概要
スレイン法国とローブル聖王国の間に広がる巨大な丘陵地帯。デミウルゴスが飼育している、“聖王国両脚羊(アベリオンシープ)”の牧場が存在する場所でもある。
社会
様々な亜人種が存在し戦いを繰り広げ、同種族でも部族が分かれている。
ゴブリンやオーガの様に共存する種族もいれば、片方が奴隷として酷使される事もある。
一応、各々が強豪部族の長でもある『十傑』と呼ばれる英雄級以上の実力者達が、外部勢力に付け入る隙を与えないために、協定を結んで亜人達の抗争をコントロールし、絶滅規模の戦いが起こらないよう一定のバランスを保ってはいるものの、そんな彼らでさえ心底では、互いに他を出し抜こうと勢力争いを繰り広げている。
よって、基本的に丘陵が統一される事などほぼ不可能に近いのが現状で、完全に歩調を合わせる事は無いとされている。
魔皇ヤルダバオトの襲来
魔導国が聖王国とアベリオン丘陵を支配下に置く事を目的とした壮大な策略のため、まず書籍版12巻で丘陵を支配した魔皇ヤルダバオトが、総勢10万超の亜人の軍勢を率いて聖王国へ侵攻を開始した。
ヤルダバオトが先陣を切り城壁を大魔法で破壊し、城塞都市カリンシャで聖王女カルカ・ベサーレスなどの敵の主要な戦力を削いで、一気に北部聖王国を占領下に置く。
しかし、僅かに残った聖王国解放軍は他国に救援を求め、アインズ・ウール・ゴウン魔導王の助力を得た。魔導王の参戦により亜人の軍勢は旗色が悪くなり始め、ヤルダバオトは魔導王と直接対決を試み勝利したが、深手を負ったため戦線から離れた。
その隙に解放軍は勢力を増し、最終的に魔導王が再びヤルダバオトと戦い勝利。ヤルダバオトを失った亜人軍は敗北した。
計画が一段落した後、アベリオン丘陵は魔導国の領土となった。そしてアベリオン丘陵の多くの亜人がヤルダバオトに魅せられて従っていたが、魔導国にとって邪魔になる種族は殲滅され、ヤルダバオトに従わなかった豚鬼(オーク)や造反した藍蛆(ゼルン)などの亜人は生き残り、魔導国の庇護下で暮らす事になった。
生息している種族
人間種
- 闇小人(ダークドワーフ)
アベリオン丘陵に住まう唯一の人間種。主だった亜人種達とマジックアイテムの武器防具を取引しており、その戦力の増強に大きな寄与を果たしているとされ、周辺国から問題視されている。なお12巻雑感で名前が挙がったのみで、作中には未登場。
- 丘小人(ヒルドワーフ)
WEB版のみの登場。かつて丘陵に王国を築いたが、ゴブリンなどの亜人によって滅ぼされた。
亜人種
- 豚鬼(オーク)
人間程の身長で、豚の様な顔を持つ亜人。綺麗好きと言われている。
- ゴブリン
代表的な亜人の種族。オーガと共存している。作中では亜人の一例として出ている様な文章なので、実際に丘陵にいるかは不明。
- スラーシュ
吸盤の付いた手や、遠くまで伸ばせる痺れ毒の舌を持つ亜人。上位種になれば《溶け込み(カモフラージュ)》の魔法の如く、皮膚の色を変えられる様になる。
- 巨双眼族
顔のバランスがおかしく感じる程、巨大な両目を持つ亜人。二種類の魔眼を持ち、片方は《魅了(チャーム)》である。
- 牛頭人(ミノタウロス)
WEB版のみの登場。捕獲されて交配実験に利用された。
- 蛇身人(スネークマン)
コブラの様な蛇頭と、鱗の生えた人間の様な体と尻尾を持つ亜人。蛇の頭には強力な毒を持ち、野蛮な長槍にもその毒が塗られている。蛇の様な感知器官を持つ。
- 鉄鼠人(ラットマン)
鋼の様な体毛を持つ、二足歩行の鼠を思わせる亜人。
- 洞下人(ケイブン)
人より若干大き目の猿に似た亜人で、目は退化して無くなっている。
- 藍蛆(ゼルン)
上半身はウナギに手が生えた様な姿(肩はある、毛皮は無い)をしており、下半身はその名の通り藍色の蛆虫の様に、ぬらぬらとしている。
穴を掘ってその中で暮らしており、生き物の体液(生死を問わず)が主食。基本的にメスのみであり、オスが生まれると王族となる。卵性で、部族のオスがいなくなるとメスが性別を変える事もあるらしい。
亜人に効果のある魔法の影響を受ける為に亜人と思われているが、実際は異形種である。これはゼルンに、『特定の種族のみに発揮する魔法の効果を受ける』という弱点があるが故の誤解である。そして、ゼルン達も自分を亜人だと思っている。
- 山羊人(バフォルク)
山岳地帯に住む亜人で、長い毛の直立した山羊の様な外見をしている。その健脚はまさしく山羊の如くであり、僅かな凹凸を足掛かりに城壁すらも駆け上がる程。また、長い毛は攻撃した剣に絡みつき、徐々に鋭さを鈍らせていく。
- 刀鎧蟲(ブレイダー)
手甲の部分から、刀の様な鋭い刃を突き出した手を持ち、鎧にも似た外骨格に包まれた昆虫の様な亜人。
- 馬人(ホールナー)
馬の様な足を持ち、疾走する事に長けた亜人。驚異的な走破力を持つ。
- 人蜘蛛(スパイダン)
四本の非常に細く長い手と細い足を持つ、蜘蛛の様な外見の亜人。口から多様な糸を吐き、この糸で服などを作っている。なおこの糸で出来た服は、鋼鉄並の硬度を誇る。
- 石喰猿(ストーンイーター)
食べた石を吐き出す力を持っている亜人。この石礫はおよそ100mは軽く届き、鉄の鎧さえ容易く凹ませる。ただし、使用回数に制限があるのが難点。素朴な武器も使う。
- 半人半獣(オルトロウス)
半人半馬(ケンタウロス)の下半身が肉食獣になった様な姿の亜人。戦闘力は高くなっているが、走る能力は劣っている。
- 魔現人(マーギロス)
最高で第四位階にまで到達する、生来の魔法行使能力を持つ亜人。その魔法の種類が刺青となり体に現れるらしく、強い者はくまなく刺青で覆われている。
時折、魔法詠唱者(マジック・キャスター)の能力に目覚める者がおり、その者は第五位階まで使えるとの噂がある。
- 翼亜人(プテローポス)
切り立った崖の様な場所で暮らす亜人で、滑空が非常に得意。飛行中でなければ、風による切り裂き攻撃が出来る。
一応飛行も可能だが、かなり力を使う上に一日に一定の時間しか飛べないので、飛ばない方が強い種族。
- 人喰い大鬼(オーガ)
ゴブリンと同じく代表的な亜人種族。身長3m程の大柄な種族。猿に似ているが、体毛は全く無い。体の大きさに比例して筋力は極めて高く、木の幹をそのまま棍棒とし振り回す。逆に知能は極めて低い。
なお、『人喰い』の由来は人間を捕らえるのが一番簡単だからであり、本来は雑食で人間以外も捕食する。自分の部族以外では食事を提供してくれるゴブリン部族のみと共存するという、珍しい習性をもつ。
- 土精霊大鬼(ブリ・ウン)
オーガに似た種族で土の力を持ち、オーガの上位種とも言える亜人。土にちなんだ特殊能力を持つ。
- 水精霊大鬼(ヴァ・ウン)
オーガに似た種族で水の力を持ち、オーガの上位種とも言える亜人。水にちなんだ特殊能力を持つ。
体を霧状に変化させ、射撃攻撃を7回だけ無効化する能力を持つ者もいる。
- 蛇王(ナーガラージャ)
蛇に鱗の生えた体と腕が生えた様な外見を持つ。似た名前のナーガとはまるで違う種族であり、仲はさほど良くない。
複数の魔法を生まれつき持っており、武器や鎧で武装する者もいる。
- 守護鬼(スプリガン)
小型から大型まで、自由に姿を変える事の出来る亜人。基本的に善の種族であり、悪のスプリガンは非常に珍しい。ただし、善でも悪でも暴れると手が付けられないという共通点がある。
- 獣身四足獣(ゾーオスティア)
獣人の上半身と肉食獣の下半身を持つ、ケンタウロスやオルトロウスに近い亜人。板札鎧や楕円盾で武装している。特別な力は無いが、獣の如き凶暴さと腕力を持った重装甲騎兵。個人でも非常に強いので、オルトロウスに頼られる事が多い。
獣の様に唸る行為は「感情の抑制が出来ていない」と認識されており、成人の者がやるべきではないとする独特の価値観を持つ。
《飛行(フライ)》等の搦め手を使わず正面からぶつかれば、オリハルコン級冒険者でも苦戦は免れない。
関連人物
十傑
“魔爪”ヴィジャー・ラージャンダラー
ゾーオスティア最強の戦士。亡父ヴァージュ・サンディックナラから“魔爪”の二つ名を受け継いだばかりの、血気盛んな若手。
丘陵と聖王国で長く恐れられ続けた偉大な父の後継者として恥ずかしくない功績を挙げようと、自分と渡り合える強者との戦いを切望している。勇猛な根っからの戦士気質であり、弱者を甚振ろうとする残忍さは持たない。
種族由来のパワーと機動力に加え、マジックアイテムである専用の両手持ちバトルアックス『刃翼(ウィングエッジ)』と、下半身の前足の爪を巧みに操って戦う。
“氷雷炎”ナスレネ・ベルト・キュール
マーギロスの女王。マーギロス基準でも「老婆」呼ばわりされつつある年齢なのを密かに気にしており、『絶対的強者の異種族と交配して子を産む』という野望を持つ。このため、その条件に完璧に該当するヤルダバオトと子作りしたいと願って止まない。
種族特性と長く生きた年月による修練で、第五位階までの魔法を最大3つ同時まで行使できる能力を有し、オリジナル魔法まで開発している十傑きっての魔法詠唱者。
“豪王”バザー
バフォルクの王。複数の部族に分かれていたバフォルクを束ね、完全に支配している。手強い相手が出た場合には部下にだけ任せず自ら先陣を切って前線に赴くため、武力だけでなく性格面でも同胞らの信頼を勝ち取っている、文字通りの頼れるリーダー。
卓越した剣技と、相手の武器を破壊する事に特化した武技の数々を駆使し、相手の武器(亜人ならば角や爪なども含めて)を破壊して武力を削ぎ確実に追い詰めていく。
“白老”ハリシャ・アンカーラ
ストーンイーターの王。真っ白な体毛をした変異種で、ナスレネと共に十傑の中でも老齢の古参メンバー。恐怖に訴えるやり方を好む残忍な性格をしており、それを示すかの様に、事あるごとに「ヒヒヒ」と笑ってから喋る癖がある。
種族特性として、食べた石を吐き出してぶつける攻撃を主力とするが、変異種たるハリシャは一般個体よりも体内にストック出来る石の装弾数が遥かに多く、更には食べた石の種類に応じて様々な効果を付与する事が可能となっている。
“七色鱗”ロケシュ
ナーガラージャの魔法戦士。ヴィジャーに煽られても動じない落ち着いた性格の持ち主で、独特の存在感を放っている。
ヤルダバオトの配下に降ってからは、亜人連合軍総勢10万の内4万を預けられ、聖王国の小都市を襲撃する指揮を執った。
種族特性として複数の魔法を使いこなす事が可能で、恐るべき特殊能力を持つというマジックアイテムの槍、『渇きの三叉槍(トライデント・オブ・デハイドレーション)』による接近戦も得意とする。しかし、その最大の武器は「アベリオン丘陵で最も堅牢」と称えられる鎧代わりの鱗で、竜の鱗に匹敵する硬度と高い魔法耐性を合わせ持っている。
“黒鋼”ムゥアー・プラクシャー
ゾーオスティアでは珍しい野伏(レンジャー)。寡黙で冷静な性格。正面戦闘よりも暗殺術に秀でており、種族特性の機動力をフルに使って闇に紛れる。
ヘクトワイゼス・ア・ラーガラー
オルトロウスの戦士。十傑としての二つ名は不明。華美な彫刻が施された鎧や武器を身に纏った、騎士然とした雰囲気と気質の持ち主。オルトロウスがゾーオスティアに従属している関係上、ヴィジャーに対しては主として奉った態度で接する。
個人の戦闘力も十傑に相応しい高さではあるが、それ以上に指揮能力で名を挙げたタイプで、10倍という絶望的な兵力差を覆して勝利した名将として知られている。
“獣帝”、“灰王”、“螺旋槍”
本名・種族共に明らかになっていない、残りの十傑メンバー。
その他
魔皇ヤルダバオト
突如アベリオン丘陵に降り立ち、十傑を降してほぼ全ての亜人達を配下に置いた後、亜人連合を結成してその盟主に君臨した仮面の大悪魔。
ビービーゼー
ゼルンの王子。手足の生えた巨大な蛆虫の様な外見に見合わない、詩的な性格の持ち主。
陰の五行を操る、優秀な精神系魔法詠唱者でもある。
国母(グランドマザー)
パンデックスの女王。上述は二つ名で本名は不明。巨大な蛆虫の様な姿をしており、ビービーゼーの初恋の相手。陽の五行を操る、優秀な精神系魔法詠唱者でもある。
ディエル・ガン・ズー
オークのガン・ズー族族長。ヤルダバオトに従わなかったため、収容所に送られた。
余談
劇場版『聖王国編』の公開が始まってから8日後に、劇中に登場する亜人デザインの公開許可を得たとして、デザインを担当したケースワベ氏がX(旧Twitter)にてその一部をアップしている。詳細はこちら。