概要
魔導王アインズ・ウール・ゴウンが、カッツェ平野での王国との戦争に勝利し、王国領だったエ・ランテルを割譲された事で誕生した専制君主国家。
国旗はギルド《アインズ・ウール・ゴウン》の旗をそのまま使用し、王城はエ・ランテルの都市長だったパナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアの邸宅を、そのまま使用している。
アインズ自らが滅亡から救い、今や「村」とは呼べない規模で拡大しているカルネ村に始まり、トブの大森林のモンスターや蜥蜴人(リザードマン)の集落、アゼルリシア山脈の霜の竜(フロスト・ドラゴン)や土掘獣人(クアゴア)氏族、アベリオン丘陵を制圧し、近隣国家ではバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスを屈服させて属国とし、山小人(ドワーフ)の国やローブル聖王国と友好関係を結び、更に書籍版14巻の時点では竜王国とも何らかの繋がりを持っている事が判明しているなど、建国してまだ1年も経っていないにも拘わらず、既に周辺国や勢力を傘下に置いている。
当初は帝国を属国にしたとはいえ、本国はカッツェ平野を含めたエ・ランテルとその周辺の小さな村々しかなかった為に、ずば抜けた軍事力を除けば実質小国にも満たない都市国家レベルの国でしかなかったが、後の完全なる殲滅戦でリ・エスティーゼ王国を滅亡させた事で、その領土と先の殲滅戦への協力と従属と引き換えに、殲滅対象にされなかった生き残りの100万人を丸ごと併合した事で、名実共に大国としての地位を確立した。
社会・文化
魔導王と側近(ナザリックNPC)が最上位に存在し、力で進める世界征服とは別に人間種・亜人種・異形種に関係なく、全ての種族が共存出来る理想郷を作り、その圧倒的な魅力で統治するというアインズの目的の下に、人間だけでなくゴブリンやオークやトードマンなど、数多くの非人間種が暮らしている。
伝説上のアンデッドが労働力として使われ、主にモンスター退治・治安維持・防衛を担当しており、また不眠不休で働ける特性を利用して、食糧の大量生産が行われている。
このアンデッド農法への農業革命の成功によってまだ国土と人口が、カッツェ平野を含めたエ・ランテルとその周辺の小さな村々しかなかった14巻の時点でさえ、人類国家トップの資源の宝庫である王国全土に匹敵する程の食糧が生産され、ヤルダバオトの襲撃で疲弊した聖王国に食糧支援を行っている。
それにより、王国統治下時代とは比較にならない程に食糧事情が豊かになった事から、これまで高級品だった調味料や希少な食材を贅沢に用いた調理が広まるなど、食文化が大きな発展を遂げる事になった。
占領当初、エ・ランテルの元官僚が全て王国に逃亡した事で、内務のほぼ全てがアルベドに集中した。そこでアルベドは、アインズが作成した死者の大魔法使い(エルダーリッチ)6体に教育を施し、人材不足の解消にあたっている。
支配域の拡大に比例して各方面で人材不足が浮き彫りになり、14巻では新しい機関が作成され始め、現地人の雇用が増えている。
アンデッドが支配するという、周辺に類を見ない多種族国家のため、都市に入るには入国管理官から講習を受けなければならない。
魔導王と配下のアンデッドがあまりに恐ろしいため、種族の違いによる問題はほぼ無いらしく、微罪はあるが重犯罪は無い。
そうなった最大のきっかけとなったのは魔導国が建国されて間もない頃、死の騎士(デス・ナイト)に驚いて誤って攻撃した人間が即座に瞬殺され、そのまま従者の動死体(スクワイア・ゾンビ)に変えられ、町の労働力として使役されるという微罪の域を超える犯罪行為を犯したと見なされる者への制裁事例を、エ・ランテル中の人間が目の当たりにした事件が原因の模様。
以来、国民の中で暴力沙汰は御法度となり、それでもいざこざが起きてしまった場合は話し合いでの解決に終始し、最後は互いに許しあう事が殆どとなっている。
なおあまりに犯罪がないため、ナザリック用の実験動物を得るために、属国の帝国に犯罪者を要求している。
法律
- 国民を食べてはいけない
- 魔導国の冒険者組合に所属する冒険者が他国に鞍替えした場合は、反逆罪になる
- 講習の部屋にいるデス・ナイトを見て抜刀すると、その場で死刑が執行される(死体はアンデッドになる)
- 徴兵は金品を受け取ってはならない
- 都市で抜刀は禁止(防衛時を除く)
- 犯罪の捜査や裁判では、他国では蛮行と思われている精神操作の魔法を使用する
教育・技術・国家戦略
アインズは、「国民は社会の歯車になれる程度の教養しか知らずに生きて、そのまま死ねばいい」と考えている。
奇しくもこれは、彼が人間だった頃に住んでいた世界に存在する巨大複合企業の考え方に似ているが、その考え方が根付いた世界に苦しめられ奪われてきた1人として、むしろアインズ自身は巨大複合企業の支配する故郷の世界を反面教師としており、ブラック企業や荒廃した世界を作るつもりは毛頭ない。
その代わり、当のアインズ自身を含めた国民が退屈や不満を抱かずに済むよう、せめて娯楽については何とかしたいと考えており、何か新たなイベントや祭りの様ものを興せないかどうかを現在模索している。
技術に関しては飽くまで『ナザリックの強化』が第一であるため、ンフィーレアが開発に成功した新ポーション、ドワーフのルーン技術、フールーダが開発を担当している魔法など、新しい技術は基本的にナザリックが独占している。
16巻でのアインズの独自によると、ンフィーレアが祖母のリイジーと共に、遂に《ユグドラシル》産の赤いポーションの再現に成功したらしく、現在は安い錬金術溶液や薬草などでも赤いポーションを製造出来る様に力を入れている。
その反面ルーン技術に関しては、こちらも同巻のアインズの独自によると、ンフィーレアのポーション製造とは違い未だ確かな成果は出ていない。アインズ自身も打算に合わない事業だと自覚してはいるが、100年単位の長い視野で辛抱強く見つめ続けなければならないとも考えている。
一方でそれまで周辺諸国の特権階級が独占してきた、ナザリックにとっては害のない旧技術については知識を幅広く公開し、旧技術を使いこなせる程度を始め生きていく上での困らない、何より出来てもらわないとアインズ達としても統治を行う上で流石に困ってしまう位の、読み書きや簡単な計算など最低限の一般教養は、ペストーニャやニグレドの運営する孤児院等を通して教育していく様である。
加えて、新技術の知識においても才覚とナザリックへの揺るぎない忠誠心など、人柄が厳選の末に認められた有用な者については、例外としてアインズの名の元に新技術の知識を授ける事を許可される。
アンデッドの利用
アインズが死体を使って量産したアンデッドを、他国へ輸出するレンタル業が行われている。
強さでレンタル料が変わり、最も人気があるアンデッドは単純労働用で、販売台数第1位は『スケルトン』(身分の低い者でも手軽に借りれる程の安さや、汎用性の高さから大概の事はこれくらいで十分の働きをしてくれるのと、万一事故の様な事があっても一般人でも対処しやすい為)。
それに次いで売れているとされるのが、旧来の牛馬に用いたあらゆる作業を時代遅れにまで追いやり、完全に取って代わった『魂喰らい(ソウルイーター)』、帝国の貴族層及び軍部には騎兵として護衛任務や輸送任務など臨機応変に対応出来る上、言葉を操る人間並みの知性と騎士としての教養・礼節も弁えた『死の騎兵(デス・キャバリエ)』が、多くレンタルされている。
自国民からもレンタル料を取るらしく、村の開墾の場合は税に上乗せする契約になっている。
道路の舗装やスラムの改築・故郷での鉱山の採掘活動を行う山小人の国のドワーフは、もはやアンデッド抜きで仕事を行う事は考えられない程手放せない状態にまで依存する事になり、故郷の村で次男坊・三男坊といった畑を分けて貰えず、出稼ぎにも失敗してスラムに追いやられてしまっていた者達が、アインズによってかつて法国の陰謀によって壊滅した村の再建にアンデッドを貸し与えて送り出されて得た様々な恩恵で、不遇の人生から抜け出す事の出来た元スラムの住人達から感謝と忠誠を誓われるなどといった、今や魔導国の経済を支える重要な基幹産業の1つとなっている。
軍事力
ナザリックにいる高レベルモンスター以外の表向きの軍で、コキュートスが管理・訓練を行っている。
詳細は不明だが、アインズが作成したアンデッドや、7巻に登場したナザリック・オールドガーダー、他少数の亜人種と人間が魔導国軍として登場している。
術者のアインズと召喚したアンデッドは、離れても意思疎通ができるため、それを活用して世界中に情報網を張り巡らせる方法をアインズは考えている。
しかしアンデッド側からは漠然とした返信しか出来ない事や、数が多すぎてアインズでは把握と管理が余りに難しい事から、11巻の時点では「現状では不可能」であるため、デミウルゴスが情報機関の設立に動いている。
MASS FOR THE DEAD
メインストーリーの中盤辺りにて建国されるが、こちらではモモンガが“アインズ・ウール・ゴウン”と改名していないため、『魔導国』という国名だけになっている。
建国した事で主人公が本格的に『外交官補佐代理』として動く事になった以外は、原作との差異はさほど存在しない。
余談
- 魔導歴
魔導国成立を元年とした暦。しかし作中で用いられているものではなく、原作の『オーバーロード』の新刊発売が延期される度にファンが用いる強弁である。
例文として「2022年発売とあるのは『魔導歴』でのこと。発売までにはまだ余裕がある」といった文脈で用いられる。作中での魔導国は建国からまだ数年であるため、大幅に余裕を持たせたスケジュールであると言えるだろう。