概要
ナザリック近郊三カ国のひとつで、人類最強の大国。
六大神を信仰する宗教国家で、各神を信仰する者達に分かれて派閥が形成されているが、人類が最弱の知的生命体である事を認識するが故に強固に結束している。
しかし、それが災いして人間以外の異種族に対する常軌を逸した差別感情が蔓延しており、人間に敵対意識を持っていない種族まで殲滅しようとしたり、酷い場合は同じ人間であっても異種族と仲良くしようとする者は迫害する事もあるなど凶行を働く事もあり、蒼の薔薇のガガーランを初めそういう国風を問題視している人間は数多い。
裏で亜人種の掃討や各国要人の暗殺などを行っているが、それを支えるのが六色聖典と呼ばれる特殊部隊である。各部隊成員の質は高く、その人材発掘のため戸籍制度も整備する事などから潜在的な国力は高く、首都は帝都アーウィンタールを上回るインフラ整備がなされているなど、周辺国では最強と目されている。国家の特性上、他国とは異なり信仰系魔法詠唱者が神殿でなく国家直轄となっているのも特徴。
上述のような弊害があるものの、こうした強大な戦力を用いて他種族からの防波堤として機能しているお陰で、周辺の他の人間国家の安全が保たれている事から、必要悪として認めざるを得ない面もある。
国民は例外なく六大神信徒であり、スレイン法国出身者はミドルネームに洗礼名が必ず付くため、フルネームが「名・洗礼名・姓」の構成となる。
政治体制
六大神が健在だった頃は神々による合議制であった様だが、五百年前の八欲王の襲来によってスルシャーナが滅ぼされてしまってからは、残された彼らの従属神が後を引き継いでいた様である。
しかし、六大神がいなくなった事で次第に彼らは暴走を始め、やがて主なき世界を見限り滅ぼすとする魔神へと身を落として、法国を初め人類勢力が滅亡寸前に追い込まれるが、十三英雄の活躍によってどうにか事なきを得た。
現在は最高神官長が国のトップとして存在し、次いで、六柱の神からなる六つの宗派の最高責任者である六人の神官長がいる。
これに、司法、立法、行政の三機関長。魔法の開発を担う研究館長。軍事機関の最高責任者である大元帥の合計十二名で構成されるのが、スレイン法国の最高執行機関である。
新しい最高神官長の選定は、六名の神官長達から、現在の最高神官長が属する宗派を除いた五人の中から選定される。
その他、地、水、火、風、闇、光の六大神殿があり、各神殿の巫女姫を使った大儀式を行う事で、この世界の人間では単身では使用出来ない、第七位階以上の魔法を行使できるシステムを組み上げている。
高い位に就く者はそれに相応しい清廉な精神の持ち主でなくてはならないとという考えから、位が高い者ほど激務でありながら報酬も低く抑えられるが、それを苦としない意欲に満ちた者だけが率先して職務に取り組めるという、権力の腐敗と暴走を抑止する為の自浄作用システムが組まれている。そのお陰で現在のリ・エスティーゼ王国や、鮮血帝ことジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが即位する前のバハルス帝国の様な腐敗を免れ、600年もの間人類最強の守護国家としての威光を保ち続ける事が出来た。
それでも長い歴史があるが故に、上述のシステムも近年は制度疲労を起こし始め、次第に一部の名家の影響力を完全に無視する事は出来なくなりつつあり、中間管理職までなら富裕層のコネによる不正人事が通用してしまう事から、ベリュースの様な出世のため箔をつける事が目的で士官してくる不届き者が後を絶たないなど、上層部の頭を悩ませる社会問題も抱えている。
更に、上層部も上述した清貧と性善説の思想が災いして人間の欲望や世俗主義に基づく価値観に疎い所があり、そのせいで多くの人を育み、異形種と戦う勇者達が生まれ出る事を期待してリ・エスティーゼ王国に優遇政策を持って甘やかしすぎた結果、取り返しのつかない域にまで堕落させてしまった。
そのため、苦肉の策としてバハルス帝国に王国を併合させるべく、人類にとって希少な戦力であるガゼフ・ストロノーフの抹殺を目論む過程でカルネ村を初め多くの罪なき人々を切り捨て、その禍根が巡り巡ってカルネ村を軍事力という点で帝国をも凌ぐ一大勢力に変えた挙げ句、それがよりにもよって仮想敵国であるアインズ・ウール・ゴウン魔導国に組み込まれるという、致命的な大失態に繋がった。
加えて同盟を結んでいた筈のエルフの王国の裏切りを受け、泥沼の戦争状態に陥って国力をすり減らされているローブル聖王国とも、異種族から人間を守るべく戦うという同じ国是を持つ宗教国家でありながら、宗派の対立が原因で有事の際も禄に足並みが揃えられないなど、この様に上層部は内政手腕は確かだが、外交手腕には難ありと言わざるを得ず、良い意味でも悪い意味でも俗に疎い聖職者が政治をやると碌な事にならない一例とも言える。
作中で活躍
書籍版では無自覚にナザリックの地雷を踏みまくる不運な国家。
1巻でたまたまカルネ村を訪れていたアインズに陽光聖典が壊滅させられた上に、状況を確認しようとした風の巫女姫が爆死。3巻では作戦行動中にシャルティアと遭遇してしまい、カイレの持つマジックアイテムでシャルティアを洗脳する事には成功したが、相討つ形でカイレが重傷を負い、精鋭中の精鋭である漆黒聖典の2名が死亡したりしたことで、立て直しには10年単位の年月が必要とされる程にまで国力面で大きな痛手を受けた。
更にアインズは、シャルティアを洗脳した連中は確実に叩き潰してやると決めており、スレイン法国はナザリックの存在自体を認識していないのに、ファンから絶対に酷い事になる国と考えられている。
アインズ・ウール・ゴウン魔導国が建国されてからは対抗しようと情報収集に奔走するが、得た情報が死の騎士(デス・ナイト)のパトロールによる治安の改善や、馬や牛に取って代わるスケルトンと魂喰らい(ソウルイーター)の無制限の労働力、私利私欲に溺れない絶対服従のエルダーリッチによる優れた行政システムなど、生きとし生けるもの全ての敵の筈のアンデッドによる無駄のない効率的な統治の事実に茫然自失となるが、気を取り直して帝国と水面下で対魔導国同盟を結むべく、ジルクニフの招待を受けて帝都アーウィンタールの闘技場に会談の場を設けるが、そこに偶然乱入したアインズによってご破産となり、一国のみで魔導国に対抗すべく国力の回復に力を注ぎながら策を練っている。
特色
六大神信仰
600年前に降臨し、当時亜人に追い詰められて絶滅寸前だった人類を救済し、スレイン法国の基礎を築いたとされる6人の神々を信仰する宗教。
火の神、水の神、土の神、風の神、光の神、闇の神を崇めている。
「白金の竜王(プラチナムドラゴンロード)」と取引を行った事もあったとされている。
なお、六大神の従属神達が六大神の死後暴走し、「魔神」となって亜人を凌ぐ脅威となり人類は再び滅亡の淵に立たされてしまうものの、十三英雄によって倒された。
アインズは、彼らを自身同様ユグドラシルから転移してきたプレイヤーであると推測している。
スルシャーナ
六大神の中でも、特にスレイン法国で盛んに信仰されている闇と死を司る神。
六大神最強の力を持ち、人々を慈しむ人格者であったとされ、当時から生きている「白金の竜王(プラチナムドラゴンロード)」のツアーとも親友同士でもあった。
その外見は骸骨の魔法使い然としており、アインズと外見が酷似していたという。
他の六大神の従属神が「魔神」になる中、不思議とスルシャーナの従属神達だけは「魔神」となる者が一人も出なかった。
六大神の中では最後まで生き残り、大罪を犯せし者達によって放逐されたとされているが、実際には500年前に降臨した八欲王によって殺害されている。
アーラ・アラフ
六大神の中でも特にスレイン法国で盛んに信仰されている、光と生を司る神。
闇と死の神たるスルシャーナの対を成し、六大神の中で彼に次ぐ力の持ち主だったとされる。
神人(しんじん)
六大神の血を引く者の中でも、その力を覚醒させた者の事を指す。現在の法国では神人が3人いる。
別格の強さを誇り、六大神の残した武具を装備すれば大陸を滅ぼせる事も可能な程であり、まさしく法国の切り札と呼べる存在ではあるのだが、下手に神人の情報が公になってしまうと真なる竜王達との決戦となり、最悪巻き添えで法国が消滅してしまう恐れがあるため、その存在は隠蔽されている。
六色聖典
風花聖典
他国への潜入及び偵察を行う情報部隊。
書籍版ではアインズの攻勢防壁によって甚大な被害を受け、法国上層部が『災厄の竜王』復活かと誤解した。
WEB版では辺境侯の住むナザリックに対して諜報魔法を仕掛けたが、痛烈な反撃を喰らい、アインズが六大神最強の死の神スルシャーナではないのかと疑った。
火滅聖典
ゲリラ戦に特化した部隊。エルフとの戦争において活躍している模様。
水明聖典
詳細は不明だが、風花聖典とは違った手法で情報を収集している諜報部隊。
陽光聖典
ニグン・グリッド・ルーイン率いる特殊部隊。第三位階の信仰系魔法の習得を加入の最低条件とし、肉体、精神、信仰心など求められる水準の高さによる。任務特性としては亜人種の集落殲滅などの戦闘行為を主とする。
書籍版では物語最初の外敵としてアインズにより一瞬で殲滅されたが、WEB版では大規模なゴブリンの群れを殲滅している姿を拝める。
漆黒聖典
構成員は十二名程度と少数であるものの、法国最強の部隊である。
一人一人がガゼフ・ストロノーフに勝てる実力を持ち、真なる神器(世界級アイテム)を守護し、伝説級以上と目される強力な武装を保有する。更には六大神の先祖返りとされる神人が加入している。
かつて、クレマンティーヌもこの部隊の第九席次として所属していた。
……因みに作者曰く、WEB版では漆黒聖典の隊長が「俺一人で漆黒聖典だ」というキャラだったらしいが、書籍版ではもっと強い方にボコボコに殴られ、挙げ句の果てに馬の小便で顔を洗わされたりして、遂には「俺はゴミだ」と己を卑下するまでになってしまった事があり、現在は非常にまともなキャラとなってしまっているらしい。
関連人物
神官長
六大神の属性を司る6つの神殿と、その加護領域を統括する6人の神官長に、彼らを束ねる最高神官長が君臨しており、最高神官長は同時に現在のスレイン法国における最高指導者でもある。
巫女姫
六大神の属性を司る6つの神殿に居る6人の巫女姫達。
神殿で行われる儀式で中心的役割を果たすのだが、その実態はマジックアイテム「叡者の額冠」によって生きた高位階魔法発動装置に仕立て上げられた少女である。
露出度の高いスケスケの専用装束に身を包んでおり、パッと見痴女にしか見えないとか(ちなみに、叡者の額冠を使わせるためにクレマンティーヌに攫われたンフィーレアも、同じ物と思しき装束を着せられていた)。
法国は彼女らを媒介にする事で、通常は使用できない第八位階までの魔法を使用する事が可能となるが、実際の発動には巫女姫と同時に大規模な儀式も必要になるなど、効率が悪い。
この内、一名はクレマンティーヌ離反の際に叡者の額冠を奪われて発狂し再起不能に、もう一人はナザリックを魔法で偵察した際に攻性防壁の反撃で死亡している。
番外席次(絶死絶命)
一般にはその存在を知られていない漆黒聖典番能力番外席次にして、法国の最高戦力。
3人しか居ない「神人」の一角。
隊長
漆黒聖典の第一席次にして隊長。3人しか居ない「神人」の一角。
番外席次には及ばないが法国でも最上位の実力者の一人で、一切動く事が出来ない番外席次に代わって漆黒聖典を率い、対外任務に従事している。
ニグン・グリッド・ルーイン
陽光聖典隊長。
法国からの命令に従って、ガゼフ・ストロノーフ抹殺のための奸計を張り巡らせるが…。
クレマンティーヌ(疾風走破)
漆黒聖典の元第九席次。兄との因縁などから離反した。
離反の際に巫女姫の一人から叡者の額冠を強奪し、そのまま姿を消している。
なお、漆黒聖典所属時代の専用装備は残したまま出奔しており、離脱後の力は全盛期に及ばない。
カイレ
チャイナドレスを着た老婆。詳細は不明だが、法国でもかなり高位にある人物。
このチャイナドレスはワールドアイテムの一種「傾城傾国」で、どんな相手も耐性などを完全に無視して永久的に洗脳状態に置く事が出来る、強大な効果を持つ。
シャルティアを傾城傾国で操ろうとしたが、本能的に危険を悟ったシャルティアのとっさの反撃で不完全発動に終わり、彼女が自動迎撃マシーン化する原因を作った。
カイレもこれが致命傷となり死亡、低レベルだった事から蘇生は叶わなかった。
セドラン(巨盾万壁)
漆黒聖典の第八席次。巨大な盾を両手に構えた防御・護衛特化の巨漢。
シャルティアの反撃からカイレを庇おうとしたが、一緒に巻き込まれて死亡した。
その後、無事本国にて蘇生された事が語られている。
エドガール・ククフ・ボーマルシェ(神領縛鎖)
漆黒聖典の第九席次。クレマンティーヌの後任。
相手を捕縛して動きを封じる力を持つが、シャルティアには全く通じず、反撃で殺された。
その後、無事本国にて蘇生された事が語られている。
なおWEB版では第七席次で、異名もこちらが「巨盾万壁」であり、役回りが異なる。
クアイエッセ・ハゼイア・クインティア(一人師団)
漆黒聖典の第五席次。クレマンティーヌの兄。
多数の召喚モンスターを同時に使役する力を有し、こと「集団戦」「殲滅」という一点においては隊長や番外席次を除く上位席次の追随すら許さない、屈指の実力者の一人。
ただし、現在のところ登場はWEB版のみで、書籍版での詳しい動向は不明。
ベリュース
カルネ村を襲撃した偽装兵部隊の隊長。
地元の有力な資産家で、自身の箔付けのために作戦に参加した。
下種な性格の小心者で部下からの人望もなく、エンリとネムの両親を殺害した。
アインズが召喚した死の騎士に恐れ戦き、「お金あげます!」と必死に命乞いしたが、容赦なく殺害され無惨な屍を晒した。
ロンデス・ディ・クランプ
カルネ村を襲撃した偽装兵部隊の副隊長。
ベリュースとは違い有能で勇敢な兵士で、ベリュースを惨殺した死の騎士を手に負えない相手と判断し、部下に撤退を命じた。
しかし、部下達が足止めすら出来ずに次々となぎ倒されてしまい、自身も破れかぶれに仕掛けたところを首を刎ねられ戦死した。