演:ゾーイ・クラヴィッツ/吹き替え:森なな子
概要
聖28一族であるレストレンジ家の魔女。容姿は小柄で、褐色の肌をしている。レストレンジ家自体はフランスの純血貴族の出だがその血族は欧州に広く渡っている模様で、学生期は下記のようにイギリスの魔法魔術学校に通っている。
年齢はニュート・スキャマンダーと同じ1927年時点で30歳、ホグワーツのスリザリン寮の出身。恩師であるダンブルドア曰く「最も優秀な生徒の一人だった」。しかしレストレンジ家という名前で「はみ出し者」扱いをされて陰口を叩かれる事が多く、本人もそれを黙って見過ごせず報復する気の強さもあった事からかなりの問題生徒だった。
そんな辛い学生時代の中で13歳の3年生時に「はみ出し者」同士として他寮ハッフルパフのニュートと親しくなり、それは彼が退学するまでの長い時間続いたという。
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』では、主人公であるニュート・スキャマンダーのトランクの中においてある顔写真とそれにまつわる話で名前のみ登場し、実際の登場は第2作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』からである。
ホグワーツ卒業後の経緯は不明だが第2作の時点で英国魔法省に入省し、魔法法執行部長のトーキル・トラバースのアシスタントとして働いている。魔法省内にいる時の衣服は女性職員らしいデザインだが、外向き用の彼女の衣装は魔女らしく菫色のマント付きローブに同色の三角帽子。
ニュートとは彼が退学して以降は長らく疎遠(ニュート談)だったようだが、第1作の後でアメリカからイギリスに戻った彼の前に、彼の実兄テセウス・スキャマンダーの婚約者として現れる。
過去の事情で疎遠だったという割には、普通の友情以上の感情を彼女に抱いていたニュートとしては複雑極まりないのだが、二人で話す際の雰囲気は昔と変わらず非常に穏やかである。また、学生期の心の支えがニュートであったが、現在は家族を思いやる心の強いテセウスに対しても同様のの想いを抱いているようで婚約者同士の仲は非常に良好。魔法使いの貴族周辺では硬くなる表情も、広く優しい心で受け入れてくれるスキャマンダー兄弟を前にすれば素の笑顔になる事から窺える。
第2作では彼女の実家「レストレンジ家」を巡って様々な陰謀が飛び交う中で、リタ自身にも秘められた事情があり、それが今作では大きく関わる事となる。特に、純血貴族間で交わされる亡弟・コーヴァスについては一貫して「弟は死んだ」とそれ以上については黙秘を貫くが…。
余談
レストレンジ家といえばどうしても連想されるのが「ハリポタ」でのベラトリックス・レストレンジであるが、ベラトリックスはポッタリアンならご存知ブラック家の三姉妹の一人であり、レストレンジ家に嫁いだ人間。したがって彼女自身はレストレンジ家側の血筋との関りは薄い。(それ以前に一族同士の婚姻を重ねていれば可能性はあるかもしれないが)
どちらかといえばベラトリックスの夫であるロドルファス・レストレンジよりも前の世代の血族がリタであるが、「ハリポタ」期の時点で多くの闇の魔法使いを輩出しているレストレンジ家のイメージと少し違い、彼女は問題児ではあったものの、心根はとても繊細で優しさ、そして勇敢さを持った魔女である。
ちなみに、演者のゾーイ・クラヴィッツとテセウス役のカラム・ターナーの身長差は30㎝前後あるので、テセウスと(ヒールを履いていても)リタはなかなかの身長差婚約者カップルである。
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生い立ち
父はコーヴァス・レストレンジ4世で、母はそのコーヴァスによる闇の魔術で洗脳、略奪されたフランスの純血一族であるロレナ・カーマ。よってユスフ・カーマとは異父兄妹の関係であり、1920年代までは面識はなくとも互いに素性は知れていた模様。
レストレンジ家の令嬢ではあるものの、家系の方針が完全なる男尊女卑であったために「女は添え物」であるという認識は娘も例に漏れることはなかった。生まれて間もなく母親が死亡して残されたリタにコーヴァス4世は親としての「愛情」を与えず、むしろそれは後に別の魔女と再婚して誕生したコーヴァス・レストレンジ5世に向けられた。世継ぎとなる義弟の存在でリタの立場はさらに冷遇の一途を辿り、それは魔法族に仕える半妖精(ハーフエルフ)の召使いであるアーマ・ドゥガードの態度(後述にて)からしても察せられる。
ここまでの生い立ちだけを見れば、彼女は確かに誰からも愛されない存在だったのだろう。
ただ一人だけの秘密
彼女の秘密…それは、自身とは違い愛を与えられた義弟・コーヴァスの現在である。一族の人間を奪われたカーマ家からの復讐を恐れたコーヴァス4世は、まだ赤ん坊だった息子を守るために遠く離れたアメリカに逃がす事を画策、アーマ、そしてリタが同行する事となった。
しかし、途中で航行途中の船が大嵐によって沈没する事となってしまう。リタはどうにか、アーマとその腕の中の赤ん坊と共に助かり、その赤ん坊はアメリカのニューヨークにある施設を通じ、ベアボーン家に引き取られる事になった…表向きは。
悲劇は、船から脱出する前の事。夜泣きが収まらないコーヴァスの存在に耐えられなかったリタは、近くのキャビンで静かに眠っていた赤子と取り替えてしまっていたのである。夜が明けるまでのほんのひと時だけという浅い考えからの行動だったが、この直後に船からの脱出騒動が起き、交換された見知らぬ赤子をアーマが、そしてコーヴァスを本来の赤子の母親である女性が抱えていった。
しかし、嵐は無情にも船だけでなく脱出した乗客が乗っていた救命ボートも転覆させ、海に投げ出された女性が手を伸ばすもむなしく、赤子はスワドル(おくるみ)に包まれたまま水底に
沈んでいった。
…この事実をアーマやコーヴァス4世、そしてユスフも知る筈もなく、レストレンジ家の後継たるコーヴァス5世の行方についても他の魔法族の間で噂が飛び交う中、リタはただ一人真実と秘密を抱えて生き続けてきた。幼少期の体験や業は誰にも打ち明けられないトラウマ以上の傷となり、彼女の心を蝕んだ。よって、彼女のボガートが変身するのはコーヴァス5世が溺死していくシーンである(実際に溺死していく所をリタ本人が直接目撃してはいない為、あくまで「リタの体験した過去」から作り出したイメージによるもの)。
こればかりは周囲と孤立する仲で似て非なる境遇により心を通わせたニュートや、彼女の夫として(恐らく初めて)「家族としての愛情」を向けて接していたテセウスにも癒し難い問題であり、この秘密について知られる事をリタは激しく拒絶している。
「ニュート…あなたはどんな怪物も愛せるのね」
フランス魔法省の地下でその秘密が周囲に知れる所となり、それでも心に寄り添おうとするニュートの優しさを昔ながらの友人として理解しつつも、彼女は受け入れはしなかった。
壮絶な最期
レストレンジ家の墓でのゲラート・グリンデルバルドの集会直後、闇祓いや意に反する者達が次々と襲われていく中、彼女は彼の言葉に誘われて足を踏み出す。その境遇と罪の意識から何処にも居場所を得られない人間として共に来るように促された彼女は、最後にスキャマンダー兄弟に向かって告げた。
「…愛してる」
…例え生まれや育ち、過去の経験から、冷たく苦しい闇に覆われた人生だったとしても、その最中に喜びや楽しさを感じて笑い合うひと時の思い出は随所に存在した。「誰からも愛されない」と言われてきたリタに対し、純粋な優しさや愛情を確かに向けてくれていた彼らに精一杯の感謝とも取れる言葉を残し、リタはグリンデルバルドを攻撃。
彼らをその場から脱出させるチャンスを作ろうとしたが、当時の世界最強クラスの闇の魔法使いには適う筈もなくプロテゴ・ディアボリカによってその身を跡形もなく燃やされ、消滅した。