概要
これは日本の法律の一部であり、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の一部改正となっており2017年6月15日に成立し、同年7月11日に施行された。
必要性に関する議論
これらの法律改正は必要かどうかは国民、マスコミ、国会内部でも議論が分かれているが、民主党政権においてこの条約が締結されていないことからもおそらく必要であったと思われる。ただし政権はこの法律に類似した法律を成立する意思はあったものの、死に体であり官僚が相手にしなかったため成立しなかった、との証言も存在する。
詳細
この改正法案はいわゆる「共謀罪」に相当する法律であるとされ、それまでに国会に提出されるも3度に渡り廃案にされた共謀罪に表記されていた「団体」という取り締まり対象を「組織的犯罪集団」と明確にし、「犯罪の遂行を2人以上で計画した者」を処罰対象とし、その処罰にあたっては「犯罪の実行のための資金または物品の取得その他の準備行為が行われたとき」という要件が付いている。
国際組織犯罪防止条約の締結
交通の高速化、インターネット技術の急速な進歩による通信手段の広がりなどに伴って、国際化・複雑化している組織犯罪に効果的に対処するべく、各国には自国の刑事司法制度を整備して、国際社会における法の抜け穴を無くしていくことが求められ、国連は国際的な組織犯罪と戦い防止するための国際協力を推進することを目的とした国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約( 国際組織犯罪防止条約 )を、日本を含む世界147ヵ国の署名により定めた。
日本の状況
しかし、日本国においてこの条約を締結するには「重大な犯罪を行うことの合意」をすることへの罰則、具体的には「犯罪的結社の設立制限」あるいは「重大犯罪の共謀時点での検挙」が行える「共謀罪(他には「マネーロンタリング罪」「司法妨害罪」なども)が必要であり、外務省の調査によればOECD加盟35ヶ国において同種の法律がない国は日本だけであったとされている。
条約
正式名称は『国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約』。『パレルモ条約』『TOC条約』とも呼ばれ、国際連合にて2000年11月15日に採択されている。
内容
犯罪組織に対する処罰や対抗措置が定められた国際条約であり、「犯罪組織への参加・共謀」「犯罪収益の洗浄(いわゆるマネー・ローンダリング)」「司法の妨害腐敗(公務員による汚職など)」などが対象となっている。なお、この法律は国際的なテロ活動が活発化する以前に採択されたものである。
日本国内での動き
日本国においてはこの条約は採択された時点で署名はされたものの、国内法規の問題もあり批准されていなかったが、司法の妨害等に関しては現行法で対処可能、犯罪収益の洗浄に関しては犯罪による収益の移転防止に関する法律の改正にて対応が完了していたものの、問題は犯罪組織への参加等に対する処罰であり、日本の場合刑法においては未遂は「犯罪の実行に着手」することが構成要件であり通常準備や計画の時点では罪に問えない、また別の法律、例えば組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律や破壊活動防止法等の法律では対処できないとされ、また日本国の場合日本国憲法との兼ね合いもあり、結社や団体の設立や加入に関して制限をかけることができるのかどうか、という問題も存在したこともあり、国会においてはこの条約の署名後、共謀罪および類似する法律の制定を目指すものの、いずれも成立させることはできなかった。
第二次安倍内閣
第二次安倍晋三内閣においては、それまでなしえなかった共謀罪に相当する法律を成立させ、日本がこの条約を締結することを目指しており、それまでは2020年に予定されている東京オリンピックも安心して開けないと断言しており「先進国と言われる国々の中でこの条約を締結していないのは実は日本のみであり、締結できなかった最大の原因が、共謀罪( もしくはそれに相当する法律 )が定められていかったことにある」と政権側は主張していたため2017年5月現在国会に提出されている「テロ等準備罪」は「民間の賄賂罪」「公務員の汚職罪」など、この条約でそれ以外に問題としている法律は対象外とされていたが、これは日本国の場合現状の法律でこれらは対応可能と政府がみなしているためであった。
反対意見
ただし共謀罪に相当する法律に関しては「拡大解釈により戦前の治安維持法のような使われ方がされる恐れがある」として反対する声も存在することや、共謀罪を制定しなくとも現状の刑法や組織犯罪処罰法などの改正や、この条約のための特別法により対処可能ではないかという意見も存在した。
- 報道
- 政治面での追及
- 反論等
- 再反論
- 報道に対する但し書き
定義・適用対象
話は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」に戻り、この法律の適用対象としては警察等が200以上( 以前の法案では600以上 )の犯罪に対し共謀を認めているため、例えば強姦罪より非親告罪化された強制性交等罪、著作権法やわいせつ物頒布や児童ポルノ関連、高利貸などその一つを強引に適用し、犯罪のでっち上げや微罪の過剰追及等による恣意的な手法を用いこの法律を運用することにより不当に個人及び団体を拘束あるいは本件あるいは別件で立件が可能となる、という可能性は否定できないため公権力に対する市民の監視が必要とする、という声もあるものの、同様の法律等が存在する外国、特に先進国と呼ばれる国も共通である。また日本の場合不当に拘束してどうのこうのを行うと裁判で追及されたり起訴できず検挙率が下がる、マスコミの格好の餌食となるなど不祥事が大量に発生するため、本当に危険な場合しか使えないものと思われる。
団体
この法律における「組織的犯罪集団」に該当する団体は、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われるもの」であり「財産上の不正な利益を得る目的で犯罪を犯したもの」がそれとされ、収益を目的とした犯罪を行う団体、例えば悪徳商法などの運営や強盗などの犯罪者集団、「指定暴力団」がその対象であり、日本国の場合においては「テロリスト、左右を問わず思想面において活動する団体」や「朝鮮総連などの不法な資金収集やテロ等を行う恐れが高い海外組織」「宗教全体、あるいは特定の人物の目的のため各種触法行為に手を染める宗教団体」などが存在し、さらに普通の社会や宗教等の団体を偽装したり、普通のそれらの集団が性質を一変させた場合も組織的犯罪になり得るという政府統一見解を示している。
実例
例を挙げると、「以前は普通の会社だったが暴力団等の「犯罪者集団」等に買収されて企業舎弟化、結果犯罪行為に加担している」というケースや、何らかの特殊な資金集めを行った団体等も詐欺や脅迫などが確認できればこの法律で取り締まることが可能になるかもしれず、また「ネトウヨ団体の他者への加害やヘイトスピーチ、虚偽の流布等」や「設立当初は単なるヨガサークルに過ぎなかったオウム真理教が危険な犯罪カルト教団に変貌したケース」が存在し、ただし後段の例は条約では定義されていない「イデオロギーに由来する犯罪」に含まれるのだが。