概要
『ジェノサイバー 虚界の魔獣』とは、1993年に制作されたOVA作品。
生体エネルギー「ヴァジュラ」の圧倒的な力で敵を殲滅する破壊神『ジェノサイバー』となった双子の姉妹「エレイン」と「ダイアナ」の物語である(ちなみにダイアナが姉でエレインが妹である)。
本作は完成後、理由未詳のまま国内販売が棚上げになっていたが、1994年3月2日アメリカ国内にて英語字幕入りのオリジナル版がリリースされたのを追い風に同年5月24日より「バンダイビジュアル・C-MOONレーベル」でのVHSソフト全3巻、LD(レーザーディスク)全5巻でのリリースが実施された(VHSとLDでバッケージが異なるのは各メディアの記録容量の問題に因る)。販売スケジュールは以下の通り。
『Part1ジェノサイバー誕生』:1994年5月24日
『Part2対決!ヴァジュラノイド(前編、後編)』:1994年6月23日
『Part3アークド・グランの神話(前編、後編)』:1994年7月21日
登場人物
ダイアナ・リード(声:同上)
ケネス・リード(声:加藤精三)
グエン・モルガン(声:星野充昭)※「ジェノサイバー誕生」のエンディングでは役名の記載無し。「対決!ヴァジュラノイド(前編)」のエンディングで『モルガン 星野充昭』の形でクレジットされている。
ラット(声:嶋村薫)
天知(声:篠原恵美)
若山(声:若本規夫)
勝(声:桜井敏治)
マイラ(声:勝生真沙子)
サコミズ(声:関俊彦)
艦長(声:江原正士)※各話巻末の次回予告ナレーションも担当。
副長(声:小室正幸)
神父(声:八木光生)
リュウ(声:辻谷耕史)
メル(声:西原久美子)
グリムソン(声:曽我部和恭)
ラドネック(声:千葉繁)
九竜会長(声:大木民夫)
生体エネルギー「ヴァジュラ」
本作の根幹を成す事象存在で、グエン・モルガンがその研究に乗り出した事、それに目を付けた九竜グループがモルガンの助手だったケネス・リードと謀って研究を奪った事が全ての始まりとなる。
記録映像でモルガンが語る所によれば、「マインドシャドウ(人体を「高次元スキャナー」で撮影すると体内に多数確認できる影の様な領域。他の宇宙と繋がっていると言う)」を通じて別の宇宙から流れ込んで来る「風」の様な物で、更にモルガンはこれを「気」と同一視している。「ヴァジュラ」と名付けたのもモルガンだが理由については語られていない。
いわゆる「超能力」の源であり、同時に生体活動にも重大な影響を与える。また、その性質上いわゆる「魂(精神や残留思念等)」と反応、その情報を記録、伝播する事も出来る特徴が有る(いわゆる「アカシック・レコード」の一端を成す可能性も伺える)。…が、それ故に大規模な死傷者が発生する状況では犠牲者の怨念等を取り込み易く、「ヴァジュラの『濃度』が高い」、「いわゆる『霊感が強い』人間がヴァジュラ濃度の高い環境に居る」等の条件で、その情報を顕在化する問題が有る(サコミズが本来自らは体験していない「香港島消滅」の状況を幻視した直後、新国連軍の武装ヘリに殺害された少年少女の霊を見たり、空母「アレキサンドリア」の艦載機パイロット「エリス」が先述の少年少女の霊に取り憑かれたあげく甲板上で自殺したのはアレキサンドリアにエレイン(=ジェノサイバー)とヴァジュラノイドと言う巨大なヴァジュラ漏出源が同時に存在したのが原因。…エリスについては「とばっちり」以外の何物でも無いが…)。
因みに機械的な発生・増幅が可能であり、モルガンが「超能力増幅装置『マンダラ』」を開発し研究に充てたり、サコミズ等がヴァジュラノイドの基本システムを確立できたのも、こうした特徴に因る。
また、先述の特徴から「心を繋げて互いに影響を与える」事も出来る為、「アークド・グランの神話(後編)」ラストのメルとリュウの状況に関しても好意的な解釈を行う事が可能である。
ジェノサイバー
ヴァジュラエネルギーがエレインの意志の力で集結、ダイアナの肉体と彼女のサイバースーツの機能がベースとなって融合したことにより誕生した超生命体。
肉体と精神の主導権はエレインが握っており、戦闘後にはエレインの姿に戻る。
一応、変身ヒーローという立ち位置であるが、目が赤く体色が緑色で翼と尻尾が生えた魔獣のようなデザインであり、ベースが機械でありながら生物的でなおかつ禍々しい外見となっている。
戦闘力は一言でいうと反則的であり、地球上のあらゆる兵器を駆使しても倒せない程であった。
最終回のクライマックスで長い眠りから覚めた際にはメルの精神をも取り込んだ影響か、外見が更に生物的で禍々しく変化し、大きさが10メートル近くまで巨大化した。
乳白色と赤のツートンカラーも相まってあたかもどこぞのバイオアーマーを彷彿とさせる。。
余談
本作の日本販売に合わせて「月刊ホビージャパン」誌上にて1994年4月号から半年に亘り立体造形と制作サイドに因る公式設定の紹介を行う短期集中連載が実施された。…だが、これを書籍単行本等の形で頒布する等の動きは(当時のファン層からの要望にも関わらず)何故か実施されず、本作は再び歴史の闇に埋もれてしまう事になる。
その後、ネット上で動画投稿等の形で人々の耳目を集める事になるが、そもそも膨大な内部設定を有し、副読本等のテキストが無いと作品内容の正確な理解が困難な本作である。やはり、と言うべきかネット上でレッドマンが赤い通り魔と呼ばれるに因る事態と同様の事案が発生してしまう。
これに関しては制作・販売元である「バンダイビジュアル」がネット上での有料配信にのみ現状での公開を限定している事も事態の悪化に拍車をかけているのだが、何故、ブルーレイ他でのリリースに躊躇しているのかは不明である。
そもそも、この手の話題で指摘されるゴアシーンの問題だが、遊星からの物体Xやヘルレイザー等の作品が普通に一般市場に流通している現状を見るに理由にはならない。
それだけに、なるべく早期に正規商品の市場投入が行われる事を期待する所である(そもそも、ブルーレイ化の要望自体がこれまで行われていなかった可能性も有るが…)。