「Look again at that dot. That's here. That's home. That's us.」
(あの点を振り返ってごらん。あれはここだ。あれは我が家だ。あれは、私たちだ。)
~カール・セーガン
もしかして…?
- 『Fate/Requiem』に登場する、本探査機・計画を擬人化したサーヴァント。→ボイジャー(Fate)
- 『Fate/Grand Order』に登場する、フォーリナーのサーヴァント。→ボイジャー(フォーリナー)
- 1966年から1968年にかけてNASAが計画していた火星探査計画。1974年~75年打ち上げの予定で、1980年代に火星に有人宇宙船を送り込む準備として構想されていたが、予算の削減により1971年に中止された。なお、「ボイジャー」の名は、当時マリナー11号・12号として開発されていた本探査機に引き継がれた。→ボイジャー計画 (火星)
概要
ボイジャー計画(Voyager program)とは2機の宇宙探査機、ボイジャー1号とボイジャー2号を用いた外惑星および太陽系外の探査計画である。両機とも1977年にNASAによって打ち上げられ、ボイジャー1号が土星と木星とその衛星を観測、2号が土星・木星・天王星・海王星とその衛星を観測した。
1号より2号の方が先に打ち上げられているが、これは打ち上げ前のトラブルで1号の打ち上げが2週間ほど延期され、本来の予定通りの打ち上げとなった2号が結果的に16日早い打ち上げとなったため。しかし、1号の方が速い初速度で打ち上げられており、木星到達前に追い越している。
1982年に惑星が1方向に並ぶ「惑星直列」に合わせ、スイングバイ航法を利用すれば木星・土星・天王星・海王星を連続的に探査する惑星グランドツアーを行いやすくなるタイミングを狙って計画された。ちなみにもしこれを逃したら次のチャンスは175年後である。
元々の計画ではより大掛かりな計画で、同型機を4機打ち上げて木星以遠の惑星を全て探査するつもりだったが、予算の削減により一度木星と土星のみの探査計画となり、打ち上げられる機体も2機となった。その為、機体の設計寿命も実は土星到達までの5年程度しかなかったりする。
つまり、打ち上げ時点での計画では土星到達時点で計画終了。グランドツアーは行われず、天王星と海王星、ましてや星間空間など探査の対象外だったのである。
しかしながら、将来的に計画延長の為の追加予算が下り、当初のグランドツアー計画に近い探査を行えることを期待し、1号は冥王星、2号は天王星・海王星にも向かうことができる軌道を取るように打ち上げられた。
2号はこの目論見通り計画の延長によって天王星と海王星の探査を行うことが出来たが、1号は議論の末、濃い大気の存在が明らかになるなど科学的な関心が高まっていた土星の衛星タイタンの探査を優先したため、冥王星には向かわなかった。タイタンに接近するには軌道を大きく変える必要があり、両方に向かうことは不可能だった。
期待されていた地表面の観測は厚い雲のせいでできなかったものの、後のカッシーニやその子探査機のタイタン着陸機ホイヘンスに繋がる貴重なデータを得ることが出来た。
2024年時点で、2号は天王星と海王星を訪れた唯一の探査機であり、土星以遠の天体を訪れた探査機としても、2号の他は後年の冥王星探査機ニュー・ホライズンズしかない。
現在は両機とも太陽系を脱出(※)し航行中であり、1号は人工物としてもっとも地球から離れたところに存在している。1号・2号共に現在も現役であり、電源の寿命が尽きる2020年代半ば~2030年頃まで星間空間の観測を行い続ける予定である。
※太陽系は太陽風の影響が及ぶ範囲までとする見方と、太陽の重力に拘束される範囲まで(オールトの雲がある辺りまで)とする見方があり、後者の見方を取って「太陽圏脱出」という表現を使う事もある。ちなみに、後者の意味だと「太陽系脱出」は3万年以上も先の話になる。
機体構造
質量は721.9kg、カメラなど各種観測機器を搭載し記録はいったんテープレコーダーに記録したのち地球に送信していた。ちなみに、このテープレコーダーの容量は70KB程度と、現代のスマホの写真一枚分もない。
用途別に複数のコンピューターを搭載している(カスタム回路であり、後の探査機のようなマイクロプロセッサは使っていない。ボイジャーがRCA1802を搭載しているという情報は誤り)。地上からの指令を受け取ったり障害を検出するなどシステム全体を制御するComputer Command System (CCS)、探査データを管理するFlight Data System (FDS)、機体の方向をコントロールする(高利得アンテナを地球に向けたままにする)Attitude and Articulation Control System (AACS) の3システムを2台ずつ搭載し、冗長性を確保している。コンピュータのクロックはわずか250kHz。
主電源として3基の原子力電池(出力合計470W)を搭載していたが、打ち上げから40年以上が経った現在では出力が低下しており、節電のため大半の観測機器の電源が切られている。
ゴールデンレコード
2機のボイジャーには「地球の音」と題された金メッキされた銅板製レコードがついており、そこには地球上の様々な音や音楽、55種類の言語による挨拶、様々な科学情報などを紹介するアナログ形式でコード化された写真、イラストなどが収録されている。
このレコードの原盤は2024年現在日本に存在しており、石川県のコスモアイル羽咋で見ることができる。
ボイジャーの軌跡
・1977年8月20日 2号打ち上げ
・1977年9月5日 1号打ち上げ
・1979年3月5日 1号が木星を通過
・1979年7月9日 2号が木星を通過
・1980年11月12日 1号が土星を通過
・1981年8月25日 2号が土星を通過
・1986年1月24日 2号が天王星を通過
・1986年1月頃 1号がニューホライズンズ以前の探査機として最も冥王星に接近
・(1986年春頃 もし冥王星探査が行われていればこの頃の予定だった)
・1989年8月25日 2号が海王星を通過
・1990年2月14日 1号が"太陽系家族写真"を撮影。その直後カメラの制御プログラムを削除、以降撮影不可に。
・1998年2月18日 1号がパイオニア10号を追い越し、最遠の人工物となる
・2012年8月13日 2号がパイオニア6号の記録を抜き、最も長く稼働している宇宙機となる
・2012年8月25日 1号が太陽圏を脱出
・2018年11月5日 2号が太陽圏を脱出
太陽系家族写真
1990年2月14日、ボイジャー1号によって太陽から約60億km離れた位置から、水星と火星、及び当時は惑星だった冥王星を除いた六つの惑星と太陽が39枚の写真として撮影された。有名な『ペイル・ブルー・ドット』(Pale Blue Dot=淡く青い点)はこのうちの地球が写った写真のこと(本記事冒頭のコメントはこの写真撮影の実現に向けて働きかけた天文学者カールセーガンの発言)。
これらの写真を撮影後に1号のカメラの電源は落とされ、現在1号・2号共に写真撮影は出来ない状態にある。
この写真は2024年現在最も遠くから撮られた地球の写真であり、2017年12月5日にニュー・ホライズンズによって記録が破られるまでは最も地球から離れた場所で撮影された写真でもあった。
余談だが、水星探査機メッセンジャーも2010年11月に太陽系家族写真を撮影している。他、太陽探査機パーカーソーラー・プローブも2020年6月に撮影している。(但し両探査機は1号とは逆に太陽系の内側から撮影している)
また、土星探査機カッシーニも、土星周回軌道上からペイル・ブルー・ドットに似た地球の写真を2006年9月と2013年7月、2017年4月に撮影している。
既に太陽系家族写真撮影時の1号よりずっと遠くにあるニュー・ホライズンズも同じような写真を撮影する可能性があるが、この探査機はまだカイパーベルトの探査中であり、撮影されるとしても当分先のことになると思われる。
後継機
ニュー・ホライズンズ
実質的な後継機と言える探査機。ボイジャー以降では現状唯一太陽系を抜ける軌道の探査機で、ボイジャーが果たせなかった冥王星探査の他、更に遠方のカイパーベルト天体の探査にも成功。将来的には同じく星間空間の観測を行うものとみられる。
詳しくは該当記事を参照。
余談だが、この探査機はボイジャー1号(がある方向)を180億kmの彼方から撮影している。
インターステラー・プローブ
史上最速で星間空間に向かう探査計画で、打ち上げから50年間で1000天文単位(太陽〜地球間の1000倍)の距離に到達する事を目指している。
ボイジャー後継機を謳っているが、こちらは星間空間の観測の方がメインであり、長期間の稼働(50年)を最初から想定している。また、幾つかの外縁天体のフライバイ探査も検討されている。
関連動画
関連項目
ビーストウォーズ:劇中に登場するゴールデンディスクは、ボイジャー探査機に搭載されたゴールデンレコードと同一のものである。
パイオニア計画:10号と11号はボイジャーの数年前に巨大惑星を訪れ、太陽系外へと向かった本機の先輩と言える探査機。既に電源が尽き運用は終了している。
VOY@GER:『アイドルマスターシリーズ』の歌。曲名は勿論、「飴色のレコード」などの歌詞から、ボイジャー計画がモチーフになっていると思われる。
外部リンク
パイオニア10号・11号、ボイジャー1号・2号、ニュー・ホライズンズの速度や現在地などの一覧表。