概要
『ダィテス領攻防紀』とは小説家になろう及びアルファポリスで連載されていた作品。著者は牧原のどか。挿絵はヒヤムギ氏。
女性向けらしい恋愛要素だけでなく、異世界転生によるファンタジー世界への現代技術の投入、さらにBL要素まで雑多に取り込んでいるのが特徴。
2012年に小説家になろうで投稿開始。当初の題名はダィテス領興亡記であった。
2013年にはアルファポリスのレジーナブックスより書籍が刊行。さらに2016年にはアルファポリスの公式サイトでWeb漫画が連載開始(作画:狩野アユミ)と、順調にメディアミックスが進んでいた。
しかし2017年8月31日、原作者の牧原のどか氏が交通事故に遭って帰らぬ人となり、原作は8巻で未完となった。
Web漫画の方も休載を挟みながら進められていたが、2021年5月分をもって完結となった。
あらすじ
前世では現代日本で腐女子人生を謳歌していた、辺境の公爵令嬢ミリアーナ。
だけど、異世界の暮らしはかなり不便。そのうえ、BL本もないなんて!
快適な生活と萌えを求め、製鉄、通信、製紙に印刷技術と、領地の文明を改革中!
そこへ『黒の魔将軍』マティサが婿としてやって来た。
オーバーテクノロジーを駆使する嫁と、異世界チート能力を持つ婿が繰り広げる、異色の転生ファンタジー!
(1巻あらすじより)
登場人物
主要人物
- ミリアーナ・ダィテス
本作の主人公。ダィテス領侯爵家令嬢。登場時は18歳。夫であるマティサからは「嫁」、城内の人からは「お嬢様」、結婚してからは妻の敬称にあたる「お方様」とも呼ばれている。
長い黒髪を持つ可愛らしい風貌なのだが、この世界基準では「中の上」との事。
現代社会からの転生者。かつての名は水谷美有(みずたに みう)という現代社会に生きるごく普通の女性であったが、24の時にトラックの積み荷事故に巻き込まれて死亡。今の世界に転生することとなった。
本作の約10年前からダィテス領の「死の湖」が現代でいう死海、すなわち塩湖であることを伝えたことを皮切りに、前世の記憶をもとに数多くの技術開発や事業展開を行い、貧困にあえいでいたダィテス領を発展させる。
非常に聡明で、元歴女であったために政治や経済にも知悉しており、数々の戦法、戦略も打ち出した。戦争を望まぬがゆえに様々な戦略を練るスタイルは謀略家で知られるナリス王と方向性が非常に近く、戦略が被るたびにマティサから戦慄させられている。
後に大陸中に名を轟かせる、姿を見せぬ軍師「影の指し手」の正体(マティサにコシスとは別の参謀がついたことを察知したナリスによって命名された)。
そして、本人は無自覚だが記憶に加護を得ているようで、前世の幼少時に見た蒸気機関の仕組みを図面を書けるほどに完全に把握しているなど、常軌を逸した記憶力を持つ。
そして彼女を語るうえで重要な部分、それは彼女が前世からの腐女子であること。嗜好としては攻めと受けが固定されない、いわゆる「リバ」を好む。
彼女が内政を関与した始まりこそ貧困に苦しむダィテス領の生活改善のためであるが、現在ではBL文化の普及に半ば目的がすり替わっており、城内のメイドを多数腐らせていたりと様々な面で影響を与えている。
婿であるマティサとは見合いすら抜きで出会った翌日結婚式という政略結婚であったが、なんだかんだで夫婦仲は良好。ただ、夜の営みの激しさは本気で嫌がっている。
- マティサ・ダィテス
本作のもう一人の主人公で、オウミ国王の長子にして、元王太子。王級加護持ちとして初陣以来各地で勝利を重ね、味方からは「戦神の寵児」と称えられ、敵国からは「黒の魔将軍」と恐れられる。また、オウミ西部では恐れを込めて「狂王の孫」とも呼ばれる。ちなみにミリアーナからの呼び方は基本的に「婿様」。
美女として名高い実母譲りの華やかな美貌を持つ青年。
個人の武力・集団の統率力も高い上、政治面でも相当な見識があり、ハヤサとの同盟やエチルとの和議など、国を左右する交渉もたびたび捌いている。ミリアーナの先進的な考え方にも理解を示す柔軟な思考の持ち主でもあり、嫁の知識チートに勝るとも劣らない、この世界におけるチートスペックの持ち主。
家族については両親と弟がいるが、父親はともかく母親との仲は最悪の一言。弟にあたるジュリアスは大事に思っており、廃嫡されたマティサがオウミを捨てなかったのはジュリアスの存在も大きい。
母リサーナが旗頭となってオウミ国の西側、南側の不満に押しやられる形で廃嫡されてしまい、ダィテス領に婿養子としてやってくる。そこで出会ったミリアーナを気に入ったこと、ダィテス領のオーバーテクノロジーを放り出せなくなったこと、そして弟であるジュリアスを無用に傷つけることを望まなかったことから、廃嫡されてもオウミを見捨てることなく、公爵家の婿養子としてオウミを支え続ける。
マティサ復権派に属するメイローサ伯爵父子によるミリアーナ誘拐事件を契機にグライムが引退したことで、ダィテス公爵位を継承し、ジュリアスの立場を脅かす心配がなくなったことで、軍にも復帰して独立騎兵隊隊長に就任する。
- コシス・カティラ
マティサの腹心。銀髪に青い瞳の美青年で「銀の守り刀」の異名を持つ。軽い加護持ち。
幼少よりマティサに仕えている幼馴染かつ学友であり、絶対的な忠誠を誓っている。マティサが王位継承権を失ってダィテスに婿入りしたときは、カティラ子爵家の家督を弟に譲ってマティサに付き従っている。
マティサとは腹心以上の閨を共とする仲となっているが、マティサがほかの人物と夜を共にしようとも嫉妬は一切抱かない。ミリアーナからは「忠実すぎて変」と称された。口の悪い者からは「男娼」と罵られることも。ミリアーナをはじめとしたダィテスの女性陣による男色の受け容れっぷりについては複雑な心情を抱いている。
車酔いする方で、毎回車に乗った後はグロッキーとなっている。
ミリアーナ誘拐事件を契機にクラリサと結婚する。同時期にマティサが公爵位を継承し軍に復帰したことにより、男爵位・スェール領を賜り、独立騎兵隊副隊長に就任する。
- クラリサ・シュライア
ミリアーナお付きの侍女。亜麻色の髪を持つ美女。
ミリアーナの影響を受けて腐女子(原作説明では貴腐人)となっており、ミリアーナとの関係は年齢・立場を超えた友人でもある。好みは主従もの。
親から持ってきた見合い話が嫌でミリアーナの侍女募集に食いついたという経歴を持つ。
ダィテス領
- グライム・ダィテス
現ダィテス公爵。ミリアーナからは「パパン」と呼ばれている。
政治に明るくなく頼りない印象を受けるが、ミリアーナの突飛な意見を聞き入れたり、女性軽視の強い時代において商売の渉外役として表に立ってくれたりと、なにかと彼女に便宜を図ってくれている。
- エドアルド・アムール
ダィテス「領防衛軍」長官。ふわふわした金髪と間延びしたしゃべり方が特徴。
オウミの王子だった初代ダィテス公爵が辺境の地に追いやられる際、唯一付き従った腹心の子孫。
真性の男色家、さらに極度のドSで攻め一択、加虐趣味が行き過ぎて男娼館から出入り禁止を食らうほどの変態。
さらに防衛軍の所属員にもセクハラしているせいで、人望については地を這っており、家の名前も大いに落としている。ダィテス領で「変態」といえばすぐさま彼が連想されるほど。
ミリアーナの書くBL作品のファンでもあり時折ネタも提供しているが、ミリアーナ曰く「見る人を選ぶ」とのこと。
困ったことに仕事はできる人間で、「密偵殺し」といわれるダィテスの情報統制を担うほか、長年かけて測量による各国の地図作成や天測航法の原型となる天測の方法をまとめるなど、色々と貢献している。
- セイ
元カイナン国所属の密偵。特徴のない風貌と、甘く澄んだ声が特徴。
名を持たないカイナン国の密偵の中で「早風」の異名を持つ凄腕の密偵で、走力、跳躍力に加護を持つ。セイという名前も本名ではなく、エドアルドがその声からつけた通り名。
ゲインの命でダィテス領に忍び込むも捕まり、仲間の手で救助されるもエドアルドの策略で逆に裏切り者扱いされ、なし崩し的にダィテス領の密偵として働くことになった。
変態のエドアルドからはお気に入りとして愛をぶつけられているが、加虐嗜好の変態がぶつける愛なので本気で嫌がっている。
- カズル・ツナガ
元流しの密偵。「亡国のカズル」。
精神に加護を持っており、感覚操作や黒い蝶を介した情報収集を可能とする。自身の能力と組み合わせることで、数々の依頼を成し遂げている。
ランカナ国に雇われてダィテス領に忍び込むも捕まり、薬で洗いざらい吐かされたことを付け込まれてダィテス領の密偵となる。
- リオ・ウシオ
カイナンの貧しい農村生まれの少女。
現代社会の転生者であったが、転生前の記憶を家族に話したところ気味悪がれて山に捨てられ、獣に襲われていたところをカズルに助けられてダィテスに招かれる。その際に今世の名を捨て、潮梨緒という前世の名を名乗ることを選ぶ。
ミリアーナ同様に腐女子で前世では漫画を描いていた。絵が描けないミリアーナの代わりに漫画を描いたり、ダィテスの売り物である織物のデザインを作成したりと発展に貢献する。
ちなみにこちらの世界の文字の読み書きは、農村の娘ということもあってできないが、日本語は普通に読み書き可能。
助けてくれたカズルに惚れている。最後まで書かれることはなかったが、最終的にカズルの妻となったことが語られている。
オウミ王国
- ユティアス
現オウミ国王。
加護持ちではないが切れ者で、「賢王」の二つ名を持つ。極力戦を回避する方向で物事を進めるがいざとなれば戦を厭わず、かつてオウミ西に存在したミシュ国を滅ぼした舅にあたる「狂王」サイガを倒した過去を持っている。
- リサーナ
オウミ王妃。気性の激しい性格。「世界三大美女」の一人に数えられるほどの華やかな顔立ちの美人。
かつてオウミ国の西に存在したミシュ国の姫君であったが、王級加護持ちの父「狂王」サイガの暴走によって一族を皆殺しにされた過去を持つ。その経緯から王級加護持ちを忌避しており、実子であるマティサも例外ではなかった。
そのため、マティサと西と南の貴族との関係が希薄だったことにつけ込み、彼らを煽動してマティサを廃嫡に追い込む。さらにジュリアスの周囲から今までいた彼の側近たちを外し、自身の息のかかった西と南の貴族からのメンバーで固めた。
しかし、エチル国の戦による大敗で急速に派閥の力を落とし、ジュリアスの反発やある事件を機に南側からは彼女の知らぬ間に見放されることとなった。
- ジュリアス
現オウミ王国王太子で、マティサの実弟。顔立ちはマティサに似ているが体の線が細く、並みの令嬢より女性らしい風貌を持つ。
優しい性格であるが、自身の器が兄に及ばないことを自覚している。
マティサ廃嫡を言い渡された際は卒倒したほど繊細な人物で、母リサーナや西や南の貴族たちを止められず、総大将として担ぎ出されエチルとの戦争が始まってしまい兵の七割を
失う大損害を出し、評判を落としてしまう。
- トリス・カティラ
現カティラ子爵。マティサと同い年。王太子親衛隊の隊長を務める。コシスとは母親が違うために風貌は全く似ていない。ユリナという嫁がいる。
竹を割ったように実直な性格で、コシス同様マティサに心酔している。
エチル戦の後、ダィテス領にマティサを迎えにやってきたが、勘違いしてキレたミリアーナから「挽肉にする」と脅された。
- レナード・ナジェ
オウミ西部のナジェ侯爵家の次男で、軽い加護持ち。オウミ西側の親衛隊所属メンバーの中では数少ないまともな実力者。
ジュリアスに忠誠を誓っており、マティサを敵視していたが、マティサとの実力差や自身と同じ西のメンバーが加わった王太子親衛隊の実力や品性が大幅に落ちた現状に苦慮するも、親衛隊をまとめ上げる苦労人。
カイナン王国
- ゲイン
現カイナン国王。王級加護持ち。「強欲王」の異名を持つ。赤毛の偉丈夫。
父王を追放し、現在の王位に就く。オウミの豊かな土地を手に入れるため、何かと理由をつけてはオウミに侵攻している。
性癖についてはいわゆる両刀使いで、美形とみれば誰彼構わず、老若男女問わないで手を付けるほど。妊娠可能な女性の愛人だけでもかなり多いので、子沢山であり、現在も増え続けている。マティサも口説かれたことがある。
- ジョルジュ・ウサカ
「寵臣」の異名を持つカイナン国の将校。加護持ちではない。
美男子であり、実際ゲインに抱かれてもいるが、ゲインからあえて周囲から貶められる可能性のある作戦を任されるなど、相応の実力とゲインからの信頼を持っている。
- 「不落」
カイナン国の密偵達のまとめ役。かつてエチルのトゥール王暗殺に向かい、セイと共に生き残った一人。
- キリム・ナダ
子爵(実績がないことを理由に本人が固辞したため予定より大幅に下げられた)。
ゲインの数多いる庶子の一人で、王級加護持ち。実直な性格の青年で、ミリアーナ曰く「赤毛元気っ子系」。
三国同盟締結により友好の証として、それまで敵国だったオウミに留学していた。
実母は王の寵愛を他の妃たちと競い合うことを望まず、後に身分の釣り合う男性と結婚し、キリムの異父弟妹を産み辺境で平穏に暮らしている。そのため、キリム自身は母の実兄である伯父一家で育てられた。
ちなみに彼がゲインの子であるとわかったのは、戦場で活躍したキリムを閨に呼んだ時にキリムが申し出たため。
もし名乗りがなければ二重の意味で禁断の扉が開く所だったというのは、当人が知らない方がいい事実である。
自分の言葉を信じ、子として認めてくれた父ゲインと、突然現れた自分を可愛がってくれる兄(王太子)を尊敬している。
カイナン戦以降、「清廉なる盾」との異名で呼ばれる。
ハヤサ王国
- ナリス
現ハヤサ国王。王級の「加護」持ち。人形のような顔立ちと戦場での残忍さから「虐殺人形」の異名を持つ。登場時は42歳であるが、見た目は20代前半の美青年。
元々はハヤサ王国の前身であるモグワール王国の第五王子であったが、四年前に王家に愛妻を暗殺されたことを機に、周囲の豪族を味方につけて生家であるモグワール王家を攻め滅ぼし、新たにハヤサを建国。
新王が旧王族出身だったことも手伝ったのか統治者としての才があり、建国直後は借金だらけだったが数年でハヤサを新進気鋭の海洋国家に生まれ変わらせた。交易を国全体で奨励したことで、ハヤサは商業の世界における大陸中央の覇者になりつつある。
謀略に長けており、ミリアーナ原案の作戦の意図を軍の配置だけで見抜くなど、優れた見識を持つ。子煩悩で愛情にあふれるが敵対する者には容赦がなく、必要とあらば書面を通じた約束さえ裏切ることを厭わない。
ちなみに加護については膂力と体力に特化しており、戦闘では身の丈を超える大斧を振り回してみせている。軍馬を片手で放り投げた、七日七晩戦い続けた等の逸話がある。
酒に弱いのだが、酔っぱらうと亡き妻への想いが暴走して息子のトウザを妻と勘違いして迫る悪癖がある。
- トウザ
ナリスの長男で、ハヤサ王国王太子。浅黒い肌が特徴的な偉丈夫で、王級の「加護」持ち。「ハヤサの鬼」の異名を持つ。五人の弟妹がいる。
放浪癖の持ち主で、各地に詳しい。
父親のことは嫌いではないのだが、彼の悪辣さや変わらぬ美しさに思うところはあり、さらには酒に酔ったナリスが自身の妻と勘違いして迫ってくるため、本気の一撃を見舞うことも少なくない。
サナという許嫁がいたが、彼女の生家シラハがモグワールとの戦争時にハヤサに敵対したため破談になっている。
四ヶ国同盟締結後、サナを寵姫とし、彼女との間に三男三女の子を持ったが、サナの実家はかつてハヤサに敵対したこと・サナ自身が心身喪失状態にあったことから、一度も表には出されず、家系図に名も残らなかった。
後にハヤサ王国二代目国王となり、生涯にわたり正妃を持たなかったとされる。
エチル王国
- トゥール
現エチル国王。登場時は31歳。王級の「加護」持ち。「無敗王」と呼ばれる。小柄かつ繊細で銀の長髪、少女のような風貌と称されるほどに体の線が細い。「大陸三大美女」の一人に数えられ「月光の化身」と謳われたセリーヌを母に持つ。
許嫁がいたが、13歳で兄である前エチル国王シャラガによって強引に側室に召し上げられ、シャラガを出産した際に許嫁を失った過去を持つ。25歳(本編から6年前)に当時エチル国で悪政を敷いていた兄王に対し蜂起、兄王を討ち現在の王位に就く。内乱にかこつけて攻め込んだ周辺の三国を取り込み、以降は各地の調停役を務める。
元婚約者と兄との子ルーファスを自身の養子にし、王家を正統な血筋に戻すため王太子とする。
戦を嫌うが戦えば無敵で、初陣以来一度も負けたことがない。また、その慈悲深さは彼に仕える人々に絶対的な忠誠を生み出しており、一密偵や併呑した他国の人々にまでその忠誠は及ぶほどで、マティサをして「無自覚な洗脳」と称した。
- ヒナキ
エチルの密偵集団の取りまとめを務める女性で、「傾国」の二つ名を持つ。
主であるトゥールに忠誠心以上の感情を持っており、後にトゥールの寵愛を受け、妊娠・出産する。妊娠後は密偵組織の長の座を降り、後宮で暮らし「お部屋様」と呼ばれる。
- ルーファス
エチル王国の王太子。トゥールの養子で、悪政を強いていた先王の三男。
父親を殺したことについては恨んでおらず、むしろ自身が王太子であることに引け目を感じている。
愚王の血を引くルーファスを嫌う家臣は生粋のエチル貴族ほど多く、トゥールの元婚約者だった実母に似ているから贔屓されている、との陰口を叩かれている。
ランカナ王国
- ダイアナ
ランカナ王女で、マティサの元婚約者。スタイルの良い美姫ではあるが、気が強い。
マティサの腹心であるコシスを蔑んでいたこともあって仲は悪く、マティサの王太子剥奪に伴い、婚約も解消されている。
オウミ国との縁を取り戻すべく、ジュリアスへのアプローチを図るが…。
- ナシェル・オーガス
ランカナの副宰相。公爵家の出身。頭が切れるが、脳筋が優先されがちなランカナではあまり重宝されていない。
ダイアナはじめとした王族に振り回される形で、あるとんでもない苦労を背負うことになる。
- ケイシ・エタル
本作の舞台となる大陸とは別の大陸のカガノという国で「黒風」として名を馳せた豪傑。王級加護持ち。
たまたま立ち寄ったランカナ国で苦労に振り回されるナシェルに同情し、客将として協力することになる。
用語
- 加護持ち
一定の確率で世界に満ちる魔力をその身に宿した人。一般的には肉体に加護を得た者を指し、常人にはない膂力を得ることから戦場で重宝されることになる。
精神に加護を宿した者は「魔術師」と呼ばれる。特殊な異能を宿すことができるが、一般的な加護持ちと比べて楽に殺せるからということでこの世界における価値はそこまで高くない。
- 王級加護持ち
「加護持ち」の中でも特に常人離れした力を持つ者たちの呼び名。「その力で王国を築くことすら可能」という逸話が名前の由来。
特有の現象として感情が昂り過ぎると「キレる」ことがある。こうなってしまうと活力切れでダウンするまで見境なく暴れ回ってしまう。
- 精霊石
属性の魔力を宿した鉱石。ダィテスの竜骨で発掘可能な、ダィテスのオーバーテクノロジーを支えるアイテム。
一般的には一部の好事家が所有しているにとどまっている。
蓄えられた魔力がなくなると効力を失うが、魔力だまりに置いておくと再び魔力が充填されるエコな性質を持っている。
地理
- オウミ王国
本作の主な舞台となるダィテス領を含む国家で、東をカイナン、西をエチルという大国に、南は中堅国のハヤサを筆頭に小中の国に、北は竜骨と呼ばれる山脈に囲まれている。
東はカイナンとの争いが絶えないが、それにより東側の貴族に報酬が集中しており、西や南側の貴族には不満が溜まっているなど、内部に問題をため込んでいた。
- ダィテス領
オウミ国の北端で、三方を「竜骨」と呼ばれる山脈に囲まれた領土。
政争に敗れた王族が追いやられたのが始まりで、与えられている爵位は公爵と地理に反して高い。
毎年餓死者が出ていた貧しい土地であったが、ミリアーナが政治に関与しだした十年前から、農業、鉱業、工業のすべてが飛躍的な発展を遂げている。オーバーテクノロジーの情報については周辺への影響を考えて情報規制をかけている。
領主城があるのは最南の街にしてダィテスの玄関口といわれるセタ。
- カイナン王国
オウミ国の東側に位置する大国。広い国土を持つが土地自体がやせており、力のある豪族同士で領土の奪い合いが絶えなかったところをゲインの父親が血の粛清によってまとめ上げた。
- エチル王国
オウミの西側に位置する大国。国内の混乱に乗じて攻め込んできた周辺三国を返り討ちにして併呑している。トゥールの即位後は周辺の小国を保護下に置いている状態である。
臣民から恨みを買いまくった前王の子ルーファスを嫌い、トゥールの王級加護持ちの血を残したい家臣たちが、ルーファスを王太子として認めていないという問題がある。
- ハヤサ王国
オウミの南側に位置する、海に面した中堅国。元はモグワールという国であったが、ナリス王の手によって滅ぼされ、ハヤサ国として再スタートすることとなった。海洋国家ということで貿易が盛ん。ダィテス(というかミリアーナ)から羅針盤や天測航法、海図の製作方法、冷蔵庫などを提供されるという経済侵略を受け、ダィテス有するオウミと手を切れない状態にされる。
- ランカナ王国
オウミの南側に位置する、海に面した中堅国。
ハヤサ国と同じく貿易で財を成しているが、近年はハヤサ国の勢いに押され気味。
- 帝国
原作7巻以降から徐々にその存在がほのめかされてきた、近年急拡大を続けている大国。
位置的には本作の舞台となる大陸の北側、ダィテスとは竜骨を挟んだ向かい側に存在している。
急拡大を続けているが、占領政策が追い付いていないなど、不安定な要素がある。
技術
- 製紙、印刷技術
BLの同人誌を作るために、羊皮紙が主流の世界で植物性の紙や印刷技術を作成してしまっている。
漫画家用に原稿用紙やインク、各種漫画用のペンなども作成しており、リオの登場で本格的に活かされることになった。
- 農業全般
塩湖で得た収入をもとに灌漑を行って小麦畑を作り、小麦の作成に向かない箇所はブドウ畑とし、ワインなどを作成するなど、生産性を高めると同時に雇用も生み出すように工夫を凝らしている。
また、他所の地域で普通に食べられている穀物も積極的に取り入れており、米やジャガイモなどが仕入れられた。
- 酒
ダィテス自慢の加工品のひとつ。ワインに始まり、ビール、バーボン、ウイスキーetc…とその種類は多岐に渡る。カイナン王ゲイン、エチル王トゥールは最大の顧客であり、二国がオウミとの同盟を破棄できない原因になっている。
- 土壌改良法
2巻で登場。ダィテスからカイナン、さらにエチルやオウミに伝えられた、土地を富ませる技術。
実施に人手と金がかかることから戦争の抑止につながり、実際に国を富ませることもできる。
カイナンだけでなくエチルやオウミにも伝えたのは、国力の増強で更なる戦争を引き起こすことを抑えるためでもある。
- 電話、無線通信
1巻より登場。無線通信は中継基地を設けることで遠方との交信も可能。
無線通信は後にオウミにも知られ、その便利さから欲せられるが、手入れが極めて面倒だからという理由で譲るのは断っている。
1巻より登場。ダィテスの移動手段、輸送手段として導入されている。化石燃料の代わりにダィテスで採掘できる精霊石を用いているため、とっても静かでエコとはミリアーナの弁。
自動車についてはミリアーナによって外目に出るようになるが、王家には危険な魔道具として説明されている。
1巻より登場。岩盤破壊と自衛のために作成。歴史を変える度合いがあまりに高すぎると判断したため、領民にも厳重に秘匿している。マティサも一目で危険性を見抜き、火薬武器の使用を非常時以外封印させた。
当初はカノン砲と機関銃を作らせていたが、のちにミリアーナ自身の自衛のために、さらに小型化したサブマシンガンまで作成させている。
3巻に登場。当時としては国家機密ものだが、測量をしていたダィテスの手の者が何をしていたか不明だったために咎められなかったという。
オウミ国をはじめ、カイナン、エチル、ハヤサ、ランカナなど、各地の詳細な地図を保有している。
その精度は祖国カイナンの地図を見たセイがショックで膝をついたことから推して知るべし。
4巻に登場。ダィテスの北方にある竜骨と呼ばれる山脈にある、鉄鉱石や精霊石の採掘場への移動手段として導入されている。
飛行機や気球、飛行船などについても設計図はあるそうだが、墜落や機密保持のリスクが高いことから現時点では時期尚早としている。
6巻以降、ダィテスからハヤサにもたらされた。
どれも海洋国にとっては超重要となる技術で、当初はミリアーナも伝える予定はなかったのだが、海苔と鰹節を作ってもらうためにその製法と合わせて伝えられた。
これらの知識はハヤサに計り知れない恩恵をもたらし、ダィテス単体がオウミ国全体の価値を超えるきっかけとなる。一方で、その恩恵を受けるためにはオウミとの同盟が不可欠なため、オウミとの同盟がハヤサ側からは切れなくなってしまった。