アントン博士
あんとんはかせ
演:うじきつよし
「戦いに、心を奪われちゃいけないよ…誰かを救いたいという心を失えば、お前はただの機械になってしまう」
概要
本編では既に故人で、回想にのみ登場する。
ジャークマターから宇宙を救う活動をしていた科学者。
かつてチャンプを造り、彼に人間の心を教えた生みの親にして恩師でもある存在だったが、何者かに殺されてしまう。
博士が殺害された日、チャンプは息絶える寸前の博士の側に立っていたスティンガーが犯人だと思っており、キュウレンジャーの仲間となってからも疑念とわだかまりを捨てきれずにいた。
しかしspace.13にて、真犯人は彼の兄スコルピオだったことがスティンガーから明かされる。
博士はジャークマターへの反逆者としてスコルピオの暗殺対象となり、チャンプが目撃した時にスティンガーが博士の側に立っていたのは、既にスコルピオに襲われた博士の解毒を試みたが手遅れで臍を噛んでいたからだったのである。
Space.16でスコルピオと邂逅した際、スコルピオの口からは「もともとジャークマター側の科学者だったが離反したため、裏切り者として粛清した」と語られたが…?
新たな謎
Space.25の惑星トキにおけるトケイキュータマ入手の為の作戦中、各メンバーの前に記憶から生み出された人物が現れる。
チャンプの前には当然アントン博士が現れたのだが、なんとチャンプの体を行動不能にし、すかさずツヨインダベーをチャンプにけしかけるという敵対行動に出た。
他に生み出された人物は敵であったならば敵対行動に出ていたが、ショウ司令の前に出てきたビッグベア総司令や小太郎の前に出てきた母親の様に、敵でなかった人物の場合は敵対行動は取っていない。
※他に敵でなかった人物が敵対行動を取った例にはツルギの前に出てきたクエルボがいるが、クエルボの場合はツルギの仲間になるまでに色々あった可能性があるのでまだ理解できる。
悪の科学者としての顔
「」
チャンプがようやく合流したSpace.34にて、正式に元ジャークマターの科学者だったと判明。
加えて、過去に自身の身体にサイボーグ手術を施し延命していた事も明らかになった。
キュウレンジャーに襲いかかったチャンプのプロトタイプ・牛型汎用破壊兵器ゼロ号を製作したのも彼と思われるが、そんな彼が何故ジャークマターを裏切ったのだろうか…?
その真相はSpace.39、機械の頭脳と化した博士自身が語っている。
実はアントン博士は二重人格者であった。
悪の人格のアントン博士は数百年に渡りジャークマターに仕えており、自身の頭脳を使って様々な殺戮兵器を製造してきた。その肉体を維持する為に自らへ改造手術を施したが、もう一つ彼の内に存在していた善の人格が自身の悪行へストップを掛け続けていた。
善の人格を疎ましく思う悪の人格は肉体を不要と判断し人格を分離させるとともに、電子頭脳に意識を移植して融合する。だが、肉体に残った善の人格がチャンプを連れ出し、正義のロボットとして再改造したのが事の始まりだった。
悪の人格は典型的なマッドサイエンティストであり、やや壊れ気味のハイテンションな性格で、「うひゃひゃひゃ!」という不気味な笑い方をする。相対した相手をかつての肉体を模した立体映像やモニター等を複数並べておちょくる事もある。
所謂狂人科学者にありがちな二重人格だが、自らに改造手術を施しながら数百年生きて来た故にその様な精神構造となったのへは納得が行く。元々二重人格とは外部からのストレスより精神を守る為の防衛行動。そして数百年も生きていれば測り知れないストレスに晒され続けるのは容易に想像出来る。
さらにもうひとつの可能性として機械化した事で善の心が意図せずに増幅されてしまった事が挙げられる。善人が改造手術によって些細な悪の心が異常に増幅される事はフィクションの定番とも言える設定であり、もともと悪人だった人間に同じ事を行えば逆の事(=善の心が異常に増幅される)が起こるのは十分に考えられる事である。
ペルセウス座星系・惑星ゲムの古城内に置かれていた施設でいつの間にか回収されていたマーダッコをメカマーダッコへ改造した後、彼女にペルセウス座のカローの立場とチャンプ製造時から体内に組み込まれていた暴走回路を起動させて彼を操るリモコン、再生産したゼロ号を与えてゲムに赴いたキュウレンジャーを襲撃させる。
程無くメカマーダッコへリモコンを使わせてチャンプを暴走させ、キュウレンジャーを蹴散らした上でメカマーダッコとゼロ号にチャンプを捕らえさせて自身の元へ連れてこさせる。そしてそこでチャンプの暴走回路を完全開放、自身が本来想定した殺戮兵器の姿へと戻そうとする。
一方、残ったキュウレンジャーは自身が発明した『異世界発生装置』の力でキューエナジーが無効化される為キュータマを使用する事の出来ないRPG風の空間へ閉じ込める。
しばらくして、キュータマを使えずとも自力で古城で辿り着いたキュウレンジャーに対し複数の立体映像やモニター等を介して自身とチャンプにまつわる真相を暴露。その上でチャンプを止めるには彼の中枢・そのすぐ横にある暴走回路をチャンプを殺すリスクを負いながら壊さなければならないと挑発する。
それを聞いたスティンガーは間髪入れず襲い掛かって来たメカマーダッコを仲間に任せた上で古城内の施設へ急行、暴走回路を開放されたチャンプと交戦する。だが、道化師の姿であるためや相棒のチャンプに躊躇してしまうなどの要因が重なって、全力で戦えずチャンプの攻撃を凌ぐしかないスティンガーの姿を見て博士は嘲笑し、チャンプにスティンガーを抹殺するよう命令を下す。
しかし、スティンガーが相棒の為に歌った『オウシ座の歌』を聞いたチャンプは動きを停止。更に解放作業の途中だったのか、チャンプに繋がれたままだった施設の機器もそれに準じて停止、連鎖する形で異世界発生装置も止まった為RPG風の空間も消え去ってしまう。
その隙に、スティンガーは尻尾でチャンプの破壊回路を壊して彼を完全開放する(※回路を壊すシーンでチャンプの体内が描かれたが、その中枢に重ね合わされる格好で善のアントン博士が現れ、すぐ横にあった暴走回路が壊されたのを見て安堵の表情を浮かべた)。
この想定外な状況に憤りゼロ号を嗾け2人を屋外へ追い出した後、メカマーダッコや2体目のゼロ号も加勢させる。しかしキュウレンジャーへ返り討ちにされた為、不利を悟って撤退したメカマーダッコに電子頭脳を抱えて貰う形で施設を放棄・撤退した。
施設のあった古城は直後にキュウレンジャー全員での探索後、怪盗BN団によって一つの宝箱が発見される。この中に詰められていたキューエナジーがエンプティキュータマに宿った事でキュウレンジャーはペルセウスキュータマを手にした。
余談
演じるうじきつよし氏は、『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』以来の特撮出演となる。
悪の人格のアントン博士の髪型はうじき氏の考案による物の他、頭にアンプを乗せているのはうじき氏がボーカルを務めるロックバンド『子供ばんど(KODOMO BAND)』を知っていた加藤弘之監督の考案である。
関連タグ
メカマーダッコ:Space.38で改造して貰った事で不死身の身体と引き換えに新たな力とカローの立場を得る。『死んで再生する度に人格が変わる』と言う改造前の彼女の性質は博士の二重人格と同じ役割を果たしていると考えられる(※いくら生き返れるとは言え、死ぬ瞬間の彼女に掛かるストレスは傍観者が感じ取れる位に凄まじい。1話内で死亡⇒復活した後の「ワタシだって何度も死ぬのはイヤよ!」と言う台詞(Space.16より)はそれを如実に表している)。
ドクター・ケンプ:こちらは最終的に主に脳を捧げ、残った肉体の方にも怪人化したが人格が残っていた為アントン博士の境遇と共通するが、反乱を起こした脳の方が善、肉体の方が悪と立場は真逆と考えられる。