概要
共謀とは何らかの( この項目では特に反社会的なものを指す )目的を達成するため、秘密裏に行動することを決意することであり、共謀罪とはそれを罪とすることにより未然にそれらの決意をくじく目的を持つ法律である。すなわち犯罪の計画共謀を防ぐ、規制する法律である。
また、国によっては犯罪組織等法を犯すために設立された団体等の設立や活動のみを罰する場合も存在する。
以下は法務省の共謀罪に関する主要国の法制度を参照して記述したものである。
アメリカ
連邦法 第18編 第371条
二人以上の者が、何らかの犯罪を犯すことを共謀し、そのうちの一人以上の者が、共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったとき
英語の法律用語ではConspiracy( 陰謀あるいは共同謀議 )と呼び、その時点で犯罪とみなせるとアメリカ合衆国最高裁判所では判示しており、州によって異なるものの、例えばカリフォルニア州においては「最低2人の人間の間で犯罪の実行を合意すること」かつ「実行するために何らかの行為をすること」となっているため、通常の重大な犯罪においても適用される。
イギリス
1977年刑事法 第1条、第3条
ある者が、他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意したとき
英語の法律用語ではConspiracy( 陰謀あるいは共同謀議 )と呼び、イギリスではその時点で犯罪とみなせる法律が存在し、「ある者が,他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意したとき」罰することができるとしている。
ドイツ
ドイツにおいては犯罪団体の結成の罪(Verschwörungか?)というものが存在し、犯罪行為の遂行を目的・活動とする団体を設立した者、このような団体に構成員として関与した者,その構成員・支援者を募り又はこれを支援した者を罰する、としている。
フランス
フランスも同様に凶徒の結社罪というものが存在し、重罪等の準備のために結成された集団又はなされた謀議に参加したときとある。ただし、客観的行為がなされることを要するとの但し書きが存在する。
日本
かつて戦前・戦中の設置されたこの種の法律である治安秩序維持法の内容が大雑把すぎたのを政府が利用して拡大解釈しまくり、左派から右派まで政府に反対する勢力を取り締まるのに利用されたトラウマがあり、戦後から現在に至るまでこのような法律が設置できずにいる。
運用等
この犯罪に関しては共謀が認められた場合、合意した犯罪を自ら実行したときと同程度の重さの罪を共謀者に均一に課すことができるといわれる。
この法律が存在する場合、犯罪を起こした構成員のみを罪に問い、本体に罪を問えない、いわば「トカゲのしっぽ切り」で終わらず、その構成員が存在する組織や団体そのものを調べることができ、場合によっては 組織等を芋づる式に検挙することも可能となるため、組織犯罪の阻止という面では有効である。
一方警察組織の腐敗および権力者の法律の恣意的な運用により、権力者や警察が都合の悪いと感じた国民に対し不当な拘留や取り調べ、さらには逮捕が行える要因となる、という欠点が存在し、日本の例でいえば治安維持法( 国の体制を否定する運動を取り締まることを目的として制定された法律であったが、本来社会主義などを取り締まる法律であったものを厳罰化および適用対象の増加によりとにかく国に都合の悪い人物を取り締まったり拘束する法律になってしまった )のような使用法がされる可能性が否定できない。
そのために日本ではテロ防止などの意味合いのためこの法律を制定する話し合いが置かれているが、計画の段階での規制が物議を醸す状態である。
日本の場合
日本の場合、未遂は犯罪の実行に着手する必要があり、行動の謀議があった時点で発覚してもそれが罪であると認められるいくつかの罪以外では罪に問えない。
ところが2000年に国際連合にて採択された国際組織犯罪防止条約においては重大な犯罪の共謀を罪として認めるよう法整備を行わなければならない、と定められたため、重罪のそれぞれに対し共謀を新たに罪として認めるか、共謀罪を新たに制定する必要が存在するようになった。
ところが、この概念はそれまでの日本の刑法学の体系とは一致しない点も存在する上、重大な犯罪の定義もあいまいであるなど、複数の問題があるため、平成11年以降、議会で論議されていたものの、継続審議のうえ実質上の廃案となっており、結果として2017年においては「テロ集団などに対して適用」という形で審議が行われている。
関連項目
外部リンク
法務省:共謀罪に関する主要国の法制度(PDF)