曖昧さ回避
トヨタ・チェイサーに設定されていたグレード名。
タミヤから発売されているRC及びミニ四駆の車種の名前。本項ではこちらを扱う。
小松製作所の重機にかつて付けられたサブネームは「アバンセ(avance)」なので注意。
アバンテ(タミヤ)
RCにおけるアバンテ
流星が降ってきた経緯~当時のタミヤの立ち位置
1988年、バブル真っ只中の日本では、タミヤの優れた戦略によってRCカーのメインストリームが4WDオフロードバギーで確定していた。
しかし、その当時タミヤのRCは「低価格で組み立てやすくてカッコいいけど、あくまで初心者向けのロースペック品だからレースでは勝てない」というイメージが定着しており、あながち間違いでもなかったのである。
「性能を犠牲にしてでも安くてカッコいいマシンがうちの理想」であったタミヤは当初、自社製品限定のレースを開くといった大人の対応でスルーしていたものの次第に看過できなくなってしまう。
「遅い」「他の性能もアレ」といった声が、よりにもよってメイン販売対象である子供たちの口から飛び出してきたからだ。
かくして、「だったらレースに勝てるカッコいいRCを出してやろうじゃないか!」と一念発揮した結果として作られ、1989年3月31日に満を持して発売されたのがアバンテである。
流星は藍より青く月より眩しかった~アバンテの特徴各種
その構造はタミヤオフローダー初となるFRP製Wデッキフレーム、フルアジャスト可能なピロボールリンクサスペンション、センターにボール式デフ、前後にコンパクトなプラネタリーデフを採用した3デフ、ガタの少ない3分割タイロッド、縦置きモーター、とまさに最先端。
車体価格も当時としては飛びぬけて高かった(衝撃の34800円。タミヤ製でも特にリーズナブルな価格で大人気だったサンダーショットの2.5倍以上というとんでもない数字である)が、メンテが簡単だった上に性能も価格相応。
そんな中で世に出たアバンテは瞬く間にタミヤ製RC達の頂点に君臨。
他者製RC(特に京商のオプティマとヨコモのドッグファイター)相手に美麗なフォルムとバカ高いお値段相応の高性能を燦然と誇示する活躍は、名の由来となったアバン=(英語とフランス語で)前衛・先進的な考えを提案する~の名に恥じないものであった。
流星は黒の夜空で燃え尽きた~あまりにも短かったアバンテの天下
しかし、躍起になって詰め込まれた新機軸の中には失敗に終わり、後発モデルで簡素化によって改良されたものや、改良されることなくデリートされアバンテのみの要素で終わったものも少なくなかったのである。
また、ホイールベース不足に起因する安定性の悪さにも足を引っ張られたところに、非常に高い価格が裏目に出て追い討ちとなったことも重なってそこまで流通することもなく、僅か1年足らずで頂点の座から降ろされたのと同時に市場からも消えてしまった。
バリエーションとしてバンキッシュ、イグレス、アバンテ2001、ヴァジュラが存在する。
これらのバリエーションはアバンテの反省を活かした設計のおかげでいずれも好評を博し、タミヤ製RCのフラッグシップ担当となった。
しかし、構造上の問題点やバブル崩壊といった時流の変化といった要素のせいで、いずれも短期間でフラッグシップの座を降りざるを得なかった悲運のマシンとなってしまい、フラッグシップ担当は性能が良くてお値段もサンダーショット以上にお手頃なマンタレイに引き継がれることとなる。
ちなみに、タミヤのハイエンドRC開発集団、TRF(タミヤ・レーシング・ファクトリー)が本格的に活動を開始したのもこのモデルからである。
というか、TRFは実はこのモデルのテストチームであり、速さを追及する姿勢から現在のハイエンドチームへと変貌したのだ。
藍より青い流星は群青の恒星へ…~伝説復活までの軌跡
流星の如く眩しく輝いてすぐに消えていったアバンテは、やがてユーザーたちの間で伝説となる。
それから十数年後、21世紀になってタミヤはオフロードRCの復刻を開始。
往年の名車達が相次いで甦る中、当然ながらアバンテ復刻の要望も殺到。
しかし、天井知らずのコストと特殊性のせいなのかスルーされ続け、ネットオークションでは当時の組み立てていないキット一式の値段が数十万円にも高騰、いつしか「ラジコン界のトヨタ2000GT」とまで謳われるようになった。
そんな中、2011年2月に現在の技術で当時の欠点を可能な限り克服した復刻版が『2011』名義でようやく再販される。
この2011は現在の技術でこそ実現できた「当時の開発スタッフが目指したアバンテ」であり、ユーザーたちを狂喜乱舞させた。
……欠点を虱潰しに克服したのと引き換えにコストが激増してしまい、タダでさえ高かった価格が当時より更に跳ね上がった(税込で狂気の57540円。これに420円上乗せすれば、復刻された現在のサンダーショットが4台買える)のは御愛嬌。
その後10年が経過した2021年11月には、「アバンテ」の名を継承した完全新規の後継機としてスーパーアバンテが登場している。
……が、ミニ四駆の方で先に「スーパーアバンテ」というマシンが存在していたため、少々紛らわしいことになっている。
コミック作品では
こしたてつひろ作『ミニ四駆RC伝説燃えろ!アバンテ兄弟』のメインキャラクターの1人【大空翔一】が、小遣いとアルバイター活動で得た資金を合わせて手に入れた。(思わず頬ずりをしてしまうほどの喜びだった)
翔一と共に多くのレースを潜り抜けるが、ライバルレーサーからのラフプレー(器物損壊や傷害など)を受けるがフェアプレーで勝利を手にしている。
ラフプレーを受けて酷く破損してしまっても、その度に翔一の手によって修復し共にレースを駆け抜ける。グレードアップモデルのイグレスが普及し、性能差で負けてしまうことがわかっていても初代アバンテでレースに挑む翔一に深く愛情を注がれ愛着を抱かれていた。
アバンテJr.
レーサーミニ四駆シリーズにラインナップ。RCアバンテに手が届かない少年達に人気があり、【アバンテ・ショック】なる現象を巻き起こした。
それまでのタイプ1シャーシに変わる新シャーシ(現在で言うタイプ2シャーシ)採用車であり、オンロードにおける革命を起こし、大人気となった名車である。
第一次ブーム世代にとっては、エンペラーと並ぶ知名度を誇る。
ネームバリューもあって売れに売れ、当時は日本中の小売店で入荷待ちとなった。
その後もアバンテは数々のバリエーション、後継機を生み出し続け、ミニ四駆における最多車種名ともなっている。
悲運の系譜となったRC版の無念を晴らすかのごとく、アバンテの名はミニ四駆で大躍進したのだ。
別車扱いのアバンテだけでも以下の車種が存在する。
- アバンテJr.(タイプ2シャーシ)※コミック作品『ミニ四駆RC伝説 燃えろ!アバンテ兄弟』に登場。
- アバンテ2001Jr.(ゼロシャーシ)※コミック作品『ミニ四駆RC伝説 燃えろ!アバンテ兄弟』に登場。作中では、大空風太が生み出した改造マシンとして登場した。
- スーパーアバンテ(タイプ5シャーシ。アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』に登場。作中世界におけるフルカウルミニ四駆0号でもある)
- プロトセイバーJB(スーパー1シャーシ。『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』に登場するJのマシン。スーパーアバンテを基に開発され、アバンテにセイバー系に似たフロントカウルが付いた絶妙なデザインをしている。スーパー2に無改造で取り付け可能にもかかわらずなぜかプレミアム化されていない)
- アバンテRS(VSシャーシ。アバンテJrのリデコ版だが金型が改修されている。現在絶版)
- スーパーアバンテRS(スーパー2シャーシ)
- アバンテMkⅡ(MSシャーシ)
- アバンテX(MSシャーシ。漫画『ミニ四駆レーサーカケル』『吉祥寺フェニックス』の主人公マシン。アバンテMkⅡの色違いだが、ボディ素材がポリカABSになっている。)
- アバンテMkⅢアズール(MSシャーシ。『ミニ四駆レーサーカケル』の新主人公マシン)
- アバンテMkⅢネロ(MSシャーシ。『ミニ四駆レーサーカケル』のライバルマシン。オプションの軽量化シャーシを標準装備。声優の徳井青空が思い入れの強い担当キャラと同名だった事をきっかけに愛用していたマシンの一台でもある)
- エアロアバンテ(ARシャーシ。ミニ四駆生誕30周年を記念して登場した完全新規制作マシン。後に実際に人が乗れる1/1サイズのマシンが作られた)
- スーパーアバンテJr.(VZシャーシ。前述したRCのスーパーアバンテをミニ四駆化したもので、ミニ四駆のスーパーアバンテとは直接の関係性はない)
この上さらに限定版などのバリエーションまで含めると、アバンテの数は膨大な量になる。
- アバンテJr.ブラックスペシャル等の色変え製品
- ア前(ゼン)テアメリカン(イベント会場などで販売された限定品。ただし後に一般販売された)
- アゼンテプログレス(日本未発売のフルオプション装備車)
なお、スーパーアバンテ以降のアバンテは、スーパーアバンテJr.を除いて名前にJr.がついていない。
これはRCの縮小版ではなく、ミニ四駆オリジナルのアバンテである為と推測される。
(MkⅡはRC版も存在するのだが、Jr.の名を冠さなかったのはミニ四駆版の方が先に出たからである)