「Hello.My old friend…」
概要
DCコミックの発行するアメコミ『バットマン』および関連作品に登場する悪役。
バットマンの数ある宿敵の中でも、メインと言える一人である。
本名はオズワルド・チェスターフィールド・コブルポット(Oswald Chesterfield Cobblepot)。
丸い短躯、鳥のクチバシを思わせる鼻をし、シルクハット、モノクル(単眼眼鏡)、タキシード、コウモリ傘(武器やパラシュートが仕込んである)などを持つという、擬人化されたペンギンを思わせる外見である。実際、発案者のボブ・ケーンは、煙草のパッケージに描かれたペンギンをモチーフとしてデザインした。
裕福な少年時代を送るが、父親を肺炎で失うという悲劇を体験している。その原因となった雨を恐れた母親から、つねに傘を持つことを強いられる。
鳥を思わせる外見、晴れた日でも傘を手放さないという奇妙な行動から、学校ではいじめの標的とされる。『ペンギン』という通り名は、クラスメイトから付けられた仇名が元となっている。
孤独なオズワルド少年の友達だったのは、母親の経営する鳥類専門のペットショップにいた鳥達だけだった。だがある時、ペットショップがいじめっ子たちに荒らされ、鳥達は殺されてしまう。これを契機として、彼は犯罪への道を歩むことになってゆく。
登場した当初は鳥をモチーフにした犯罪に手を染める「犯罪紳士」的なキャラだったが、原作版のペンギンは狂人揃いのバットマンのヴィランの中では珍しく心理的には正気で自己管理能力をしっかり持っているという設定から、やがてゴッサム・シティの暗黒街のボスの一人となる。
現在、表向きは「アイスバーグ・ラウンジ」という高級クラブを経営するビジネスマン。裏で違法な取り引きも手がけ、またこのラウンジには様々な悪党もやってくるため、バットマンは情報源として彼を利用するという微妙な関係を築いている。
地震によって崩壊・孤立し無法地帯と化したゴッサム・シティを描いたシリーズ「ノーマンズ・ランド」では、スーパーマンの宿敵であるレックス・ルーサーと手を組み、闇市場の売買を取り仕切っていた。
他のメディア
『バットマン・リターンズ』
演-ダニー・デヴィート/日本語吹替-樋浦勉(DVD版・ビデオ版)・石田太郎(テレビ朝日版)
キャットウーマンとともにメイン悪役を務めるが、実質的には、バットマンを含めた三人で、社会の異端者たちの孤独や悲しみを体現する主演者とでも言うべき役どころである(監督であるティム・バートンは、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』『シザーハンズ』など、同様のテーマをもつクリスマスストーリーを幾つか撮っている)。
名家コブルポット家の長男として生まれたが、ペンギンのような体躯や水掻きといった奇形、そして凶暴さによって両親から疎まれた(檻の中に入れられていたが、近くを通った飼い猫を引きずり込み、惨殺している)。
そのため、生まれてから数日後。クリスマスの日に乳母車ごと川に捨てられる。だが、下水を流れて閉鎖された動物園の地下へと流れ着き、そこに暮らしていたペンギン達に育てられた。
その後、サーカスの見世物にされるなどして暮らしていたが、やがてサーカスギャング団を結成し、下水道の世界からゴッサムシティを脅かす怪人となる。
やがて、自分の生い立ちを知ること、そして日の当たる世界で認められることを望むようになる。悪徳実業家マックス・シュレックを強請って協力させ、自作自演により、異形のヒーローとして地上に居場所を得ることに成功する。
だが、やがてシュレックに乗せられ、ゴッサム・シティの市長になるという野望をも抱くようになる。その障害となるバットマンを排除しようとするが、それまで誰かに本当に愛されたことの無かったペンギンは人の心を理解することができず、そこを突いたバットマンの謀略戦に敗れ、市民からは一転して怪人として排斥される。
ふたたび地下へ追いやられたペンギンは、(自分と異なり)両親に愛されて育った町中の赤ん坊を含めた、富裕層の長男たちを誘拐し、下水に溜まった有害な廃液にしずめるという復讐をたくらむが、またしてもバットマンによって阻止される。錯乱した彼は、唯一の友であるペンギン達にミサイル発射装置を取り付けた、ペンギンミサイル軍団をつくり、ゴッサム・シティ全土の破壊をもくろむのだが・・・。
「アニメイテッドシリーズ」
上記「リターンズ」に似たデザインだが、奇形ではない(後シーズンには、初期の原作コミックで描かれていたような、怪盗紳士的なデザインに改められる)。
鳥類を犯罪に用いる、様々な仕掛けの傘を武器に使うなど、原作コミックとほぼ似たような活躍が描かれた。また、コブルポット家は健在のようで、自身の財産や上流階級での知名度は劇中でも存在している様子。
あるエピソードでは、刑期を終えて上流階級に戻り、恋した令嬢にコブルポット家の家宝(ペンギン型の宝石ブローチ)を送ろうとしていた。
『バットマン:マントの戦士(Batman:Caped Crusader)』
2024年8月1日に、Amazon Prime Videoにて配信開始となる新アニメシリーズ。
上述の、1992年放送のアニメイテッドシリーズを手掛けた、ブルース・ティムが参加している。
1940年代のゴッサムシティを舞台とした、当時に出版されたコミックの世界観を彷彿とさせる内容で、本作のペンギンは女性に性別変更されている(名前は「オズワルダ・コブルポット」)。
『GOTHAM』
演-ロビン・ロード・テイラー/日本語吹替-阪口周平
まだ権力を手に入れる前の青年時代のペンギンが登場。若き日のジェームズ・ゴードンとバットマンになる前の少年時代のブルース・ウェイン達と並び、主人公の一人として活躍する。
ひ弱で臆病な性格だが狡猾で強い野心を持っており、ゴッサム・シティのマフィア抗争の水面下で巧みに暗躍してのし上がっていく。
悪巧みを実行に移そうとしたタイミングで別のヴィランの襲撃に巻き込まれたり、エレクトロキューショナーの電撃に感電して朦朧とした拍子にうっかり秘密を喋ってしまったりとロクな目に遭わないが、逆境に陥ってもしぶとく生き残る悪運の持ち主でもある。
DC Extended Universe
第4作『ジャスティス・リーグ』にて、ブルースとアルフレッドの会話で触れられている。本人は直接登場していないため現在の状況は(そもそも存命かどうかすら)不明。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』に登場予定だったが、ブラックマスクに差し替えられた。
『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』(2017年)
日本の秘密結社鷹の爪とのコラボ映画。
来日し、ジョーカー達と映画の撮影に協力する事になる。資金確保のために鷹の爪団の大量の兵器を50万円(現金)で購入した。
Batman Epic Crime Saga
『THE BATMAN -ザ・バットマン-』
メインキャラクターとして登場予定。演じたファレル曰く、「登場は5、6シーンほど(計9分間)だがとても重要な役柄」とのこと。
また本作の世界観を元にした彼が主役のスピンオフドラマの制作も決定している。
『THE PENGUIN -ザ・ペンギン-』
ドラマの制作に合わせたのか、原作コミックではペンギンの単独誌が始まった。
余談
ゴールデンエイジなどの昔の作品では、ジョーカーと何度か組んだことがあるが(キャラクターもそんなに多くない時代)、前述の「リターンズ」でペンギンを演じたダニー・デヴィート自身もジョーカーを演じたジャック・ニコルソンとは『カッコーの巣の上で』で共演して以来の親友で、『リターンズ』のペンギン役もニコルソンの推薦である。
アンソロジー「The Greatest Batman Stories Ever Told」では、叔母のミランダが登場するエピソードが掲載されている(掲載時は1946年)。ミランダはペンギン=オズワルドにそっくりの老女で、育ての親らしい。気が強く、ギャングに対しても物おじせずに傘で殴り掛かるほど。しかし自身の甥が、世間をにぎわす悪漢のペンギンである事は知らない様子(傘屋を経営していると思っている)。