解説
脳と脊髄の一部を除く全身を義体化したサイボーグの女性で、総理直属の公安警察機関『公安9課』の実質的なリーダー。
世界屈指の義体使いであり、事件解決のためなら非合法な手段を使うことも躊躇せず、必要とあらば同僚にもゴーストハックを仕掛けたり、枝(電脳への侵入経路)を付けたりする(ちなみに作中世界において、公にはゴーストハックは極刑モノの重犯罪として扱われている)。
冷静沈着で、戦闘から捜査まで突出した才能を発揮する他、ウィザード級の高度なハッキングスキルも兼ね備えることから、荒巻には「エスパーよりも貴重な才能」と評されている。
9課結成前のエピソードを描いた『ARISE』では義体化部隊である陸軍特科「501機関」に所属しているという設定で登場。
501機関は正式名称「陸軍開発実験団医学実験隊義体研究部特殊義体研究課501分室」といい、通常人として扱われるサイボーグが、捜査や研究のための備品として扱われている。
直感による判断を「ゴーストの囁き」と称しており、これはシリーズ作品全てに共通する彼女を象徴する言葉となっている。
人物像
原作漫画版・映画版(GITS・イノセンス)・TV版(S.A.C.シリーズ)・OVA版(ARISE)のそれぞれで容姿も性格もかなりの差異があるのが特徴である。
漫画版ではコミカルな表情や冗談・軽口を叩く様が目立ち、その一方で生死については割り切った考えを持ったキャラとして描かれているが、映像化作品では一貫してストイックに振舞う傍ら、サイボーグとしての自らの在り方に戸惑い悩むキャラとなっている。映画ではアニメ以上に冷静さが強調されており、表情の変化も非常に乏しい。
現在では後者の性格の方が世間的によく認知されており、アニメにおけるクールビューティーキャラの代表格のように見られる事が多い。
だが、劇中では意外に人情家な一面も見せており、自身の境遇に近い少女にシンパシーを見せたり、悪辣非道な敵に対しては感情を露わにする事も。特に9課結成前の若かりし時代の姿が描かれたARISEでは、未熟で青くさい感情を見せるなど精神的にまだ幼さを残すキャラクター造形がなされており、いささか世間知らずで強情でワガママなところも描かれた。
実年齢については劇場版を手がけた押井守個人は45~48歳程度を想定しており、神山健治による『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズでは、第1作の時点で25〜26歳という設定。
女性型の義体を使っていることもあって、9課の中では身長168cmと小柄であるが、これは外見によって捜査に支障をきたさないように配慮しているため。たとえば、見た目から高性能義体だと分かると、それ自体が犯罪者に狙われる可能性が高くなり、解体され部品として闇に流される等の危険を招きかねないと言う義体の流通する時代特有の問題がある。
ただし、外観は一般流通している量産型義体と同様ながら、メンテナンスを始め、ボディの素材や、義体制御ソフトは一般に出回っていない超高品質の物ばかりで、中には法律に抵触するものまで使用されている。
また、各地のセーフハウスに「デコット」と呼ばれる遠隔操作型の予備義体を複数隠し持っており、これを監視、潜入といった捜査に活用することもある。
彼女がサイボーグになった時期・経緯については作品ごとに異なる。
- 原作漫画版:エピローグで幼少時に事故か病気で生身の身体を失い義体化した事が示されている。(『攻殻機動隊2 MANMACHINE INTERFACE』)
- 灼熱の都市(小説版):成人後に訓練中の事故でサイボーグ化したとされている。
- SACシリーズ:幼少時に航空機事故で重症となり、当時未熟であった義体技術が命を救う手段だったことから義体化した。この際に少年期のクゼ・ヒデオと思われる人物とも出会っている。
- ARISE:両親が化学兵器の事故に巻き込まれ、救助に当たった全身義体の生命維持装置によって、当時母親の胎内にいた胎児=彼女の脳だけが死亡を免れ、生まれつき全身義体のサイボーグとなったという設定になっており、このことがARISEにおける彼女の人格形成について大きな影響を及ぼしていることが描かれた。
ちなみに、両刀使いである。原作漫画に於いては同性のセックスフレンド達(ヴァーチャル内)がおり、彼女たちとのセックスで電脳ドラッグを用いた違法なヴァーチャルセックスソフトを作成・編集し、それを裏ルートで販売し、実質的な副業としている。女性同士とのきわどい絡みのシーンにしたのは「男と絡ませても誰も喜ばないだろう」という作者のこだわりとの事である。
なお、このセフレの女性(くるたんとランちゃん)はS.A.C.シリーズでも登場しているが、こちらでは彼女達とそういう間柄であるという具体的表現はない。
原作漫画やARISE版ではボーイフレンドがおり、SAC版の初恋相手も男性である為、恋愛面ではノーマルであると思われる。
呼び名
軍属だった過去から、9課メンバーからは「少佐」と呼ばれている。
(接点が少ないものからは三佐と旧階級呼称で呼ばれることもある)この縁で中の人へのファンからの愛称ともなっている。
また、先述した強靭な肉体や精神力、圧倒的な戦闘能力から、作中でイシカワにメスゴリラと呼ばれたことがあり、それがあまりにもピッタリだったからか、ファンからの愛称にもなっている。
バトーは通常は少佐と呼んでいるが、感情が高ぶった時や非番の時には「素子」と呼んでいる。
戦闘能力
義体を操るスキルの高さから、格闘戦、銃撃戦など、あらゆる戦闘の分野において圧倒的な能力を発揮できる。
先述の特別使用の義体は、高出力サイボーグの打撃を受け止めて、足が地面にめり込むほどの衝撃を受けても、義体の機能に損耗は見られなかった。さらには対物ライフルを腰だめの姿勢から片手で撃つこともできるほどの出力を持つ。
さらに、超一流のハッカーでもあり、電脳化しネットに繋がっている人物ならよほどの相手で無い限りは、瞬時に体を乗っ取る事が出来る。うまく決まれば、自身は指一本動かさずに相手を制圧することが可能。実際にこの方法で、組手を挑んできたバトーに、自分で自分の顎をパンチさせてKOしたことがある。
根室上陸工作戦やメキシコへの派兵など多くの戦場を経験しており、兵士としても優秀。
声優
アニメ版での声優は劇場版・SACシリーズ共通して田中敦子だが、PSでのゲーム版では鶴ひろみが演じている。
なお余談ながら、『イノセンス』においてプロデューサーが芸能人声優を推したところ、バトー役の大塚明夫、トグサ役の山寺宏一、監督の押井守の猛反対&当のオファーをうけた芸能人本人が出演オファーを断ったためにキャスティング変更なしとなったという経緯があったりする。
最新作『攻殻機動隊ARISE』では、下記のコドモトコを演じた坂本真綾が演じている。
コドモトコ
少女型の遠隔操作義体や、いつも使用している義体が破損した時などに一時的に利用した少女型義体の便宜上の呼称。声優は坂本真綾。
劇場版では、突然坂本真綾の声から田中敦子の声に切り替わるシーンがあってビックリである。
詳細は、コドモトコの記事へ
主な名言
「そう囁くのよ・・・・・・私のゴーストが 」(GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊)
攻殻機動隊を代表する名言。似たような台詞が以後も出てきている。
「さて・・・どこへ行こうかしら、ネットは広大だわ」(GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊)
劇場版ラストシーンでの台詞。詳しくは該当記事へ
「バトー、忘れないで。貴方がネットにアクセスするとき、私は必ず貴方の傍にいる」(イノセンス)
ラストでの台詞。お互いの絆が見て取れる。
「世の中に不満があるなら自分を変えろ!!それが嫌なら、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ!!」(攻殻機動隊 S.A.C)
第1話冒頭で狙撃犯に言った台詞。神山監督曰く「本編へのブラフ」。
「小さい頃、うまく義体が使えず大事にしていた人形を握りつぶして泣いたことがあったわ」(攻殻機動隊 S.A.C)
第3話でバトーに語った台詞。人に歴史あり。穏やかな表情をした素子が見られる。
「そんなことはない。お前たちの獲得したものは、決して無力などではないぞ」(攻殻機動隊 S.A.C)
第25話で絶望感に打ちひしがれるタチコマへの台詞。本人は出て来ていない。
「あら、そう?なら、死になさい!」(攻殻機動隊S.A.C.2ndGIG)
第1話及び第26話での台詞。相手は死ぬ。
「試してみる?」(攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG)
第17話で台湾の招慰難民の少年・チャイの「義体ってセックス出来るの?」というマセた質問への返答。<ちなみに、チャイのCVは高山みなみ>
「貴様、いい腕をしているな!今から私の部下になれ!!」(攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG)
第14話での回想シーンでサイトーを倒した際の台詞。素子流スカウト。
「哀れなほど、真実を知らないプロレタリア」(攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG)
第2話の登場人物・ギノを端的に表した一言。
「バトー・・・それにしても、ネットは広大だわ。もうすでに、私たちの知らない次の社会が、生まれ始めている」(攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society )
ラストシーンでの台詞。詳しくは(以下略)
「Solid Stateには近づくな・・・」(攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society )
バトーに語った忠告。もしかしたらこう言ってバトーが調べ始めるように仕向けたのかもしれない。