概要
哺乳綱食肉目イタチ科カワウソ亜科ラッコ属に分類される哺乳類。
海棲のカワウソで、北半球の寒冷な海に棲息している。群集性があり、住処としてジャイアントケルプと言う海藻が繁茂する、波の穏やかな海域を好む。通常は人間で言う「背泳ぎ」のスタイルでぷかぷか浮いている。
ウニやカニ、貝類が主食。摂食行動の際、腹に石を置いて貝やウニを撃ちつけ砕いて食べたり、岩についたアワビを捕らえる為に石をぶつけるなど、簡単な道具を使う習性がある事で有名。
愛らしい姿から各地の水族館で人気があるが、非常に大食いで餌代が高く付く上に神経質な面があるため、飼育は難しい。またその繊細な神経、ミルクの調整の難しさ等から人工哺育の成功例も極めて少なく、青森県の浅虫水族館で母親の急死により人工哺育された個体は、夜間飼育員が不在になった際の寂しさによるストレスで意識不明になった事もある。
北の冷たい海で体温を維持するエネルギーを得るため、一日に自分の体重の4分の3もの量のシーフードを食べる事から、北海道のオホーツク海沿岸では貝やウニを食べ尽くしてしまう事もあり、漁業関係者との軋轢が絶えない。また毛皮が優良で密猟の危機にも晒されている。
日本でも戦前までは高級毛皮の代名詞だったが、絶滅が危惧され始めたことで保護運動が始まり、密猟を取り締まるようになっていった。(宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のジョバンニのあだ名「ラッコの毛皮」は当時のこの世相を反映しており、“密漁者の息子”という悪口を意味する)
昨今は上記に加えてタンカーから漏れた重油汚染による被害も被っているようだ。
亜種
- チシマラッコ
アジアラッコとも言う。主に千島列島やカムチャッカ半島沿岸に生息し、時折北海道にも現れて漁場を荒らし問題になる。本亜種は日本近海に棲む唯一のラッコであり、単にラッコと言う際は本亜種を指す。
体格は3亜種の中で最も大きく、かつ鼻が一番小さい。
- アラスカラッコ
体格は3亜種の中では中間に位置する。見た目からは分からないが、3亜種の中では下顎が最も長い。日本で飼育されているのは全て本亜種である。
- カリフォルニアラッコ
カリフォルニア州沿岸に生息。3亜種の中で最も南方に棲む。
体格は3亜種の中で最も小さく、かつ顔がとても細長い。