概要
カイパーベルト、又はエッジワース・カイパーベルト(英:Edgeworth-Kuiper Belt)は海王星の外側(具体的には30~55AU、太陽-地球間の距離のおよそ30~55倍の範囲)に存在する、小天体が密集した円盤状の領域である。
広い意味ではここも小惑星帯であり、それを踏まえて火星と木星の間にある小惑星帯を『メインベルト』と呼ぶ事がある。しかし、その規模はそれより遥かに大規模で、メインベルト最大の天体ケレスより大きいサイズの天体も多数存在する。
なお、このすぐ外側に散乱円盤と呼ばれる領域があるが、そこもカイパーベルトに含める場合もあり、その更に外側にある分離天体がある領域も『遠方カイパーベルト』と呼ぶ事がある。その他、これとは別に、ニュー・ホライズンズによるカイパーベルト領域の惑星間塵の測定結果から、現在知られているカイパーベルトの外側に、『第二カイパーベルト』の存在の可能性も指摘されている。
仮説としてのカイパーベルト
この領域の存在が確認されたのは、1992年8月30日にアルビオン(1992 QB1)が、冥王星以外のカイパーベルト天体として初めて発見されてからだが、『エッジワース・カイパーベルト』の名の由来となった天文学者ケネス・エッジワース及びジェラルド・カイパーが彗星の軌道からこの領域を予測したのは1950年頃であり、また1942年に日本で出版された子供向けの宇宙図鑑にも、
冥王星は、直徑や光が非常に小さいこと、軌道が著しい楕圓形で、今から四十五年もすると海王星より近󠄁くやつて來る(冥王星は軌道の歪みにより1979〜99年の間海王星軌道の内側にあった)ことなど考へて見ますと、どうもこの星は、木星や土星や天王星や海王星などと同類に置くべき大遊星(遊星=惑星。巨大惑星の意味と思われる。)ではなくて、むしろ小遊星(小惑星)級の星です。火星と木星との間に小遊星の群がつてゐる地方があるやうに、わが太陽系には、海王星の外側に今一つ小遊星帶(小惑星帯)があるのかも知れません。 『子供の天文學』(恒星社)182ページ
との記述があるなど、かなり昔から彗星の起源や巨大惑星に対する冥王星の小ささを説明する仮説上の存在として知られていた。
なお、エッジワースやカイパーがこの仮説の言い出しっぺと言う訳ではなく、またカイパーは大昔に存在した天体群として提唱し、現在は冥王星の重力によって飛ばされ存在しないと推測していたため、この名称は相応しくないとの主張もある。
ちなみに、同じく小天体群でカイパーベルトより遥か彼方に存在するとされる『オールトの雲』も、天文学者ヤン・オールトによって1950年に長周期・非周期彗星の軌道を説明するために提唱され、宇宙図鑑などに載っているものの、こちらは2024年時点でも未だに未発見である。
起源
地上からの観測が難しく、現時点で直接探査を行ったのはニュー・ホライズンズのみの為、詳細は未だに不明な点が多いが、原始惑星系円盤(恒星の誕生直後にその周囲を取り囲む円盤で、ガスと塵からなる)から惑星が形成されていく中で、巨大惑星の影響により、惑星に成長出来なかった微惑星の名残と考えられている。
また、数多くの天体が巨大惑星の重力に捕らわれたり、太陽系外に弾き出されたりした為、現在この領域に存在する天体の数は、初期の頃に比べ遥かに少ないと推測されている。(この領域起源の天体については後述)
太陽系外のカイパーベルト
太陽系以外の惑星系にもカイパーベルトのような領域があることが知られている。
HD 115600
約360光年離れた所に位置するケンタウルス座の8等星。この星の周りにカイパーベルトに似た塵の円盤が発見された。
この星が属する星団が太陽の生まれた環境に似ていることから、誕生した頃のカイパーベルトに似ているかもしれない。
カイパーベルトが起源とされる天体
前述した通り、この領域は元々彗星の起源として予測され、実際に公転周期が200年未満の彗星(短周期彗星)は、カイパーベルト及び散乱円盤由来とされているが、それ以外にもこの領域由来とされる天体が存在する。
海王星最大の衛星トリトンや、土星の衛星フェーベなど、いくつかの衛星はカイパーベルト天体が巨大惑星の重力に捕らえられたものだと考えられ、海王星のトロヤ群(惑星軌道上の「ラグランジュ点」と呼ばれる、他の天体が安定して存在出来る領域にある小惑星)も、カイパーベルト天体だったものが、海王星の重力によって捕らえられたものだと考えられている。
木星と海王星の間の軌道を公転する小惑星、ケンタウルス族はカイパーベルト天体が太陽系内部に入り込んだものだとされる。ケンタウルス族天体は軌道が不安定であり、将来的には太陽系外に飛ばされるか巨大惑星に衝突、あるいは重力に捕らわれて衛星になるものと思われる。
この領域の遥か外側、オールトの雲の天体は、巨大惑星の重力によりこの領域から弾き出された後、辛うじて太陽の重力圏内に留まった天体だと考えられている。
メインベルト唯一の準惑星、ケレスについても、構成物質に氷の割合が多いなど、周りの小惑星よりも外縁天体と共通する点が多く、カイパーベルト由来とする説が存在する。
カイパーベルトが登場・関連する作品
宇宙戦艦ヤマト 宇宙戦艦ヤマト2199
冥王星に、ガミラス軍の冥王星前線基地が置かれている。
また、宇宙戦艦ヤマト2199では、カイパーベルトの小天体に反射衛星砲で外力を加え、地球への衝突コースに乗せることで遊星爆弾にする。
R-TYPEシリーズ
R-TYPE TACTICS、及びR-TYPE TACTICSⅡには、カイパーベルトのマップが登場する。
WILD ARMS 2nd IGNITION
カイパーベルトが元ネタの、世界を蝕む世界「侵食異世界カイバーベルト」が登場する。なお、カイバーベルトなので注意。(※リンク先ネタバレ注意!)
PEOPLE1『エッジワース・カイパーベルト』
PEOPLE1というアーティストの楽曲名。
フリーBGM『エッジワース・カイパーベルト』
DOVA-SYNDROMEのフリーBGM。
別名・表記ゆれ
関連タグ
ニュー・ホライズンズ…現時点で、この領域を探査した(している)唯一の探査機。
パイオニア計画 ボイジャー計画…パイオニア10号・11号、及びボイジャー1号・2号もカイパーベルトに到達・通過している。しかし、どこか天体を訪れた訳ではない。ボイジャー1号に関してはペイル・ブルー・ドットをこの領域から撮影している。