概要
DCコミックの発行するアメコミ「バットマン」に登場する悪役(ヴィラン)の一人。
トレンチコートを身に纏い、顔中を包帯で巻いて隠しているのが特徴。主に、2丁の拳銃を用いて戦闘を行う。
登場は“Batman“#609(2003年1月)、ハッシュとしては“Batman“#619(2003年9月)と、バットマンに登場するヴィランの中では比較的に新参と言えるのだが、バットマンの正体であるブルース・ウェインとは個人的に因縁の深いヴィランである為、登場時より活躍が注目されている。
過去の境遇や先祖の因縁からも、ブルースとは映し鏡の様な関係と言えなくもなく、ある意味ではバットマン最大の宿敵であるジョーカー以上の宿命を持っている。
本名はトーマス・エリオット.。
ブルース・ウェインとは幼馴染みの間柄で、また自身の生家であるエリオット家は、ウェイン家やペンギンことオズワルドの生家であるコブルポット家と、長い歴史の中で深い繋がりを持った家系同士であった。
エリオットは幼少期より明晰な頭脳の持ち主で、戦略ゲームのストラテゴでは、常にエリオットの方が勝利する程の腕前であったが、実の両親からは虐待される日々を送っていた。裕福な身でありながら酒浸りであった父親からは暴力を受け続け、元々裕福ではなかった母親の方は、そのトラウマからエリオット家の栄光へ異常なまでに執着し、ブルースと比較され続けながら哲学者であるアリストテレスの格言等を刷り込み続けた。その事で両親への憎悪と殺意が芽生えたエリオットは、車のブレーキに細工して両親を殺害し、エリオット家の財産全てを得ようと目論む。
しかし、父親の殺害には成功したものの、母親は医者であったブルースの父・トーマス・ウェインによって命を救われてしまう事になり、探偵がこの事件について調べまわった結果、結局母親の殺害は断念せざるを得なくなったエリオットは、ブルースを含むウェイン家の人間達が自分を絶望に陥れたと逆恨みを抱くようになった。
その後、ブルースは両親をジョー・チルというチンピラに殺害されてしまい天涯孤独の身となるのだが、エリオットはそれが「家族」という束縛から解き放たれ、莫大な財産を得て自由になった曲解。ブルース個人への逆恨みを嫉妬も織り交ぜる形で更に加速させる。
そして、マフィアの娘と惹かれ合っていたのを否定された上に、医学部への進学の資金援助さえ一方的に断られた結果、エリオットは遂に怒りを爆発させて母親もその手で絞め殺してしまう事になった。
母親の殺害後、ハーバード大学での成功を経て、念願の外科医になったエリオットは、その活躍から医学会でも名医として注目を浴びていたのだが、ブルースとは仲の良い友人関係を続け、時に自らの医療技術でバットマンとなっていた彼の窮地を救いながらも、その内では彼に対する醜悪なまでの憎悪を膨れ上がらせ続けていた。
そんな中、癌に侵されていたリドラーが、ラーズ・アル・グールの所有するラザラス・ピッドを勝手に用いた事によって驚異的な推理力に目覚め、バットマンの正体がブルース・ウェインである事を見破り、その秘密を莫大な報酬で売ろうとしていたのに目をつけたエリオットは、彼と取引を行い、新たにゴッサム・シティに現れたヴィラン・ハッシュとして暗躍を開始する事になる。
エリオットがハッシュとして活動する目的とは、ずばりブルース・ウェインを、ブルースとしてもバットマンとしても追い詰めて絶望に追い込んだ末に殺す事…それの一言につき、その執着心は、ジョーカーとは別のベクトルで常軌を逸している他無い。
初登場作品の「BATMAN HUSH」では、まず手駒を得る為、リドラーにジョーカー、ハーレイ・クイン、トゥーフェイス、ポイズン・アイビー、スケアクロウ、キラークロック、クレイフェイスといったバットマンと因縁の深い強力なヴィラン達を集めさせ、更にはアイビーのフェロモン能力やスケアクロウの幻覚を利用して、スーパーマン、キャットウーマン、ハントレスの3人も従わせている。
リドラーの手も借りていたとは言え、初登場作品でこれだけの事をやってのけた点だけでも、ハッシュが新参ながらも強力なヴィランである事を物語らせている。
そして、強力なヴィランや洗脳されたキャットウーマンと連戦させられ、心身共に追い詰められたバットマンをより精神的に追い詰める為、クレイフェイスの変身能力を利用する形で、バットマンが親友と信じている自分の死体を偽造し、ジョーカーが殺した様に見せかける事で、理性を失ったバットマンが怒りに任せてジョーカーを殺害する様に仕向けており、その場にいたキャットウーマンでもバットマンを止める事は出来なかったが、駆けつけたジム・ゴードンの必死の説得によって未遂に終わっている。
更には、過去の悲劇を思い起こさせるべく、今度は以前ジョーカーに殺されたジェイソン・トッドに擬態させたクレイフェイスに現在のロビンであるティム・ドレイクを襲わせてバットマンを責めさせるが、自分の正体を知っているはずのジェイソンが名前の「ブルース」で呼ばなかった矛盾を見抜かれた事で、正体が発覚している。
しかし、実はこの時ティムを襲っていたジェイソンは、最初こそ蘇っていたジェイソン本人であり、途中でクレイフェイスに入れ替わっていたと言うのが事の真相である。
つまり、ジェイソンがラザラス・ピッドの力で蘇ったその背後には、ハッシュことエリオットの存在があったのである。
その後、エリオットはハッシュとして真実を知ったバットマンと直接対決し、横槍を入れてきたトゥーフェイスに撃たれる形で池に転落するが、それはクレイフェイスの擬態であり、エリオットは姿を消す事になった。
「BATMAN Heart of Hush」では、再びブルースを追い詰めるべく暗躍を行うのだが、過去のトラウマによってブルース・ウェインの全てを奪いとるという執着心に駆られていた事から、なんと整形手術によってブルースと全く同じ顔にするという正気の沙汰とは思えない行動に出ている。
更にはバットマンを一番精神的に追い詰める為の計画としてスケアクロウと手を組み、バットマンに身近な者を狙う事を示唆。アルフレッドやバットファミリーに注意を呼びかけるのを逆手に取る事で、キャットウーマンことセリーナ・カイルを標的に定める。ハッシュはバットマンが本心ではキャットウーマンを愛していながらも、クライムファイターと犯罪者という立場の違いから、その真実を受け入れられずにいるにいる心境を見抜いており、「キャットウーマンが死ねばバットマンの心の一部が死ぬだろう」とまで評していた。
子供を誘拐したスケアクロウをバットマンが追っている隙を突いて、キャットウーマンを誘拐したハッシュは、医学技術を用いて彼女の心臓を奪い取るという残忍な凶行に出て、それに気づいたバットマンを予想通りに追いつめる事に成功。バットマンはスケアクロウを尋問する際に理性を失いかけるまで暴走する事になり、これにはバットマンをイジる事に執着しているジョーカーですらも楽しんでいた。
しかし、皮肉にもこの展開と結末によって、バットマンことブルース本人が、キャットウーマン(セリーナ)を本当は心の底から愛してしまっていたという真実を気付かせてしまうに至っている。また、この話ではキャットウーマン本人も、バットマンが自分を心の奥底ではどう想ってくれているのか悩んでおり、ジャスティスリーグのメンバーであるザターナに占ってもらっていた程である。
メディア
『GOTHAM』
ブルースと同年代の学生であるトミー・エリオットとしてシーズン1に登場。
両親を失い悲しみに暮れていながらも復学したブルースに対し、陰湿な嫌がらせ行為を行っていたが、後にアルフレッドの助言を受けた彼によって殴り飛ばされるという、後の因縁を想起させる様子が描かれている。この出来事が原因で、ブルースは再び登校拒否に陥った。
なお、シーズン2では、ウェイン家と深い因縁のある5つの家系の一つとして、エリオット家が挙げられている。