特徴
ノックアウト方式のオープントーナメント制の大会である。参加資格は第1種区分のチームに限定されているものの、オープントーナメントと言われるのはその区分のチームであれば、プロだのアマチュアだのチーム形態だの問わずに参加できることが可能である。そのため、同じクラブのトップチームとサテライトチームが本選や予選で激突・・・なんてこともある。なお、J1リーグとJ2リーグに在籍するチームは自動的に本選シードを得られるので予選が免除される。
J1リーグがその年の『リーグ戦日本一』を決める大会であるとすれば、その年の『トーナメント戦日本一』を決める大会がこの天皇杯である。
優勝チームにはJ1リーグ王者との統一戦であるスーパーカップの出場権が与えられ、更に優勝チームがJ1ライセンス保有チームであればACLの出場権も併せて与えられる。
かつては第2種区分である高校サッカー部クラブユースのU-18チームにも出場資格があったが、第2種区分の大会とのスケジュール調整が困難になった結果、2015年度以降は参加資格から外れる形となった。
番狂わせ
天皇杯では最早お馴染みとなった現象。下位カテゴリのリーグに在籍するチームが上位カテゴリのリーグに在籍するチームに勝つ瞬間こそ、この大会の最大の特徴とも言っても過言である。カテゴリ差が1カテゴリしかない上のチームに勝つのは(ニュアンス的に)アップセットと呼ばれ、学生チームが実力差がない社会人チームに勝つのは番狂わせとは言われないが、2カテゴリ差以上の上のチームに勝ったり、学生チームがJリーグ在籍チームに勝つのはジャイアントキリングと称される。
都道府県予選
シードされないチームが本選出場をかけて争う場である。どの予選も本選への出場枠は1つのみであり、これは高校や大学の全国大会だと枠が複数あることで知られる東京都の予選も例外ではない。
また、予選大会の管轄は各都道府県協会となっている一方、どの予選大会も天皇杯予選専用の大会になっていないという特殊さがある(※全ての大会が「天皇杯予選を兼ねている」形式としている)。例えば、天皇杯東京都予選の正式名称は『東京都サッカートーナメント』である。その他だとサッカー王国・静岡県の場合だと『静岡県サッカー選手権大会』となっており、一時期は「スルガカップ争奪」という冠付きの大会名であった。
『魔境』と称される特定地域の予選
そのレベルの高さから予選内ではシードとなるJ3リーグチームでも本選出場が極めて困難となった結果『魔境』と称されている。2021年現在は以下の地域予選が当て嵌まる。
- 東京都予選と神奈川県予選
それぞれ『天皇杯予選三大魔境』の一角とも称される。大体の原因は学生チームである。全国から有望な選手が加入してくる学生チームのせいで、J3チームが毎年と言われるぐらいアップセットされるのが最早珍しくなくなってしまったほどである(※SC相模原の項目も参照のこと)。また、Jリーガーに成れなかったもののレベルの高い環境に身を置いてた学生選手が卒業後にこの2地域の地域リーグ(関東リーグ)や都県リーグに在籍する社会人チームに加入することも有り、そういった社会人チームがそのカテゴリに留まりながらも実力を上げているのことも手伝って、予選突破の困難さが益々極まっているのである(※実際にFC町田ゼルビアとSC相模原が地域リーグチームに競り負けて予選敗退したことがあった)。ちなみに東京都予選においては、2010年度大会において東京ヴェルディユースチームが決勝でJFL在籍の横河武蔵野FCを延長の末破って本選初出場を掴んだ歴史もある。
- 静岡県予選
『天皇杯予選三大魔境』最後の一角。一次予選(事実上の準々決勝まで)と二次予選(事実上の準決勝と決勝)がある。ただ、一次予選から二次予選へと進める枠は参加チーム数の多さの割に1つしかない。その上、J3リーグ在籍の藤枝MYFCとアスルクラロ沼津、そして、『Jへの門番』ことJFL在籍のHonda FCという全国リーグ在籍の3チームが二次予選で待ち構えている。また、現状の静岡県予選で一番実績があるのはJ3リーグの2チームではなくHondaであり(※現行のJFL開幕以降で本選ベスト8入りを2回も果たしている)、結果、J3リーグの2チームですらHondaを恐れる始末である。なお、2021年度では一次予選を突破した常葉大学サッカー部に藤枝MYFCが二次予選準決勝で競り負けており、カオスさが更に増すこととなった。
- 茨城県予選
結論から言うと原因は『茨城県二大学生クラブ』である流通経済大学サッカー部と筑波大学蹴球部。流通経済大学はトップ・セカンド・サードの3チームが全て二次予選シードとしてエントリーされており、筑波大学蹴球部もトップチームのみだが二次予選シードとしてエントリーされている。茨城県サッカー界では鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを除けばこの2つの学生クラブが保有するチームが抜きん出た実績を持っており、ジョイフル本田つくばFCを始めとして地域リーグ以下に在籍するJリーグ入りを目指すチームですら歯が立たない状況がよく目立つ。ただ、ジョイフル本田つくばFCが2019年度の予選で初めて決勝進出を果たしたこともあり、この学生2クラブの牙城が崩れることと予選そのものが益々カオスになることが今後期待される。
- 青森県予選
J3リーグ在籍のヴァンラーレ八戸、JFL在籍のラインメール青森、地域リーグ(東北リーグ1部)在籍のブランデュー弘前、そして学生チームの八戸学院大学サッカー部の4強が形成されている。2019年度ではブランデューが予選を勝ち抜く寸前まで行ったため(※準決勝でラインメールに1-0、決勝でヴァンラーレに1-1からのPK戦3-4)、今後この4チームの何処が勝ち抜いてもおかしくない状況になった。その上、2021年度からヴァンラーレ・ラインメール・ブランデューの3チームがサッカーフェスティバルという名目で対抗戦を行うことが決定しており、これが青森県予選のレベル上げに直接貢献するのは間違いないと思われる。