概要
2005年頃の横浜市・大倉山の寂れた老舗喫茶店「方舟」(はこぶね)を舞台とする、現代人の少年と空襲の暗い過去を引きずりながら不思議な能力で過去と現在を行き来する幽霊の少女の物語である。
2006年から2010年にかけて連載され、単行本は全8巻で完結。
途中で連載誌が変わったため、5巻までがガンガンWINGコミックス、6巻以降がガンガンコミックスJOKERで発売された。
扱うテーマこそ重く、絨毯爆撃や機銃掃射、終戦前後の荒んだ社会情勢のシーンなどもあるが、メインの登場人物は総じて明るいキャラクターで、ギャグ要素も織り交ぜてある。各時代の街や人々の雰囲気の違いや、時空移動・歴史改変に対する考え方、テーマにあわせたノスタルジックな演出も特徴になっている。
また作者が慶應義塾大学の学生として横浜市港北区にある日吉キャンパスに通学していた影響もあるからなのか、大倉山をはじめとする1940年代から現代までの横浜市内各地の様子や戦災の被害状況が丁寧に描写されている。
ネタバレになってしまうが、打ち切りと思われる連載終了でストーリー自体は完結するものの、登場する幽霊達のタイムスリップとそれに同行できる主人公たち一部の現在人の共通点やメカニズム、そしてメインヒロインがどうやって空襲から生還し戦後を生きてきたのかという経緯が全く明かされる事はなかった。その後も続編や作者の明確なコメントもないので悔やまれるところである。
主な登場キャラクター
毎年夏になると大倉山に現れる空襲で死んだという女子高校生の幽霊。
主人公の中学生。普段は広島に住んでおり、終盤で阪神淡路大震災で被災した事が明かされる。
一とは偶然方舟で知り合った女子中学生。ボーイッシュで訳あって一たちには素性を隠す。
小夜子の学友だった在日ドイツ人少女の幽霊。丸山店長に片想いをしていた。
現在の方舟を切り盛りするが、実はあちこちで詐欺まがいな事を働いて逃亡中の身。
小夜子との接触を狙う筋骨隆々の大男。実は元刑事の人情派探偵。
終戦後ずっとある洋館に潜んでいた女学生の幽霊。作中で性格が最も明るくなっていった。
やよゐと共に過ごしていた女工の幽霊。過去の経験から登場当初は非常に攻撃的で殺伐としていた。
客として方舟によく訪れるちょっとキザなイケメン会社員。慶應大学の理系出身。
横浜大空襲時までの方舟のオーナー。小夜子の兄の親友で、負傷兵として帰還していた海軍の技術士官だったが、実はこの物語で最大のキーパーソンであった。
TVアニメ
製作はシャフト、監督は新房昭之。原作とは若干ストーリーが違っており、作風もかなりギャグ色の強いものに変わっているなど新房・シャフト作品らしいつくりである。
各話タイトルはいわゆる懐メロの曲名になっており、その曲を出演者がカヴァーしたものが挿入歌として使用された。ただし、各話タイトル名とその回の挿入歌は必ずしも一致していない。
このカヴァーは「歌声喫茶方舟」「歌声喫茶方舟~アキナイチュウ~」という名前でアルバム化された。
ちなみに原作の各話は曲名ではなく普通のタイトルがつけられているが、これは同じくテレビ東京系で放送された小林尽の前作「スクールランブル」とちょうど逆の関係になっている(前作では原作の各話タイトルが洋楽や映画のタイトルだったが、アニメ版では普通のタイトルになっていた)。