概要
JR西日本が運行している関西国際空港アクセス特急「はるか」は、2010年代後半より訪日外国人(インバウンド)の増加により指定席車両が満席になることが多くなった。このため、現行の「はるか」のうち6両編成で運転される列車を9両編成へ増結することを決定。271系は「はるか」用281系の増結用編成として製造されることになった。
JR西日本では、「はるか」用281系および「サンダーバード」「しらさぎ」用681系、「くろしお」用283系の置き換えを2024年~2027年の間に予定しており、271系は『(現状は)281系の置き換え用ではなく、「はるか」の輸送力増強用・増結用』という立ち位置になっている。
あくまで増結用車両のため車両デザインは281系と統一感を持たせつつも、287系に引き続き先頭車の前面に衝突安全対策が取られており、また他の特急形車両と同様にモバイル用コンセントと車内防犯カメラも搭載される。281系のデッキ部に設けられていた「大型荷物スペース」は、271系では客室側に設けられた。
先頭車の貫通扉は幌を装備しており、271系同士で連結すると編成間での移動ができる仕様となっているが、営業運転では常時281系と連結するため幌をつなぐことは当分行われない。
2020年3月14日より運行を開始。今回製造されるのは増結用の3両編成6本で、これにより「はるか」の全列車を9両編成で運行されることとなった。
281系では2019年1月からハローキティのラッピングが順次行われているが、本形式も「ハローキティ はるか」のラッピングが行われる。
車両設計
287系をベースとしつつも、281系との併結を考慮したことによる車体長/連結面長さの違い(287系の20.6m/21.1mに対して、281系と同じ19.5m/20.0m)から別形式に分類された。
287系と同様に0.5Mシステムを搭載し、全電動車となっている。
ただし、技術の進歩を反映し、323系以降で採用された全密閉主電動機+SiCモジュール適用型インバータの構成となっている。また制御装置のメーカーは、323系・227系1000番台の三菱電機・東芝とは異なり、日立製作所製となった。
また、空気圧縮機が三菱電機製のオイルフリースクロール式に変更された。
287系と同等の10Mbpsデジタル制御伝送システムながら、異車種併結機能を追加することで281系との併結運転に対応する。
客室設備も287系を基本とした最新の設備だが、諸所に281系のカラーやデザインが取り入れられており、「はるからしさ」「イメージの継承」を演出している。
座席は287系の同等品で、モケットの色調をブラウンとすることで281系のイメージを踏襲。また、肘掛部分には新たにモバイル用コンセントを装備する。
案内表示器は多言語案内や情報の拡充を想定し、新たに液晶ディスプレイ式が採用された。
また防犯の観点から、荷物置場がデッキから車内に移設され、客用ドア上部・荷物置場・案内表示器の右側に防犯カメラを設置している。
諸元
営業最高速度 | 130km/h |
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起動加速度 | 1.8km/h/s |
減速度 | 4.6km/h/s(常用最大)、5.2km/h/s(非常) |
歯車比 | 17:96=1:5.65 |
駆動装置 | WN駆動方式 |
主電動機 | かご形三相誘導電動機
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制御方式 | VVVFインバータ制御・1C2M・センサレスベクトル制御
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台車 | 軸梁式ボルスタレス台車
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製造メーカー | 近畿車輛 |
デビューしたものの………
旺盛なインバウンド需要に支えられて登場した271系ではあるが、皮肉にもデビュー直前になって「はるか」の利用客数は急落してしまう。言わずもがな原因は世界的な感染症の流行であり、国内のあらゆる旅客鉄道にもその影響は及んだのだが、関空特急に関してはその影響があまりにも大きかった(前年比80%減)。
全列車9両化したものの利用客は一列車に数十人程度、肝心の増結編成に至っては一人も乗っていない事さえあった。
これを受けて、4月1日より「はるか」は全列車6両編成での運転に戻されることとなり、本系列はデビューしてわずか数週間で、事実上の定期運用離脱ということになってしまった。
デビューするタイミングがあまりに悪かったと言えよう。