概要
アゼルリシア山脈の内部に点在する、4つの都市に住んでいたドワーフ達の国。
鉱物資源と優れた技術などによって栄えた国だったが、200年前の魔神の襲撃を皮切りに次々と都市を放棄、または廃都となって国力が衰退している。
初登場となった書籍版11巻では、最後に残った都市『フェオ・ジュラ』を首都にして住んでいる。なお、都市の名前は全てルーンを含んでいる。
社会
かつては王族が存在したが、上述の魔神の襲撃の際に、“ルーン工王”以外の血筋が途絶えてしまう。
なおそのルーン工王は、後に魔神討伐のために旅立っている事や種族がドワーフである事から、恐らくは十三英雄の“魔法工”と同一人物だと思われる。
現在は、それぞれの分野の8人の摂政会で政治を行っており、話し合いと多数決で決定を下している模様。
バハルス帝国と小規模ながらも貿易関係を形成し、過去には蜥蜴人(リザードマン)のゼンベルと親交があったりと、基本的に種族に関係なく相互作用していると推測される。
食事はキノコや肉類がメインであり、山麓に畑を作って農作物を作っているが、種類や収穫量が少ない。
木も滅多に手に入る物ではないので、熱鉱石で生じる熱を利用して暖を取ったり、坑道の補強はトンネルドクターと言われる魔法詠唱者(マジック・キャスター)が、魔法で補強を行っている。
摂政会のポジションは以下の通り。
- 総司令官
軍事や警察関係を管理している。
- 大地神殿長
信仰系・魔力系を含む魔法全般を管理している。他にも、トンネルドクターなども管理していると思われる。なお、ドルイドのドワーフは滅多にいない。
- 鍛冶工房長
鍛冶などを始めとする生産関係を管理している。
- 食料産業長
鍛冶で生産する物以外の全てを管理している。
- 事務総長
各長達が管理していない内務全般を管理している。
- 酒造長
CV:高橋伸也
ドワーフの酒好きを体現しているらしいが、詳細不明。
- 洞窟鉱山長
鉱山の発掘などを行っている。都市でもかなり発言力がある。
- 商人会議長
昔は商人会議という別の集まりがあったが、現在は商人も交易も少なくなり、有名無実化した外務を担当している。
採掘仕事
都市の採掘所は国営。5日働き5日休む。給金は週払い制で、仕事が何日目か記載された金属のカードの付いたネックレスをぶら下げている。
採掘道具を借りて配給物の飲食物を受け取り、持参した食料品を持って、班ごとにトロッコに乗って現場へ向かう。
採掘仕事はカロリーをかなり消費するため、配給物ではとても足りず、ドワーフ乾パンや糖分を固めた棒5本などを補助食料に持つ。
仕事が終わると、国営の鍛冶場の巨大溶鉱炉の熱を利用した温い風呂で体の火照りを取り、その後は酒場に向かう。
坑道は都市を心臓部にして幾つも掘られており、坑道にはトロッコを走らせるためのレールが敷かれ、人力の昇降機が要所ごとに設置されている。
巨大な坑道ではあるが、警備兵の人員不足で採掘班を班ごとに守る事が出来ず、ドワーフ自体が元々鈍足である事もあって、モンスターに襲われたら犠牲者が出る事が多い。
なお、坑道の危険を調べる事が出来るトンネルドクターの数は多くないため、軽装鎧を装備した4人のドワーフの戦士達が警護についている。
以上の様に採掘仕事は危険も多い反面、他の仕事よりも金を稼げるため、ゴンドの様な短期で働く者もいる(採掘量による追加手当は出るものの、それでも大金は稼げないらしい)。
ちなみに殆どのドワーフは大酒飲みであるため、稼いだ給料の大半は酒代に消えるとの事。
ルーン技術
ドワーフの国では、ルーン技術を持つ“ルーン工匠”と呼ばれる者達がいるが、ルーン技術が栄えていたのはおよそ200年前までであった。
200年前に王都が魔神に攻撃され、王族が討伐に赴いた後に、外の技術である「魔法による魔化技術」が入ってきた。
その技術は材料代こそかかるがルーンに比べて2倍から3倍の生産性があり、ルーン工匠の適正を持つ者の希少さも相まって、ルーン技術は時代遅れの烙印を押されてしまう。
現在のルーン工匠達の半数は、暗澹とした自分達の状況や、先祖から受け継いできた技術の喪失などのマイナスの感情に囚われ、自暴自棄になっている。
ルーン工匠と名乗って仕事をしている者は少なく、殆どが工房の看板を下ろし、ただ日々の糧を得るだけの暗い生活をしている。
軍事力
国力の低下で人員不足でありながらも、『大裂け目』という天然の要害によって、フェオ・ジュラは守られている。たとえ土掘獣人(クアゴア)が100匹単位で攻めてきたとしても、大裂け目にかけた吊り橋とそこから一直線上に設置した砦からの攻撃で、現在の総司令着任後から10年間は侵攻を完全に防ぎきっていた。
そのため、「吊り橋と砦があれば大丈夫」という慢心が生まれ、国力の低下も原因の1つだが、防衛に力を注いでこなかった。
それが仇となり、国力が低下しながらも10年前までは相当の兵力を保有していたが、ペ・リユロの部族統一以後は大敗を喫して、兵力の相当数を失ってしまう。
現在は総司令・大参謀・そして100人足らずのドワーフ兵がおり、作中では電撃系の魔法の武具で装備した20人程の兵が、大裂け目の防衛を担当していた。
人口10万程の都市だけあり徴集可能な兵力あるいは予備兵力の数はそれより多いが、金属に耐性を持つというクアゴアの特性を考えると、相性の良い武器を用意しなければ大きな被害を与えるのは難しいため、追加で徴集した者達を武装させるだけの余力がない11巻の時点では大きな助けにはなっていなかった。
移動及び輸送手段として、“ライディングリザード”と呼ばれる体長3m超えの巨大なトカゲを利用している。
ちなみにかつての王城には、鎧の像の姿をしたゴーレムがいたらしく、霜の竜(フロスト・ドラゴン)と戦っている。