ピクシブ百科事典は2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
小惑星の編集履歴2022/12/04 21:51:22 版
編集内容:asteroidとminor planetの違いについて加筆。関連タグにニュー・ホライズンズを追加。

小惑星

しょうわくせい

太陽系の天体のうち、惑星・準惑星より小さく、主に岩石から構成され拡散成分がないもの。

概要

太陽系惑星より小さい太陽系小天体のうち、主に岩石から構成され拡散成分がないもの。拡散成分(コマや尾など)があるものは彗星と称される。

現在見つかっている小惑星のほとんどは、火星木星の間にある小惑星帯(メインベルト)にある。メインベルトの小惑星はまんべんなく分布しているわけではなく、木星の公転に同調しており、木星軌道のラグランジュポイントと言われるポイント周辺に集中している(トロヤ群)。

地球の公転に同調している地球近傍小惑星(小惑星探査機「はやぶさ」が観測したイトカワはこのうちの一つ)もある。

近年は海王星の軌道より外側にも次々と発見され、冥王星も海王星近傍の小惑星の一つと判明した(冥王星は小惑星としてはとびきり巨大なので「準惑星」とされる)。

この、海王星軌道以遠にあるもう一つの小惑星帯の事を「カイパーベルト」と呼ぶが、こちらは構成物質に氷の割合が多い天体がほとんど。逆に、水星軌道の内側にも「バルカン群」と呼ばれる小惑星帯が存在する可能性も指摘されているが、太陽に非常に近い為観測が難しく、現時点では発見に至っていない。

2011年現在、軌道が確定された小惑星は約25万個。大半のものは球形を成してないが、衛星を持つものは案外ちょくちょく存在している。

初めて発見された小惑星は、準惑星扱いとなったケレスの他、パラスベスタジュノーの4つであり、四大小惑星と呼ばれる(ケレスが準惑星とされた現在、この呼称は妥当かどうか不明だが…)。この四つはオリュンポス十二神に所属する女神に由来し、主要な惑星同様に惑星記号も存在する。(モチーフはそれぞれ収穫用の鎌、アイギス、聖火、花。)

これらは1801年~1807年の間に発見され、1845年にアストラエアが発見されるまで38年のブランクがある。

ケレス、パラス、ベスタについては現在も、メインベルト天体の中でトップ3の大きさを持つが、ジュノーは11番目くらいとなっており、4番目は1849年に発見されたヒギエアとなっている。

パラス、ベスタ、ヒギエアは準惑星候補とされている。(なお、ベスタについてはNASAの小惑星探査機「ドーン」によりそんなに丸くないと明らかになった為、準惑星候補とされないことも多い)

発見当時は惑星の一種という扱いをされ、惑星記号も存在しているが、大量に次々と見つかったため、1853年頃、小惑星という新たな枠組みに分類された。

asteroidとminor planetの違い

英語では"小惑星"を表す単語にasteroidminor planetがある。前者は直訳すると「恒星のようなもの」となり、古い時代の望遠鏡では小惑星は恒星のように拡大しても点にしか見えない事からこう呼ばれた。一方後者はそのまま「小さな惑星」となる。

日本語ではどちらも「小惑星」だが、厳密には意味合いが異なる。asteroidは岩石を主成分とする小天体と言う意味合いがあり"狭義の小惑星"と言える。minor planetは、カイパーベルト天体や準惑星、彗星・小惑星遷移天体なども含んだより広い概念である。(但し彗星は含まない)、

小惑星番号は英語だと「minor planet number」で後者の意味合いがあるので、準惑星の冥王星やケレスにも付けられる。

つまり、"小惑星帯最大のasteroid"だとパラスになるが、"小惑星帯最大のminor planet"だと以前と同じくケレスとなる。

彗星との区別

小惑星と彗星の区別は、単純に彗星活動(塵やガスの噴出)が観測されるどうかによって判断される。

本質的には小惑星は岩石質、彗星は氷(揮発性物質)を大量に含むという違いがあるのだが、地球からの観測だけで組成を判別することは難しいため、明確に判別が可能な彗星活動の有無に基準が置かれている。

この場合問題となるのは、当初小惑星として登録された天体が突然彗星活動を始めてしまったような場合分類はどうするのか?ということであるが、そこは柔軟に小惑星と彗星に重複して登録されるのが通例になっている。

かつて彗星だった天体が揮発性物質を放出し尽くして彗星活動を停止した天体は「枯渇彗星核」や「彗星・小惑星遷移天体」と呼ばれる。この種の天体は外見上はもはや小惑星と区別は困難で、大抵は小惑星として発見され、その後の詳しい研究で枯渇彗星核であることが判明するという経緯を辿る。中には何らかの拍子に彗星活動を再開して彗星として再登録されるものもある。

枯渇彗星核が急に活動を始めることはあるものの、その逆に活動していた彗星が活動を急停止して枯渇彗星核に変化する事例というのはまだ知られていない。揮発性物質の喪失が進んだ彗星は枯渇彗星核を残さずに分解して消滅するものも多い

ちなみにカイパーベルト天体は、主に氷で構成され、彗星の起源と考られているものの、それ自体を彗星と見なす事は無く、一般には小惑星と扱われる。

小惑星帯の起源

結論から言えば諸説あります

初期の太陽系では太陽系の全域で微惑星と呼ばれる小天体が形成され、それが衝突合体を繰り返して惑星に成長したと考えられている。メインベルトの小惑星は端的に言えば「成長が停止した微惑星」だと考えられている。

ここで、ではなぜ、ほかの領域では惑星が形成される一方で小惑星帯でだけ成長が停止したのか?という疑問が生じることになる

それは基本的には木星が原因と考えられている。

より詳しい原因を考えるためにまず、一般的に、天体衝突は天体の融合に終わるということを理解しておかねばならない。衝突により天体が一旦粉砕されても結局は破片が重力で再集合してくるからだ。天体のサイズに差があれば単純に吸収合併されてしまう。ただしそのような衝突合体が起きるためには「衝突時の相対速度が一定の閾値より小さい」という条件を満たす必要がある。高速衝突が起きた場合、飛散する破片は重力により最集合することができず、衝突は天体の破砕という結果に終わる。木星の周辺の軌道では木星からの引力により、微惑星の軌道が乱された(つまり傾斜した軌道や楕円軌道になった。これを軌道力学的高温状態という)。

ただしこの説では、木星が「ただ単に現在の軌道に存在しているだけ」では微惑星の成長を停止させるほどに小惑星帯に相当する位置にある微惑星の軌道を乱すことは難しいと考えられている。これは、太陽系形成の最初期にのみ存在した原始惑星系円盤ガスとの相互作用により、木星の軌道半径が縮小および拡大し、小惑星帯の領域にあった微惑星の軌道を強く乱したという説が唱えられている。特に木星の軌道が一度縮小した後に拡大したというモデル(グランドタック・モデル)では、地球型惑星の質量が地球と金星の2つにほとんど集中していることや小惑星帯の内側と外側で小惑星の組成が異なることも同時に説明できることから、近年有力視されている仮説である。このほかの仮説として、原始惑星系円盤ガスが散逸する過程で、木星と円盤ガスの間である種の共鳴が生じて『特定の軌道』にある微惑星の軌道を乱すという現象が生じたという説もある。この説における『特定の軌道』は円盤ガスの濃度によって変化し、その濃度は散逸の過程で連続的に変化していくため、集まったゴミが箒で順次吐き掃き散らされていくように広い軌道領域の微惑星が影響を受けたと考えられる(Sweeping resonanceモデル)

その結果、木星の内外に隣接した領域は微惑星同士が高速で衝突する領域となり、微惑星の衝突合体が進まなくなり、ついに惑星サイズにまで成長する天体が現れないまま現在に至ったのだ。現在の小惑星帯でも小惑星の軌道は軌道力学的に高温な状態にあり、小惑星同士の衝突は天体の合体よりも崩壊に結び付く。偶然の低速衝突で合体が生じることもあるが確率的には破砕の方が優勢なため、長い時間の間に多数の小天体が衝突を繰り返すうちに小惑星帯の小惑星は粉砕されて平均サイズは小さくなり続ける。現在の小惑星帯は「成長が遅い状態」ではなく、「成長よりも破壊が優勢」な状態であり、今後何十億年待っても小惑星が合体して惑星になることはないと考えられる。

実際に小惑星のサイズ分布に基づく研究からは、小惑星帯っでは太陽系が形成された46億年前から現在まで比較的少数の大きな微惑星が衝突破壊を繰り返して次第に小さな多数の小惑星に変化していったことが示唆されている。

一つの母天体が破砕されてできたと考えられる軌道や組成の似た小惑星のグループ(小惑星族)も多数発見されている。

木星の引力の影響で原始太陽系の微惑星がそのまま残ったという説が有力だが、元々フェイトンという一つの惑星だったのではないかという説もあり、他に木星に捕獲された天体など、ルーツの違う天体が混在している可能性がある。いずれにしてもメインベルトの小惑星たちは木星に随伴する天体であり、木星の重力の大きさにより、その数が他の惑星より特に多いということであろう。

なお、メインベルトの全天体を合わせた質量は2.3 ×10^21程であると見積もられており、冥王星よりも軽い。

小惑星が破壊された惑星の残骸という説

小惑星帯が破壊された惑星の残骸だという仮説は有名であり、SFでもしばしば設定として採用される。

この説は以下に述べるような理由で古い時代(20世紀中頃)からかなり明確に否定されているものであり、有名だが有力ではない

その根拠は小惑星の組成である。

まず、天体は形成されるときに分化という現象を起こす。

これは、最初は様々な物質が混合した未分化な状態だった原始惑星で成層型の内部構造が生じる現象である。例えば比重の大きい鉄が中心に沈み込んでコアを形成し、比重の軽い岩石がその周りを取り囲むマントルになる(十分な量の氷が含まれていればさらにその外層に氷の層ができる)。岩石質の天体ではマントルから比重の軽い岩石が浮上して地殻も形成される。というような現象である。

このような分化は半径数百kmクラスの小惑星でもすでに発生する可能性があり(天体全体を加熱するような大衝突が起きれば、比較的早い段階から分化を始める)、惑星クラスのサイズになれば不可避的に経験すると考えられている。太陽系の岩石惑星や主要な岩石質の衛星は全て分化した内部構造を持つ。

小惑星が破壊された惑星だとするなら、破壊される前の惑星も分化していたと考える必要がある。そのような惑星が破壊されて小惑星になったのならば小惑星の大半は分化した物質に由来する組成を持っていなければならないことになる。地殻やマントルを構成するであろう岩石の種類は圧力や温度などからある程度予測できる。小惑星がどのような岩石で構成されているかは、分光観測や小惑星帯由来の隕石の分析で調べることができる。そのようにして調べられた小惑星の組成は、分化した惑星の地殻やマントルの岩石からは大きくかけ離れており、むしろ未分化の微惑星のものとして想定される岩石とよく一致している。

小惑星由来の岩石の中には、分化した天体に由来すると考えられるものも稀に含まれるが、それらは、比較的大きな小惑星に由来するものであって(前述のように分化は小惑星レベルのサイズでも起こりうる現象であり、実際に小惑星ベスタは分化を経験済みだと判明している)惑星と呼べるサイズの天体は現在にも過去にも小惑星帯には存在しなかったという説が有力である。破壊された惑星が元なら小惑星やそこに由来する隕石の大半が分化後の物質になっているはずである。

なお、惑星の破壊ではなく小惑星同士の衝突による破壊であれば太陽系の歴史の中では頻繁に起きてきたと考えられている。

関連タグ

太陽系 宇宙 天体 準惑星

ケレス/セレス 隕石 1994XF04

カイパーベルト カイパーベルト天体

はやぶさイトカワを探査。2010年に帰還し、世界初の小惑星からのサンプルリターンに成功。

はやぶさ2…リュウグウ(1999JU3)を探査。2020年にサンプルを持ち帰った後、次の探査目標に向けて再出発。

ガリレオ…木星探査機ガリレオは、世界で初めて小惑星を訪れた探査機である。

ニュー・ホライズンズ…もう一つの小惑星帯、カイパーベルトを探査した(している)現状唯一の探査機。

関連外部リンク

関連記事

親記事

小惑星の編集履歴2022/12/04 21:51:22 版
編集内容:asteroidとminor planetの違いについて加筆。関連タグにニュー・ホライズンズを追加。
小惑星の編集履歴2022/12/04 21:51:22 版