曖昧さ回避
- トヨタ・チェイサーに設定されていたグレード名。
- ヒュンダイ・エラントラ(2代目以降)の韓国名。こちらも韓国限定でミニ四駆化されている。日本でも時々見かける。
- タミヤから発売されているRC及びミニ四駆の車種の名前。本項ではこちらを扱う。
- ちなみに、小松製作所の重機にかつて付けられたサブネームは「アバンセ(avance)」である。
アバンテ(タミヤ)
RCカーにおけるアバンテ
流星が降ってきた経緯~当時のタミヤの立ち位置
1983年にヨコモから発売されたドッグファイターは現在に繋がる4WDオフロードカーの嚆矢となり京商やヒロボーもこれに続いた。そしてタミヤが1985年4月にホットショットを発売し、のちマルイやトミーなど大手の玩具メーカーも参入した。
しかし、その当時タミヤのRCは「低価格で組み立てやすくてカッコいいけど、あくまで初心者向けのロースペック品だからレースでは勝てない」というイメージが定着しており、あながち間違いでもなかったのである。「性能を犠牲にしてでも安くてカッコいいマシンがうちの理想」であったタミヤは当初、自社製品限定のレースを開くといった大人の対応でスルーしていたものの、「遅い」「他の性能もアレ」といった声が、よりにもよってメイン販売対象である子供から飛び出すようになる。
特に京商のオプティマ、ヨコモのドッグファイターに苦戦させられておりタミヤもフルチューン版のスーパーショットや軽量化したブーメランを投入するも、容易に差は埋まらなかった。
1987年11月にタミヤはホットショットシリーズの後継としてサンダーショットを登場させていたが、この時期レースで猛威を振るっていた京商のオプティマミッド、ヨコモのスーパードッグファイターを意識してか「だったらレースに勝てるカッコいいRCを出してやろうじゃないか!」と一念発揮した結果として1/12RCラリーカーのポルシェ959をベースとしたニューマシンが作られた。そしてタミヤオフロードバギーのフラグシップとして1988年3月31日に満を持して発売されたのがアバンテである。
流星は藍より青く月より眩しかった~アバンテの特徴各種
その構造はファイティングバギー以来となるFRP製Wデッキフレーム、前後にフルアジャスト可能なピロボールを用いたマルチリンク式Wウィッシュボーンサスペンション、ボール式センターデフ、前後にコンパクトなプラネタリーデフを採用した3デフ、ガタの少ない3分割タイロッド、縦置きモーター、とまさに最先端。
車体価格も飛びぬけて高く当時としては衝撃の34800円。その高額さはタミヤ製でも特にリーズナブルな4WDバギーとして当時大人気だったサンダーショットの2.5倍以上というとんでもない数字であった。
その美麗なフォルムとバカ高いお値段相応の高性能を燦然と誇示する佇まいは、名の由来となったアバン=(英語とフランス語で)前衛・先進的な考えを提案する~の名に恥じないものであり瞬く間にタミヤ製RC達の頂点に君臨した…のだが。
流星は黒の夜空で燃え尽きた~あまりにも短かったアバンテの天下
駆動系は非常に軽く整備性にも優れていたものの少なくない欠点を有していた。特にショートホイールベースとWウィッシュボーンながらトレーリングアーム的な動的アライメント変化をもたらすリヤサスペンションはハイグリップ路面では抜群の運動性を発揮したが、グリップの低い路面ではナーバスな挙動を示しオーバーステアに悩まされることとなり、金属パーツを多用し過ぎた故の車体重量の重さ、そして致命的なのがギヤ比の変更幅が限定的であったことで当時レースで主流だった高回転型のチューンドモーターが活かし切れず、オプティマミッドやスーパードッグファイターへの刺客には到底なり得ず後述のスコーチャーばりにフルチューンされた軽量なサンダーショットにさえ遅れを取ることがあった。
アバンテの1年後、1989年に発売された田宮の2WDオフローダー、アスチュートは世界選手権レベルのレースでも上位に入賞し、アルティマやRC-10を抑えて優勝することすらあった中、ほんの僅かな設計年度の差が明暗を分けた形である。
この有り様を改善するため本格的なテストチームが立ち上げられ、テストチームが得たデータをフィードバックした改良型のバンキッシュが1988年12月に登場する。ちなみにこのチームがのちにタミヤのハイエンドRC開発集団にしてワークスレーシングチームとなるTRF(タミヤ・レーシング・ファクトリー)に発展し、TRFは日本はおろか世界のRCレース界で名を馳せることになる。
結局、躍起になって多くの新機軸を詰め込んだものの失敗に終わり、バンキッシュ以降の後発モデルでは簡素化によって改良されたものや、改良されることなくデリートされアバンテのみの要素で終わったものも少なくなかったのである。
また、非常に高い価格が裏目に出て追い討ちとなったことも重なってそこまで流通することもなく、バンキッシュやサンダーショットのフルチューン版のスコーチャーが登場すると性能面でもはやフラグシップたり得なくなり僅か1年足らずで頂点の座から降ろされたのと同時に市場からも消えてしまった。
のちバンキッシュのフルチューン版のイグレスやイグレスとバンキッシュの中間に相当するアバンテ2001が発売され、これらのバリエーションはアバンテの反省を活かした設計のおかげでいずれも好評を博し、タミヤ製RCのフラッグシップ担当となったが根本的な構造上の問題点を完全に解決出来なかった。
さらにアバンテが発売された頃は日本でF1ブームが巻き起こり90年代に入るとバギーよりもF1に移行するファンも増えていた。またバギーが先鋭化したこともありユーザーが離れだしていた上に1991年から始まったバブル崩壊もあり高級化路線も限界に達し性能も限界に達してしまったことでバギーブームは下火になってしまう。最終的にアバンテシリーズは1990年10月に登場したマンタレイにサンダーショットシリーズ共々統合され、イグレスも1992年発売のトップフォースにフラグシップの座を奪われ市場から消えることになる。かくして流星の如く眩しく輝いてすぐに消えていったアバンテシリーズは、悲運のマシンとしてRCファンたちの間で伝説となる。
藍より青い流星は群青の恒星へ…~伝説復活までの軌跡
アバンテシリーズが消滅してから十数年後、21世紀になってタミヤはホーネットやサンダーショットを皮切りにオフロードRCの復刻を開始しホットショットやブーメランなど往年の名車達が相次いで甦った。
一方、2007年に「アバンテ」の名を継承したアバンテMkⅡが登場したが元祖アバンテ復刻の要望も殺到。
しかし、天井知らずのコストと特殊性のせいなのかスルーされ続け、ネットオークションでは当時の組み立てていないキット一式の値段が数十万円にも高騰、いつしか「ラジコン界のトヨタ2000GT」とまで謳われるようになった。
そんな中、2011年2月に21世紀の技術で当時の欠点を可能な限り克服した復刻版がアバンテ(2011)名義でようやく再販される。
この2011は21世紀の技術でこそ実現できた「当時の開発スタッフが目指したアバンテ」であり、ユーザーたちを狂喜乱舞させた。
……欠点を虱潰しに克服したのと引き換えにコストが激増してしまい、タダでさえ高かった価格が税込57540円と当時より更に跳ね上がった。これに420円上乗せすればサンダーショット(2005)が4台買えた。さらに2013年に登場したイグレス(2013)の方が(チタンビスのオミットもあって)アバンテより安価という笑えない事態になった。令和年間に入りRCカーやプラモデルは原材料費などの高騰もあり全般的に高騰したが、2024年に再登場したアバンテ(2011)は税込68,200円とさらにとんでもない値段に跳ね上がった。ちなみに2024年版イグレス(2013)は税込56,980円。
ちなみにアバンテ2001はキットこそ未だに再販されていないがボディはイグレスが再販された2013年に再販された。アバンテ(2011)の派生型として登場したスタジアムトラックのヴァジュラがアバンテよりもアバンテ2001の派生型と言える。ただしFRPパーツがCFRPに変更されたためか値段は58,080円となぜかイグレス(2013)よりも高額。
その10年後の2021年11月には、「アバンテ」の名を継承した完全新規の後継機としてスーパーアバンテが登場している。
……が、ミニ四駆の方で先に「スーパーアバンテ」というマシンが存在していたため、少々紛らわしいことになっている。
なお、スーパーアバンテのユーザーの中にはアバンテ(2011)のボディを載せているユーザーもいる模様。
コミック作品では
こしたてつひろ作『ミニ四駆RC伝説燃えろ!アバンテ兄弟』のメインキャラクターの1人【大空翔一】が、小遣いとアルバイター活動で得た資金を合わせて手に入れた。(思わず頬ずりをしてしまうほどの喜びだった)
翔一と共に多くのレースを潜り抜けるが、ライバルレーサーからのラフプレー(器物損壊や傷害など)を受けるがフェアプレーで勝利を手にしている。
ラフプレーを受けて酷く破損してしまっても、その度に翔一の手によって修復し共にレースを駆け抜ける。グレードアップモデルのイグレスが普及し、性能差で負けてしまうことがわかっていても初代アバンテでレースに挑む翔一に深く愛情を注がれ愛着を抱かれていた。
アバンテJr.
レーサーミニ四駆シリーズにラインナップ。RCアバンテに手が届かない少年達に人気があり、「アバンテ・ショック」なる現象を巻き起こした。
それまでのタイプ1シャーシに変わる新シャーシ(現在で言うタイプ2シャーシ)採用車であり、オンロードにおける革命を起こし、大人気となった名車である。
第一次ブーム世代にとっては、エンペラーと並ぶ知名度を誇る。
ネームバリューもあって売れに売れ、当時は日本中の小売店で入荷待ちとなった。
その後もアバンテは数々のバリエーション、後継機を生み出し続け、ミニ四駆における最多車種名ともなっている。
悲運の系譜となったRC版の無念を晴らすかのごとく、アバンテの名はミニ四駆で大躍進したのだ。
別車扱いのアバンテだけでも以下の車種が存在する。
- アバンテJr.(タイプ2シャーシ)※コミック作品『ミニ四駆RC伝説 燃えろ!アバンテ兄弟』に登場。
- アバンテ2001Jr.(ゼロシャーシ)※コミック作品『ミニ四駆RC伝説 燃えろ!アバンテ兄弟』に登場。作中では、大空風太が生み出した改造マシンとして登場した。
- スーパーアバンテ(タイプ5シャーシ。アニメ『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』に登場。作中世界におけるフルカウルミニ四駆0号でもある)
- プロトセイバーJB(スーパー1シャーシ。『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』に登場するJのマシン。スーパーアバンテを基に開発され、アバンテにセイバー系に似たフロントカウルが付いた絶妙なデザインをしている。スーパー2に無改造で取り付け可能にもかかわらずなぜかプレミアム化されていない)
- アバンテRS(VSシャーシ。アバンテJrのリデコ版だが金型が改修されている。現在絶版)
- スーパーアバンテRS(スーパーⅡシャーシ)
- アバンテMk.Ⅱ(MSシャーシ)
- アバンテX(MSシャーシ。漫画『ミニ四駆レーサーカケル』『吉祥寺フェニックス』の主人公マシン。アバンテMk.Ⅱの色違いだが、ボディがポリカABS製になっている。)
- アバンテMk.Ⅲアズール(MSシャーシ。『ミニ四駆レーサーカケル』の新主人公マシン)
- アバンテMk.Ⅲネロ(MSシャーシ。『ミニ四駆レーサーカケル』のライバルマシン。オプションの軽量化シャーシを標準装備。声優の徳井青空が思い入れの強い担当キャラと同名だった事をきっかけに愛用していたマシンの一台でもある)
- エアロアバンテ(ARシャーシ。ミニ四駆生誕30周年を記念して登場した完全新規制作マシン。後に実際に人が乗れる1/1サイズのマシンが作られや1/14や1/10スケールのRCカーも発売された)
- スーパーアバンテJr.(VZシャーシ。前述したRCのスーパーアバンテをミニ四駆化したもので、ミニ四駆のスーパーアバンテとは直接の関係性はない)
この上さらに限定版などのバリエーションまで含めると、アバンテの数は膨大な量になる。
- アバンテJr.ブラックスペシャル等の色変え製品
- ア前(ゼン)テアメリカン(イベント会場などで販売された限定品。ただし後に一般販売された)
- アゼンテプログレス(日本未発売のフルオプション装備車)
なお、スーパーアバンテ以降のアバンテは、スーパーアバンテJr.を除いて名前にJr.がついていない。
これはRCの縮小版ではなく、ミニ四駆オリジナルのアバンテである為と推測される。
なお、MkⅡとエアロアバンテは前述のようにRC版も存在するのだが、Jr.の名を冠さなかったのはどちらもミニ四駆版の方が先に出たからである。