉄腕アトム』をはじめ手塚治虫の漫画を好んでいたが、自分の描く漫画の絵が手塚の絵に似てきてしまうので嫌になって辞め、会社に入ってからまた漫画を描き始めたということを中川いさみに対して語っており、手塚治虫とは画風の方向性が異なるのも意図した結果らしい。
基本ジャンルはSF・ファンタジー・ホラー系であり、漫画だからこそ表現できる現実を超えた世界を描くことが多い。しかし、方向性が定まっていなかった初期には『むかし死んだ男』のような普通の人情話も描いていた。さらに活劇・ギャグなど、手がける作品ジャンルは幅広い。
主に古史古伝に題材をとり、異形の存在によって日常の価値観や世界観を転倒させるような作品を多数発表している。民俗学や考古学、古事記からグリム童話にクトゥルフ神話まで精通したその豊富な知識を漫画に盛り込んでおり、学識者からの評価も高い。
知識量だけでなく、「砂漠に巨大な鯖の缶詰が出現する」といった奔放で時にシュールなストーリー展開や、「カオカオ様」「あんとく様」など登場するキャラクターの印象的な造形も魅力である。
民俗学に多く取材した独特の怪異現象に異端の学者が遭遇していく『妖怪ハンターシリーズ』、日本神話や論語に果ては宇宙にまで及ぶ広範な知識を繋ぎ合わせた壮大なストーリーである『暗黒神話』『孔子暗黒伝』などの伝奇漫画で知られる。
また、『西遊妖猿伝』『諸怪志異』『無面目』など、中国古典の世界を題材にした作品が得意である。
SF作品でも、一躍その名を高めた『生物都市』をはじめ、『地獄の戦士』『子供の王国』『失楽園』『蒼い群れ』『バイオの黙示録』など、印象的なストーリーの秀作を多く発表している。
『子供の遊び』『不安の立像』『影の町』といった、日常の不安を形にしたような寓意的な作品も得意とする。
その一方で、『遠い国から』では現実とかけ離れた異世界を描いたり、『マッドメン』『ダオナン』『砂の巨人』などでは、日本人には馴染みの薄いサハラ砂漠やパプアニューギニアを舞台に選んだこともある。ちなみに、諸星自身は当時実際に外国を訪れて取材したことはなかった。
東京都職員の経験から、『商社の赤い花』『鰯の埋葬』『会社の幽霊』など、「謎のお上の圧力に屈したり抵抗したり不条理を叫ぶ人々」の話がいくつかある。
人間の情念渦巻く、重い読後感を残す(宮崎駿は『墨攻』のアニメ化企画書で「諸星大二郎的な力量とものの見方がいる」と書いている)作品を描く一方で、『ゼピッタ シリーズ』『ど次元世界物語』『マンハッタンの黒船』などギャグタッチの軽い作品も多く発表している。
特に怪奇要素とシュールで明るいノリを織り交ぜた『栞と紙魚子シリーズ』は人気作となった。
「生物都市」以来、ロケット等メカを描く際はミールやソユーズ等の、ロシア風デザインにしている。
主な作品
長編
シリーズ物
中編
短編
etc..