日産ブルーバード
1959年から2001年にかけて、日産自動車が生産販売していたロングセラーの乗用車。
車名の由来は、当時の社長によって幸福の象徴である童話の青い鳥から取られた。
セダンを基本形として、クーペ、ステーションワゴン型の派生車もあった。
市販化されていないが代によってはコンバーチブルも作られた。
日産の中級クラスを担う車種として、長らくトヨタ自動車のコロナと熾烈な販売競争を繰り広げていたことで知られ、その熾烈さは「BC戦争」とまで呼ばれた。
前史
1955年1月から59年6月にかけて製造･販売が行われたダットサン乗用車(110型～211型)を先祖とする。
タクシー需要が中心だったが、よく回るエンジンと頑丈な構造で評判は良かった。
初期モデルは第2回毎日工業デザイン賞を受賞した。
後期モデルはアメリカに輸出された。
さらに58年9月に開催されたオーストラリア・モービルガス・トライアル(オーストラリア大陸を19日間で一周するレース)に2台参戦、65台出走した中で37台しか完走できなかったサバイバルレースを見事に耐え抜き、完走、Aクラス優勝を果たした。
初代(310型)
ダットサン乗用車の評判と実績をそのままフィードバックしたかのように、59年7月に初代ブルーバードが誕生する。
まだモータリゼーションの到来前で国民の大半が自家用車を所有していなかったが、タクシーを中心に好評を博した。
また派生車として日本車史上初とされるステーションワゴンが追加された。
モデル末期に初めてサファリラリーに挑戦したものの、完走はならなかった。
2代目(410型)
63年9月に2代目が登場。
日産では初となる完全モノコック構造の車体を採用したが、その外観はイタリアの工業デザイン会社による欧州風の尻下がりなスタイリングであった。
ただそのデザインは当時の日本では不評で、トヨペットコロナに販売台数でリードされる。
それでも発電機系統に関しては改善がされた。
初のスポーツモデルとなる「スポ－ツセダン(SS)」グレードを64年3月に追加。
さらには従来の1,300ccエンジンに対して1,600ccクラスを積んだ「スーパースポーツセダン(SSS)」仕様が1966年に初めて設定された。
北米市場だけでなくこの代からはヨーロッパにも輸出されている。
66年のサファリラリーでは、4回目の挑戦にしてようやく完走を果たした。
3代目(510型)
かくして67年8月15日に発売された3代目は「スーパーソニックライン」と呼ばれた流れるようなスマートなスタイルと、当時としては珍しかったSOHCエンジンから来る噴き上がりの良さ、これまた当時としては珍しい4輪独立懸架による操縦性の良さから、日本はもちろんのこと欧米でも好評を博した。
さらには70年のサファリラリーで優勝を果たした。
なおその前年に公開された、サファリラリーを題材とした松竹映画「栄光への5000キロ」の「主人公」も務めている。
4代目(610型)
71年8月に4代目が「ブルーバードU」として発売。
ただし3代目も72年12月までタクシー仕様を中心に、セダンの一部グレードが引き続き生産販売されている。
ちなみにタクシー仕様の後継車は初代バイオレットであった。
ブルーバードはもともとは4気筒エンジン搭載車だったのだが、この代にはL20型6気筒エンジン搭載車の設定がされており、設計の一部変更でフロントサイドにサメのエラのようなルーバーが付けられたことから「サメブル」というあだ名が付いた。
73年のサファリラリーでは、ダットサン240Zの優勝に次いで2位となっている。
5代目(810型)
76年7月に5代目に移行。
Uの文字が外された一方で、4気筒仕様は6気筒のものに寄せたデザインとなる。
またタクシー仕様も再設定した。
加山雄三が広告キャラクターを務めた。
6代目(910型)
79年11月、6代目にフルモデルチェンジ。
日本国内では4気筒エンジンに一本化し3代目を彷彿とさせるデザインとした。
ただしアメリカ向けは6気筒エンジン搭載車を継続。
沢田研二が広告キャラクターを務めた。
80年3月にはターボ搭載車を設定。
日本車では同じ日産のセドリックとグロリア)に次いで2例目である。
タクシー仕様車に関しては93年7月まで生産された。
7代目(U11型)
途中からVG20ET型6気筒エンジン搭載の上級車種として「ブルーバードマキシマ」が追加されている。
87年9月にモデルチェンジされたが、ブルーバードマキシマは88年10月まで、ステーションワゴン型は90年5月まで生産販売された。
8代目(U12型)
87年9月に8代目(U12型)が登場。
初めて4WD仕様が登場し、さらにそれをベースにしたラリー仕様の「SSS-R」が設定された。
91年4月にはオーストラリア仕様である「ダットサンピンターラ」のハッチバック車を、「ブルーバード・オーズィー」として限定発売した。
9代目(U13型)
91年9月に9代目にモデルチェンジ。
セダン(SSSとEEX)と4ドアハードトップ(ARX)で、日米それぞれのデザイナー達が考案した異なるデザインを採用した。
しかし全体的にナメクジのようになだらかで尻下がり型となったアメリカ人デザインのセダンは、日本では不評であった。
10代目(U14型)
96年1月に10代目が登場。
先代のデザインの反省から、日本人好みの角ばった箱型のオーソドックスなものに変更された。
2001年8月に生産･販売を終了。
その前年2000年の8月に、ある意味で11代目とも言える後継車の初代ブルーバード・シルフィ(G10型)が誕生している。
ブルーバード･シルフィ
サニーをベースとしたブルーステージ専売の新規車種として開発。
その一方で日産はプリメーラの大型化と同時にブルーバードの開発を凍結しようとした。
しかし販売サイドや顧客からブルーバード廃止反対の意見が多かったため、やむを得ず新規車種に「ブルーバード」の名を残したとされる。
2005年には2代目G11型(ブルーバードの名としては12代目)に移行したものの、2012年12月発売の3代目に当たるB17型をもって「シルフィ」が登場。
これに伴い53年も続いた「ブルーバード」の名の歴史に幕を閉じた。
