概要
2009年6月26日にりぷるが発売したゲーム作品。ジャンルは「超時空ラブコメ活劇ADV」。現在はDL版が販売されている。
内容は魔物と呼ばれる怪生物が出没する近未来において活躍する「新撰組」を名乗るチームと行動を共にするようになった主人公:沖田祐実を描くというもの。
後述する独特のシナリオや演出で知られる。
登場キャラクター
- 沖田祐実 - 主人公。過去のトラウマや時折フラッシュバックする幻覚に悩まされている。
- 一文字菊(声:成瀬未亜)
- 近藤弓枝(声:榊原ゆい)
- 土方時音(声:なかせひな)
- ミシュリーヌ・ブリュネ(声:高槻つばさ)
- 中島昇(声:桜川未央)
- 沖田祐未( 声:春日アン)
- 松平カレン(声:かわしまりの)
他多数
評価
本作はクソゲーオブザイヤー2009のエロゲー部門大賞作品として知られる。
他の受賞作品と異なり、特にバグもなくシステムやグラフィックや声優の演技も普通で当時の基準を満たしておりキャラデザインについてはむしろ出来が良い方だがこのゲームの最大の問題点は技術的な問題ではなく、破綻したシナリオという文学的なものであり、ほぼこの一点だけで受賞したとされる。
どのような問題点があるのかというと
- 劇中で主人公はしばしば過去の記憶が白昼夢として不意にフラッシュバックし、プレイヤーはそれを過去回想という形で観ることになるが、これが場面を選ばずに尋常ではないほど頻出する上に唐突かつ断片的で、さらに前後の場面と関係があるのかよくわからない内容のものが多い。
- 「転生もの」と「異世界もの」を混ぜ合わせたシナリオのため、単なる過去回想だけでなく異世界や前世の記憶も同じく唐突に始まるためプレイヤーは余計に混乱する。
- しかも過去回想時に画面の色彩のトーンを変えるなどの演出を行わなかったためいつ回想が始まったのかプレイヤーにはわかりづらいことが多く、そのまま別の回想や場面に移行することもあるので気を抜くとすぐに話がわからなくなる。
- 主人公の過去回想とは別に他の場面や登場人物への視点変更も頻繁に行われるため、プレイヤー視点では場所・視点・時間軸がぐちゃぐちゃになった断片のパッチワークを見る形となる。
- 内容を理解しようにも、シナリオがやたら長い上に衒学的な専門用語や説明の無い単語やミスリード、厨ニ要素、単なる誤字や日本語の間違いなどといった要素が全編にわたって大量に散りばめられており、上述した転生もの要素や異世界もの要素の他、途中から平行宇宙や仮想現実や精神投射やタイムスリップやループものなどといった要素もシナリオに加わって来るため整理しづらい。
- なんとか物語の時系列を整理しても通常のルート分岐に加えて登場人物が転生したり平行宇宙に移動したり時間移動したりループしたり世界そのものが改変されたりするのでタイムラインが恐ろしく複雑になる。
- 転生もの要素や平行宇宙もの要素、タイムスリップ要素やミスリードなどといった諸々の要素が複雑に絡み合った結果「ある人物と見た目は同じだが名前が違う人物」や「ある人物と見た目も名前も同じだが同一ではない人物」などといった登場人物が複数登場する。上述の通り過去回想や視点変更が頻繁に行われるため気を抜くと誰が誰なのかわからなくなる
- 上述の理由によりプレイヤーはしばしば今見ているシーンがいつ、どこで、誰が、何をしているのか把握できなくなる。
- 冗長な会話や状況説明が多い。
- ロリキャラの多いエロゲーに上述の難解SFのような設定・展開や演出描写をぶち込んだのがミスマッチ。
- アイキャッチがやたら頻繁に挟まれる上に脈絡のないことが多い。
レビューサイトではこの他にも「取ってつけたような新撰組要素」「過去のトラウマが原因だと作中で示されるとはいえ主人公の性格に難がある」「どこかで聞いたことがあるようなというか、誰もが知ってるクラシックの編曲がBGMとして延々と流れる」といった問題点が指摘されるが上記の問題点の数々に比べたら誤差の範囲内であり、クソゲーというよりも奇ゲーや電波ゲーに近い有様だった。
KOTYの選評スレでは「麻薬をやってフラッシュバックしてるみたいな構成」「ニュータイプに覚醒するためのゲーム」「起承転結の内、承と転しかない」「エスパーしか楽しめない」「ヒエログリフを解読作業するようなゲーム」「俺は考古学者じゃない」「始まって10分しかしてないのに意味が分からなかった」などと評され、「エロゲー界のマインドシーカー」とまで喩えられた。
「もしも、このゲームのような超ダメ構成で有名文学を書き直したら」というコピペも作られており、その内容は
竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。
妹は頬をあからめた。
~アイキャッチ~
眼が覚めたのは夜だった。メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。
「おどろいた。国王は乱心か。」
爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。
~アイキャッチ~
「ああ、メロス様。」うめくような声が、風と共に聞えた。
~アイキャッチ~
メロスは激怒した。
END
このゲームの破綻っぷりが2割でも伝わってくれれば幸いである。
他の選考作品がバグや未完成のまま販売といった要素で選ばれていたのに対して本作はバグも無く普通に遊べるのにシナリオが超展開という一点のみで選出されたことや、キャラデザは評価が良くキャラクターも魅力的という評価。肝心とも言える濡れ場は手を抜かなかったこと。問題のシナリオも特定キャラの個別ルートによっては比較的評価が良い他、全体のシナリオもある程度クリアするとEXTRAモードに解説文が表示されるのでそれをもとに時系列を整理したフローチャートを作って整理するとそれなりに練られたストーリーや設定が見えてくること、メインルートの終盤では過去回想や視点変更も影を潜め王道の燃え展開で大団円となるなどといった点の数々により、「名作になり損ねた作品」「自分はプレイしながら深読み考察して面白かった」「なんやかんや楽しめた」という評価もある。
関連動画
別名・表記ゆれ
関連タグ
グリモ☆ラヴ~放課後のウィッチ~ - 同じく時系列や順序等を無視したシナリオ構成、説明不足などの問題点を指摘された作品。クソゲーオブザイヤー2016のエロゲー部門大賞を受賞した。なおこちらは一話完結の短編のオムニバス構成である。
Tear-終わりとはじまりの雫- - ノーマルエンディング後のエピソードで同じく時系列や順序等を完全無視したシナリオ構成、説明不足などの問題点を指摘された作品。クソゲーオブザイヤー2017で次点。
重力の虹 – 視点が目まぐるしく入れ替わることで有名な小説。20世紀を代表する名作文学作品かつカルト小説として有名。なおこちらは時系列まではいじってない。
最果てのイマ – 同じくプレイヤーから見てわかりにくい形で時系列をシャッフルした内容のゲーム作品。なおこちらは叙述トリックとして機能している。比較対象として観て見るのもよいかもしれない。
メメント – 同じく場面が頻繁に過去に飛ぶ映画。なおどのシーンが過去のシーンかは視聴者にわかりやすくしているため、本作よりは話が理解しやすい。
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO・steins;gate – 同じく登場人物が平行世界や世界線を移動したりタイムスリップしたりするのでタイムラインが複雑になっているゲーム作品。なおこちらはプレイヤーの視点や作中の時系列や順序は主人公の主観に固定されているので話はわかりやすくなっている
久遠の絆 – 同じく転生物で主人公の前世の記憶の回想が何度も挟まれるゲーム作品。なおこちらでは回想シーンが始まるのは白昼夢ではなく気絶したとき。