概要
ニュー・ホライズンズは人類初の冥王星の探査を目的として2006年にアメリカのケネディ宇宙センターより打ち上げられた。本機はボイジャー1号などと同じく太陽の光が微弱な冥王星を探査するため原子力電池(出力240W)を搭載している。また非常に軽量にできているため打ち上げ時の対地速度は16km/sと探査機の中では最速だった。
当初は「Pluto-Kuiper Express」として計画され、2004年打ち上げ、2012年冥王星到着を目指していたが、予算が膨大になり一度計画が凍結。その後計画が見直され、新たに「New Horizons」計画として再スタートした経緯がある。
探査機には観測機器の他に、冥王星を発見したクライド・トンボー氏の遺灰や、星条旗などの記念品が搭載されている。ちなみに、本機には初代プレイステーションと同じCPUが搭載されている。
最近の探査機は、周回あるいは着陸して、長期間探査する事が多いが、本機は近年では珍しく、近くを通り過ぎる一瞬の間に観測を行う、フライバイ探査型の探査機である。これは、冥王星が余りに遠い上に、重力も小さい為、現在の技術では周回軌道に乗せるのが難しい為である。(一応、冥王星を周回するタイプの探査計画もない事はない。これについては後述。)
また、本機は史上初めて打ち上げられた、準惑星探査機でもある。しかし打ち上げ当時、冥王星はまだ惑星であり、史上初めて準惑星を訪れた探査機としては、本機の1年8ヶ月後に打ち上げられたベスタ・ケレス探査機のドーンに先を越されている。(ドーンが準惑星ケレスに到着したのは、本機が冥王星に最接近する4ヶ月前。)
探査の進行状況
※これ以降、ソース元として英語の記事も貼っているので、各自でGoogle翻訳等を使って読んで下さい。
・2006年1月19日 打ち上げ
・2006年6月13日 小惑星2002 JF56に接近 撮影 (後にAPLと正式に命名)
・2007年2月28日 木星に接近 探査 スイングバイ
・2008年6月8日 土星の軌道を踏破
・2010年3月8日 小惑星クラントルに接近※
・2011年3月18日 天王星軌道を通過 これはボイジャー2号以来25年振り、史上5機目の事であった。
・2011年12月2日 冥王星までの距離が10.58AU(15億8000万km)になり、それまでボイジャー1号が持っていた「史上最も冥王星に近づいた探査機」の記録を塗り替えた。
・2014年8月25日 海王星軌道を通過 この日は偶然にもボイジャー2号がちょうど25年前に海王星に最接近した日だった。
・2015年1月15日 惑星間航行を終了 冥王星観測を開始
・2015年7月14日 冥王星及び衛星のカロンに最接近して撮影
・2016年1月 接近後の探査終了
・2017年12月5日 願いの井戸星団(NGC 3532)や、小惑星2012 HZ84、2012 HE85を撮影。ボイジャー1号の「太陽系家族写真」が持っていた、「地球から最も遠い位置で撮影された写真」の記録をおよそ28年振りに更新。
・2019年1月1日 小惑星2014 MU69(愛称:ウルティマ・トゥーレ)に接近 探査 (後にアロコスと正式に命名)
・2020年4月 太陽系近くの恒星を撮影し、地球との視差の測定が行われた。
・2021年1月 光道光の影響を受けない太陽系外縁部に到達していることを利用し、ハッブル宇宙望遠鏡ですら観測出来ない微弱な「宇宙可視光背景放射」を観測。宇宙の銀河の総数が予想より少ないことが明らかになった。
・2021年4月18日 太陽からの距離が50天文単位に到達
・ 2022年10月 カイパーベルト拡張ミッションの第二弾(2nd Kuiper Belt Extended Mission = KEM2)へ移行。
・ 2023年3月 休眠状態から目覚め、その後は新たな目標天体へと向かう予定。(2022年11月現在、次の目標天体は未定)
※小惑星クラントルに接近して探査を行った件について、Wikipediaやその他インターネット百科事典、及び幾つかの個人ブログにもそのことについて書かれていますが、それらに出典が示されていません。また個人的に調べた範囲でも、その根拠と言えるソースが英語圏のものを見ても(NASA公式にも)確認出来ませんでした。もし、信憑性のあるソース元を確認出来た方がいたら追記をお願いします!
ニュー・ホライズンズ2号
本機に搭載される原子力電池の容量が足りない為に、冥王星探査後に予定されたカイパーベルト天体の探査が行えない可能性が浮上した。その為、バックアップ機としてニュー・ホライズンズ2号を打ち上げるべきだとする主張が計画主任のアラン・スターン氏よりなされた。
計画としては木星と天王星をスイングバイし、三重小惑星として知られるレンポ(1999 TC36)を目指す(他に2002 UX25を目指す案もあった)というもので、2009年中頃までに打ち上げる必要があったが、原子力電池の問題が解決した為、結局打ち上げられる事はなかった。
ニュー・ホライズンズ以外の冥王星探査計画
本機以前の冥王星探査計画
実は、ボイジャー1号も当初は冥王星も探査する計画があった。実現していれば1986年頃に最接近し、現実より30年近く前に冥王星とその衛星の詳細な様子が明らかになるはずだった。
そうなれば、科学界のみならず、冥王星が登場するアニメなど当時の作品にも多少なりとも影響したかもしれない。また、当時冥王星は衛星カロンによる食の時期であった為、その様子を観測出来た可能性もある。(軌道の傾きにより、次に冥王星で食が起きるのは22世紀初頭頃)
しかし、ボイジャー1号は土星の衛星タイタンに接近する為に軌道を大きく変えたことで、冥王星には近づけなくなり、この冥王星探査は幻となった。
これは、衛星カロンの発見により、冥王星が予想より遥かに小さい天体だと明らかになった(それまでは火星より少し小さい程度だと思われていた)一方で、タイタンに濃い大気があることが分かっており、失敗するリスクを負ってまで冥王星に行くよりも、興味深い特徴のあるタイタンへの探査が優先された為である。
それでも、前述した通りボイジャー1号は、本機以前で最も冥王星に近づいた人工物の記録を持っていた。と言っても太陽〜土星間より遠い距離ではあるが…
将来の探査計画
まだ正式なプロジェクトにはなっていないが、本機に続く探査計画として以下のものが存在する。
この探査計画では、探査機を2028年に打ち上げ、2030年に木星スイングバイ、2046年に冥王星を回る軌道に投入し2059年まで探査する予定である。
別の探査計画では、2030年に打ち上げ、26年後に冥王星に到着。3年間の探査の後、冥王星を回る軌道を離脱し、2070年代に他のカイパーベルト天体を探査する計画となっている。
どちらもニュー・ホライズンズによる前回の探査と異なり、周回しながら時間をかけて詳細な探査を行う計画である。しかし、前者の計画に比べ後者の計画は、軌道の関係で木星スイングバイによる加速が出来ないため、より長い期間が必要になる。
実際に採用されるかどうかは分からないが、もしこのような計画が採用された場合、より詳しい冥王星の姿が明らかになるであろう。
関連イラスト
関連動画
表記ゆれ
関連項目
関連項目?
あつまれどうぶつの森…英語版タイトルが「Animal Crossing: New Horizons」の為、「New Horizons」と英語で検索すると、あつ森関連サイトや実況動画などが結構出て来る。SNSだとより顕著。
NEWHORIZON…東京書籍発行の中学英語の教科書。こちらは"ズ"を付けない。なお、本機に対しズ抜きで呼ぶこと自体は科学雑誌などでも多々ある。
関連外部リンク
本文中に貼らなかった外部リンクをここに置いておきます。
- 冥王星をめぐる12年間の戦い。NASA、大型惑星探査選定の舞台裏 - Yahoo!ニュース
- ニュー・ホライズンズが撮影した画像一覧 - NASA
- 衛星カロンの月明かりで浮かび上がった冥王星のダークサイド - アストロピクス
- ニュー・ホライズンズの公式サイト
- ニュー・ホライズンズのNASA公式Twitter : @NASANewHorizons
※かつては、このアカウントとは別に本計画主任のアラン・スターン氏が運用するアカウント(@NewHorizons2015)があったが、何者かに乗っ取られ、2022年11月末現在凍結状態にある。